読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
高校生の文人が唯一心を開くのはネットで知り合った年上の男性「アルタイル」。趣味の天体観測を通じて穏やかにメールを交わすつきあいだ。卒業式の後、友人の言葉に酷く傷ついた文人は駆けつけたアルタイルと初めて会いその人柄に更に惹かれるが、本名すらわからないまま交流は途絶える。数ヶ月後、姉が連れて来た婚約者はアルタイルその人で?(裏表紙より)
マイノリティゆえにネットで知り合い心を近付けた友人と、実際に会って心惹かれるも、恋人がいると知って交流が途絶えたその後、彼が再び、しかも姉の婚約者として現れた、という恋愛小説。
恋愛小説なんですよ。いまのこの世界の価値観ではBL小説という括りで出版されているけれど、まごうことなき同性愛をテーマにした恋愛小説。マイノリティに悩み、傷付くことを恐れて孤独になりがちな、小さな星のような人たちが一生懸命に生きて、恋をして傷付くことを丁寧に描いた作品で、読みながらため息ばかりついてしまった。本当に、なんて苦しくて切ない恋なんだろう。それが叶った瞬間の万感と、それですべてが幸福に終わるわけではない不安がきっちり描かれていた。
この作品、数年後に読むと絶対また読み心地が変わっていると思う。大事にしよう。
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舞台は神戸の造船所。開発課4年目の川村理奈には厄介なジンクスがあった――今まで気になった人は、必ず既婚者、もしくは彼女持ちというもの。そのおかげで恋愛経験はゼロ。
ある日、上司から取引先の財閥系企業・山本重工と合同で、海中での建築作業用ロボットの開発をすること、そしてプロジェクトのメンバーに抜擢されたことを知らされる。
上司とともに山本重工に赴いたところ、ジンクスの元となった高校時代の同級生・高嶋珊慈と再会――!?
爽やかお仕事小説!(Amazonより)
神戸を舞台にしたお仕事もの。フィクション感よりも神戸感、関西感のリアリティが細かくて、きっとよくご存知なんだろうなあと面白く読みました。あの辺ってパンが美味しくてパン屋さんが多いんだよなあとか、喋り方とか、お菓子とかそういうの。
小さいながらもとある造船会社の正社員として働く川村理奈は、大手企業との協同プロジェクトのメンバーに抜擢される。だが大手側のメンバーに高校時代の同級生、かつ気になっていたけれどとある出来事のせいで気まずくなっていた高嶋珊慈がいた、という再会から始まり、お互いの熱意や、変わらないもの、変わったものを少しずつ見つめ直していく、じわじわと思いを育てようとする恋愛ものでもありました。
結局二人の関係は変わったようだけれど回答は出ないまま、なのかな。いい感じになっていたらいいなあ。
両親失踪、自宅差し押さえ…突如天涯孤独の身になった高校生の万丈は、父が残した伝言通り、東銀座にある「ガルボビル」に向かう。そこで初対面の祖母「石さん」に出逢い、彼女と一緒に暮らすことになるのだが、どうやらそのビルには奇妙な先住者たちがいるようで。訳ありな者どもが集うガルボビル界隈で、石さんと万丈はちょっと不思議な商売を始めることになって…!?(Amazonより)
野梨原節炸裂!!! という作品。後半の急展開には置いていかれましたが、常盤に関するエピソードや台詞には大切なことがたくさん詰まっていて、弱ったときに読み返したいなあと思いました。
何よりも石さんの台詞。「昔はよかった」と言われるのが当たり前のように自分でも思っていたんですけれども、いまの方がよくて当たり前という感覚をすごく大事にしたいと思ったんです。確かに大変なこともあるし、過去の思い出の輝きは褪せないけれど、いまだから楽になったもの、軽くなったものは数知れないなとしみじみしたんですよね。
素敵な作品でした。
実質的に王家の女主人の座を手中に収めたベルタ。王妃としての初仕事で「遷都」という国家の一大事業に携わることになる。
公私ともに変わっていく、国王ハロルドとの関係性に戸惑う日々を送る中、ある日ベルタに南部からの密使が届く。王妃であると同時に、南部最大領主の娘であるという立場に翻弄されながらも、ベルタはハロルドとともに遷都先の二つの候補地へ視察に赴くことに。——「私たちの都に、この先ずっと、不断の富をもたらすために」
