読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

「本当の私」なんて探してもいません。みっともなくもがいてる日々こそが、振り返れば青春なんです——。「底辺」な生活から脱出するため家出した高校二年の春。盛り下がりまくりの地味な学祭。「下宿内恋愛禁止」の厳粛なる掟。保健室の常連たち。出席時数が足りなくて、皆から遅れた一人きりの卒業式。最注目の作家によるホロ苦青春エッセイ。(裏表紙より)
分かる分かる! というエッセイでした。そうだから、胸が痛くてたまらなかった。これは封印したい過去にぐさぐさ刺さる……。何が悪いでもなかったけれど、自分がそこに馴染んでいない浮遊感や、人の反応が怖かったり、「ユニット」があったり。それらすべてが大嫌いで、世界が嫌いで、自分が嫌いで。読んでいて笑えるんだけれど、すごく苦しい。これは私なんじゃないかと思ったりする。
しかし豊島さんがすごかったのは、家出したことだな! 自殺するでもなく、家出を選んだのはすごい。色々ぼろはあったけれど、出て行こうとしたのはかっこいいなと思いました。
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イギリスに来て半年。寄宿学校生活に慣れてきたエリカは、ガイ・フォークス・デイの祭りに参加したいと思いつき、外出許可を得るため、万聖節のバザーへの出品を計画する。しかし協力をたのんだ男子寮の監督生ジェラルドはいい顔をしない。おりしもエリカは、男嫌いの新入生キャロルが起こす騒動に巻き込まれる。グレイ校長は、これらの解決策としてエリカを女子寮の監督生に指名するが!?(カバー折り返しより)
男子校と女子校が隣り合った寄宿学校を舞台にした、準男爵の血を引くイギリスと日本のハーフの少女エリカと、レディズ・カレッジの友人たち、男子校の生徒たちの学園もの。一巻と変わらず乙女できゅんきゅんしました……! かなりときめきのシリーズです。「カエルはいつか王子様になる?」って! かわいすぎて! もう!
前回は三人だったカレッジにも、わけありな新入生が三人入ってきた。女子同士身分差の諍いがあり、男嫌いの下級生がいたりと、少女たちの関係性も大変おいしい。男子は男子で、エリカに対するロジャーとジェラルドの位置も一巻に比べてはっきりしています。ジェラルドが本当に不器用な俺様でかわいいな!

チャーリーが住んでいる町に、チョコレート工場がある。
世界一広大で、世界一有名なワンカの工場。
働く人たちの姿をだれも見たことがない、ナゾの工場!
そこへ、五人の子供たちが招待されることになった。
招待状の入ったチョコレートは、世界にたったの五枚。
大騒ぎになったけれど、チャーリーには望みがない。
貧しいチャーリーがチョコレートを口にするのは、
一年に一度、誕生日に、一枚だけなのだから……。(カバー折り返しより)
映画の方の印象が強すぎて、脳内ビジュアルがハリウッドスターだけれど、映画は結構忠実に作ってあったんだなあと思いました。
貧乏なチャーリーが誕生日のチョコレート一枚だけというのもどきどきしましたが、おじいちゃんのへそくりでもだめ、でも空腹に耐えかねて拾ったお金で買ったら、見事招待状を引き当てた。拾った、というところがちょっと「ん?」と思いましたが、父親の働いていた工場が閉鎖し、食べるものにも困っていたのだから仕方ないのかな。この辺り、拾ったお金の行く末は外国ではどうなんだろう。日本と価値観が違うのかな。
ワンカの工場はすごい。楽しいなあ! 子どもたちが次々と懲らしめられていくところが気分がいい。訳がものすごく素敵で、ウンパッパ・ルンパッパの歌の詞が、韻を踏んでいて面白い。
チャーリーの大逆転も楽しかった一冊でした。

