読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
きょうだいは同じ境遇を分かち合った、かけがえのない同胞のはずだ。しかし一方では永遠のライバルでもあり、一つ間違うと愛情や財産の分配をめぐって骨肉の争いが起こることもある。実際、きょうだい間の葛藤や呪縛により、きょうだいの仲が悪くなるだけでなく、その人の人生に暗い影を落としてしまうケースも少なくない。きょうだいコンプレックスを生む原因は何なのか? 克服法はあるのか? これまでほとんど語られることがなかったきょうだい間のコンプレックスに鋭く斬り込んだ一冊。(裏表紙より)
きょうだいと呼ばれる関係にはこういう特徴や役割があって、という類型がわかりやすくまとめられた入門書のような一冊。仲のいいきょうだいのことが知りたかったんですが、どちらかというと仲が悪かったり、役割を与えられる光と陰の部分の話が大半だったかな。有名人のきょうだい関係に軽く触れていて、ほうほうと思いました。
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文筆業を営む著者は、仕事柄怪談を収集していたことがある。そしていまも読者から不思議な話が届くのだ。ある日読者の一人から、畳の上を何かが擦る音がするという怪異を聞く。それは以前別の読者から届いた怪異の話と同じであったことから、著者はこの出来事を深く調べていくようになるのだが……。
実話っぽすぎる怪談。実在の人の名前(平山夢明、福澤徹三)が出てくるし、冒頭から語り手となる「私」の経歴が小野不由美さんと同じものなので、うわー! となりながら読みました。
怪異は感染するという恐怖感を描きつつも、調査したり、怪談話の歴史を辿ったり、口頭で伝えられていくそれらがどのようなものを根源としているのか、という研究めいた部分が特に面白かったです。ああ、怪談にはこういう理屈があるのねという。ただ「穢れ」が感染していくことの原因、それらが起こる理由はまったくわからないままなのが怖い。どんなに考えても、考えが及ばない何かが起こっているのが。
料理家の著者は、フランス料理を学んでいたときにジビエ料理と出会う。あの材料はどこで手に入るの? どうやって作るの? というところから、それらの肉を獲ることができると気付き、狩猟免許を取得する。
タイトルからだと狩猟免許を取るための努力みたいな話かと思いきや、もっと踏み込んだ内容。何のために狩猟するのか、その肉をどうするのかということを考えながら、同じ狩猟免許を持つ人たちそれぞれの考え方にも触れて、狩猟やひいては食肉について考える。
狩りをする人たちの考え方は人それぞれあって、自分の食べるものを自分で収穫したいというものや、必要に駆られてだったり、スポーツのためだったり。読み進めていくと、私たちが普段口にしている食べ物が簡単に手に入ることについて疑問を覚えました。著者の井口さんはこんなに、嫌になるくらい、精神が痛めつけられるくらい生き物と命とそれを食べることに向き合っているのに、その重みを知らないって変じゃないか、みたいな。
ジビエについて知ってもらいたいという思いが感じられて、ジビエへの興味が出て来ました。ちょっと調べてみようかー。
日本語教師の職が東京にあると聞き、田舎を飛び出した女子大生の花。歌舞伎町の外人ホストに催眠術をかけられ、廃墟寸前のビルに連れ込まれる。そこは魑魅魍魎たちの巣窟「歌舞伎砦」、外人ホストの本性は猫の妖怪だった。法外な高給に誘われ妖怪の日本語教師となった花を待ち受ける運命とは!?〈文庫書き下ろし〉(裏表紙より)
五島列島の島の網元の一人娘の花と、島の男たちと正反対に理系気質のもやしっ子の弟の直人。この二人が、大叔父を頼って歌舞伎町に行ったところ、そこには歌舞伎砦という名の人外魔境が存在していて、そこに暮らす外国生まれのあやかしたちと関わることになる。
あらすじから想像した話から、だいぶと魑魅魍魎成分強めのカオスっぷりが面白かったです。ほっこりあやかしものかと思ってたのに、とんでもない魔窟で冒険してた。嬉野さんの作品ってそういう力強さと話の構成とか設定の巧みさがいいよなあ。面白かった。
両親を事故で亡くした小学生の太輔は「青葉おひさまの家」で暮らしはじめる。心を閉ざしていた太輔だが、仲間たちとの日々で、次第に心を開いてゆく。中でも高校生の佐緒里は、みんなのお姉さんのような存在。卒業とともに施設を出る彼女のため、子どもたちはある計画を立てる……。子どもたちが立ち向かうそれぞれの現実と、その先にある一握りの希望を新たな形で描き出した渾身の長編小説。(裏表紙より)
