読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

新米巫女の貞彩蓮(ていさいれん)は、
景国の祭祀を司る貞家の一人娘なのに
霊力は未熟で、宮廷の華やかな儀式には参加させてもらえず、
言いつけられるのは街で起きた霊的な事件の調査ばかり。
その日も護衛の皇甫珪(こうほけい)と宦官殺人事件を調べていると、
美貌の第三公子・騎遼と出会う。
なぜか騎遼に気に入られた彩蓮は、
宮廷の後継者争いに巻き込まれていき……!?(Amazonより)
中華風ファンタジーかつ霊能力ものでアクション。これ受賞時のタイトルの方が作品の内容に合っていたんじゃないかなあと思うんですが、売り出すためにはこういうタイトルになるかとも思う。
序盤の読みにくさを超えれば主人公たちのやりとりが軽快で楽しく、畳み掛けるようなアクションシーンにどきどきしました。しかしもうちょっと男性陣のことが読みたかった。確かに彼はすごくいい人なんだけれど!
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「小説は、好きですか?」わたしたちはなぜ物語を求めるのか。新作を書けずに苦しむ作家、作家に憧れる投稿者、物語に救われた読者、作品を産み出すために闘う編集者、それを届けてくれる書店員……わたしたちは、きっとみんなそれぞれの「小説の神様」を信じている。だから物語は、永遠だ。当代一流の作家陣が綴る、涙と感動、そして「小説への愛」に溢れた珠玉のアンソロジー。(裏表紙より)
相沢沙呼、降田天、櫻いいよ、芹沢政信、手名町紗帆、野村美月、斜線堂有紀、紅玉いづきという作家陣によるアンソロジー。
紅玉いづきさんのは実録だろうと聞いて読みたかったやつ。紅玉さんの小説について語るときの強い語り口が好きでね……。
皆さんの「小説の神様」への思い入れに溢れていて、読んでいて嬉しいようなむずがゆいような、ボディブローを食らったような苦しさを感じつつも、ため息をついて読み終わってしまう一冊でした。いやー……面白いんだけど、きつい。出版業界が辛いからこそ、葛藤する人たちの感覚にぴたりとはまってしまって、ままならないことが苦しくてたまらなくなってしまう。
いやでも、面白かった。

戴国に麒麟が還る。王は何処へ——
乍驍宗が登極から半年で消息を絶ち、泰麒も姿を消した。王不在から六年の歳月、人々は極寒と貧しさを凌ぎ生きた。案じる将軍李斎は慶国景王、雁国延王の助力を得て、泰麒を連れ戻すことが叶う。今、故国に戻った麒麟は無垢に願う、「王は、御無事」と。——白雉は落ちていない。一縷の望みを携え、無窮の旅が始まる!(裏表紙より)
あんなに待ち望んでいたのに怖くて積んでいた十二国記最新刊、ようやく読み始めました。
面白くてぶっ飛ぶかと思った……。
まずすごいのが、するっと十二国記の世界に入ったこと。ブランクなんて感じさせない滑らかさで完璧な「続き」になっているんですよね! 思わず『黄昏の岸 暁の天』を読み返してひえーって言いました。
そうそう、十二国記って、無辜の民の苦しみがすごく密に書かれるんだったよな……。王と麒麟の存在に縋るしかない無力さがひたすらに続く一巻目なので、多分ここから希望の道が開かれるはず! と信じて読むしかない。
成長した泰麒がめちゃくちゃいい子だよ……こうなってしまった経緯が経緯なので、手放しに喜ぶことはできないんだけれど、でも彼の慈悲と行動がいろんな人をいい方向に導いてくれることを信じたい。

アンジェリス迎賓館で働くブライダルプランナー、間宮菫子。結婚式のプロデュース業を営む彼女のもとに、どこか秘密を抱えたカップルがやってくる。五回も会場を下見する新婦、まるで他人同士のような二人……。菫子は彼らの秘密を解き明かそうとする。新郎新婦に心を開いてもらい、彼らの悩みを解決するために。そして幸せな結婚式に導くために。 でも一筋縄ではいかなくて……。 そして菫子自身にも、ある秘密があった。 サムシング・フォー ―― 花嫁に幸せを呼ぶというジンクスになぞらえた、4つの愛と秘密のかたち。(Amazonより)
お仕事もの。とある秘密を持つブライダルプランナーが、結婚式の相談に来ながらも事情を抱えたお客様に……振り回される? 事情を聞き出す? 謎解きもののように図々しく事情に突っ込むのではなく、どうしたんですかと尋ねたり、話を聞いたり、周りの人に助けられて落とし所を見つけたりするところが、読んでいてなんだか心地よかった。
菫子がずっと秘密を抱えているせいか、そちらの方が気になってしまうのもありましたが、彼女の苦悩する姿がすごく人間味があった。越えられない傷があることも、目を逸らすことも、それを少しずつ乗り越えることも、四つの話の中で少しずつ変化するのが感じ取れて、最後はほっとしました。

