読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

兜坂国の斎庭(後宮)は、神を招き、もてなす場。実体を持つ神々は豊穣と繁栄を招く半面、ひとたび荒ぶれば恐ろしい災厄を国にもたらす。地方の郡領の娘・綾芽は、親友の死の真相を探るため上京した。そこで偶然、荒ぶる女神を鎮めてみせた綾芽は、王弟の二藍に斎庭の女官として取り立てられる。だが、それは国の存亡を揺るがす事件の幕開けに過ぎなかった……。(Amazonより)
古代和風の国を思わせる世界と神を絡めたファンタジー。おお、かなり込み入っているぞ! と楽しく読みました。
大君の妻妾が集う斎庭。ここにいる女たちは二種類に分けられる。大君の伴侶としての妻妾、そして神を招きもてなす祭祀。
この世界には兜坂国の神々と、外の世界の玉盤の神がおり、己らのみを崇めることを求める玉盤の神に対して兜坂国はかろうじて抵抗を続けている……と、ここまで書いても神々の住む、箱庭めいて作り込まれた設定でわくわくしてしまう。
主人公の綾芽は故郷では粗雑な扱いを受けながら、励まし合った親友の凶行の真実を確かめるため斎庭の采女になろうとやってきた。結構荒っぽい口調だけれど凛とした立ち居振る舞いと「誰かのために」と思ったときの行動力はとても清々しい。これは二藍じゃなくても目が離せなくてつい笑っちゃうかも。
斎庭の中心から程遠かった綾芽が、最後の神招きで上の方々と力を合わせる展開は熱かった! ここでは才がすべて、という言葉通り、儀式を成功させて出来る限りの人命を守った綾芽を認めてくれたんだろうなと思うと嬉しい。
外と内から揺らぐ斎庭、ひいては国を守ることができるのか続きが気になる。

年下に片思いする文系女子、不倫に悩む美容マニア、元彼の披露宴スピーチを頼まれる化粧品会社勤務のOL……。恋愛下手な彼女たちが訪れるのは、路地裏のセレクトショップ。不思議な魅力のオーナーと一緒に自分を変える運命の一着を探すうちに、誰もが強がりや諦めを捨て素直な気持ちと向き合っていく。「あなたといたい」と「ひとりで平気」をいったりきたりする女心を優しく励ましてくれる物語。ルミネの広告コピーから生まれた恋愛小説。(Amazonより)
「服を着ること」をテーマに様々な女性を描く連作短編集。
するっと読めて不思議だなあと思っていたら、ルミネのコピーライターさんの作品だったんですね。でも女性の描き方というか、ファッションの感じがちょっといまっぽくないなあと思ったら刊行日が2014年。こういうささいな部分を描けるのはやっぱりファッションビルのコピーを作ってきたからなんだろうな。
あくまで日常のワンシーンに常にファッションがあるという話なので、大きな展開はなく、服を通じて自分や相手を見つめ直していく。そういう身近さが面白かったです。

小さい頃に聖女候補だったオルレアン伯爵家の貧乏令嬢セレナ。幸い(?)にも聖女に選ばれることなく、慎ましく生きてきたが、いよいよ資産が尽き……たところに舞い込んできたのが第三王子ソル・トロワ・クラヴェル殿下との婚約話。
お金のための政略結婚による婚約者とはいえ、美しい顔立ちと優しい性格を持つソルに対する親愛の感情を持ち、仲良くやっていたはずのセレナだったが――
「……今、なんとおっしゃいました?」
「だから、『ざまぁ』してほしいんだ」
「ソル殿下。『ざまぁ』してほしいだけでは、よく意味が分かりません!」
婚約破棄をしたいがために変なことを言い出した王子様だけど、それには深いわけがあるようで――?(裏表紙より)
王子様が「ざまあ」してほしいと言ってくるんですけど!? という掴みから始まる聖女もの。
なんですが……作中で「ざまあ」が何を意味しているのか説明してくれないので、何故「ざまあ」してもらうことが婚約破棄することにつながるのかわからないまま、聖女関連の話になるという……。写真が存在したり、目立たないようにといいながら超絶目立つ行動をしていたり、どう捉えればいいのか迷いながら読んでしまいました。
セレナが、何を考えているのかわからなさすぎてどうしたらいいのか……。ここまで理解しにくい主人公は初めてかもしれない。何も考えていない、でいいのかな。
続きがあるようですが、何を考えているかわからない人などちゃんと全部説明してもらえるのか気になります。

