読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
ふとした日常の風景から、万華鏡のごとく様々に立ち現れる思いがある。慎ましい小さな花に見る、堅実で美しい暮らし。静かな真夜中に、五感が開かれていく感覚。古い本が教えてくれる、人と人との理想的なつながり。赤ちゃんを見つめていると蘇る、生まれたての頃の気分……。世界をより新鮮に感じ、日々をより深く生きるための「羅針盤」を探す、清澄な言葉で紡がれた28のエッセイ。(裏表紙より)
2010年の単行本の文庫化。元々は雑誌「ミセス」の連載。
十年以上前で梨木さんが言っていること、いま、まったくその通りという感じで、なんだかなあ……という気持ちになる。読んでいて、この本の世界の静謐さに対して、自分自身や世界の荒々しさ、どうしようもない状態に「わー!!」と叫び出したくなってしまった。こんな場所で生きていたいわけじゃない、でも、小さな花のようになんとかしていくしかないのかな……。
「五感の閉じ方・開き方」にあった、平松洋子さんの『夜中にジャムを煮る』が引用されていて、ああやっぱりあれ印象的だったよなあと嬉しくなってしまった。すごく心地よく作るし、食べるし、その空間を描く文章なんですよね。
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伊部リコは美味しいものにしか興味がない、お気楽な大学生。ある日、たまたま入ったイタリアンレストラン「ステラ・ヌーヴォ」で、調理師という資格を知り、勢いで弟子入り志願する。リコは天性の味覚と嗅覚という隠れた才能をオーナーに見込まれ、親友の八宝菜々とともに、アルバイト&試験勉強の日々をスタートさせる。ヤリ手のシェフであり、経営者であるオーナーに優しく導かれ、厳しい先輩コックの武松リョウに厳しく指導され―はたしてリコは、調理師試験に合格することができるのか!?(Amazonより)
調理師に必要な知識を漫画と対談形式でまとめた本。調べたら新版が出ているよう。
内容紹介の設定はエッセンス程度のものなので、学習内容に応じたストーリーはありますが物語というほどのものではないです。
わかりやすくはあるんですが、横書きの本なので、漫画も台詞が横書き、コマ割りも不思議な感じになって読みづらかったのが残念すぎる。
知識の部分が対談形式、最後のまとめ、テスト問題もあるので一目で確認するのに便利そう
レイファは、幼い頃に大富豪であるエディントン家に拾われ、年下の坊っちゃまであるグレンのもとで女執事として働いていた。月日は経ち、寄宿学校から四年ぶりに戻ってきたグレンと再会したレイファ。久しぶりに会ったグレンに幼い頃の面影はなく、屈強な男になっていた。グレンへの忠誠心が実は恋心であることにまだ気づかないレイファだったが、グレンはとっくの昔に、彼女への恋心を自覚していた。そして、とある出来事からレイファはグレンに大胆な行動を取ることに——。真面目女執事と奥手坊っちゃまの恋の行方は!?(Amazonより)
前例がないなら作ればいいという家風のエディントン家にやってきて雇ってほしいと懇願した少女は、かくして珍しい女性執事となった。自分をここに留めてくれた坊っちゃまに尽くすレイファは、長く寄宿学校で寮生活を送っていた坊っちゃまのグレンと久しぶりの再会を果たす。しかしグレンがレイファへの思いを秘めたままだとは夢にも思わずに。
電子オンリーの作品はだいぶ短いのがちょっとなあ。個人的に一番好きな「思い合う二人で困難を乗り越える」がざくっと削られているのが残念すぎる。レイファがレディ教育を受けて頑張るところが見たかったし、グレンが素性を伏せて必死に喰らい付いていくところも読みたかった。
お兄様が大変良い感じなので兄夫婦のいちゃいちゃをもっとください!
