読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
当然、僕の動きも読み込まれているのだろうな——二つの事件は京極堂をしてかく言わしめた。房総の富豪、織作家創設の女学校に拠る美貌の堕天使と、血塗られた鑿をふるう目潰し魔。連続殺人は八方に張り巡らされた蜘蛛の巣となって刑事・木場らを眩惑し、搦め捕る。中心に陣取るのは誰か? シリーズ第五弾。(裏表紙より)
そばに置いていた小型版の国語辞書よりも分厚く、漢語辞典よりも分厚い文庫版。
目潰し魔の事件に、ミッション系女子校での黒ミサと少女売春の事件が重なっていき、棚機つ女の話や夜這いの話などからぐるぐると回って中心(真相)にたどり着くという構成だなあなんて思いながら読み終わりました。最後まで読んで最初に戻って読みたくなってしまったのもお見事としか言いようがない。そしてこのシリーズに出てくるうんちくは無駄なものが一つもないのがすごいなあと思う。
真相が意外というか、なるほどー! というものだったり、かと思ったらちょっとオカルティックだったり、それは生きづらい……と思うものだったりして、雰囲気とか共感部分の塩梅がとても面白いなあ。面白く読みましたが、いかんせん長いし分厚いのでなかなか読めないんだ……。
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20世紀初頭、ベルリンに存在した人と人以外の存在を繋ぐ探偵事務所。長い任務から帰還した探偵ジークは、人狼の少年の世話と新しい依頼を押し付けられた。依頼の背後に見え隠れする人狼の影——巨大な陰謀は静かに幕をあけ、二人を陰惨な事件に巻き込んでいく。第2回C★NOVELS大賞特別賞受賞作に書き下ろし短編「クリスの奮闘録」を収録。(裏表紙より)
ドイツにある、人外たちが所属する探偵事務所。探偵ジークが人狼の少年エルを押し付けられたことから、人狼にまつわる事件に関わることに。
次から次へと人外のものたちが起こす騒動がなんだか楽しい。全然落ち着かないし、新しい人物が頻繁に出てくるし、ひっきりなしに面倒ごとが起こるんですが、エルが可愛くて癒されます。それからジークの正体がなんなのかと思いながら読んでいくと、そうきたかーと。でもだったらアドルフは助けられなかったのかな……嗅覚が鋭いとかないんだろうか……とちょっと悲しくなったりもしました。
エルの可愛さは短編の「クリスの奮闘録」でいかんなく発揮されていて、ごろごろしました。それから誰かから見たジークも、本編を読み終わった後だと面白いなあなんて思ったり。
江戸幕府が瓦解して五年。強面で人間嫌い、周囲からも恐れられている若商人・喜蔵の家の庭に、ある夜、不思議な力を持つ小生意気な少年・小春が落ちてきた。自らを「百鬼夜行からはぐれた鬼だ」と主張する小春と同居する羽目になった喜蔵は、様々な妖怪沙汰に悩まされることに――。
あさのあつこ、後藤竜ニ両選考委員の高評価を得たジャイブ小説大賞受賞作、文庫オリジナルで登場。〈刊行に寄せて・後藤竜二、解説・東雅夫〉(裏表紙より)
百鬼夜行から落ちてきてしまった、妖怪の小春。正体は妖怪なのでは? と周囲から恐れられている強面で無愛想な喜蔵。なんだかんだと一緒に暮らすことになった二人だったけれど、喜蔵の周囲で妖怪による事件が起こり始め、それに首をつっこむ羽目に。
なんだかかなり文章が読みづらいなあと思ったんですが、恐い恐いと言われている喜蔵の優しいところや、生意気なことを言いながらもちょっとした寂しさみたいなものを抱えている小春の姿が生き生きとしているなあと思いました。
刊行に寄せてを読んで、発行年を見たら2010年7月。今はかなりあやかしものってメジャーなので、そうかこのころはまだ少なかったのかあと思いました。
黎明国女王位の正統なる継承者が山越国にあり——スウェンが女王に即位して一ヶ月半、不穏な密書が朱暁宮を揺るがす。正統なる継承者“もうひとりの王女”の正体とは……? 混乱の中、諸国を統率する重圧に悩むスウェンの傍で、弟のキナンもまた自らの内に潜む昏い本性に苦しんでいた。真相を突き止めるべく動きだしたスウェンだが、そこには女王の血脈をめぐる隠された真実が……。
できることならどうか、幸せに生きてほしい——花の痣と予知の力を背負う王女たちの運命を描くグランドロマン、続編登場!(裏表紙より)
黎明国花伝シリーズの二巻目。スウェンは女王として、キナンはその補佐として、ルシェは次代を残すための結婚を控えながら姉兄を助けるために暗躍している。その最中、もう一人、女王位を継承すべき王女がいるという密書が見つかる。
今回はスウェンがメイン。かなり男前なスウェンなので、言動がまさに王者の貫禄。けれど長女らしい不器用なところもあって、はらはらしながら見守りました。前巻で思う相手がいたという話を聞いて、やっぱり……? と思いましたが、最後に明かされたスウェンの状態にうああ……って呻いてしまった。キナンの歪みといい、もうひとりの王女の存在といい、前女王は本当にこの姉弟をめちゃくちゃにしたんだなあ……。
よかったのは今の状況を次の世代のために、と前向きに行動する三人と、それを支える周囲がいい人たちばかりということだなあ。
そして今回、ルシェとエルダがめっちゃ可愛かったので嬉しかったです! 政略結婚だけれどお互いにこの相手と決めた理由があって、ちゃんと夫婦になろうとしているところがにやにやします。ルシェは賢くて口が回るせいで多分それとは思ってないんでしょうが、エルダはちゃんと一目惚れした自覚があったのが! もーそれは恋! 二人とも恋してる!
