読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
グラン・アーク共和国の聖騎士リランは、聖騎士団の借金の形として仮想敵国・輝陽皇国に置いていかれた。故に豪奢な衣装を着せられ、皇帝・大樹から「君が新しい妃だろうか?」と訊かれた時は秒で「殺ろう」と決意したのだ。だが大樹はリランが聖騎士と知ると、人を喰らう〈屍魔祖〉の斃し方を訊ねてきた。皇国では皇子らを奴の生贄に捧げて安寧を保っていること、大樹もかつて生贄にされかかったことなどを、太陽のような笑顔の彼から聞かされたリランは……? 中華風退魔ラブコメ。(裏表紙より)
こういう展開や登場人物を書きたいと思ったとき、ちゃんと説得力のある設定が必要になるわけですが、和泉さんはその設定の作り方がめちゃくちゃお上手かつ面白くてくせになる。
タイトルからして、傲岸不遜で人間不信気味の皇帝に求婚された西の国の女性騎士が絆されちゃうやつでしょ? と思いがちですが、皇帝は生い立ちや成長過程こそ苦労続きながら、弟属性強めの頑張り屋、理解力高め、不遜な態度とは縁がなく、姉兄仲も良好。グールのせいで統治も後継者問題もめちゃくちゃでにっちもさっちもいかなくなっている状態の国を救うため、その力を持つ騎士リランを頼る、だけのつもりが周りのお膳立てで妃にされてしまうという……中華風後宮ものよりも異文化交流が主題のラブコメ。
そしてやっぱり後半の力技のハッピーエンドが気持ちいい! 皇国を助けるために取った行動や、聖なる武器の正体など、お話が一気に転がって物語のおしまいにたどり着くのが本当に楽しかった!
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ミルナート王国の若き女王レナは、摂政代行のカーイに長い片思いをしている。二人の年齢差も、彼が〈魔人〉であることも、レナの恋心を変えはしなかった。レナが成人となる十七歳の誕生日が近づくある日。母アリアの従兄でセレー帝国大使でもあるバンディ侯爵の度重なる不穏な嫌がらせを受け、彼の切り札となるある秘密についてレナは口にする。ところが、カーイにそれを聞かれてしまい……? モフモフいっぱい、ロイヤルラブコメ完結。(裏表紙より)
次から次へとやってくる訳あり求婚者たちをなぎ倒しつつ(語弊がある)結婚にいたるラブコメディの下巻。レナの出自と魔人を巡るエピソードにため息が出たのですが、一番ああそうかと思ったのは困ったお母様アリア。識字障害というのは、この世界ではさぞ生きづらかったろうに……と切なくなりました。だから頼ってはいけない人と馴れ合っちゃったんだな……。知識がないというのはこういう不幸を呼び寄せてしまう。
血の繋がりではなく、生き方を教えてくれる人を家族と思うといい、という物語だったように思います。いやもう本当に、レナはカーイに育てられてよかったね!
エピローグは歴史は繰り返すみたいでちょっと笑っちゃった。お子様方も幸せにおなりー!
〈魔力〉を持つ〈王族〉が各国を治めるようになった世界——。そのうちの一つ、ミルナート王国の若き女王レナは、摂政代理のカーイに恋をしている。十年前には結婚の約束もした。なのにレナが十五歳になると、カーイは国中から“王配候補”を集めたのだ。「私は〈貴族〉ではないし、年が離れすぎている」などと言われても納得がいかないレナ。ところが集められた“王配候補”達とあれこれあるうちに、レナが新たに知ることとなったのは……? モフモフいっぱい、ロイヤル・ラブコメ。(裏表紙より)
幸せな気持ちになる読書がしたい、ということで選んだのがこちら。
私たちの知る地球の各国が存在しなくなり、それらの文明や歴史の集積も散逸したどこかの時代。ミルナート王国なる国の少女王と、父の親友であったわけあり摂政代理閣下の「結婚してください!」「無理です」というラブコメ。
この、世界がばらばらになったことで常識が覆り、価値観が巻き戻った状況でのあれこれを、受け入れ、そういうものだと理解しようとする人たちがなんだか嬉しくて楽しかったな。
この世界では価値観ががらっと古くなっているので、たとえば女性は家庭におさまるべきもので男装なんて言語道断、男女ともに同性愛は御法度、なんて状況。さらにこの世界では、ちょっと特殊な能力持ちが「魔人」として恐れられてもいる。
そんな世界で、女王レナや摂政代行カーイは人格者としての言動をしてくれる。カーイの子育てが素晴らしい! だから親友の娘に、と思ってしまう気持ちもちょっとわかる……。
下巻は絶対ハッピーエンドだと信じたい。
ミア、良夜、そして陽太——それぞれのお家の事情が明らかとなる中、弥和帝国の命運と三人の恋の行方は……!?
