読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
ある秘密を抱えた無口で孤独な深水青は16歳。バイト中にトラブルを起こした青を助けたのは、黒髪の美青年アズィールだった。彼は豪華客船で世界を巡り花嫁を探していたアラビアの王子だ。アズィールに一目で気に入られた青は、彼の母国へ連れ去られ、王宮に閉じ込められてしまう。逃走防止にアンクレットをつけられ、アズィールの花嫁として毎夜甘い言葉と官能を与えられる。今まで周囲に忌み嫌われた青の秘密―—感情が高ぶると青く変色する右の瞳さえ美しいと言われ、青はアズィールに惹かれ始めるが…。サファイアも蕩け濡れるアラビアン・ロマンス!(裏表紙より)
何故こんな可愛い子が女の子じゃないんだ! というまさかのBL全否定な感想を叫び出してしまった、甘くてちょっと切なくてじれじれする、官能アラビアンロマンスでした。
感情が高ぶると目が青く輝いてしまう少年・青が、アラビアの王子様アズィールに連れ去られ、王宮で甘い日々を過ごす。帰るところがないけれど日本に帰りたい、でもアズィールの孤独と強さと愛を知り、次第に……という、べったべた王道な展開です。
王道なんですが、文章がとても好き! 私、この方の文章がとっても好きだ! 理想です。こういう柔らかくて透き通った文体いいなあ(主観です)。心の動きも追っていっているし、世界観があるし、官能的。何故かとてもツボにはまってしまった。
面白かったです。
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「元アイドルと同時受賞」という、史上最悪のデビューを飾った新人作家・中島加代子。さらには「単行本出版を阻止される」「有名作家と大喧嘩する」「編集者に裏切られる」etc. 絶体絶命のトラブルに次々と襲われる羽目に。しかし、あふれんばかりの野心と、奇想天外なアイデアで加代子は自分自身の道を切り拓いていく——。(帯より)
柔らかめのヒロインが「負けるもんか!」と踏ん張る話だと思い込んでいたので、加代子のアクティブさにびっくりする。何が何でものし上がってやる! というその強さが羨ましいです。だがあくどい手を使いすぎだ!
加代子の成功物語が連作短編になっているのですが、この、みるみるぎすぎすと尖っていく感じがもう、なんだか痛くて苦い。作り話ばかりうまくなって、自分の大切なものを損なっていく、身を削っていく感じが作家という生き物なのだなあと。
「お前絶対許さないからな」というのは、実際にあると思います。実行するのは別としてもそれにしがみつくならそれだけの理由があるんだと思うな。
宮木あや子さんと南綾子さんと朝井リョウさんの登場する話が爆笑でした。
何故かこれを読んでいる間、加代子がお笑い芸人のキンタロー。さんになっていたんですが、なんでだろう。
右足骨折で入院中の、人生に疲れ果てた中年男が、病室の衝立越しに出逢った女と不思議な一夜を過ごす。それからしばらくして彼女と再会したとき、驚くべき奇跡が起こっていた——。孤独を知り尽くした中年の男と、時間の流れに逆行して生きる女との激しい愛の日々。しかし二人で同じ夢を見ることはできない……。男と女の切ない愛と孤独を、ファンタジックに描いた感動の長編小説。(裏表紙より)
あらすじから想像しなかった話だったのでびっくりしながらも、好きな話でした! 電車の行き帰りで読んだのですが、読んでいる途中で人にこの本の説明をするとき、ネイサンの『ジェニーの肖像』みたいな話ということを喋ったら、終盤でこのタイトルが出てびっくりしました。『ジェニー〜』がすごく好きなのだ……。
作中でも語られるように、ジェニーは芸術家の霊感のような存在でしたが、『飛ぶ夢〜』のヒロイン・睦子は、主人公である中年男の性愛の対象となっている。この二人の結びつきが、物悲しく、わびしい。お互いを求めているのに絶対に共に歩むことができない二人の暗い影が常にあって寂しい雰囲気が終始漂う。何も解決していないし何の謎も明かされないけれど、淡々とした中にあるエロチックさと陰影、切なさがしんと積もる小説でした。
静かに面白かったです。オススメありがとうございました!