このシリーズはさらっと書いてあるところの裏にすごくいろいろあることがわかるので、その裏を想像するのが楽しいです。できればルシェとエルダが皇国で何をしていたか読みたいなー(ごろごろ)
女でありながら武人の姉・スウェンと、知に秀でた妹のルシェ。
身体のどこかに浮く花の形の痣と、「星読の力」と呼ばれる予知能力を併せ持つ女王が国を治める黎明国で、姉妹は二人ともが女王候補の資質を持ちながら、争いを避け辺境の地で隠れ暮らしていた。
しかし女王の陰謀で肉親を殺され、離ればなれに暮らすことを余儀なくされる。一族の無念を晴らし苦しむ民を救うため、女王と戦うことを決意した姉妹だったが、再び女王の魔の手が迫り——。
荒野に立つ姉妹の運命が交錯するグランドロマン、開幕!(裏表紙より)
アジアンな異世界、不思議な力を持つ女王が治める国。権力争いを避けて辺境に暮らす三人の姉弟。長女のスウェンは痣を持ちながら武人として生きている。直接血のつながりはないが長男のキナンは病弱ながら強い星読みの力を持つ。末妹のルシェは活発で賢く将来を期待されている。父母と里人の見守りを得た幸せな暮らしは、女王によって奪われる。
このうち、末妹のルシェをおおよその主人公として、迷走し衰退しつつあった国を救う物語です。
前半の読みづらさが辛かったんですが、話が流れ出すと面白くって、一気に読んでしまった。でもこれ文庫三冊分くらいでやる話かなあとも思いました。もっと読みたいんですよ! 『辺境の女将軍』として民を守るスウェン、『黒様』として流浪の旅を続けながら知恵をつけていくルシェ、女王の夫として囚われながら未来を見るキナン。それぞれにどんな出来事があったのか詳しく読みたい!! すっきりまとまっているこれも面白かったんですが、詳細に書いてほしかった……! エイベンとかエトウとか美味しい役どころじゃないですか!
いやしかし、それでもエルダとディノの兄弟は美味しかったです。そういうことだろうと思ったけれどそういうことだった!(旨い)ときめきましたごちそうさまでした!
次巻が当分多ければ嬉しいなあと思いつつ。
焼けた薔薇、毒入りワイン、仮面の女そして狂疾の血。それは、古い革表紙の手帳に遺された言葉だった——。東日タイムズの影谷貴史は、昭和4年に起きた『キネマ屋敷連続殺人事件』を調べていた。5人の男女が殺されていながら、犯人も被害者も不明であるというこの事件の謎を探るべく、貴史は事件現場の島に向かった。だが、たどり着いた瞬間、光に包まれ、気づくと、74年前の事件の渦中にいた。人気ゲームを小説化した戦慄のサイコ・ホラー!(裏表紙より)
タイムスリップ(?)した先で、自分が調べていた、孤島で起こった殺人事件に巻き込まれた主人公、影谷。芳野堂一族で起こった殺人事件は、翳谷村で起こった虐殺事件につながっていて……。
元がゲームというのが意外なほどサイコホラーで、時間が関係しているところもあったり、ラストなども、味付けが面白い事件ものでした。
読んでいてぞっとしたのが、茉利絵に対する印象だったかなあ。最初は普通の、敏感なだけの気弱な女の子かと思ったら、実は結構危ない感じだっていうのが途中から分かって。彼女が豹変しなくてよかった……。
「潮時、か」田中庸は電車の中で独りごちた。出版社で働き始めて6年目。大御所作家を怒らせ、スランプ中の若き女流作家・些々浦空野に担当替えとなったのだ。
一度は編集者としての未来に見切りをつけようとした庸だが、空野のデビュー作に衝撃を受け、新作企画を持ちかける。しかし空野は“書いたことが現実になるため執筆できない”と言い出して……。そんなある日、庸は空野が描いた物語をなぞるように、奇妙な事件に巻き込まれる。
若き小説家をめぐるビブリオ・ファンタジー、開幕!(裏表紙より)
面白かった! 大家族で育ち、剣道をやりながら弟妹たちの面倒を見ていた学生時代を持つ、顔がいいけれど真面目を絵に描いたような硬派な編集者、田中庸が、めんどくさくなったら食べなかったり、適当な服を着てごろごろしたり、得意なことは寝ることと豪語する作家、些々浦空野から原稿を取ろうとしながら、ご飯作ったり取材旅行行ったりお世話する話。
田中くんが、非常に面倒見のいいオカン体質の男の人で、ああもうこりゃいい人だな……と。愛が深くて熱いタイプで、実際に行動できる人って稀有だなーと思って読んでました。テント張る、って言った時、多分彼は大真面目で本気だったんだろうなあと。
