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読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
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小夜しぐれ (みをつくし料理帖)
季節が春から夏へと移ろい始める如月のある日。日本橋伊勢屋の美緒がつる家を訪れ、澪の顔を見るなり泣き始めた。美緒の話によると、伊勢屋の主・九兵衛が美緒に婿をとらせるために縁談を進めているというのだ。それは、美緒が恋心を寄せる医師、源斉との縁談ではないらしい。果たして、美緒の縁談の相手とは!?——(第三話『小夜しぐれ』)。表題作の他、つる家の主・種市と亡き娘おつるの過去が明かされる『迷い蟹』、『夢宵桜』、『嘉祥』の全四話を収録。恋の行方も大きな展開を見せる、書き下ろし大好評シリーズ第五弾!!(裏表紙より)

様々な出会いも形を変える五巻目。同じく叶わぬ恋をしている美緒の恋の行方は。身分差という言葉を強く感じる時代です。従順とは違う、生きていく覚悟というのか。手に手を取って逃げたいという気持ちを固める強さもあるけれど、しっかりと地に足をつけていく生き方もあるよなと思う。
種市とおつるの悲しい過去もあり、澪が再び迷うところもあり。何よりよかったのは、謎の浪人小松原のことが分かる『嘉祥』! そんな風にして生活してるのか! という驚きと、いい家族に恵まれている嬉しさと。妹の早帆さんが何かしてくれそうでわくわく。
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今朝の春―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-4 時代小説文庫)
月に三度の『三方よしの日』、つる家では澪と助っ人の又次が作る料理が評判を呼び、繁盛していた。そんなある日、伊勢屋の美緒に大奥奉公の話が持ち上がり、澪は包丁使いの指南役を任されて——(第一話『花嫁御寮』)。戯作者清右衛門が吉原のあさひ太夫を題材に戯作を書くことになった。少しずつ明らかになってゆくあさひ太夫こと野江の過去とは——(第二話『友待つ雪』)。おりょうの旦那伊左三に浮気の疑惑が!? つる家の面々を巻き込んだ事の真相とは——(第三話『寒紅』)。登龍楼との料理の競い合いを行うこととなったつる家。澪が生み出す渾身の料理は——(第四話『今朝の春』)。全四話を収録した大好評シリーズ第四弾!!(裏表紙より)

恋心を自覚した澪。小松原への思いを抱えたまま、彼の本当の姿の一部分を知ることに。もう切ない! 身分差というのはじれじれでたまらないなあ! すごく辛かったのに「誇りに思うたことはない」でどっと涙があふれました。澪の、料理人としての真っ直ぐさは、どんな身分であっても届くのだと思うと。「今朝の春」で、澪が培ってきた繋がりが集まってくるのは、やっぱり感動でした。
あさひ太夫のことも徐々に分かってきたり、澪が目指すべきものは何なのかという手がかりらしきものも見えたりと、今回も面白かった。

「勝つことのみに拘っていた者が敗れたなら、それまでの精進は当人にとっての無駄。ただ無心に精進を重ねて敗れたならば、その精進は己の糧となる。本来、精進はひとの糧となるものだが、欲がその本質を狂わせてしまうのだろう」
上流階級 富久丸(ふくまる)百貨店外商部
凄腕のバイヤーとしての華々しい経歴の持ち主である鮫島静緒は、高身長に、名前にふさわしい強面の三十代。富久丸百貨店の外商部に、初の女性外商として配属される。仕事相手はいわゆる”上流階級”。百貨店とは、を考える静緒の仕事は、そう簡単に成立するものではなくて……。

百貨店という、お客として見れば美しい場所での、その美しさが成立するために奔走している人の話、だったでしょうか。百貨店というブランドを守る人たちの努力には、本当に頭が下がる、という気持ちで読みました。
主人公の静緒がしっかりしたキャリアの持ち主のせいか、話としてあまりアップダウンがないので、ちょっとはらはらしつつも、心配のし過ぎで終わってよかった。しかし、特賓会のシーンはすかっとした! 気持ちよかった。デキる女性の話はこういうところが面白いよなー!
ロマンスを期待するところで、引っ越しのシーンが出たのでもしや!? と思ったら、まさかの桝家くん……桝家くん!! 可愛いな! 乙女男子だな!
想い雲―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)
土用の入りが近づき、澪は暑気払いに出す料理の献立に頭を悩ませていた。そんなある日、戯作者・清右衛門が版元の坂村堂を連れ立って「つる家」を訪れる。澪の料理に感心した食道楽の坂村堂は、自らが雇い入れている上方料理人に是非この味を覚えさせたいと請う。翌日、さっそく現れた坂村堂の料理人はなんと、行方知れずとなっている、天満一兆庵の若旦那・佐兵衛と共に働いていた富三だったのだ。澪と芳は佐兵衛の行方を富三に聞くが、彼の口から語られたのは耳を疑うような話だった——。書き下ろしで贈る、大好評「みをつくし料理帖」シリーズ、待望の第三弾!(裏表紙より)

