読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
行方不明の父親を捜すため、倉西美波はアルバイトに励んでいる。そのバイト先で高額の借金を負うハメになり困惑していたところ、「寝ているだけで一晩五千円」というバイトが舞い込んだ。喜び勇んで引き受けたら殺人事件に巻き込まれて……。怖がりだけど、一途で健気な美波が奮闘する、ライトな本格ミステリ。期待のシリーズ第一弾! 短編「たった、二十九分の誘拐」も収録。(裏表紙より)
元々表紙のイラストが好きで気になっていたのですが、ようやく読みました。高校生が主人公のライトノベル本格ミステリ。主人公美波は普通の女子高生だけれど、彼女の親友は、警部が父親の江戸前口調の美少女と、政界財界に顔が利く元華族のお嬢様、探偵役は美波と犬猿の仲である引きこもり大学生と、設定が全面的にライトノベル。美波がすぐ泣くところがなんだかなあと思いはしたけれど、これが高校生の普通の反応だよなあとも思う。
「密室」という言葉に複数の意味を持たせたところが、最後にほろりとしました。
短編の「たった、二十九分の誘拐」がすごく好きだー。死が絡まない日常の謎ものがやっぱり好きなんだなあと思う。オチも好き。
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風花舞う冬景色の中、鳴は立ちつくした。
「……燃えてしまっている……」
目の前に広がる焼け野原。震えるその細い背を、颯音は無言で抱きすくめた。
時は戦国乱世。異能集団「狐」との最後の戦いを決意した鳴と颯音は、全ての決着をつけるために戸谷ノ庄を旅立とうとするその矢先、故郷・美駒の窮地を知る。敵は、かねてより美駒を狙う隣国・円岡。狙いは、嫡男のみに伝えられる一子相伝の美駒の財。幼い弟・常磐が危ないと覚った鳴は、美駒を救うために発つ。そして目にした、変わり果てたかつての故郷の姿——。
戦により困窮した地、囚われた弟・常磐。焼け跡にこだまする、“業多姫復活”を願う民の叫び。
春まだ遠い、霜月。始まりの地で待つのは、懐かしき人との再会か、新たな戦いの呼び声か——。(カバー折り返しより)
業多姫四巻。異能集団「狐」の首領・青津野との決着を付けるため、旅立った鳴と颯音は、二人が出会った美駒の国に戻ってくる。
甘ったれだった弟の常磐が段々颯音に懐いていくのがかわいいな。年下の面倒を見る颯音も、ちょっとぎこちなかったけれどなんだか見ていて和む。鳴と颯音のなかなか合流できないすれ違いはこの時代設定ならではなんだろうけれど、でもちょっとじりじりしました。
弾く、という力は、鳴の中の問題なのかとちょっと思う。香椎との関係は、思い通りにしようとする母親と、自己を得て反発する娘の関係だと感じて、これまでありふれた場所にいなかった鳴には、大変だけれど彼女が得られた「普通」のようで、ちょっと切なくなる。
お話としてはちょっと間に挟むようなお話だった印象です。「狐」の影が見えるけれど、それぞれ特に狙われるわけでもなく。鳴の中で、置いてきた美駒のすべてとの決着をつける巻だったのだな。
ゆるしてちょうだい、だってあたし十八歳。発情期なんでございます…。第一回「女による女のためのR-18文学賞」で読者賞受賞した「青空チェリー」。戦時下、「教授」と「ダーリン」の間で揺れる心を描いた「ハニィ、空が灼けているよ。」。そして文庫書き下ろし「誓いじゃないけど僕は思った」。明るい顔して泣きそな気持ちがせつない、女の子のための三つのストーリー。(裏表紙より)
私が読んだのは文庫版。単行本版から、「青空チェリー」以外の作品はかなり改訂してあるそうです。好きだなあ、豊島さんの作品。ちょっとふてくされているような、すましているような、けれど折れやすくて、破裂しそうな感情をめいっぱいに抱えた人たちが主人公だからなのかな。こういうのを、少年少女というのかもしれない。
一番好きなのは、収録作で一番長い「ハニィ、空が灼けているよ。」。主人公の頭の良さや、結末にちょっと物足りなさを感じるけれど、たった二十一歳の女性は、やっぱりまだ揺れ動く少女なのだなあと思う。「教授」と「ダーリン」に抱く感情はそれぞれ違うけれど、このどちらを選ぶかが、子どもと大人の境目なのかもしれないな。
