読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

「契約する。私に飼われなさい」「愛するようにお仕えしよう、お嬢様」絵画好きな伯爵令嬢リズは、叔父の雇った画廊臨時管理人ジョンに「あんたをくれ」と告げられる。しかし、それは愛や恋でなく、リズが持つ絵画に潜む悪魔を見抜く『至聖の目』が欲しいから。実は悪魔のジョンに、契約を迫られたリズが出した答えは-——自分が悪魔を飼うことだった!?
型破り令嬢と毒舌悪魔の絵画を巡るラブファンタジー!(裏表紙より)
妙なものが見えることに怯えられたことで実家から離れて育ったリズは、年頃になったので呼び戻され結婚相手を選ぶよう母に言われていた。しかしリズの興味は幼い頃の思い出と叔父の影響で絵画に向けられている。するといつもなら見えなくなっていたはずのおかしなものが叔父の画廊で見えるようになり、さらには謎の画廊臨時管理人の秘密も知ってしまい。
象徴と芸術についてのうんちくがたいへん楽しそうだなあ笑 という印象でした。絵画を読みとくシーンになるとリズの関心がぐっとそちらに向くせいかとたんに物語のテンポが変わる。
生きるのが不器用なヒロインが人外のものをめろめろにするのは糸森先生のフェチズムを強く感じます。謎解きはされるものの、リズとジョンの関係が駆け足にまとめられてしまっているのは次の巻でどうにかなるのかなあ。
PR

いじめを「いざこざ」と言い張る学校、責任回避に専念する教育委員会、不可解な第三者委員会——無責任な大人たちが被害を加速させている。SNSの普及で深く潜り込み、巧妙化する現代のいじめに、私たちができることはなにか。6000件超の相談を無償で受けてきた探偵がもう一人も犠牲者を出さない、という決意のもとに、本気で対策を考える。(カバー折り返しより)
すごく興味深かった。2020年4月の本なので最近のいじめ問題(兵庫県の教諭間のいじめ問題とか)にも触れつつ、著者が接してきたいくつかの相談と、学校や教育委員会、第三者委員会の実態について書かれていて、そんなことになっているのか! と目を開かされる内容だった。
著者は「いじめ探偵」で、いじめ被害者に頼まれていじめの実態を調査し、関係者に聞き取りを行い、証拠を集め、被害者が望む対応がされるよう学校に求めるという仕事をする。隠蔽体質の学校や教師に憤ったことも数多かろう……と思わせる内容で、読んでいてすごくがっくりきた。なんらかの対策を講じている人物や学校のことにも触れているのでそれが救いだったかな……。

金星特急の旅から八年、横浜で経営するバーを人に任せ、当時お世話になった面々を訪ねる旅に出た錆丸。月氏の幕営地で無名の赤子と初めて顔を合わせ、北極圏の村で夏草の母の墓を建て、最後に辿り着いたグラナダで先行していた砂鉄とユースタス、さらに愛娘・桜と合流する。この旅は、七歳になった桜に母親である金星について教えるための旅でもあった。初めて父と離れ、世界を巡った桜は何を見たのか——? 大人気小説「金星特急」番外続篇集!!(裏表紙より)
世界を賭けた恋の果て、娘を連れ帰った錆丸。かつての仲間たちとの縁は切れないが、母親がいないことに悩み始めた桜のために彼女を旅に出した。表題作「花を追う旅」。
大きくなった桜にパパ&おじさんたちがお節介する「武力とお菓子」。
桜が能力を秘めていることが予感される、続編への布石「柔らかい繭」。
どれも変わらずキャラクターが生き生きしていて、旅の終わりと新しい始まりを感じさせる番外編、とても楽しかった。
特にユースタスと砂鉄の手作り結婚式が見られて感無量。誓いの言葉も二人らしくてにやにやしました。挿絵がいい仕事をしていた。
続編がますます楽しみになりました。

搦め捕られるようにグレイとの婚約が成立し、彼の屋敷で暮らすことになったメリッサ。『悪魔』の異名を持つグレイがこんなに熱烈なのは、メリッサの胸に執着しているから。分かっているのに、強引に抱きすくめられて甘い囁きと濃密な愛撫を与えられると、身体は蕩けてしまう。そんな時、グレイはメリッサを伴わずに舞踏会へ参加するようになり……!? (裏表紙より)
豊満すぎる胸をコンプレックスに思っていたメリッサは流行遅れのドレスを胸を押しつぶして参加した結果、気分を悪くし、悪魔侯爵グレイに助けられる。手当のせいで胸のことを知られてしまったが、その結果メリッサの胸を「理想だ」と言ってグレイは強引な手段で婚約を成立させる。
コンプレックスが愛され要素に変わり、強引な婚約にも関わらず大事にされ……とTLヒロインならば簡単に恋に落ちてしまう絶妙な距離感のヒーローだなあ。紳士的なのにだいぶと雄っぽいのが面白いしちょっと可愛い。

錦糸町、川崎、上野、大阪、呉、六本木。日本各地の旧軍都に発生すると言われる「裂け目」。かつてそこに生きた人々の記憶が形を成し、現代に蘇る。鮎観の一族は代々、この「裂け目」を封じ、記憶の化身たちと戦う“力”を持っていた。彼女と同族の遼平もまた同じ力を有した存在だった。愛し合い結婚した二人だが、息子を授かったことから運命の歯車は狂い始め——。直木賞作家の真髄を味わえる、魅惑の幻想ファンタジー。(裏表紙より)
裂け目から生じる何かと戦う三人の連作小説。この世界のどこかに常に異界があって、戦っている人たちがいて、すべての始まりと終わりがすぐそこに迫っているという終わり方は実に恩田陸作品らしい。
根本的な何かが変わったわけでも、現況を倒したわけでもないのに、最後「六本木クライシス」に感じたわくわく感が何かに似ているなと思っていて、ああそうだ「劫尽童女」だなと思ったのでした。ここから大きな物語が展開するのかなあ。この一冊では物足りないけれど久しぶりに恩田陸成分を摂取して満足しました。

