読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
18歳で父を倒しアジェンセン公国の大公となったルシードは、かつて人質として子供時代を過ごしたパルメニア王国から、愛する美しい王女メリルローズを妃に迎えた。ところが、パルメニアがよこしたのは彼女そっくりの身代わりの少女ジルだった! しかし、ある事情からルシードはジルを大公妃とするのだが!? 華やかなロ・アンジェリー城を舞台に、恋と野望の王宮ロマンのはじまりはじまり!(裏表紙より)
面白かったー! ジルかわいいよー! 仮面夫婦で冷め切って殺伐としていて、すれ違いっぷりが一冊丸々すごいんですが、最後の最後で微かにデレる。この「微かに」が非常にたまらなくて、続きが読みたくなる!
主人公側が完全に善の役割でない(主にジルが)というのがいいなあ。ちゃんと善なんだけれど、はっきり善とは言えない感じ。ルシードは政略とは無縁っぽいのでそれに反発して。でもそれよりももっと強大な悪が存在していて、どう立ち向かっていくかというのが気になる。
まだまだ秘められたものがたっぷり込められていそうなので、続きも読もう。
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あなたの人生は退屈ですか? どこか遠くに行きたいと思いますか? あなたに必要なのは見栄えのよい仕事でも、自慢できる彼や彼女でも、おしゃれな服でもない。必要なものは想像力! 家出の方法、ハイティーン詩集、競馬、ヤクザになる方法、自殺学入門……。時代と共に駆け抜けた、天才アジテーターによる100%クールな挑発の書。(裏表紙より)
読み始めは「ん?」と思ったのに、中盤になるとぐいぐい読まされていました。しかし中盤を過ぎるとなんだか洗脳されているような気分でちょっと休み休みして。濃かった……。
初版が昭和50年。時代を感じると私のような小娘は思い、完璧に同意するわけではないけれど、何故か覗き込んでしまった新しい世界に、魅力を感じています。色々衝撃的な世界だ……。
初めはその世界の有様など、中盤過ぎてから段々競馬とお馬さんの話になりますが、また戻ってきて若者に語りかけるような内容になります。印象的だったのがストリッパーの話(p91)、「二人の女」(p122)、「馬の性生活白書」(p195)。第三章ハイティーン詩集も当然すごかった。
こういう世界の話を、一度でいいから書いてみたい。
「エンピツじゃ人は斬れないが、ことばじゃ、人は斬れる」(p181)
「どこに行っても忘れない。あなたの思い出を胸に生きていく」
頭上を飛び交う矢。燃え上がる炎。そして少女は、握りしめた少年の手を離した——。
異能の力を持つ故に《業多姫》と呼ばれる少女・鳴。如月のある日に最愛の母を殺され、それと同時に鳴自身にも迫る刺客の魔の手。追っ手から逃れながら母の死の謎を解こうと奔走する鳴は、颯音と名乗る不思議な存在感を漂わせた少年と出逢う。
戦の行方を左右する業多姫の存在を巡り交錯する様々な思い。
戦乱の世を舞台に描く、第二回ヤングミステリー大賞準入選作。惹かれ合う二つの魂が、歴史を、運命を変えていく——。(裏表紙より)
和風、歴史、ファンタジー、ミステリーの要素がたっぷり詰まってました。ライトノベルかと思ったらミステリーの比重が大きくて、それが更にライトノベルの要素と絡み合って、すごく面白かった!
鳴の天真爛漫さと業の深さ、にはちょっと納得がいきかねたのですが、魅力ある女の子というのは十分伝わってきたので満足! 颯音も刺客にしてはちょっと揺らぎすぎな気もするけれど、鳴に惹かれているのが分かってかわいかった! この二人それぞれの一人称で話が進むというのも、結構意表をつかれました。またそれが、好意を感じているのに踏み切れないというのが分かってかわいいのです。お互いが孤独で、でもようやく見つけた人。信じることを止めないで前を向き続けること。たくさん眩しかったお話でした。
愛する相手を思う、”強さ”を描いた物語。
怠惰な生活を送るティーのもとに、
三年前に別れた恋人、極上の美女アールからかかってきた一本の電話。
「アタシの酷い噂話や嘘をたくさん聞くことになると思う。
ティーにだけは知っておいて欲しいと思って。アタシは変わっていない」
街に出たティーが友人たちから聞くアールの姿は、
まるで別人のように痛々しく、荒んだものだった——。
彼女が自らを貶め、危険を恐れずに求めたものとは……。(裏表紙より)
『スロウハイツの神様』に登場したチヨダ・コーキのデビュー作。
かっこよかったよー! すごかった。すごかった! 物語の展開は読めるけれど、なんだか言いようのない感動がある。いいことばかりじゃないし、別れた女の噂を追っていく話であるはずなのに、どうしようもないなあと思いながら、すごく「好き」って気持ちが色んなところに溢れている気がする。もう何を言っているのか分からないくらい、この話がすごく好きだ。
チヨダ・コーキはいつか抜ける、という言葉はきっとここから来たんじゃないかなあという文章があったり、ティーが誰も差別せず平等に友人たちを愛している眼差しや、友人たちが友人たちを大切にしている様子が、ああ辻村作品だと幸せな気分になれる。
面白かった!
