読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
田舎町に住むいたずら少年のホーガースは、ある日電線に絡まった巨大なロボット、アイアン・ジャイアントを発見する。赤ん坊のように何も知らないジャイアントを持て余しつつも、ホーガースは次第に彼と友情を育んでいく。だが政府捜査官をはじめとした大人たちに追い掛け回されることになり……。
人間の少年とこの世ならざるもの(ロボット)の友情物語。子どもの描き方や大人に対する皮肉が効いていて面白いなあ。またジャイアントが健気で可愛いんだなこれが。愛を知った者が自己犠牲するなんて王道、好きなんですけどやっぱり悲しい……。
夢のある話でもあるんですが、現実的な問題(社会情勢とか大人の役割とか)も含まれていて、ジャイアントのことを戦闘兵器だと言い切るところは何故だかわからないけどすごく傷ついた。そうだよなあ、そうじゃないって思っても本来そういう役目を果たしたかもしれないんだよなあ。いまやっているゲーム(ロボットが登場する)のこともあってずきっとしてしまった。
タイムマシンが開発された未来ではその使用は禁じられていたが、とある犯罪者組織がそれを悪用し、暗殺に用いていた。殺したい対象を30年前に転送し、ルーパーと呼ばれる殺し屋の元に送る手法だ。だがルーパーであるジョーの元に送られてきたのは未来の自分だった。逃亡した彼の目的は、未来でとある事件を起こす「レインメーカー」と名乗る人物の抹消だった。
タイムマシンの悪用によって殺しをしていたところ、30年後の自分が送られてきた。暗殺対象である自分を殺せず逃亡させてしまったが、未来で起こるとある悲劇を聞かされて。
未来が変わるとどうなるか。少しずつ位相がずれていっているらしい描写がはらはらさせられます。そしてやっぱり、未来を変えるために過去へやってきた暗殺者っていうシチュエーションはたいへん燃えるなあ! 対象が子どもだっていうのがまたね……。それが最後にはジョーの選択につながるのかと思うと……はああああ……!!! 「ループ」が本当は何を意味しているのか、レインメーカーが何を思っていたのかを想像すると、ああもう……。
30年後の未来がどんなものになったのかはわからないけれど、悲劇が一つ消えたと信じたい。
成金の金持ちだが気弱なヴィクターは、没落貴族の令嬢ヴィクトリアと政略結婚することになった。会ったこともない相手との結婚を不安がっていた二人だがなんとなくいい雰囲気になるも、ヴィクターのどじによって結婚式は延期に。ヴィクターは上手く言えなかった誓いの言葉を練習するが、調子に乗ってコープスブライドの指に気付かず指輪をはめてしまう。彼を花婿だと思った彼女によって死者の国に連れて行かれてしまったヴィクターは……。
寓話みたいだと思ったらロシアの民話を元にしているみたいですね。こういう、女性の気高さに救われたり、力強い男性が優遇されたり、不可思議なものの世界が賑やかだったりするのはとても異国的だなあと思う。
死者の花嫁に花婿と勘違いされてしまった気弱な若者は、果たして誰と結婚するのか? 死は恐ろしいものだけれど身近で親しいものだという世界観がすごく好きです。倫理観もちゃんとしていて、悪人が罰せられてよかったよかった。
二人の花嫁もとても凛として可憐でしたが、犬かわいいよ犬。二匹でお尻のにおい嗅いでるところがとってもキュートで笑ってしまった。
うだつの上がらないショーンは友人のエドとルームシェアをしている。だが最近恋人のリズに振られてしまった。楽観的で鈍いショーンは街を覆ったゾンビの大量発生にしばらく気付かなかったが、状況に気づくと友人や恋人たちを守ろうと駆け回る。
ゾンビでコメディ。冒頭から、街を襲った以上事態にショーンたちだけ気付いていないという状況に笑ってしまうんですが、その後の展開も絶妙に巧いし、ださかっこいいし、痺れるわあ。
性格も考え方も全然違う人間がこういう事態に遭遇すると、とんでもないことが起こるんだなあ笑 自分を律してみんなで協力して生き延びよう! というのとはまったく正反対の方向性で、ゾンビに襲われて緊迫したシーンでもなんだかちょっと笑えてしまう。パロディであろうかっこいいシーンやカットや展開があるんだけれど、他の部分でのくだらなさのせいで台無し感があってまたそれが笑えて楽しい。やっぱり名作だなあ。
デンマーク皇太子のエドヴァルドは様々なスキャンダルを起こす破天荒な性格だったが、テレビ番組の影響を受けてアメリカに留学することになる。ウィスコンシンの大学で医者を目指すペイジは身分を隠してエディと名乗る彼に出会い、最初は険悪ながらも次第に恋に落ちていく。
女子大生と皇太子のロマンス。キャリア志向の真面目な学生と、世間知らずでわがまま放題の王子様、この最初は合わない二人がお互いに感化されて変化していくところはロマンスの醍醐味という感じでたいへんきゅんきゅんします。ペイジの影響を受けたエディが爽やかでかっこよく見えてくるから、恋って人を変えるなあ。
二人がくっついておしまいかと思いきや、ペイジがデンマークにやってくるのは物語の中盤。恋人(婚約者扱いかな?)として政務に携わるというのがきちんとストーリーに組み込まれていておおっと思いました。そして二人の出した結論は……。
最後の最後でにっこりできる、ロマンスのほろ苦さも味わえるおとぎ話のような作品でした。
歌の上手な美しい母と大らかで心やさしい父の間に生まれたベン。だが身重の母はベンと父を置いていずこかへ去ってしまう。代わりに生まれた妹シアーシャは言葉を持たないこともあってベンにとってわずらわしい存在。だが彼女の6歳の誕生日、妹がセルキーだと知られて連れ去られてしまう。
セルキー伝説を下敷きにしたファンタジーアニメ作品。幼い兄妹の冒険と成長の物語で、情緒あふれる画面がまた独特て美しい。妹を疎んじてしまう兄のベンと、それでも懸命に彼についていこうとするシアーシャが健気です。魔性のものたちは善性も悪性も中立性も持っている感じでとてもいい。人間の世界の常識は通用しないけれど、うまくやれば役に立つこともある、というのが伝説や伝承が生きている土地柄らしい。
犬のクーができるわんこすぎて。なんていいこなんだろう!