ストーリーテラー。それは歪んだ童話の呼弥を持つ異能の使い手たち。『冷血王』御堂十全に心を凍らされた『血まみれ赤頭巾』使いの日野宮茜子は、彼の命で『美しき獣』空宗雄大を襲うも返り討ちに遭う。あっさり支配から解き放ち、「お前は俺のものだ」と不敵に笑う雄大。その日から彼のために戦うと決めた茜子は、個性的な能力者だらけの自治区『ワンダーランド』で暮らすことになるが―!?世界の片隅で生きる、おかしな奴らの希望と執着の物語!(Amazonより)
現代異能もの。中二感溢れる若者たちの日常とバトルを堪能できました。ここまで振り切っているとめちゃくちゃ楽しいな!
心を凍らされた茜子は、ターゲットである空宗雄大の暗殺を目論むが、失敗。彼に救われ、彼を神と崇めて忠犬のように仕えるようになる。だが雄大本人は、茜子のことを異性として気にするようになり。
敵勢力との戦いが終盤に控えていますが、それまでは不器用な特殊能力持ちの個性豊かな面々との交流があり、ちゃんとすれ違いやら裏切りがありと盛りだくさん。細々した設定がとても中二。とても心をくすぐられる。俺たちの戦いはこれからだ的終わり方も、続きはないのが寂しいけれど様式美に感じられてしまうので、良き少女小説でした。

リューナック伯爵令嬢のフィオナは絵を描くことが何よりも好き。妖精の姿を見ることのできるフィオナは、従者のウィルを伴って王国中を旅しながら、妖精の絵を描く日々を送っていた。そんな旅の途中、フィオナに執着する美貌の青年男爵クロウリーに捕まり、拉致されそうに。必死に追っ手から逃げるうち、誤って谷底に落ちてしまう。そんなフィオナを助けてくれたのは、彼女が理想と思い描いていた容貌の持ち主で…!(Amazonより)
電子オリジナル。これ電子だけなのもったいないなあ。とっても可愛らしくて楽しい話だったのに。挿絵も見たかったよー。
妖精的な容貌が持て囃される国で、かつて封印された「影の一族」の特徴である、黒髪と黒目、筋肉質で大柄の持ち主であるディオンと出会ったフィオナ。とある事情で妖精画を描いているフィオナは、彼自身が忌むそんな身体つきが理想と大喜び。肖像画を描いてほしいという依頼を受けて飛びついたものの、彼の素性と、肖像画にまつわる事件に妖精が関わっていると聞いて。
ラブコメっぽいタイトルですが、偏屈王と言われるほど性格がきつくもないし、筋肉が好きというのもエルフっぽい見た目よりはギリシャ彫刻風が好きみたいなちゃんと世界観や価値観に基づいたもの。妖精が起こしている事件を解決する楽しさもあったり、妖精というモチーフにまつわるフェアリーテール感のある大きな話も存在したりと、可愛い話なのに読み応えがありました。めちゃくちゃ好みでした。

「ちーちゃんこと歌島千草は僕の家のごくごく近所に住んでいる」―幽霊好きの幼馴染・ちーちゃんに振り回されながらも、「僕」の平穏な日常はいつまでも続くはずだった。続くと思っていた―あの瞬間までは。怪異事件を境に、ちーちゃんの生活は一八〇度転換し、押さえ込んでいた僕の生活の中の不穏まで堰を切って溢れ始める…。疑いもしなかった「変わるはずがない日常」が音を立てて崩れ落ちていくさま、それをただ見続けるしかない恐怖を描いた、新感覚のジュブナイル・ホラー。世紀末の退廃と新世紀の浮遊感を内包した新時代作家・日日日(あきら)、堂々デビュー。 (Amazonより)
幽霊好きのちーちゃん。それに振り回される僕ことモンちゃんは、実は現在虐待を受けている。だが日常は続く。それでも、崩壊は呆気なく訪れた。
章ごとに読んでいたせいか、段階を踏んでボディブローを食らう感じの重い話だった。日常が崩れ落ちていくのが、きつい……。何一つ好転しないまま最後を迎えたので、このまま悪夢を見てしまいそうな読了感だった。なのに日常が連綿と続いていくんだよね……。