あっという間に一年が経とうとする頃、天満一兆庵の若旦那に繋がる手がかりが。しかしそれは、若旦那が吉原遊びにのめり込み、その上、遊女を手にかけたという驚くべき話。しかし、澪も芳もあの若旦那が、と思い、けれど否定しきれずにいる。
澪の周りにたくさんの人の輪が出来たなあというのを実感する三巻でした。本当に困った時、いろんな人が集まって助けてくれるのは、澪が身を尽くして料理を作り、喜んでもらいたいと願うからなんだろう。頼りにしてしまう自分を縛めるところもあったりして、澪がしゃんと背筋を伸ばして、成長していくところがうかがえて嬉しいです。
小松原さまの素性もちょっと分かってきたような、な感じなので、二人の仲がどうなるのか、どきどきします。
今回は風邪っぴきの絶食後に読んでいたせいか、美味しそうで仕方がありませんでした。梅土佐豆腐とふわり菊花雪が食べたい!
花散らしの雨 みをつくし料理帖
元飯田町に新しく暖簾を掲げた「つる家」では、ふきという少女を下足番として雇い入れた。早くにふた親を亡くしたふきを、自らの境遇と重ね合わせ信頼を寄せていく澪。だが、丁度同じ頃、神田須田町の登龍楼で、澪の創作したはずの料理と全く同じものが「つる家」よりも先に供されているという。はじめは偶然とやり過ごすも、さらに考案した料理も先を越されてしまう。度重なる偶然に不安を感じた澪はある日、ふきの不審な行動を目撃してしまい——。書き下ろしで贈る、大好評「みをつくし料理帖」シリーズ、待望の第二弾!(裏表紙より)

新しい店を得て、嫌がらせを受けながらも着々と店を切り盛りし、名を上げていく澪。しかし、間者や、病や、大事な幼馴染みの負傷などが起こって。ただではいかない運命の持ち主だと分かっていても、はらはらするし、澪が笑ってくれたら心がほっとする。段々と澪のことが好きになってくるシリーズだと思います。
登場人物も少しずつ増えて、恋の予感もあったり……。秘めなければならない、という澪のいじらしいところに、もうハンカチを握りしめて身悶えしてしまいます。もだもだ!
八朔の雪―みをつくし料理帖 (ハルキ文庫 た 19-1 時代小説文庫)
神田御台所町で江戸の人々には馴染みの薄い上方料理を出す「つる家」。店を任され、調理場で腕を振るう澪は、故郷の大坂で、少女の頃に水害で両親を失い、天涯孤独の身であった。大坂と江戸の味の違いに戸惑いながらも、天性の味覚と負けん気で、日々研鑽を重ねる澪。しかし、そんなある日、彼女の腕を妬み、名料理屋「登龍楼」が非道な妨害をしかけてきたが……。料理だけが自分の仕合わせへの道筋と定めた澪の奮闘と、それを囲む人々の人情が織りなす、連作時代小説の傑作ここに誕生!(裏表紙より)

『銀二貫』が面白かったので、評判のみをつくし料理帖シリーズも読み始めました。最初の、まだ戸惑っている澪が、ゆっくりと人に、町に馴染んで、繋がりを得ていくところがとても染みて、面白い。ある瞬間の繋がりに、あっとなって、うるっとしてしまうのは、人情が色濃く描かれる時代小説の醍醐味だなと思います。ひとつひとつの話がまとまりよく進んでいくので、ふーんと思っていたら、最後の話で泣かせにかかられて!
実は酒粕汁も心太もあまり好きじゃないので、美味しそうに感じられなかったのだけが残念です。偏食な自分がちょっと恨めしかった。
図書館の魔女(下)
「ことば」を身につけゆくキリヒトと、「ことば」を操る図書館の魔女・マツリカ。二人だけの秘密が、互いの距離を近付けていく。だが、一方で、周囲の強国との緊張関係は高まるばかり。発言力を持つがゆえに、一ノ谷と図書館は国内外から牽制され、マツリカを狙う刺客まで遣わされる。迫る危険と渦巻く陰謀に、彼らはどう立ち向かうのか。(帯より)