そして、ダメ人間空野さん。このぐうたらな感じが、とってもリアルです。
物語は「書いたことが現実になる」という怪奇現象を交えつつ、田中と空野が編集と作家として信頼関係を結んでいくようになっています。この、田中くんの熱さがじいんとするんだよなあ……。自分以上に、自分の書いたものを大事にしてくれる人がいるって、救いになるように思いました。
8歳で発達障害と診断された僕が、なぜ自分の才能を生かす場所をみつけて輝けるようになったのか。同じ障害がありながら、いつも僕を信じて導いてくれた母。そしてアメリカの「発達障害」に対するおおらかな環境と、学んだ英語が自信を持たせてくれたこと。されて嫌なことを人にはしないと決めた、人として愛される生き方など。ADDの特徴である衝動性を抑え、苦手なコミュ力を克服し、モデル・タレント・役者として歩んできたこれまでの道のりを語る。母、主治医、友人・又吉直樹氏のインタビューも収録。(カバー折り返しより)
発達障害があると公表した栗原類さんの、幼少期から今までの生活や取り組み、家族からの支援などについて書かれています。どう生活していくか、何に気をつけていくか、というのを自分のことをよく知って、周囲も知ってもらっている、ということがよくわかりました。よく分かったからこそ、すごいなあ……と思う。疲れると判断力が鈍るからなるべく早く切り上げなければ、周りに迷惑をかけてしまう。だからちゃんと気をつける、と誰にとってもすごく難しいことをちゃんとするって、すごい。
ADHDのお母様もすごい。息子にとって何を伸ばせばいいのかを見極めて、やらせて、見守って、社会生活において重要なことはミミにタコができるほど繰り返す。理解と、支援と、見守ってくれる人の存在があれば、発達障害の人は自分の努力でもって苦手の大部分は克服できるんだな。
俺たちの時代で、断絶を起こしたくない。
『THE FUTURE TIMES』編集長として、ASIAN KUNG-FU GENERATION のゴッチとして、市井に生きる一人の阿呆として――
書かずにはいられなかった魂の言葉たち。
2011.3.9以降、書きためた日記を待望の書籍化。(帯より)
こんなところでこういう人がいたよ、というエッセイから、脱原発、憲法改正、デモについてなどを綴ったエッセイ。アジカンのゴッチって、こういうこと考えてたんだ、と初めて知りました。どの文章もなんだかぎらぎらしていて、秘めたエネルギーを感じて、読みながらちょっと呑まれました。
そうだよなーと思ったのは、「テレビ出演について——露出狂の詩」。ミュージシャン側は、相手の顔も名前も知らないのに、相手は自分のことを知っている。そして突然怒りをぶつけられたりする。それは呪いでしかない、という。ほんと、そうだよなあと思いました。自分は知ってるけれど相手は知らない、という状況を、よく考えてみる必要があると思う。
本書には教育相談室を舞台にした十三の架空の事例が紹介されています。本文はカウンセラーとクライエントの会話の形で綴られており、各事例でのカウンセラーの見たてと対応がわかりやすく示されています。平易な文章の中には豊富な経験を持つ著者による臨床の知見が溢れており、本書を読み進めていくなかで著者の考えるカウンセリングのあり方を知り、カウンセリングの要諦にふれることができるでしょう。
また、各章末にあるカウンセリングにおける重要キーワードや最新トピックを解説した“コラム”も見逃せないものとなっています。
臨床実践の進め方がわかりやすい言葉で示されているので、専門家の方々だけでなく、カウンセリングに関心をもつ中学生・高校生や一般の方々にもお勧めの一冊です!(カバー折り返しより)
教育相談事例です。不登校、不定愁訴、いじめ、かんもく、知的障害など、小学生の子どもたちが示した問題を、実際にやりとりしたようにまとめています。すごく分かりやすくて、なるほどなあと思いました。2008年の本なので、教育現場の対応はもう少し変わっているように思いますが、こういう積み重ねがあるから、少しずつ周知されてきているわけで。この本には、理解のある先生方ばかりだったけれども、実際はそううまくいかないと思えるのがもどかしい。