希望を持たせた結末で読者を救うことはよくあることだけれど、現実を書き切って本当に、ひとかけらの希望だけを握らせて終わらせる物語が、読者を救うことだってきっとあるんだろうな、と思わせてくれた作品でした。
どうしたって弾かれる「施設の子」なのに、それぞれの性質がまた弾かれる要素となって、出口が見えない感じ、きつい。けれども何かを成し遂げるために一生懸命になった自分たちを、太輔たちはきっと大人になっても誇れると思う。
田舎領主のレナルドは、たいそう焦っていた。結婚相手がみつからないのだ。19歳で長身の男前、しかし特に財産が多いわけでもなく、極度の恥ずかしがり屋で一見無愛想とあっては、嫁いでくれる物好きなどいない。さらにレナルドには、月夜に狼に変身してしまうという秘密まであった。一縷の望みをかけて顔を出した王都の夜会で、ついにレナルドはメレディスと名乗る貴族令嬢と出会うのだが…!?(Amazonより)
ふわふわ、あっさりな可愛らしい恋愛ものでした。
狼化しているときは尊大かつ素直なのに、人型になった途端口下手で無愛想になる不器用な伯爵様と、ふわふわ柔らかで心優しい、変わり者ゆえに結婚相手が見つからないご令嬢。最初から結婚することがわかりきっている二人の恋は、ほのぼので可愛い。
ところで、江本さんのくせなのかな、料理とか薬草について書かれるときにどこかで見たような文(たとえば別作品で書かれていた似たような箇所)だなあという印象を抱いてしまいました。加えて周囲の反応に同じような感じなので……。他の作品がどうなってるか気になる。
世界を救うハルコ。
ぼくは君に何ができる?
5年前、遠夜の隣に引っ越してきたハルコは特異体質をもつ少女。数十キロにわたり花粉を消滅させるかわりに自分には猛毒となるため、宇宙服のような防護スーツを着けなければ外出ができない。通学は遠夜がサポートを続けるなか、事故が起きる。それはクラスメートを巻き込む事件に発展するのだが。——世界を敵に回してもハルコを守りたい、と願う17歳の決意が迸る圧倒的青春小説!(裏表紙より)
比喩的な、象徴的な話だった。その人に見える世界はその人だけのものという感じ。当事者を置き去りにして過熱する周囲が怖いし、その中で遠夜が最後まで冷静だったのはハルコと生きる覚悟をしているからなのかなあ。学校とかその町とか狭い世界じゃなく、もっと広い世界で、ハルコとどうすれば一緒にいられるかを考え続けているからかもしれない。
元暗殺者の少女ティエサと第二王子であるキアス、恋人同士になったばかりの二人に大問題が! 王太子クラウが、ティエサを公妾候補に選ぶといい出したのだ。学院で開催される公妾選考会を阻止すべく、ティエサたちは立ち上がる。その矢先、キアスがティエサに急に冷たくなり……。いったい何が起きているの!? 二人に本当の幸せはやってくるの!? 恋と事件のラブファンタジー、いよいよクライマックス! サブキャラたちのその後も大公開!(裏表紙より)
学院の危機と、未来へ羽ばたくための第一歩を踏み出す少年少女たち、という感じのお話。各キャラのその後も一気にまとめられていて、想像していたところに落ちていてとても最終巻らしかった。いやでもトトの相手が彼だというのは、ちょっと意外でした。でも案外お似合いかも。
最後に一番驚いたのは、ティエサもキアスも普通に就職していることでした。絶対一騒動あったよね!? と思いつつも、幸せな未来に向かって進む彼女たちを見ることができて本当によかった。
グリセルダ学院は臨海学校! 元特殊部隊員の王子キアスと恋人同士になったばかりの元暗殺者見習いの少女ティエサはわくわく! そんななか、男装少女フィムが、臨海学校の間にある課題をクリアしなくては学院を去らなくてはならないとわかり…。フィムのため、キアスとティエサは戦いの技を駆使して課題に挑む! そこに次々に生徒が消える事件が…!? そして恋と事件の思わぬ結末とは! フィムの鳥とティエサの主様の因縁もあきらかに!(裏表紙より)
〈聖剣の巫女〉であるフィムは、学院に残るために神武官の首飾りを奪わなければならなくなる。けれどこの神武官のカドリは最強と名高い。ティエサとキアスも協力することになり、臨海学校の間、三人は課題のクリアを目指す。しかし臨海学校の行われるこの島、実は千一星教団の元聖地だったらしい。
『横柄巫女と宰相陛下』に関連する話が出ていると思うんですが、なにぶん読んだのが結構前なので詳しく覚えていない……。とにかく、神代の因縁が現代まで続いていて、それらを守護を受ける者たちや王国を担う若者たちが集っているこの時代は、本当に変革期なのだなあと実感する。
ティエサとトトがちゃんと喧嘩して、元どおりになろうとしているところがよかったなあ。潔い。かっこいい。
次で最終巻。みんながんばれ。