激動のヒストリカル・ロマン、待望の続刊!(裏表紙より)
南部の有力者の娘ベルタが第二妃として嫁ぎ、紆余曲折を経て「王妃」の称号を得てその立ち居振る舞いを求められるようになる第2巻。
この作品の面白さは、本質的には愛されたい、愛したい人であるベルタが、その生まれ育ちから為政者の言動を小気味よく発するところだと思うんですが、対比的に恋愛面のぎこちなさが切なくてもどかしくて、とてもいい。ハロルドも含めベルタも「政治バカ」なところがあるので、ちょっとずつちょっとずつ距離を縮めるところが微笑ましい。
1巻では若干ギスギス感のあった二人も、やっと落ち着くべきところに落ち着くかな? という終わりだったので、二人がもう少し仲良くなったところが見たいなー。3巻を読むか。
没落寸前の男爵家の令嬢アリスは、今日も最先端の流行に身を包み、ロンドンのパーティーにいた。だが長身と強すぎる眼差しのせいで、アリスは社交界で「パンサー(女豹)」と笑われていたのだ。結婚を諦めたアリスは婦人服のデザインコンテストで受賞し、オートクチュールの本場パリへと旅立つ。しかし、デザイナー志望の彼女に与えられたのは、マヌカンと呼ばれるモデルの仕事だった!(Amazonより)
舞台は19世紀半ばくらい? 貴族が力をなくしていく時代。男爵令嬢のアリスは恵まれた長身と強い眼差しのせいで結婚が決まらなかった。結婚を諦め、オートクチュールの本場パリへデザインを学びに旅立つが、慣れない異国の地で、天才デザイナーの奔放な言動や、彼の店の売り子たちに翻弄される日々で。
「時代が変わる」ことをファッションで描く作品というのはとても珍しいように思いました。隠れ過ぎた名作だと思うなあこれ。
小柄で愛らしく庇護欲をそそるような女性たちの中、アリスの長身とがっしりした体格は異端そのもの。案の定周りの評価は冷ややかだけれど、未来を見据える天才であるリュカはアリスを女神と呼んで次々に試す。
強気なアリスと言動の真意が掴みにくいリュカ、二人のすれ違いがもだもだするー! 二人とも根本的に不器用なんですよね。可愛い。
人に、特に男性に頼れないアリスが踏ん張って踏ん張って、ぐっと前を向く、恋愛に頼りきらないストーリーがすごく楽しかったです。
比翼連理の国王夫婦。私はそこに割り込む悪役の〈第二妃〉——。
辺境領主の嫡女として生まれ育ったベルタは突如、国王に嫁ぐことになる。それも王室に前例のない〈第二妃〉として。
愛されることも愛することもない生活を覚悟して輿入れしたベルタは、しかし儀礼的に済まされた三夜の儀式で妊娠する。継嗣のなかった王室にもたらされた待望の男児。その生母となった彼女は、やがて否応なしに正妃と対立し、我が子をめぐる権力闘争に巻き込まれていく……。
激動のヒストリカル・ロマン開幕!(裏表紙より)
悪役の第二妃ですが陛下の子どもを産みました、という悪役令嬢ものをとても真面目にヒストリカルに仕立てたお話。ただテンプレートと異なるのは、ベルタに凄まじい才覚と人望があって王妃になれる資格があること。
それまで生まれてもはかなくなった子ども、それも王子を産んだことでベルタへの見方が変わるのはこうした王宮ものとしては避けられないとはいえ、国王ハロルドも徐々に傾いていくのがなんか、なんか……それでいいのか、でもマルグリットが激しく傷付いたように彼も深く深く傷付いていたんだなということもあるしな、と割り切れない気持ちに。
ただ、結果的に王妃を退けたベルタも、両親から見れば愛情を欲しがり、父母のような家族を作ることをどこかで想像していた少女の心があるのだと思うと、胸が苦しくなる。
幸せを願うのとはまた違って、誰も不幸にならないでほしいと願って読み終えました。
劇団☆新感線の座付き作家、アニメーション「天元突破グレンラガン」「キルラキル」「プロメア」で知られる脚本家・中島かずきと、作品に関わった役者人、早乙女太一・早乙女友貴、新谷真弓、松山ケンイチ、堺雅人、朴璐美、梶裕貴、宮野真守、洲崎綾、藤原さくら、粟根まこと、上川隆也、福士蒼汰、十三名との対談集。
新感線は人生で一回生で見たいし、グレンラガンもキルラキルといったTRIGGER作品も大好きだし、と思って読んでみたんですが、中島さんのファンだけじゃなく作品のファンも必読という感じで、キャスト起用や俳優さんたちの仕事や心構えが語られていてとても面白かった!