最後のシーンが神々しくて涙が出ました。あるべきところに帰るシーンってめちゃくちゃ好きです。
可愛らしい絵柄ながらも民話を大事にかつ新しく描こうとしている丁寧さが感じられて好きな作品でした。
正義を貫く警察官として働いてきたローレルは、ある日ステイシーと出会い、恋に落ちる。二人で住む家を決めてリフォームをし、そこで愛を育む二人だったがローレルが末期癌であることが発覚してしまう。一人残されるステイシーのために遺産を残そうとするローレルだったが、ニュージャージー州オーシャン郡では同性のパートナー同士への支給は法的に認められていなかった。
2008年に実在した二人の女性のドキュメンタリー「フリーヘルド」を原案とした作品。同性婚についてまだあまり進歩のなかった時代のお話で、ローレルの所属する警察組織やら郡政委員会やらがもうこれでもかと頭カチコチなのが象徴的です。
溌剌とした働く女性だったローレルがどんどん病み衰えていく演技がお見事。素朴で若いステイシーの賢明さや不安も感じ取れて、ままならない状況がどんなに辛かっただろうと思いを馳せました。政治利用されたくないけれど、って、そうだよなあ……。
私たちは普通の人ですという価値観になっていく最初の段階のようなお話でした。世界がよりよく変わっていってほしいな……。
アーロンはユタ州にあるブルー・ジョン・キャニオンでキャニオニングを楽しんでいたところ、岩とともに滑落し、右腕を挟まれて動けなくなってしまう。ついに自分の腕を切り落とすことを選ぶが、ナイフが鈍くて切り落とすこともできない。水もなくなり生命の限界を超え、ついには幻覚を見るまでになるが、生きたいと強く思ったアーロンは決断を下し……。
誰も助けてくれない限界ぎりぎりの状況。痛い……きつい……。生きたいっていう強い想いがあって極限状態になるっていうのはどういうことかっていうのを知らしめる作品だったように思います。実話をもとにしてあるんだからすごい。
なんですが、映像としてはおしゃれな感じがしました。いややっぱり痛いかな、腕のシーンは……。
音楽が何故か印象的なのは、彼がほとんどの視点を担っているからかな。頭の中が映像や音楽でいっぱいになる瞬間があるよなあなんて思いました。こういう限界のときにはそれが目の前で起こっている・聞こえているように感じるに違いない。
映画監督のヴィクターは過去にオスカーにノミネートされたこともあったが、いまでは駄作ばかりと評判で主演女優に降板される始末。さらには元妻とも険悪に。しかし謎の男ハンクが現れ、理想の女優をCGで創造することになった。かくして創造されたシモーヌは脚光を浴び一大女優として名が知られるようになる。同時に監督であるヴィクターは名声を手に入れるが……。
CGやAIから創造された者は命を持つのか? という難しいテーマを、落ちぶれた映画監督ののし上がりとともに描く。2002年の作品とは思えない完成度で、すごく面白かった。
CG女優を起用したうだつのあがらない監督の悲喜こもごもがメインなんですが、シモーヌの存在に底知れない恐ろしさを感じる。いまではCGで作ったキャラクターが動く作品なんて普通のものですけれども、それが世間には人として認識されるとこういうことが起こりうるのかと思って面白かった。存在しない証拠も存在した証拠もない、っていう台詞は怖いな。それって人間でもそうだよな……。
最後はえーって言っちゃったけど「これは未来の出来事です」と言われても信じられそうな作品だった。面白かった。