「本当の私」なんて探してもいません。みっともなくもがいてる日々こそが、振り返れば青春なんです——。「底辺」な生活から脱出するため家出した高校二年の春。盛り下がりまくりの地味な学祭。「下宿内恋愛禁止」の厳粛なる掟。保健室の常連たち。出席時数が足りなくて、皆から遅れた一人きりの卒業式。最注目の作家によるホロ苦青春エッセイ。(裏表紙より)
分かる分かる! というエッセイでした。そうだから、胸が痛くてたまらなかった。これは封印したい過去にぐさぐさ刺さる……。何が悪いでもなかったけれど、自分がそこに馴染んでいない浮遊感や、人の反応が怖かったり、「ユニット」があったり。それらすべてが大嫌いで、世界が嫌いで、自分が嫌いで。読んでいて笑えるんだけれど、すごく苦しい。これは私なんじゃないかと思ったりする。
しかし豊島さんがすごかったのは、家出したことだな! 自殺するでもなく、家出を選んだのはすごい。色々ぼろはあったけれど、出て行こうとしたのはかっこいいなと思いました。
イギリスに来て半年。寄宿学校生活に慣れてきたエリカは、ガイ・フォークス・デイの祭りに参加したいと思いつき、外出許可を得るため、万聖節のバザーへの出品を計画する。しかし協力をたのんだ男子寮の監督生ジェラルドはいい顔をしない。おりしもエリカは、男嫌いの新入生キャロルが起こす騒動に巻き込まれる。グレイ校長は、これらの解決策としてエリカを女子寮の監督生に指名するが!?(カバー折り返しより)
男子校と女子校が隣り合った寄宿学校を舞台にした、準男爵の血を引くイギリスと日本のハーフの少女エリカと、レディズ・カレッジの友人たち、男子校の生徒たちの学園もの。一巻と変わらず乙女できゅんきゅんしました……! かなりときめきのシリーズです。「カエルはいつか王子様になる?」って! かわいすぎて! もう!
前回は三人だったカレッジにも、わけありな新入生が三人入ってきた。女子同士身分差の諍いがあり、男嫌いの下級生がいたりと、少女たちの関係性も大変おいしい。男子は男子で、エリカに対するロジャーとジェラルドの位置も一巻に比べてはっきりしています。ジェラルドが本当に不器用な俺様でかわいいな!
チャーリーが住んでいる町に、チョコレート工場がある。
世界一広大で、世界一有名なワンカの工場。
働く人たちの姿をだれも見たことがない、ナゾの工場!
そこへ、五人の子供たちが招待されることになった。
招待状の入ったチョコレートは、世界にたったの五枚。
大騒ぎになったけれど、チャーリーには望みがない。
貧しいチャーリーがチョコレートを口にするのは、
一年に一度、誕生日に、一枚だけなのだから……。(カバー折り返しより)
映画の方の印象が強すぎて、脳内ビジュアルがハリウッドスターだけれど、映画は結構忠実に作ってあったんだなあと思いました。
貧乏なチャーリーが誕生日のチョコレート一枚だけというのもどきどきしましたが、おじいちゃんのへそくりでもだめ、でも空腹に耐えかねて拾ったお金で買ったら、見事招待状を引き当てた。拾った、というところがちょっと「ん?」と思いましたが、父親の働いていた工場が閉鎖し、食べるものにも困っていたのだから仕方ないのかな。この辺り、拾ったお金の行く末は外国ではどうなんだろう。日本と価値観が違うのかな。
ワンカの工場はすごい。楽しいなあ! 子どもたちが次々と懲らしめられていくところが気分がいい。訳がものすごく素敵で、ウンパッパ・ルンパッパの歌の詞が、韻を踏んでいて面白い。
チャーリーの大逆転も楽しかった一冊でした。
携帯電話の数だけ自分を使い分けている孤独な少女、さちみ。
職場でお局となりつつ、ロリィタ趣味を隠し続ける29歳OL、リョウコ。
子育てを終え、もはや母親でも妻でもなくなった女、史緒。
結婚できないまま人生の終盤を迎えようとしているサラリーマン、臣司。
そして、定年になる横暴な夫に復讐を誓う妻、初恵。
心に抱えた秘密をカミングアウトするとき、人はどう変わるのか?
