読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
翠子と遠哉は、17歳の高校生の双子の姉弟。数年前に母は亡くなり、ふたりは父親とともに穏やかな毎日をおくっていたが、翠子には繰り返し見る不思議な“水の夢”があった。その頃、友だちの彼氏を奪っては捨てる魅力的な女と、西洋人のようにキレイな顔の男が殺される——ふたつの殺人事件は翠子と遠哉の暮らしに不思議な影を投げかけて……。
ギリシャ神話の神が蘇る幼想ストーリー。(裏表紙より)
ギリシャ神話の神々がこの世に転生……というのか、人の姿を持って降り立っていたら? というお話。思わせぶりな登場人物や会話が、ああ昔こういう作品たくさん読んだなあということを思い出させて懐かしい……。
水という言葉がとても印象的な作品でした。
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19世紀末のロンドン。伝統と革新が渦巻くこの街の一角で、仕立て屋を営むジェレミーの店には、風変わりな人物が入り浸っている。彼の名はエドガー・ノースブルック。貴族でありながら、先見の明と奇抜なアイデアを併せ持つ、自称デザイナーだ。
2人はある日、客の実業家から、最近雇ったメイドが「自分は17世紀のセイラムで魔女狩りに遭った」と言っているという話を聞く。折しもロンドンでは人体が突然発火するという奇妙な事件が続発していた。好奇心旺盛なエドガーは、調査に乗り出すが……!?(裏表紙より)
近代化が進み、コルセットがやがて廃れるであろうという新しい時代を迎えつつある19世紀末ロンドンを舞台にした、貴族の三男坊デザイナー(探偵役)と仕立て屋(助手役)のミステリー。
その時代の空気が感じられる描写がとても素敵だなあと思いながら読んでました。女性たちもかなり活動的になってきていて、みんな気が強そうだなあと思ったりも……笑
エドガーがジェレミーの腕に惚れ込んで、ジェレミーはエドガーの発想に惚れ込んでいるっていうのがいいなあ。互いに尊敬できる相棒っていいですよね。
茶髪ヤンキー系でスクールカースト上位の染谷に助けられ、クラス内で孤立する連中を集め始めた真琴。結果、非主流派が輝き始め、教室は活気づく。はたして、真琴の目的はなんなのか。学校に「革命」を起こすことはできるのか——。
気高き魂の出逢いが、めぐりゆく絶望の季節に終止符を打つまでを描いた、切実な希望の物語。圧倒的筆力で胸の奥にまっすぐ届く、特別な青春小説・後編。〈解説・穂村弘〉(裏表紙より)
見えない圧力に屈しないと決めた真琴は、染谷と協力してカーストの転覆を図る……のですが、割と穏やかな方法で、好きなものは好きと言えばいいじゃない、私はそれを受け入れるわ、という姿勢を貫くんですよね。それが非主流派と呼ばれる一定層に届き、多種多様な趣味や嗜好を持つ生徒たちが互いを受け入れ始めるんですが……やっぱり出てくるよなあ大人。その大人によって主流派が再び盛り返し、学校は統制され始める。
するとまた話のカラーが変わって、夢なのか現実なのかよくわからないものと真琴が戦い始めるのが印象的でした。
革命家だったとも言われる父と、当時15歳の母とが「妥協」せずに生まれた娘・相原真琴、13歳。妥協に背を向け、クラス内で特殊な立ち位置の優等生へと育った彼女は、ある日、迫害されている同級生・南一に出逢う。彼の描く絵は、周囲には理解できない特殊なものだった——。孤高の青春を生きる少年少女たちが出逢い、時に傷つけ合い、時に惹かれ合う様を軽妙な筆致で綴った、圧倒的な青春小説・前編。〈解説・宇野常寛〉(裏表紙より)
普通でない両親の元に生まれ、普通でない家で育つ、真琴。凄まじいバランスの元に彼女は優等生ながら孤高を保ち、問題児扱いされている南や染谷と適切な距離の元に関わっていく。
はっきりと書かれていますが、発達障害を持つ人たちが登場して、その人(子ども)たちの生きづらさは立ち位置などがわかる。これ、真琴の視点がなかったら読めなかったかもしれない。理性的に距離を取ってしまうか、思考をストップさせて読んでしまっていたかも。真琴がいて「どうしてそうなるのか」を考えて言葉にしてくれるから、読めるんだと思う。
何故タイトルが「悦楽の園」なのか下巻でわかるのかなあ。
生島ちほ14歳、今日づけで男子になってしまいました——。同じ中学に通う仲良し女子6人組を襲った、不思議なヤマイ。関節痛のような痛みを伴うそれは、驚きの現象を引き起こすものだったち 親友男子に告白されたあと、男になってしまったちほ、オトナになってしまった咲、そして……犬にまで!? 一方、市内では女子中学生を狙った猟奇殺人事件が起きていて……。この非常事態に、少女たちは!? 予測不能な変身系青春エンタメ!(裏表紙より)
単行本で『14f症候群』として出されたものが、文庫判になる際に加筆修正、改題したもの。女子中学生の非日常で、わーっと突き進む話かと思いきや、想像以上に黒々していておおっ……と圧倒されてしまいました。
男になってしまう「性」大人になってしまう「欲情」犬になってしまう「従順」友人になってしまう「独占」異形が身体に宿ってしまった「死命」。改めて見てみると、各タイトルからして全部不穏だったわ……。
サスペンスでホラーだった「従順」が面白かったです。猟奇殺人事件に関わることになってしまった、志乃の心理状況と話の展開が、ひいーってなる感じで。
商店街の小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マル。シェフ三舟の料理は、気取らない、本当のフランス料理が好きな客の心と舌をつかむものばかり。そんな彼が、客たちの巻き込まれた事件や不可解な出来事の謎をあざやかに解く。常連の西田さんが体調を崩したわけは? フランス人の恋人はなぜ最低のカスレをつくったのか? 絶品料理の数々と極上のミステリをどうぞ!(裏表紙より)
お腹が空きましたー!! フレンチなんて数えるほど食べたことないけれど、ビストロのこういう料理は絶対美味しいんだよねえええ。
そんな美味しそうな料理と、お客さんたちが持ち込み日常の謎を解くお話。やっぱりご飯にまつわる謎が多い……かな?