拍手!! 41字×18行×800ページの下巻。長かった。でもちゃんと終わったー……!
下巻の内容は、マツリカが片腕の自由つまり声を奪われ、一の谷とニザマとアルデシュという三つの強国が戦争回避のために動く、大きな巻。
図書館の魔女の本領発揮で、知謀知略を尽くすマツリカがかっこいい。世界観の創り込みと文章と展開のせいでそうとは感じ取れないようになっていますが、マツリカが最強過ぎる。だからこそ、腕が使えなくなってキリヒトに縋るシーンは苦しく悲しく、そして可愛らしかったりするのです。
そうなんです、大人たちの陰謀が渦巻いている中で、マツリカとキリヒトの可愛らしさ!! 少年少女!! ところどころこいつらかわいいな!? というところがあったのですが、最後に大サービスしてくれて笑み崩れました。でも最後だから切ないんだ……。演出が憎すぎて、でも少年少女いい……と胸がきゅうっとなった。
すべてのことが終わったわけではなく、ここから始まる物語です。キリヒトという少年がマツリカに出会ったことで己の未来を決めていこうとするところは、マツリカが狂ったような世界に相対しなければならないと感じ決意を固めていくところも合わせて、王道なボーイミーツガールかも……と思いました。二人がまだ若いというのがいい。これからどんな困難があっても、二人が繋がっていようとする清々しさが感じられる。
マツリカ自身は何も変わっていないように見えて、最後の最後で涙を見せてくれた。キリヒトは、出会うべきものと出会い、そして旅立った。いつか帰ってくるという自分自身の望みを抱いて。丁寧に描かれていた上巻の、図書館、高い塔に至る道を今度は出て行く方向に辿って行くところが、素晴らしかった。山深いところから、今度は海に出て行く、その変化が展望となって感じられて、すごかった。
いい本でした。面白かったー!!
銀二貫銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)
大坂天満の寒天問屋、井川屋の主・和助は、仇討ちで父を亡くした鶴之輔を銀二貫で救う。大火で消失した天満宮再建のために、工面した大金だった。引きとられた少年は松吉と改め、商人としての厳しい躾と生活に耐えていく。番頭善次郎、丁稚梅吉、評判の料理人嘉平とその愛娘真帆ら人情厚い人々に支えられ、松吉は新たな寒天作りを志すが、その矢先またもや大火が大坂の町を焼き払い、真帆は顔半面に火傷を負い姿を消す……………(帯より)

読んだのはノベルス版。今は文庫版が出ています。
みをつくしシリーズではなくこの作品から入るひねくれ者読者ですどうも! 武士の子どもを商人が育てる人情ものと聞いて読むことにしました。
お年寄りと少年がどんな風にみせてくれるのかなと思ったら、いいおじいちゃんと孫の雰囲気で、かつ主人と奉公人の厳しさもあって、とても面白かった。いろんな人がいきいきとして、絡み合って、関係して、だからこそ苦難も幸せも増して感じられる。大火の騒ぎを聞くざわざわとした不安、その後のやるせなさ。冬と雪の寒さ。それが、梅の花がほころんでいるラストシーンへ繋がっていく、幸せな結末はすごいとしかいいようがなかった。最後の台詞が、大坂の商人を現していて、粋でしゃれてて、かつ皮肉もあって、涙がぼろっと出る。いい話だった。面白かった!
図書館の魔女(上)
鍛冶の里に生まれ育った少年キリヒトは、王宮の命により、史上最古の図書館に暮らす「高い塔の魔女」マツリカに仕えることになる。古今の書物を繙き、数多の言語を操って策を巡らせるがゆえ、「魔女」と恐れられる彼女は、自分の声をもたないうら若き少女だった——。(帯より)

この一冊だけで650ページ以上の長編。こんな風に分厚いのでとりあえる上巻までの感想を書く。メフィスト賞と聞いていたのでミステリーかと思っていたら、言語と文化と少年少女のファンタジーでびっくりした。
政治的思惑と独特の文化に対する価値観について語られながら、物語が進行する。上巻だけでは結局どうなるのかまだ見えないなあ。人間として他者に対する心が少しだけ欠けた少女がどうなるのかも、秘密を抱えた少年がどのように己の生き方を見出すのかも、この巻の最後になってようやく疑問を提示されたという感じで、どう結末するのか分からない不思議な印象の上巻でした。
とにかく世界観と文化が作り込まれていてそれを頭に入れるのが難しい! 作者の高田さんは言語学をやられているということでも、なんかもう頭の作りが違う! という書き込み具合。文章も美しく表現も多様で、読んでいるとぶわーっと世界が広がっていく感覚がすごい。繰り返し読みたい一冊だなあ。文章を噛み締めて味が変わるってこんなのかもしれない。
サクラ咲く (BOOK WITH YOU)
若美谷中学1年5組の塚原マチは、自分の意見を主張できない、頼み事を断れない、そんな性格を直したいと思っている。ある日、図書室で本をめくっていると、一枚の紙が滑り落ちた。そこには、丁寧な文字で『サクラチル』と書かれていた。貸出票には1年5組と書いて、消された跡がある。書いたのは、クラスメイト? その後も何度か同じようなメッセージを見つけたマチは、勇気を振り絞って、返事を書いた。困っているはずの誰かのために——(「サクラ咲く」他2編収録)(カバー折り返しより)

中学生から、と書いてあるちょっと児童書っぽい雰囲気の辻村作品。いつものぴりっとした刺々しさはなく、すいすいと読める話が三編収録。「約束の場所、約束の時間」「サクラ咲く」「世界で一番美しい宝石」これらにはすべてどこかに繋がりがあるというのが、いつも通りで嬉しかったです。
SF、真面目で気弱な中学生が大きく成長する友情もの、そして青春ものと、心にすとんと落ちてくるような素敵な中編ばかりで、やっぱり好きだなあ……と思いました。「サクラ咲く」は長編になるともっとずっと痛い話になるんだろうけれど、春が来る、花が咲く、生き生きとした、未来への展望が感じられるいい話で、すごく好きです。
そして、みんなちゃんと大人になって、友人との繋がりを持ったままなのがすごく嬉しかった。
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Author:月子
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