能登の事件を解決し、東京への帰路についた一行は、道に迷ってひょんなことから山に囲まれたダム湖にたどり着いてしまう。「オフィスは戻り次第、閉鎖する」ナルの突然のSPR閉鎖宣言に戸惑う麻衣たちは、急遽、湖近くのバンガローに滞在することに。そこへ舞い込んだ、廃校になった小学校の調査依頼。幽霊が出るという校舎には恐るべき罠が仕掛けられていた――。すべての謎が明らかにされる最終巻。驚愕の真実とは!(裏表紙より)
うおおお!? な真相と、やっぱり……な真相と、ほろりしんみりとした各々の繋がりが見られたシリーズ最終巻。
タイミングがなくてこのシリーズは読んでいなかったのですが、リライトそして文庫版が出たのをきっかけに読みましたが、面白すぎてページをめくる手が止まらなかった。
麻衣が見る夢のナル、あまりに性格が違いすぎて本人じゃないんだろうと思っていたんですが、その正体が決して安易な設定じゃなく心霊や超常現象をテーマにした本作の内容に即したもので、ただただ脱帽。
学校に始まり学校に終わったシリーズで、麻衣の成長が著しく見られたのもこの第七巻。麻衣らしい、普通の人の感性で霊に寄り添って浄霊する展開、なんだかよくわからない涙がいっぱい出てしまった。そして渋谷サイキックリサーチに集った個性的な面々に告げる正直な気持ちや、ナルへの叱責、ああもう大人になったんだなあと思って嬉しく見守りました。
今後も続きそうだけれど、一応は出たけれどシリーズ中断なんですよね。何らかの形で読みたい。本当に面白かった。

日本海を一望する能登で高級老舗料亭を営む吉見家。代替わりのたびに多くの死人を出すという。依頼に来た吉見彰文の祖父が亡くなってすぐ、幼い姪の葉月の背中に不吉な戒名が現れた。「おこぶさま」、「十八塚」など古い伝説の残る土地に暮らすその一族に襲いかかるのは、先祖の祟りか、何かの因縁か、家にかけられた呪いなのか。その正体を探る中、ナルが何者かに憑依されてしまう。リーダー不在のSPRに最大の危機が迫る!(裏表紙より)
巻が進むごとに厚みが増しているように思うのですが、面白いので全然気にならないんだよなあ。
前回の「鮮血の迷宮」関係者の紹介を受けて、高級老舗料亭から依頼があった。代替わりの度に多数の死者を出す家の謎。これは呪いなのか、という話。
偶然寄り集まるようになった専門家たちがすっかり仲良くなったのが、怖い。最後に全部ひっくり返されそうで。けれど仲がいいのはすごく読んでいて嬉しいんだよぉお。ここに来てその話する? みたいな種明かしが始まるのも、最後の話に向けて助走をつけている感じがすごい。怖い。
「鮮血の迷宮」も怖かったですが、個人的にはこの「海からくるもの」が一番怖かったかもしれません。前述の、終わりに向かっている感は別として、死人が出る理由が神で、神の理屈の結果でというのが、もうどうにもならないじゃないかと思いました。

生まれながらに病弱な珠子は、ひょんなことから美しき龍神・深渕と縁を結んで一命を取り留め、周囲も認めるおしどり夫婦(バカップル)に成長! 図らずも龍神の妻となった珠子は、自分を救ってくれた深渕の役に立ちたいと陰陽術を学び、“龍神憑き”の女陰陽師として巷で名を馳せるように。そんなある日、評判を聞きつけた若き陰陽師から宮廷のあやかし退治を依頼される。困っている人がいるならば、龍神の妻として立派に務めを果たしてみせる! そう意気込み、怨念渦巻く京の謎に立ち向かおうとするが? 最強めおとタッグで送る平安宮中物語。(裏表紙より)
そう長生きはできまいという病弱だった珠子は、ある日現れた何者かに助けられ、妻となることを約束する。実はその相手は龍神で、という話を平安時代にからめたもの。
「龍」と「竜」の違いをこういう風に描くのかー! というのがとても面白かった。
横文字の言葉を織り交ぜてくる深淵は、そのまま外国からやってきたなにものか。ドラゴンは悪魔の使いだから、彼の怪しい言動も腑に落ちる。
そんな彼が隠しているもう一方の側面を感じ取りながらそれでも愛しているし、信頼してもらおうとする珠子、まじ尊い。多分西洋の国だと聖女なんだろうなあ。魂の描写がそんな感じだったし。
個人的には生臭尼僧の祈流と安選のコンビが気になります。この二人、ここに至るまでにめっっっちゃくちゃ色々やらかしてますよね?