「タルト・タタンの夢」「ロニョン・ド・ヴォーの決意」「ガレット・デ・ロワの秘密」「オッソ・イラティをめぐる不和」「理不尽な酔っぱらい」「ぬけがらのカスレ」「割り切れないチョコレート」を収録。
いちばん好きだったのが「割り切れないチョコレート」で、ああ、すごくいいな、って思いました。
横浜の外れに佇む寂れた建物、WMUA・NITTOH美術館。ここに勤める怠惰な学芸員・鷹栖晶には、もうひとつの顔があった。
それは、存在証明不可能生命体——通称・悪魔を視認できる唯一の人間であること。そのため晶は、エジプトで事故死した親友・音井遊江の肉体に憑依した謎の悪魔と不本意ながらコンビを組み、他の悪魔と交渉して彼らにまつわる事件を解決する任務を負っていた。
ある日、美術館に持ち込まれた謎の壺の調査を続けるうち、晶と遊江は、『F機関』を巡る陰謀に巻き込まれる——。(裏表紙より)
悪魔研究組織と異能集団と、謎の美術、芸術品と、建築物と。妖しいものをめいっぱい詰め込んだ、オカルトもの。
キャラクターみんなのどうしようもない感が栗原さんだなあ、と嬉しくなる。晶と音井(悪魔)の関係とか、晶の善人なんだけど壊れてるようなところとか。晶、音井、森木の複雑な関係性とか。
この世ならざるものが登場するシーンや、異能がぶつかるシーンがとても恐ろしくてぞくぞくして楽しかったです。
カスミには高校からの親友、中岡碧がいる。碧がカスミの髪型や持ち物を真似することからはじまった友情だけれど、同じ美大に進んで、今でも仲良くやっている。だがある日、高校時代の友人から「碧とばかりつるんでいるから恋人もできないんだ」と言われ、カスミだけ合コンに誘われてしまう。それ以来、カスミは碧との“友情”についてもやもやと考え続けていて……?
私たち、無理して変わろうとするのやめない?(裏表紙より)
『雨のティアラ』に登場した三姉妹の、長女カスミのお話。メグムが白墨邸で家族の秘密と出会っているとき、カスミは親友の碧のことを考えていた。
種明かしにえっそれずるくない? と思ったものの、ううんしかし実際こういう子もいるよなあ、とちょっと考えてしまいました。そう考えてみれば作中でちらほらジェンダーレスな会話や設定が見られたのはこういう意味かと腑に落ちる。マイノリティを描いてたんだなあ、これ。軽い読み心地の話だけれど、「自分らしく」の難しさと、そうあろうと決めた自分たち、そして周囲の理解のありかを描いていて、優しい話だなあと思いました。
秘めたる魔法の力をもつ石は、もつれた運命の糸をゆっくりと巻き取り始めた。邪悪な闇の瞳を持つ見習い魔女ジリオン。青狼の毛皮を纏う王子ユルスュール。魔王。黄泉の国。伝説の湖。来るべき恋人を待ち続ける水売り娘——愛と憎しみ、光と影が交わる刹那、世界はめぐり、すべてはあるべき場所へ……。果てしない冒険と限りない夢を壮大なスケールで描く書下ろし本格ファンタジー。(裏表紙より)
完全に乗っ取られたジリオン。ユーリは導かれるままに塩の湖へ。物語はふたりから離れて、湖の水を守る水売り娘とその家族の物語に移る。
前二巻のふたりが霞むくらい、水売り娘ヴァリとその弟マシモの物語が面白くて、いやいやでもジリオンとユーリはどうなるんだ、と思ったところでようやくお話が結末に至る。ばらばらだったものが水の流れによって繋がれたように思われたのは、なるほどファンタジーという感じがしました。
最後の短いエピローグに、喜びと光がぎゅっと詰まっているようで、どきどきしながら読み終わりました。