人気作家、高殿 円が現代ものに初挑戦、注目の清涼ストーリー。(裏表紙より)
私が読んだのは新装版じゃなくて、ヴィレッジブックスの方。
世界観人物リンクの連作短編。それぞれのお話が別のお話に繋がって、一番最後の章で「カミングアウト」するストーリー。面白かったー。それだけじゃなくて、みんな何かしら秘密を抱えている、その秘密は本当に秘密にすべきことなのか、そのルールは誰が決めた? と問いかけているところも、深いなあと思う。
臣司のお話がいいなあ。四十六歳と十七歳女子高生。最後にさちみが乗り込んでいくところは、やっぱり青さっていいなあと思う。世界に問いかけるのは何故かいつも未成年なのだ、と思ったりする。
新装版の徳間文庫のものも貼っておく。
中学二年の爽子は、偶然みつけた素敵な洋館「十一月荘」で、転校前の数週間を家族と離れて過ごすことになる。「十一月荘」の個性あふれる住人たちとの豊かな日常の中で、爽子は毎日の出来事を自分の物語に変えて綴り始めた。のんびりしているようで、密度の濃い時間。「十一月にはきっといいことがある」——不安な心を物語で鎮めながら、爽子はこれから生きて行く世界に明るい希望を感じ始めていた。(裏表紙より)
再読。最初に読んだ時、あまりの素敵さにいつか絶対もう一度読みたいと思っていたのですが、今年ようやく読めました。読み始めたのは十一月だったのですが、読み終わる頃には十二月になっていました。
学生は喫茶店に入ってはいけないというようなことがあったので、書かれている年代は昭和くらいだと思うのですが、爽子の瑞々しい感覚がまったく古臭くなくて、読んでいると、以前よりずっと綺麗に、すうっと馴染んで、こういう目を持った登場人物に会えることをずっと望んでいたように思いました。母親との小さなすれ違いを感じていたり、友達に対して後ろめたいと感じることがあったり、年頃の少女たちを一歩引いたところで見ていることなど、本当に、たまらなく愛おしいと思う。少女というものを、この作品では瑞々しい、しなやかな植物のように描いているよなあと思ったのでした。文学少女というところにきゅんきゅんきていただけかもしれないけれど。
登場人物は、ほとんど女性ばかり出てきます。様々な人々のおしゃべりや、関わり合いが心地よくて、以前より、ずっとずっと大好きな一冊になりました。
オススメです。
両親をなくしたエリカは、唯一の身寄りの祖母に会うため父の故郷イギリスへやってきた。だが日本人を母に持ち地主階級(ジェントリ)の自覚なく育ったエリカは、孫と認められず祖母に会わせてもらえない。途方にくれた彼女は、祖母の知り合いが校長をつとめる寄宿制の女子校を訪れ、貴婦人(レディ)となるための教育を受けることになる。決意を新たにするエリカだったが、そこは男子校が隣接する少し変わった学校で!?(カバー折り返しより)
面白かったー! 主人公エリカの真っすぐなところはとても好感を持てる。物怖じしないところがかわいい。頑張る女の子がきらきらしてる。新しい女性像が生まれつつある時代の、眩しいところを見た気がしました。寄宿学校の色々や、家柄、女の子の仲良しや、男の子たちのプライドなんかも、すごくきゅんきゅんでした。
結末にはもう、家柄の良い家の当主に認められる、というところの美味しいところがぎゅっぎゅっと詰まっていて、とてもいいお話を読んだと思いました。
おすすめされた本だったのでした。面白かったです! 続きも揃えるぞー!