また取り上げられている俳優さんたちがみんな存じ上げている方ばかりなのも、他のお仕事や出演のことを思い浮かべながら読めたので楽しかったなあ。
そうだったのかー! と思ったのが、上川さん。グレンラガン放送当時は何故起用されたのかよくわかっていなかったんですが、やっぱりあの頃アニメ好きなのは知られていなかったんですね。不思議だったんだよなあ、なんかすごくはまっているのが。
「松本清張賞」と「小学館文庫小説賞」をダブル受賞した平成のゆとり作家を自称する額賀澪が、担当編集とともにどうすれば本が売れるのか知るため、出版業界や近しいサービスに関わる人々に話を聞いていく。
作家となって本ができるまでの話。作家と編集者の関係。そして本が売れるためには何が必要なのか様々な人たちに話を聞くパート。そして得た答えを披露する最終章。
いやー……読んでいて身に沁みました。きついんだけれど現実なので、学ばせてもらうつもりで読みましたが、非常に大事な話が詰まっていました。創作における気構えはもちろんですが、まさかSEOの話が出て来るとは。2018年の本ですが、2021年現在も意外と大事だったりするのかな……?
「作者がドヤ顔してるかどうか」と語った三木一馬さんの話が面白かったです。実は、それは結構自信がある笑
「あら、目覚めましたね、姉様」「そうね、目覚めたわね、レム」王都での『死のループ』を抜け出したスバル。目覚めたのは豪華な屋敷の一室。目の前に現れたのは――双子の美少女毒舌メイド・ラム&レムだった。(Amazonより)
第二巻。最初のループから抜け出したものの、第二のループが始まる。エミリアの味方となりうる双子のメイド、ラムとレム。今度の死の原因はいったいなんだ。
現在放送中のアニメを見ていると、このときロズワールやベアトが何を考えていたのか想像して、なんだかぎゅっとなるな。特にベアトは。
心を折られるスバルを見ていると、人間臭くて応援したくなります。物語の主人公がループするとどんどん心が摩耗して人外になっていくんだけれど、そう簡単に心を虚無に染められない絶望感の深まりがこの作品の魅力だと思います。何度迎えても死は苦痛。積み上げたものが無に帰すのは絶望。
大泉学園駅にあるアパート、ヒット荘。大家の娘のときわは、学校帰りに店子の鈴木桂太がアパートの前で倒れているのを見つける。
空腹だという鈴木に冷やし中華を作ったときわ。久しぶりのまともな食事に感動する鈴木から、会社勤めをしながら人気少女漫画家“藤原ホイップ”の作画も担当していると聞く。(ちなみに、ネーム担当は金髪碧眼のチャラい美形、レオだった。)それがきっかけで、ときわは食生活がひどい彼らに、たまにご飯を作ることに!
困った大人たちに振り回されて成長するときわと、ほっこりゴハンの物語。(裏表紙より)
自分のクラスにカーストを感じているときわは、運動系の女子のグループに属している。そこでは少女漫画が好きなんてキャラじゃないから言えない。親友との間でだけの趣味として語り合うものだった。しかし大好きな少女漫画家が実は父親のアパートで部屋を貸していることを知り。
漫画家、というか創作と創作者と編集の闇がちらっちらっするのがすごく気になりました笑 これ読む人が読んだら胸をえぐられるんじゃないか。実際はこの物語のように上手くいかないからきついんだよねえ。
そんな話をしながらも、美味しいものを食べると気分は上がるし元気になる、という物語で、出てくる食べ物が素敵なこと。こんな美味しい料理を毎日ちゃんと食べて書き物ができたら素敵だなあ。
ラスト、ときわの世界も変わったようで、素敵な結末でした。