裁判官も人の子。重い刑を言いわたす前には大いに迷うし、法と世間の常識のギャップに悩むこともある。頑なな被告人の心を揺さぶった言葉を厳選。ベストセラー『爆笑お言葉集』に続く涙のお言葉集!(Amazonより)
実際の裁判で裁判官が被告人に投げかけた言葉をまとめた本の二冊目。
女性裁判官の話が出てきたのは面白かったので、他の人の話をもっと読みたいなあ。
法律と過去の判例と照らし合わせて、それ以上の量刑にすることができない。または社会的状況を鑑みて、追求しきれない部分がある。そういうところを上手くやらなければならない、裁判官の心中はどんなものなんだろう。その時々で変わるんじゃなく、揺らがない信念を持って裁判に挑み続ける人たちなんだよなあ。心が強くないと続けていけない仕事だ。
「死刑はやむを得ないが、私としては、君には出来るだけ長く生きてもらいたい」(死刑判決言い渡しの後で)。
裁判官は無味乾燥な判決文を読み上げるだけ、と思っていたら大間違い。
ダジャレあり、ツッコミあり、説教あり。
スピーディーに一件でも多く判決を出すことが評価される世界で、六法全書を脇におき、出世も顧みず語り始める裁判官がいる。
本書は法廷での個性あふれる肉声を集めた本邦初の語録集。
これを読めば裁判員になるのも待ち遠しい。(Amazonより)
裁判のときに裁判官が被告人に何か言い渡すことがある、その一言をまとめた一冊。個人的な思いもあれば、厳しい叱責を付け足したり、励ましたり。公平に捌かねばならない立場の人たちも一人の人間なのだと感じさせる。
でも裁かれる方もやっぱり人間なのでまったく響いてないんだろうなあという被告人もいる。繰り返す人はなんなんだろうな……と途方に暮れてしまうんですが、関わる人間も頭を抱えているんでしょうね。
国を滅ぼされた皇女パトリシアと、彼女を助けた隣国の王太子クロード。結ばれない運命のもと深く愛し合う二人に、クロードの妹リセアネはヤキモキしていた。大国の皇帝グレアムに嫁ぐことになったリセアネは、二人の恋が実るよう、14才もの年の差のグレアムに後押しを願い出るが……「全てがうまく運んだ暁には貴女をもらおう」割り切った政略結婚ながら、聡明で頑張り屋なリセアネを愛しく思い始めていた彼の言葉に、リセアネの胸は高鳴って!?(裏表紙より)
ウルトラスーパーハッピーエンド!! 最高のロマンス小説でした! めちゃくちゃ泣いたー……。
愚帝の娘ながら、喉を突かれて声を失い、自由を失っても、皇族としての義務を忘れずに民と国を憂い、国が滅んだ後も忠実な乳母とその娘の侍女を守ろうとする皇女パトリシア。誰もが認める将来有望の麗しの王太子クロード。
女神のような美貌と観察眼と行動力を有しながら、賢い兄姉に対してコンプレックスを抱く王女リセアネ。大国の王で、未だ重臣の軽視の目を払拭しきれずに気を抜くことができずにいるグレアム。
この二組が強い結びつきで互いの幸福を願い、行動する。周りの人たちすらも幸せにしていく展開。もちろん苦しい部分は冒頭からあるんですが、誰かのために行動できた瞬間が嬉しくて嬉しくて涙が出てしまう。幸せになりたいしなってほしいと思えたことが、心から喜ばしかった。
読んでいて想像以上にきゅんきゅんしたのがリセアネとグレアム。関連作の「ナタリア姫〜」のときは不安要素がありそうなリセアネでしたが、王妃として立派に務めを果たすところも、グレアムとのやりとりもめちゃくちゃ素敵で! 愛される王妃ってこういう人なんだろうなという印象でした。
とても素敵な作品でした。すごくよかった!
母の看病のため、学生らしい時を過ごせてこなかった慶子さんは、高校三年生を目前とした春の朝、ケーキのような甘い匂いに誘われ和菓子屋「寿々喜」に辿り着く。店員の青年に招かれ店内に入ると、出されたのは小さな“どら焼き”。そう、あの香りの正体はケーキではなく“和菓子”だったのだ。
和菓子の魅力に惹かれ、お店に通い始める慶子さん。だが、進級後の新しいクラスで、慶子さんの隣の席になったのは、なんとあの和菓子屋の店員さんで……!?
四季折々の和菓子と、ほんのり甘くじんわり優しい恋物語をどうぞ。(裏表紙より)
いい子たちのいいお話すぎて泣いちゃった……。謙虚で優しく、人を思って行動できる慶子さんのことをみんな好きになっていくのが本当に嬉しくて。そんな慶子さんのことを好きになって大事にしてくれる人たちの存在が嬉しくて。
高校三年生、和菓子さまこと鈴木学くんとの出会いによって高校生活を謳歌する慶子さん。そこにはもちろん将来への悩みや恋のこと、家族の話もあり。いくつかの不穏がありつつも高校生らしいしなやかさ、悲しい出来事で成長した大人びた精神によってゆっくりしっかり乗り越えていく彼女たちが眩しい。
でもやっぱり泣いてしまったのは学くんが昔から慶子さんを見ていたこと。直接言葉を交わさなくても、何かしなくても、あなたのことを助けたい、幸せになってほしいと見守ってくれていた人がいたんだっていうのが、いまこの瞬間に繋がっていたんだって思うと泣けて泣けて仕方がなかった。この日までしっかり自分を見失わなかった慶子さんはえらいし、この年に行動した学くんもえらかった!
最後の幸せそうな二人のエピソードが嬉しくて、つい小説家になろうに掲載されているショートストーリーを読みに行ってしまった。
本当に素敵な物語でした。ありがとうございました。
誰もが振り返る美貌の花魁、瑠璃。
だが、その裏の顔は江戸に現れる鬼を退治する組織「黒雲(こくうん)」の頭領。
髪結いでありながら錫杖で戦う錠吉や、料理番でありながら金剛杵を操る権三、結界をはることのできる幼い双子、豊二郎・栄二郎とともに、江戸に現れる鬼を退治する。
ある時、千住に出没する鬼を退治してほしいとの依頼が舞い込む。
どうやら、殺された男たちは皆、同じ手ぬぐいを持っていたというが……。
瑠璃は、千住の鬼を退治することができるのか?