街で占い師をしているノーラに転機がおとずれる。王宮お抱えの神術師の助手になれたのだ! しかし、“王宮お抱え”ともなれば、儲かるに違いないと喜ぶノーラに告げられた仕事は——初対面で、いきなり脱げと迫ってきた美貌の神術師・レノックスの雑用系で!? おまけに、その雑用が勝手に動き回る人形の世話? 突然の非日常とセクハラに振り回されつつ、ノーラが知る新たな世界とは……!? トキメキのラブファンタジー!(裏表紙より)
お金大事な気の強いヒロインが、王宮お抱えの神術師の見習いとなるが、事件が起こって……というお話で、色々詰め込みな感じはありましたが、子どもっぽいのに微妙にしっかりしたヒロインがかわいく、なんだかメルヘンな印象で楽しかったです。ノーラの設定が、妖精を信じているのに幽霊が恐いって、若干矛盾してないだろうかと思いつつ、ドールと戯れるノーラのかわいいこと。
神術で国を支え、国内に起こる異変に対処する神術師。その真実を知るノーラ。と書くとなんだかシリアスなイメージになるかもしれませんが、メルヘンなフェアリーファンタジーだったと思います。あんなにたくさん妖精たちが登場するのに、みんな個性的で楽しそうだった。
あなたは、敵なの——? 名前以外の記憶がなく、身を寄せる水戯団で孤立しがちな玲月。ある日、一人の凛々しい青年・星寿と出会う。彼は玲月を見るなり、愛しげに抱き締めてきて!? 意地悪で優しくて、知りたい事は何も教えてくれない星寿。なのに時々、切なげに見つめてくる彼に玲月の胸は苦しくなる。星寿が好き、そう自覚した矢先、事件が起きて!? 玲月に知らされた驚きの真実とは? トキメキの中華風ラブファンタジー!(裏表紙より)
水戯団に拾われた記憶喪失の少女は、記憶がないために表情までもなくし、一般常識もおぼつかない。しかし水戯の腕は他に引けを取らない。彼女が持つのは名前だけ。そんな中で一人の青年に出会う。中華風ラブと言いながら、旅芸人ものの要素が強いなと思いました。女だらけの演劇集団な上、薔薇様っぽい人たち(水戯団の花形である、男役と女役の二人)が出てきて面白かった。女の子が一生懸命に周りと関わって、その周りが暖かく受け入れてくれるという話はほっこりする! かわいいよ女の子!
途中から「えっまさかそっちの方向?」という種明かしが出てきますが、個人的には玲月には水戯団で長くがんばってもらいたいです。
英国児童文学の、その舞台となった場所を巡る旅行記。写真が多い、薄い本です。いわゆる聖地巡りというやつでしょうか。作品は「ハリー・ポッター」「指輪物語」「クリスマス・キャロル」「不思議の国のアリス」「ピーター・パン」「くまのプーさん」「ピーターラビット」「アーサー王伝説」。アーサー王だけがちょっと児童文学ではないですが、英国に親しんだ話ということで入っているのかもしれないですね。
カラー写真がいい感じでしたが、解説がちょっと読みづらかったです。でも、英国の町並みってとてもいいなあ! 城跡はロマンです。崩れた壁、周りに花が咲いているのがとても、いい。あとパブとか、建物が好きだな! と思いながら読みました。
よしながふみさんとマンガに造詣の深い方々の対談集。対談相手は、やまだないと×福田里香、三浦しをん、こだか和麻、羽海野チカ、志村貴子、萩尾望都。
面白かった! マンガについて語っているのもそうだけれど、オタクについて、BLについて、作家活動についてなど、オタクにとっては面白い読み物でした。
BL事情、どうしてBLじゃないといけないのか、というような話がすごく面白かった。やおいっていうのは関係性なのかなあと思った。百合であってもやおいの関係であるという指摘がすごく納得した。一方が好きなんだけど一方は特にそうでもなくて、お互いの才能を認め合って相手が困難に陥ったときに手助けする関係なんだけれど、男女なんだけれど、才能が拮抗している。やおいに近い関係である。という。のだめと千秋の関係もやおいなんだ、とか、トリックの山田と上田とか。恋愛関係にないんだけど、という。そうかーそういうくくりなのかーとすごく興味深かった。
この本では、特に羽海野チカさんとの対談のところが好きだな! なんだろう、創作する人間としてお二人の話はすごくすごく……きゅんとしたというか、大切な会話だと思う。お互いを尊敬し合ってて、相手の作品や相手について語れるというのはすごく大事なことだなとか、すてきだなと思いました。
都内の2LDKマンションに暮らす男女四人の若者達。「上辺だけの付き合い? 私にはそれくらいが丁度いい」。それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め……。発売直後から各紙誌の絶賛を浴びた、第15回山本周五郎賞受賞作。(裏表紙より)
第1章の良介の章や第2章の琴美の章を読んでいるときは、「うーん?」と思ったんだけれど、後半になるにつれて面白くなってびっくりした。私の中の面白い本の基準に「自分が楽しいかどうか」というものがあって、登場人物の怠惰な感じが最初は空気に合わなかったんだと思う。でも、読んでいくうちに、繰り返し描かれる「自分が知っているあの子は、自分の知っている一部分でしかない」ということが、面白くなってきました。一人称で進むので、とある人物をこうだと思っている語り手から、とある人物が語り手になったときに、さっきまで別の人に語られていたとある人物というのは、一部分や側面でしかないのだ、という。
最終章はびっくりしました。急にみんなが調和をとった気がして、ぞっとするような。乱暴に「あなたをゆるします」というのを押し付けられたような気がして、びっくりした。ゆるす、といっても、黙ってみないふりをするような、そんな居心地の悪さがあって、もぞもぞしました。最後になって、それまでの怠惰な雰囲気から、緊張で息を詰めていました。