和風エクソシズム&トライアングル・ロマンス完結。(帯より)
さすが和泉さん、大団円! めちゃくちゃ楽しかったー!!!
途中から「あれこれもしかしてミアと陽太の立場が逆か、陽太が実は……とかあったりする?」とはたと気付いたんですが! 青薔薇伯爵家と同じでしたね!? タイトルが似ているし、あとがきにもあったしだいぶ意識されていたのかな。
後半の怒涛の展開と真相が、また頁をめくる手を止めさせてくれず、一気読みでした。一気に読めてよかったー! ミアの母親の正体泣いた……ドレスを一生懸命見繕ったっていう描写あったよな、と思うと泣けちゃった。
陽太がしっかり同級生たちにミアを紹介したエピソード、よかったなあ。作戦とはいえ、ちゃんと好きな子だとそうやってみんなにお披露目できるの、いかにも青春だった。その後の後半の大事なシーンでの告白にはヤキモキさせられたところまでよかった。
最後の展開がしっかり陰陽師、退魔関係になったのも面白かった。時代の変わり目だからまだまだ色々ありそうな描写があるけれど、陽太やミアや良夜はそれぞれの場所でしっかり幸せになろうと生きて戦っていけると思えました。
本当に楽しかった! ありがとうございました。
海軍兵学校の落ちこぼれ・鬼邑陽太は、合州国公使モーガンの娘ミア(実は女装した東宮?)や陸軍士官学校一の秀才で陰陽道宗家後継ぎの土御門良夜と共に、弥和に巣食う〈まつろわぬ神〉を調査することになり……?
和風エクソシズム&トライアングル・ロマンス開幕(帯より)
明治時代を思わせる世界の和風ファンタジー。
赤い髪を疎まれている双子の皇族、そのうちの名前なき姫宮を思わせる「女装姿の東宮」と引き合わされたのは、海軍兵学校の「落ちこぼれ」と陸軍士官学校の「神童」。この三者と中心に、帝室にかけられた呪いを解く物語。
三角関係かーと思いながらどろどろするかと心配して読みましたが、杞憂でしたね! 陽太が気持ち良すぎる青年で、彼の葛藤や気持ちの切り替えが楽しいししんみりもさせられてすごくよかった。ミアの正体をこういう風に読者に納得させるの面白いな。最後に陽太がめちゃくちゃチートだとわかるのも楽しかった。
これ結局呪いを解いたら二人は別れちゃうよね……と思いながら、急いで下巻を読む。
大衆新聞紙の記者ユリアは、しつこくて頑固で書く記事は妄想仕立て。ひょんなことからオスカーの醜聞ネタ(捏造!)を掴んだユリアは、記事を載せないかわりに、アデルに高級紳士クラブで行われている秘密の会合に潜入取材をしろと言い出して!? また後日、アデルの養育院時代の親友が掏摸で捕まり、身元引受人としてアデルの名前を出して……? 甘くとろけるコメラブシリーズ、最終巻!
これでも手加減しているのです、私は紳士だから。(裏表紙より)
あしながおじさん風の出会いから始まった、孤児の少女と大貴族の若様の物語の最終巻。純粋で真っ直ぐな少女が夢を叶える始まりから、すっかり小説のネタになりそうな事件に関わってしまう事件ものになっていて、振り回されるオスカーがだいぶ可哀想で笑ってしまった。最後だいぶと影が薄かったですね?笑
アデルがアデルらしいのが事件を解決へと導き、誰かを救うのですが、でも原稿が燃えたことはもっと怒ってもよかったと思う! 本当にそう思う!
ミリアムがとても可愛らしかったので、時代が変わる頃に年頃の少女になった彼女の恋物語が読めたらなあ、なんて思いながら、楽しく読み終わりました。
小説の続編を構想中の少女アデル。恋人のオスカーは、公爵家の嫡男という身分なのに、ネタ探しに燃えるアデルには振り回されっぱなし。そんな頃、王都に《黒薔薇》と名乗る美術品泥棒が出没しはじめ、アデルは興味津々。同時にアデルは、クライヴという美青年と知り合うことに。彼はリュミエラ・ローズという筆名で活躍する、人気恋愛小説家で……!? 新釈「あしながおじさん」、待望の続編!