携帯電話の数だけ自分を使い分けている孤独な少女、さちみ。
職場でお局となりつつ、ロリィタ趣味を隠し続ける29歳OL、リョウコ。
子育てを終え、もはや母親でも妻でもなくなった女、史緒。
結婚できないまま人生の終盤を迎えようとしているサラリーマン、臣司。
そして、定年になる横暴な夫に復讐を誓う妻、初恵。
心に抱えた秘密をカミングアウトするとき、人はどう変わるのか?
人気作家、高殿 円が現代ものに初挑戦、注目の清涼ストーリー。(裏表紙より)
私が読んだのは新装版じゃなくて、ヴィレッジブックスの方。
世界観人物リンクの連作短編。それぞれのお話が別のお話に繋がって、一番最後の章で「カミングアウト」するストーリー。面白かったー。それだけじゃなくて、みんな何かしら秘密を抱えている、その秘密は本当に秘密にすべきことなのか、そのルールは誰が決めた? と問いかけているところも、深いなあと思う。
臣司のお話がいいなあ。四十六歳と十七歳女子高生。最後にさちみが乗り込んでいくところは、やっぱり青さっていいなあと思う。世界に問いかけるのは何故かいつも未成年なのだ、と思ったりする。
新装版の徳間文庫のものも貼っておく。


中学二年の爽子は、偶然みつけた素敵な洋館「十一月荘」で、転校前の数週間を家族と離れて過ごすことになる。「十一月荘」の個性あふれる住人たちとの豊かな日常の中で、爽子は毎日の出来事を自分の物語に変えて綴り始めた。のんびりしているようで、密度の濃い時間。「十一月にはきっといいことがある」——不安な心を物語で鎮めながら、爽子はこれから生きて行く世界に明るい希望を感じ始めていた。(裏表紙より)
再読。最初に読んだ時、あまりの素敵さにいつか絶対もう一度読みたいと思っていたのですが、今年ようやく読めました。読み始めたのは十一月だったのですが、読み終わる頃には十二月になっていました。
学生は喫茶店に入ってはいけないというようなことがあったので、書かれている年代は昭和くらいだと思うのですが、爽子の瑞々しい感覚がまったく古臭くなくて、読んでいると、以前よりずっと綺麗に、すうっと馴染んで、こういう目を持った登場人物に会えることをずっと望んでいたように思いました。母親との小さなすれ違いを感じていたり、友達に対して後ろめたいと感じることがあったり、年頃の少女たちを一歩引いたところで見ていることなど、本当に、たまらなく愛おしいと思う。少女というものを、この作品では瑞々しい、しなやかな植物のように描いているよなあと思ったのでした。文学少女というところにきゅんきゅんきていただけかもしれないけれど。
登場人物は、ほとんど女性ばかり出てきます。様々な人々のおしゃべりや、関わり合いが心地よくて、以前より、ずっとずっと大好きな一冊になりました。
オススメです。

両親をなくしたエリカは、唯一の身寄りの祖母に会うため父の故郷イギリスへやってきた。だが日本人を母に持ち地主階級(ジェントリ)の自覚なく育ったエリカは、孫と認められず祖母に会わせてもらえない。途方にくれた彼女は、祖母の知り合いが校長をつとめる寄宿制の女子校を訪れ、貴婦人(レディ)となるための教育を受けることになる。決意を新たにするエリカだったが、そこは男子校が隣接する少し変わった学校で!?(カバー折り返しより)
面白かったー! 主人公エリカの真っすぐなところはとても好感を持てる。物怖じしないところがかわいい。頑張る女の子がきらきらしてる。新しい女性像が生まれつつある時代の、眩しいところを見た気がしました。寄宿学校の色々や、家柄、女の子の仲良しや、男の子たちのプライドなんかも、すごくきゅんきゅんでした。
結末にはもう、家柄の良い家の当主に認められる、というところの美味しいところがぎゅっぎゅっと詰まっていて、とてもいいお話を読んだと思いました。
おすすめされた本だったのでした。面白かったです! 続きも揃えるぞー!

最愛のいとこどの(ゲルトルード)の結婚にショックを受けるアイオリアのもとへ、さらなる衝撃報告がもたらされる。第一寵妃のオクタヴィアンが後宮を“卒業”するというのだ。彼女の引退をなんとしてでも阻止したいアイオリアに、オクタヴィアンは交換条件を申し出た。曰く、「《花園》に殿方を入れてくださいませ」……。
後世に遠征王と名高いパルメニア王アイオリアI世(注:♀)の後宮《花園》をめぐる、必笑ファンタスティック・ストーリー!(裏表紙より)
『運命よ〜』の前ぐらい、後宮が解体されていく少し前のお話。いきなりとてもファンタジーになっていましたが、とても楽しかった。扉を開けた向こう側、というのはとても好きです。この世界、すごく深くて果てがないのだなあ。しかしそろそろ過去の人の名前とどういうことをしたのかというのが一致しなくなってきたので、まとめが欲しい。
番外編という位置づけでも、大きなお話の一部なのだというのが、最後のゲルトルードとソフィーの会話で分かって、幸せな気持ちで本を閉じた。こういう、回想とか、邂逅とか、時間を越えて何かを思うというのに弱いんだ。
遠征王シリーズ、とても面白かったです!