そして明かされる、瑠璃の悲しき宿命とは――。
この夏大注目のシリーズ第一弾!(Amazonより)
吉原一の花魁、瑠璃。刀を手に流れ着いたところを拾われ、いつしか大見世を背負って立つようになったという経歴を持つが、その裏の顔はあちこちに出現する鬼を対峙する黒雲の頭領だ。同じく黒雲の構成員で、店で働く錠吉や権三をはじめ、仲間たちと鬼退治をする瑠璃だが、その強すぎる力には秘密があった……。
という、吉原や花魁と鬼退治を絡めたライト文芸。表紙の印象が爆裂かっこよくて、そりゃあ人気出るよねえと。花魁が刀持って戦うとか粋すぎて!
ただシリーズを前提とした巻なので、謎は謎のまま。ちらっと設定は明かされるもののすべてが解き明かされてすっきりとはならず。
それでも最後、友を思う瑠璃花魁の粋に、観衆が「天晴」と声をかけるところがめちゃくちゃ感動した。多分きっと彼女はこうやって一人、誰かの思いを背負いながら進んでいくんだろうな……。
「――当家に女房をよこせ」人外の化け物を統べる「化野家」からの命令に、白羽の矢が立ったのは異界から召喚された少女だったはずなのに……。なぜか、あれよあれよという間に、その少女の身代わりになることになってしまった宝生家の姫・櫻子。彼女は、言われるがまま化け物屋敷と恐れられる化野家に嫁ぐことに。ところが、当主の征獣狼から、必要なのは花嫁ではなくお手伝いさんだと言われてしまって!? 身代わり花嫁になるはずが、お手伝いとして働くことになってしまった姫君の和風ラブファンタジー。(Amazonより)
和風ファンタジー。人を襲うケダモノたちから人々を守る高貴な家々がある中、それらを取りまとめる宝生家の姫君として生まれ育った櫻子。「何もできない」という無力感にいつも自覚なく苛まれる彼女は、異世界から召喚された少女の身代わりに恐れられている化野家の当主に嫁ぐ……はずが、実は求めていたのは花嫁ではなくお手伝いさんの意味での「女房」だったという。
ネガティブな櫻子ですが一生懸命なんでもないふりをしているような言動が可哀想で可愛らしくて切ない。「あらまあ」と思うことでなんとか自分を落ち着けているような印象。だから居場所をくれた征獣狼になつくのは当然で、口うるさいながらも世話焼きな吉宝丸との関係もほっこりしました。
それだけに特殊な体質があるとされながらわがまま三昧な千華や、気を惹くためだけに櫻子を突き放して千華の側についた御三家の若君たちには苦笑を禁じ得ない。特に若君たちは、ずっと一緒にいたのに櫻子の寂しさや無力感にまったく気づかんかったんかい! と。千華についたのも千華に失礼すぎる。本来なら召喚もののヒロインになるはずの千華がどういう人間なのかは明かされなかったので気になるなあ。
ともかく、悲しい運命を負う征獣狼と櫻子がこの先も長く一緒にいられますように。
突然終わった結婚生活。バツイチか──と嘆く余裕もない私。職務経験もろくにないが、家事だけは好きだった。
そんな私に住み込み家政婦の仕事が舞い込む。相手は高名な小説家。そして整った顔立ちとは裏腹に、ものすごく気難しい人だった。行き場のない私と、ふれ合いを拒む小説家。最初はぎこちなかった関係も、家事が魔法のように変えていく。彼と心を通わせて行くうちに、いつしか──。
なにげない毎日が奇跡になる物語──本を閉じた後、爽やかな風を感じてください。(Amazonより)
専業主婦だった涼子は、夫の浮気が原因で離婚し、小学三年生の娘を連れて実家に戻ってきた。だが実家には兄夫婦がいて、兄嫁は夫の浮気相手と同じようなキャリアウーマン。生活スタイルが違い、職業スキルの有無が異なり、家庭と仕事の考え方も異なる兄嫁に気を遣い、落ち込む日々。そんなある日気難しい小説家の家政婦の仕事をしないかと打診があって。
心を再生する話なんだろうなあと思っていたら、癒してくれると思っていた先生はだいぶ偏屈で、だいぶ傷付いて引きこもっているし、涼子は手探り状態でだいぶはらはらさせられて笑 けれど美空と編集者の川谷さんが間に入ることでみんながそれぞれ気付きを得て、次の一歩を踏み出す物語を紡いでいく中盤から後半がものすごくよくって、ぐっときました。
「主婦は職業なのか?」を書いているので、心当たりがある人はきつそうなんですが、最後はしっかり言い返すし、勇気を出した結果がちゃんと伴っていくので「頑張れ!」と思って読み終えました。