増改築を繰り返し迷宮のような構造を持つ巨大な洋館・美山邸。長年放置されていたその館の周辺で行方不明者が相次ぎ、ナルの師匠を名乗る森まどかが、調査依頼を持って突然現れる。長野県の館に向かうと国内外の名だたる霊能者や心霊研究者たちが招集されていた。麻衣たちがいつものように調査を進めるうちに事件は起きる。館にいる人間が姿を消し始めたのだ。複雑怪奇な洋館に隠された秘密とは。ゴシック趣味溢れるシリーズ第5弾。(裏表紙より)
めちゃくちゃ面白かった。「何かを閉じ込めるために増改築をしたんじゃないか?」と言われ始めたところから、じゃあその中心部に『何』がいるんだ? と考え始めると続きを読むのが怖くて怖くて楽しかった。
これまで謎めいていた登場人物たちのことや関係性がゆっくりと紐解かれていくのが、この続きを読むのが怖いなあと思わせる。リンとの交流はよかったんだけれど、麻衣の事情がびっくりした。確かにずっと不思議だったんだけれど、いまここでそれが明かされるの!? めちゃくちゃ重大な何かにつながってない!? と戦々恐々としている。

双子の妹マレイカの身代わりとして焼け落ちる城に一人残った王女ライラ。そんな彼女の前に、反乱軍の将で、かつてこの国に捕虜として囚われていた亡国の王子カリーファが現れる。過去、マレイカに虐げられた彼は、恥辱の恨みを晴らすため、別人と知らぬままライラに呪詛を施し薄暗い地下室で陵辱し続ける。しかしある日、ライラこそが過去の凄惨な日々を支えてくれた初恋の人だったと知り―。謀略に歪まされた純愛の行方は…… (Amazonより)
アラビアン風世界観。忌み子とされたために後宮で育ちながらも、双子の妹の影として、王女として立つこともなかった不遇の王女ライラ。亡国の王子だが前王と王女マレイカにしたたかに虐げられ、下克上を果たした新王カリーファ。ライラがマレイカとして振る舞ったため、カリーファの奴隷として扱われるようになるという歪みねじれた関係から始まるTL小説。
これが、めちゃくちゃ、よくってですね……。
性行為をちゃんと暴力として扱っているの、すごいと思います。相手を屈服させ心を折るための行為。だからこそライラやカリーファが心の奥底に秘めた純愛が煌めく感じがして。またマレイカの歪んだ言動が際立っている。
悪者を処断しておしまいではなく、マレイカもまた、ライラの怠慢をきちんと責めるんですよね。ライラが背負うはずだった暗黒面をすべて引き継いでしまったマレイカだからこそ、綺麗なままでいるライラへの鬱屈した感情や許せない部分を突きつけられたんだと思います。周りはそれを、洗脳だ、信じるな、と言うんですけれども、そういう側面はあっても、事実ではあるんですよね。だからがんばれライラ。
傷付き心をすり減らしていたカリーファがかつての行いを悔いて、解呪の方法を求めて土下座するところもよかった。暴力を用いた相手が心底悔いて謝罪するシーン、なかなか書けないと思う。
個人的におっと思うところがたくさんある作品で、面白く読みました。

緑陵高校の生徒会長・安原の懇願を受け、麻衣たちは調査に向かった。校内ではおびただしい数の怪談や怪奇現象が囁かれ、生徒たちは「ヲリキリさま」と呼ばれる奇妙な占いに熱中していた。生活指導教員の松山の高圧的な態度もあり調査は難航。4カ月前に起こった生徒の飛び降り自殺と一連の怪奇事件との関係は? 麻衣が見た不思議な夢の意味は?新キャラクター・安原少年が登場。解説・宮田愛萌(日向坂46)(裏表紙より)
4巻も面白かった! 麻衣の能力が少しずつ役に立ち始めるんだけれども、ここで得意になるんじゃなく、失敗を恐れたりもっと悪化したりしたら、と思うところがよかったなあ。
霊能者チームもいい感じにまとまってきたけれど、前巻に引き続き真砂子が不調なのが気になるのと、今回突っ込まれていたけれど、麻衣はいったい学校の方はどうなっているの……? 何か怖いことになってない? 大丈夫? とちょっとどきどきしています。夢の中のナルのこともあるし、何かとんでもない秘密が隠されていそうでそわそわしてきた。
前回は女子校、今回は共学校と、学校が舞台だけれども話のテイストが違うのが面白い。すごいなあ。定番の「墓地の上に学校が建っている」という怪談にリアリティを持たせつつ物語を作るとこうなるのか、と今回もしみじみ面白さに唸りました。