敵国ホークランドの地で、ミルザ将軍のもとに囚われてしまった女王アイオリア。一方パルメニアでは、大公ゲルトルードの命をうけた銀騎士ナリスが、主君奪還のために動き始めていた。
「……わたしはただ、あなたを守る剣でいたかった」
「そんなふうにおまえに側にいてほしいわけじゃない!」
消えゆく命、ほどける糸、そして闇の中で見失い、光の中でふたたび手に入れるものとは?——遠征王、その最後の遠征!(裏表紙より)
コメディでライトな陰謀ものだった一巻がここまでシリアスになろうとは! しかしどっちも好みです。すごいシリーズだったなあ(もう一巻あるけれど)。登場人物たちがそれぞれ闇を抱えながら、大切な光をそれぞれの胸に宿し……その結末。
光を手にしたかったというのは共通してあるだろうけれど、女性陣は母親になりたかったのだなあと思いました。子ども、母親、血縁あるいは血というキーワードがものすごい因縁をまとってシリーズで語られているような気がして、ぞくぞくとしました。特にベルディナッドのくだりは恐ろしすぎた。人間はどこに立っているのかというベルディナッドの叫びが。
「自分の作り出した闇の上だ。おまえたちは、生きている以上、光の上を一歩も歩くことはできぬ!」

歴史はあるがお金がない弱小国ボッカサリアの少年王に、後ろ盾めあてで求婚されてしまったパルメニア女王アイオリア。
だが訪問先で、いまや敵国ホークランドの将軍となったかつての夫、“蠍の”ミルザと再会して……!?
「約束を覚えていますか? わたしのプリマジーナ(いとしいひと)」
自分のために王位を捨てろというミルザ。さしのべられた手にあるのは、愛か憎悪か。——遠征王、その治世最大の危機!(裏表紙より)
中盤からの展開がそれまでと違ってこわい!(いい意味で) 遠征王シリーズは、誰かしらものすごい暗闇を抱えてるなあ……。それが面白いんだけれど、救われることはあるんだろうか。刻々と変化していく世界と、刻まれていく歴史が、とてつもなくおそろしいものに思える。
ボッカサリアのルキウスの見たアイオリアが、多分一番正確なアイオリア像なんだろう。色々な顔を持つアイオリア、甘え上手のひと。そのアイオリアがルキウスを導いているところは、本当に正しい王という感じなのに。周囲と己がそれを許さないというのは、なんだかやるせない。

「騒げば命がないと思え」
首もとに突きつけられた短剣。
鳴は言葉を失った。向けられた切っ先よりも冷ややかな、颯音の瞳に愕然としながら——。
身に宿る力が恐れられない戸谷ノ庄で、しばしの安息の日々を送る鳴と颯音。だが、異能集団「狐」を裏切った颯音に対し、組織から刺客が放たれる。二人で生きると誓った言葉を真実にするため戦いに赴く颯音を、鳴は送り出す。
信じているから。
共に生きると約束したから。
しかし、戦いを終えた颯音は、鳴に関する記憶の全てを失っていた——。
時は五百年の昔、戦乱の世。なくしてしまった大切な想いを取り戻すための戦いが、始まった。(カバー折り返しより)
ここまで読んで、常々二人には安穏な日々が訪れないように思えていたのだけれど、最後の選択を見て、一所に落ち着けない宿命があるのだなあとひしひしと感じた。二人がそれを打ち壊せる日はくるんだろうか。
いつも交代で語られる物語なのですが、今回は鳴の視点での話が多かったせいか、颯音の思い悩むところが少なかったためかもですが、颯音が非常にかっこよく見えたのでした……。鳴も懸命な戦う少女だったし。一方で幼女に妬くのは恋する乙女の宿命だ……! と妙な電波を受信してました。嫉妬する一生懸命な女の子かわいいです。
戸谷ノ庄での物語が一段落し、次なる舞台へ向かう模様。続きも読もう。