俺のアデルに、勝手にチョコレートを与えるな!!(裏表紙より)
中編連作ですが、一冊丸々、黒薔薇関係。王室周りの話をこんな風に出すのかーと楽しく読みました。
クライヴとシヴィルがアデルとオスカーの仲を妙に引っ掻き回すのが気になったんですが、ちゃんと理由づけがされていて、説明もあってよかった。その分、二人の境遇と気持ちは可哀想なところがたくさんあって切ないので、これから幸せに、楽しい日々を送ってほしい。
身分差の恋として進展が気になっていたリンディアとユーディの恋も最後に成就しそうでよかった! 時代設定を活かした成り上がりがいい。次の巻で二人が結婚してくれたらいいなあ。
公爵家の嫡男オスカーは、金と身分が目当ての女達に絶望していた。そんな折、友人のユーディに唆され、小説家志望の少女アデルを匿名で支援するという賭けに乗ってしまった。欲しい物をすべて与えて、アデルが堕落すればオスカーの勝ち。甘えずに夢を叶えたらユーディの勝ち。ところが、贈り物攻撃にまったく興味を示さないアデルに、オスカーは戸惑いながらも興味をひかれてしまい……?
賭けをしないか? 彼女が堕落するか、夢を掴むか——(裏表紙より)
あしながおじさんをモチーフにした、孤児と公爵令息のラブコメディ。
お金と身分目当ての女性たちに辟易していたオスカーが、何も持たないがゆえに空想を友達に、前向きに、一生懸命に生きるアデルに出会い、二人がお互いに持っていないものを少しずつ見つけていく。とっても可愛いお話!
オスカーのキャラがぶれるのが若干面白いんですが笑 アデルの前向きさや強さが存分に見られて楽しい。お嬢様に意地悪をされてもそれが一番波風が立たないと虐げられる状況に甘んじながら、周りの配慮や親切にちゃんと気付けるところがすごくいい。公爵令息の恋人と発表されて、うるさく言われても、それが自分と彼との違いだと認識して受け止めて、自分らしくいられるところ、強くて可愛くて素敵です。
アデルの素性がわかるとは思わずびっくりしましたが、少しは障害が低くなったのかな。続きが楽しみ。
王立学士院魔法学科8年生で落ちこぼれのアリアと、エリート研究者兼教師で王族のラルシェのふたりには秘密があった。実はとある事情から夫婦になってしまっているのだ。正式に結婚する条件は、アリアがしっかりと魔法を使えるようになり、学士院を卒業すること。しかしトラブル体質のアリアには今日も様々な試練が……? 秘密のマリッジ・マジカル・コメディ!(Amazonより)
落ちこぼれ魔法学生のアリアと、厳しくて有名な教師で王子様のラルシェ。問題児と有能教師の二人は、実は夫婦。結婚していることは内緒にしている。という魔法と学園と恋愛ファンタジー。全体的に幼く可愛らしいお話でした。
アリアとラルシェのやり取りが少女漫画的ラブコメのど直球をいく感じなんですが、いかんせん最後までアリアにあんまり成長が見られなかったのが残念……ちゃんと卒業できるんだろうか……と不安になってしまい。頑張れー。
母を亡くし行き場のないジェーンは、魔法卿・コーネリアスの城でメイドをすることに。〈魔法使い〉という異端を集め、悪名高い城で待っていたのは凄腕の毒舌執事・ジョンだった。「彼女の手は不要です」——なぜかジェーンに否定的な彼に認めてもらい、ここで居場所を見つけるしかない。そんな中、ジェーンの“ある秘密”にまつわる事件が!? 第16回小説大賞優秀賞&読者賞W受賞作。読むと、誰かに優しくしたくなる物語。(裏表紙より)
柔らかくて可愛らしい、少女向けのお話だったなあ。ちょっとメルヘンで幸せなおとぎ話のような作品だった。
異国の人であった母とこの国の父の間に生まれたジェーン。異国風の顔立ちと母の教えを胸に、ある秘密を抱えて魔法卿城にやってきた。このジェーン、賢くまっすぐな性格でなかなかただものではないという雰囲気をずっと漂わせていて、もしかしてと思っていたんですがやっぱりそうか。その辺りの謎にもう少し突っ込んで欲しいと思いながらも、少女が居場所を見つけたり、「優しい嘘」に気付いたりと、ロマンチックで素敵な話だったと思います。