読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

あなたは、敵なの——? 名前以外の記憶がなく、身を寄せる水戯団で孤立しがちな玲月。ある日、一人の凛々しい青年・星寿と出会う。彼は玲月を見るなり、愛しげに抱き締めてきて!? 意地悪で優しくて、知りたい事は何も教えてくれない星寿。なのに時々、切なげに見つめてくる彼に玲月の胸は苦しくなる。星寿が好き、そう自覚した矢先、事件が起きて!? 玲月に知らされた驚きの真実とは? トキメキの中華風ラブファンタジー!(裏表紙より)
水戯団に拾われた記憶喪失の少女は、記憶がないために表情までもなくし、一般常識もおぼつかない。しかし水戯の腕は他に引けを取らない。彼女が持つのは名前だけ。そんな中で一人の青年に出会う。中華風ラブと言いながら、旅芸人ものの要素が強いなと思いました。女だらけの演劇集団な上、薔薇様っぽい人たち(水戯団の花形である、男役と女役の二人)が出てきて面白かった。女の子が一生懸命に周りと関わって、その周りが暖かく受け入れてくれるという話はほっこりする! かわいいよ女の子!
途中から「えっまさかそっちの方向?」という種明かしが出てきますが、個人的には玲月には水戯団で長くがんばってもらいたいです。
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英国児童文学の、その舞台となった場所を巡る旅行記。写真が多い、薄い本です。いわゆる聖地巡りというやつでしょうか。作品は「ハリー・ポッター」「指輪物語」「クリスマス・キャロル」「不思議の国のアリス」「ピーター・パン」「くまのプーさん」「ピーターラビット」「アーサー王伝説」。アーサー王だけがちょっと児童文学ではないですが、英国に親しんだ話ということで入っているのかもしれないですね。
カラー写真がいい感じでしたが、解説がちょっと読みづらかったです。でも、英国の町並みってとてもいいなあ! 城跡はロマンです。崩れた壁、周りに花が咲いているのがとても、いい。あとパブとか、建物が好きだな! と思いながら読みました。

よしながふみさんとマンガに造詣の深い方々の対談集。対談相手は、やまだないと×福田里香、三浦しをん、こだか和麻、羽海野チカ、志村貴子、萩尾望都。
面白かった! マンガについて語っているのもそうだけれど、オタクについて、BLについて、作家活動についてなど、オタクにとっては面白い読み物でした。
BL事情、どうしてBLじゃないといけないのか、というような話がすごく面白かった。やおいっていうのは関係性なのかなあと思った。百合であってもやおいの関係であるという指摘がすごく納得した。一方が好きなんだけど一方は特にそうでもなくて、お互いの才能を認め合って相手が困難に陥ったときに手助けする関係なんだけれど、男女なんだけれど、才能が拮抗している。やおいに近い関係である。という。のだめと千秋の関係もやおいなんだ、とか、トリックの山田と上田とか。恋愛関係にないんだけど、という。そうかーそういうくくりなのかーとすごく興味深かった。
この本では、特に羽海野チカさんとの対談のところが好きだな! なんだろう、創作する人間としてお二人の話はすごくすごく……きゅんとしたというか、大切な会話だと思う。お互いを尊敬し合ってて、相手の作品や相手について語れるというのはすごく大事なことだなとか、すてきだなと思いました。

都内の2LDKマンションに暮らす男女四人の若者達。「上辺だけの付き合い? 私にはそれくらいが丁度いい」。それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め……。発売直後から各紙誌の絶賛を浴びた、第15回山本周五郎賞受賞作。(裏表紙より)
第1章の良介の章や第2章の琴美の章を読んでいるときは、「うーん?」と思ったんだけれど、後半になるにつれて面白くなってびっくりした。私の中の面白い本の基準に「自分が楽しいかどうか」というものがあって、登場人物の怠惰な感じが最初は空気に合わなかったんだと思う。でも、読んでいくうちに、繰り返し描かれる「自分が知っているあの子は、自分の知っている一部分でしかない」ということが、面白くなってきました。一人称で進むので、とある人物をこうだと思っている語り手から、とある人物が語り手になったときに、さっきまで別の人に語られていたとある人物というのは、一部分や側面でしかないのだ、という。
最終章はびっくりしました。急にみんなが調和をとった気がして、ぞっとするような。乱暴に「あなたをゆるします」というのを押し付けられたような気がして、びっくりした。ゆるす、といっても、黙ってみないふりをするような、そんな居心地の悪さがあって、もぞもぞしました。最後になって、それまでの怠惰な雰囲気から、緊張で息を詰めていました。

祖母と叔父とともに暮らすちえ子は両親を知らない。牧場で暮らした童女時代。S市の女学校で過ごす少女時代。幼馴染みの死や、父への疑い、女学校で出会ったお姉様の存在を経て、ちえ子は本当の母に出会う。
初めて読んだ吉屋信子作品。とてもロマンチックでした。流れるような文体は口に出して読んでみたいくらいだし、お話は定型的に感じられてもとても少女的。ちえ子にはかなりの苦労があったはずなのに、まるで誰かに語って聞かせるような心優しい語り口に、ほっと綻んでしまう。女性がたおやかで清らかなんですよね。母と呼べと言われた人には多く筆を割かず、あくまで女性たちは清らかに描くという感じ。
これをリアルタイムで読めていた女の子たちはどんな気持ちだったのかなと心を馳せてしまう。

とある大学に存在する読書クラブ『バベルの会』に所属する人々は現実と幻想の境の壁が脆い。そんな彼女ら儚い者たちの、本と関わり家をめぐる連作短編集。
ひいっ! と声をあげてしまうような恐ろしい話が多かったです。誰が殺して、誰か殺されて、あるいは誰が食って、という話ばかりでした。ダークさにぐらぐらしましたが、こういう暗黒成分はどんとこいでもあるので、面白く読みました。主に令嬢と使用人という話だったのも、好きな理由のひとつだ。
「身内に不幸がありまして」の最後の一文が、恐ろしい。同じく、一言が効いているのが「玉野五十鈴の誉れ」だ。ぞわっとした。
羊というとのんびり、うつらうつらしている夢見がちな、無害な生き物を想像してしまうので、そんな羊たちが夢見ているのがこういう悪夢のような、悪趣味な幻想だと思うと、なんだか言いようのないもやもやと、興奮みたいなぞくぞくを覚える。

「王子が十八歳になったら呪いをかける!」——悪の魔法使いが、王家に残した予告の年、弟子のスイハはその役目を押しつけられてしまう。師匠の面子のため、使い魔のフクロウと王宮へ向かったスイハだが、王子の居場所はなんとハレムの中! しかも、すでに呪いをかけられていて!? 魔具によって捕らわれたスイハは王子に絶対服従の上、呪いを解く協力をさせられることに。初めは師匠の敵と思っていた王子だけど……!?(裏表紙より)
アラビアン風恋愛ファンタジー。悪い魔法使いの弟子の少女が、王子様(すでに呪われ済み)と協力する話。もうちょっと何か! という感じで、スイハも王宮の事件も楽しいんだけれど、せっかく魔具で行動制限とか、ハレムとか、王子様の呪いがおいしいのに! ともどかしい。でも、スイハの心がまだ幼くて、甘い雰囲気にならないのがそれはそれでおいしいかなと思います。
王子様、王宮、魔法使い、使い魔。陰謀をめぐる事件の色々が、とても童話っぽい楽しいファンタジーでした。