タロットカードが導く真実、あばかれる過去――。三年前に起こった王子殺害事件。高名な占い師だったレティシアの娘ティアリスは、その犯人探しを頼まれた。依頼主は王立憲兵隊付属特別室の室長、クランツ。妙にティアリスを気に入ったらしい彼と、その部下であるルディアスとともに、容疑者をひとりずつ当たっていく日々。だが、疑うべき人物は最も近いところにいて……!? 誰が犯人でもおかしくない、この殺人事件の意外な真相とは――!?(Amazonより)
占い師が名物、ともされる国で、占い師の能力をほとんど持たないティアリスは、三年前に起こった王子の死の真相を調べるように命じられる。
という導入から、どうしてこうも血なまぐさい話になるのか(褒めています)。民族的な話から、王侯貴族の恋愛事情から、こうなったら嫌だなという要素を抽出する小野上先生さすがだな……と『少女文学』を読んでからすごく感じるようになりました。
占い師ですがティアリスは地道に聞き込みをしたり、人と話しているときの仕草などで相手の心理をつかもうとしたりと、探偵の真似事をするんですが、結局どこに落ち着くのかわからなくてだいぶとはらはらしました。ティアリス自身の秘密はこうなんだろうと思った通りだったんですが、レティシアのことや、レティシアとオルテンシアの関係は予想外だった……さすがだぜ……。

医師の父親亡きあと、医院を守っている珠里。医学の知識はあっても女性は医師免許がとれず、診療することができない。そんな珠里のもとに皇帝の使者が現れ、むりやり後宮に連れていかれてしまう。体調不良の皇太后が男性医師に体を見せることを拒否しているため、女性の珠里に白羽の矢が立ったらしい。皇太后に同情した珠里は病の原因を見つけようと奔走するが…!? 中華後宮ミステリー!!
癒しの手を持つ少女が、後宮の謎に挑む!!(裏表紙より)
男性社会の国で、女性は医師になれない国。しかし変わり者の父の指導で立派な技術を持つ珠里の噂を聞いて、後宮から迎えがやってきた。
中華風後宮ものの要素はあるにはあるんですが、どちらかというと、人の心や病気、それに対峙する人、医師を志す人たちの矜持なんかがあって、とても小田さんらしい作品でした。ヒロインがずれているところも、この年頃の少女として間違えてしまったり失敗してしまったりするところも、リアリティがあってすごく身近に感じました。恥ずかしい、っていうそれは、多分これから立派な人になるために必要な失敗だったと思うなあ。

忘れたい記憶を消してくれる都市伝説の怪人、記憶屋。大学生の遼一は単なる噂だと思っていたが、ある日突然大切な人の記憶が消えてしまい、記憶屋の正体を探り始める……。切ない青春ノスタルジックホラー!
「記憶屋」の都市伝説がある街。恋した人の記憶が失われ、幼馴染も過去同じ目にあったことに気付いた遼一は、噂を辿って記憶屋を探ろうとする。
こういうのは一番そうであってほしくない人が犯人なわけで。
記憶屋の正体を探るんだけれども、記憶を消したいというほどの思いをした人たち個々のエピソードが面白かったなあ。本人はものすごく思いつめているのはわかるんだけれど、記憶屋がいなければ安易に忘れるなんて選択をしないような、いつか乗り越えなければならない傷ついた/傷つけられた記憶ばかりで、色々考えさせられてしまった。

「これからお母さんと一緒にたくさん冒険しましょうね」「あり得ないだろ…」念願のゲーム世界に転送された高校生、大好真人だが、なぜか真人を溺愛する母親の真々子も付いてきて!? ギルドでは「彼女になるかも知れない子たちなんだから」と真人の選んだ仲間をお母さん面接したり、暗い洞窟で光ったり、膝枕でモンスターを眠らせたり、全体攻撃で二回攻撃の聖剣で無双したりと息子の真人を呆れさせる大活躍!? 賢者なのに残念な美少女ワイズと、旅商人で癒し役のポータも加わり、救うのは世界の危機ではなく親子の絆。第29回ファンタジア大賞〈大賞〉受賞の新感覚母親同伴冒険コメディ!(裏表紙より)
ネットゲームの世界に転送された息子と母。ネトゲのお約束を踏襲しつつ、母の振る舞いに大いにツッコミを入れるコメディ作品なんですが、ヒロインがお母さんなの尖りすぎィ! 「お母さん」というキャラクター性を生かしたまくっているがためにテンプレな言動があれすぎて、若干鬱陶しい笑 こんな母親いないよ! と叫ぶところまでがセットでしょうか。さくさくっと読めて楽しかった。

フェミニストの上野千鶴子さんに、毒親漫画を描いた田房永子さんがフェミニズムについての疑問や質問に答えてもらう。ただの一問一答じゃなくて「何故そう思ったの?」とか「それはどうしてだと思う?」など上野さんが質問を重ねてくれるから、より深く考えたり、問題や肝心なところを見つけたり、という内容になっていて、非常に興味深く面白く読みました。
こう、なかなかしっくり来る答えが出ないとか、違和感のあるもの、どれが正解なんだろうと首をひねっていることなど、結構わかった気がする。その発言の裏にはこういう歴史があって、とか、こういう社会構造で、というのがすごくわかりやすかった。フェミニストと名乗ることの違和感や、現代における運動や活動家の話も身近だったし、一つ答えが見つけられたような気がしました。