あわく血の色を透かした白い頬、わずかに褐色をおびた大きな瞳——ひとりの美少女が暴君・煬帝の親征に従事していた。病父に代わって甲冑に身を包んだ、少年兵として。その名を花木蘭。
北に高句麗を征し、南に賊軍を討つ。不敗の名将・張須陀の片腕として万里の戦野にかけるも、大隋帝国の命運は徐々に翳りはじめ……。
時を越え民衆に愛された男装の佳人を、落日の隋王朝とともに描きだした中国歴史長篇(裏表紙より)
花木蘭の物語を、随王朝の滅亡とともに見る物語。すごかった。朗々と語るような歴史物語だった。
風景の描写がすごい。6章最初の文章に衝撃を受けた。ここでタイトルの「風よ」の意味が分かってきたして、すごく感動した。
一国の栄華と滅亡に、人が何を思い、何をなし得たのか。完全に読み解き、証明することはできないけれど、この一冊にはある一定の答えがあると思います。
語彙が貧弱なのでただすごかったとしか言えないけれども。読み終えたときに、静かに吐息するような一冊でした。
藤見高校三年二組のクラス会。そこでいつも話題になるのは、女優になった「キョウコ」のこと。彼女をなんとかクラス会に呼び出そうとする、かつてのクラスメートたち。しかしそのことによって蘇る、劣等感や嫉妬といった感情に、かれらは向き合わなくてはならなくなった。
太陽が一体誰なのか、と思い悩む高校時代を送った人々の物語だったのかな、と思いました。辻村深月作品を分けた場合、光と闇の、闇に属する組み分けなのだろうな。『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』を読んだ時に感じた、この、大人に対しても独特の、冷えきっているのにどろどろとした視点というか。ものすごく陰湿にねちねちと責められている気分になりました。三十代を目前にした、女の形がとても恐ろしく描かれているような気がします。
キョウコやリンちゃんに関しては、「ええええええええ!!?」と叫ぶ叫ぶ。うわあうわあ、すごく辻村さんらしいトリック。一話目にどうも変だなーと思いながら読んでいたのが、ここにきて明らかになってすごいと思うのに、すごーく陰鬱な気分になりました。
精霊の恵み失われ〈花枯れ〉の進む大陸ラクラ=ウリガ。唯一、眠れる女王の夢のみが、かろうじて精霊を繋ぎとめている。
花学者の青年グラド=ロゥは、ある日女王の秘密の寝所に案内される。そこで見たものは女王サユヴァの腹を苗床にした、赤く大きな花の蕾——。サユヴァと親しかったグラド=ロゥは、この異変の謎を解く手がかりを求めて単身旅に出る。しかしそれを妨害する勢力の魔の手が、彼に迫ってきて……。(裏表紙より)
実はこのイラストレーターの方が昔から好きだったのですが、最近になってこの本の話題を聞き、手に入れた次第。
異世界です。西洋とも東洋ともつかぬ、花と精霊の住まう世界が、もろに琴線に触れました。こういう「どこでもない世界」がとても好きなのです。
眠れる女王サユヴァとその花を調査する、というのがグラド=ロゥのお話なのですが、グラド=ロゥが最初掴めなくてううんとなっていたのに、過去のシーンを読んでいくとものすごく愛着が沸いてきました。頭が良いのに、だめなひと。多分、サユヴァの目線であるからというのもあるんだろうなあ。
解放される物語だったな、と思います。読み終わったあと、不思議な余韻がありました。とても素敵なお伽話を聞いた気分。
琅蘭帝国には、ひとつの神話がある。
滅びと戦を司る天狼君。その化身は右手に瑪瑙を握って生まれる。世が禍で満ちたとき、かの者は赤狼を従え民を導くという。
「怪異だ! 赤い——けものが……!」
皇子太白の率いる琅蘭軍の窮地を救ったのは、赤い翼をもつ狼だった。自らの危機に幾度となく現れる妖獣を前に太白は——。
翔べ、さもなくば滅べ。衝撃のエキゾチック・ファンタジー!(裏表紙より)
面白かった……。読みながら面白い! という興奮はそれほどないんですが、読み終わった後、じいんと「面白かった」と思う作品でした。それでも真相の辺りはたぎりました。
中華風世界を舞台にしたファンタジー。第二皇子太白の物語に、彼の拾った赤い目の少女が鍵を握っています。軍事の才能に恵まれ、人の良い太白に、義兄は彼を疎んじている。当然兄の裏切りもありますが、それよりもなによりも真相がすごかった。これこそ一国であるなと思いました。
珊瑚のもうちょっと可愛いところを見たかった! というか。彼女の心情がそんなに描かれていないので、寂しかったり。しかし戦記物、王国記物としてとても面白かった。結末がとても清々しい。
猫と古本と古本屋との摩訶不思議な物語。古本一筋に生きてきた古本屋と、古本が放つ妖気に魅入られた古本世界の奇妙な人びととの交流を、抑えたユーモアで描き出す、はじめての作品集(裏表紙より)
猫と古本の話、ということで気になって読んでみた。
妖気……という空気漂う作品集でした。古本屋を描いた作品というと、人との交流があって明るいイメージがあっただけに、ずっしりと重苦しく文字や本の背表紙が迫ってくるような物語なので、びっくりする。物語の空気に、本のにおいがする。真新しい本屋さんではなくて、古書店の。
どれもさっぱりする、という作品ではなくて、人と本の繋がりがもたらす世界なだけに、どこか息苦しくてああもどかしい、という気分。なんだかその世界の中にいたのに掴み損なった気がする。
以前読んだ本に、火坂雅志『骨董屋征次郎手控』があって、同じ古物を扱っているためか、同じ空気がするなあと思う。人間が主人公じゃない感じ。