読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
19世紀末のロンドン——。ある目的のため、セシルは見習い記者として働いている。令嬢という身分を隠し、性別さえも偽る生活だが、仕事上のパートナーであるジュリアンとの仲はとても良好だ。そんな今、ロンドンの街は“怪盗ブラックバード”の話題で持ちきり! 鮮やかな手口で貴族の邸宅から宝飾品を盗み、黒い羽根を残して消える大怪盗——。ある日、セシルは怪しい新聞広告に目をとめて……!?(裏表紙より)
父の死の真相を突き止めたセシルは、引き続き社交界デビューして結婚するその日まで、新聞記者見習いの少年として働いている。そのパートナーである挿絵画家のジュリアンこそがその結婚相手と知らずに。
ばれる? いつばれる? とどきどきするロマンスがある一方、ヴィクトリア時代を舞台にした謎解きも楽しいシリーズ。新聞広告でここまでたくさんの人と話を描けるなんてすごいなあ。つながっていくところが楽しすぎる。
しかしあとがきよ。「そのとき」にバレるとは限らないって、絶対何かあるじゃん! しかもあんまり嬉しくないやつと一緒に来るんでしょ! 私ならそうする。
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希代の祝歌の歌い手と称される少女キリア。彼女は老国王に望まれ、王女を歌で癒やす楽しい日々を過ごしていたのに……。国王が崩御したとたん、新米賢者の青年アリスターの婚約者として、いきなり彼の屋敷へと送り出されることに! さらに屋敷で出会った彼は、ひどい隈があって寝不足気味。一体どいうことかと戸惑っていると、呪いに強いと言われる破邪の賢者なのに、眠れない呪いにかかっていると知らされて!? 不眠対策として子守歌要因になってしまった天性の歌姫と、間抜けな賢者の不本意すぎる婚約ラブファンタジー。(Amazonより)
優れた歌い手を自負し、そのように振る舞ってきた誇り高い少女が、突然賢者に抜擢されたもののそんな修行をしてこなかったという青年に下賜され、いたく自尊心を傷付けられながら自らの価値を周囲に認めさせようとする、したたかヒロインのファンタジー。
女性の世界で生き、その場所で高みに登っていくことに快感を覚えている主人公なので、国王によって臣下に下賜される形での結婚は大変不本意。プライドを傷つけられ、優秀なカナリアを手に入れたことをしっかりアリスターに理解させた上で、稀代の賢者を伴侶に得て愛されていることを自分を嘲笑った者たちに見せつけるために努力する。
こんな感じで性格や能力は可愛らしくはないんですが、貴人の妻となった者の有能さや周囲への配慮、けれど時々見せる「愛されたい」という無邪気な部分が透けて見える言動が、本当にすっごく素敵で。アリスターじゃないですがすっかりキリアに振り回されてメロメロにされてしまいました。
きっかけは子守唄係なんですが、身繕いに気を使わないできたアリスターを賢者にふさわしい人間に育てて、自分をちやほやしてくれるよう育てていく要素があって面白かったな。最初から完璧なヒーローが相手じゃない、好みの男性にしていくところを楽しく読みました。
ある日、〈井戸〉に棲むルーイが拾ったもの。それは、茶色の子犬と一人の青年——だった。アルフォンスと名乗る、その青年は〈青海都市〉から、人を殺して逃げてきたという。
アルフォンスをかくまうことになったレオンとルーイ。
時、同じくして、悪名高きサバイバル・ゲーム〈緋面都市〉が始まろうとしていた。
人と人との生きのこりをかけたゲームの末にレオンたちのみつけたものは!?
新感覚サバイバル・アクションファンタジー!!(裏表紙より)
地球そのものが滅び、地上などの上層は特権階級が独占し、数多のアウトローたちが「井戸」と呼ばれる地下の混沌とした世界でしぶとくたくましく生き残る時代。罪を犯して漂着した上流階級の若者アルフォンスは、口が悪いが凄まじいサバイバル技術を持つレオンと、ハッカー技術を持つ純粋な少年ルーイに助けられる。レオンの知己のキカから、皇帝と呼ばれる統治者が行う「緋面都市」でのゲームに誘われるが……。
この頃に出版されたライトノベルらしい、SF風味もある作品。情に厚いけれど面倒ごとは嫌いな青年と、純粋ながら秘めた力を持つ少年という組み合わせに、厄介ごとを持ち込む第三者、付き合いが長いいわゆる腐れ縁の仲間……という人物の配置、最後はオープンエンドという樹川作品らしさもあって楽しかった。
エピローグのやり取りのセンスの良さよ。こういうエンディングのじわじわした感動が本当に好きだ。
湖のほとりに建つ古城ホテル『マルグリット』にいる四人の女主人たちは、どんなやっかいごとでもあっというまに解決してしまう——。そんなうわさを聞きつけやってきたのは、新婚ピカピカのお嫁さん!? 力を合わせて、なんとか彼女のなやみを解決してひと安心——と思っていたら、亡国の姫君リ・ルゥがとつぜんホテルをやめるなんて言いだして!? 四人の少女の、切なくも優しい友情物語、大好評シリーズ第4弾!(裏表紙より)
いつかはやってくると思っていた、亡国の姫君にして歳を取らない幼い姿のままのリ・ルゥが主役の第四巻。
最初のエピソード、船乗りのベルドットとロンロの二人から始まるように「私がいたいところ」と「私が望まれるところ」の話だったように思います。本当に、この世界のどこにも縁がないようなリ・ルゥ。その孤高さと誇り高さが魅力的でもあるんですが、やっぱり寂しい顔があちこち見えていて。
でも本当にどうにもできないときに助けてくれる古城ホテルの仲間たちがいることがとても嬉しかった。駆け足気味にさらっと話が進んでいましたが相当なピンチでしたよね!? ページがあったらもっとやばい状況だったと思うなあ。
誰かと一緒にいることが幸せに思えるのは、寂しさを知っているから。彼女たちができる限り長く一緒にいられますように。
四人の少女が女主人をつとめる古城ホテル『マルグリット』に、お客さまが訪れた。ひとり旅だという客の名前はランゼリカ。目もくらむほどの美少女だけど、なんだか妖しい雰囲気で……? さらに、女主人のひとり、ジゼットの祖国からも髭ヅラの軍人たちがやって来て、ホテルで秘密の会談を行うことに。そのうえ『戦争』だなんて怖い言葉も飛び出して、またまた古城ホテルは不穏な空気で包まれる……!?(裏表紙より)
この本、2012年の発行なんですが、久しぶりに読んで思ったこと。
児童文庫じゃなくて、年齢層低めのなろう小説かライトノベルだなって。
いやもうめちゃくちゃわかりやすくてちょうどいい塩梅で難しくて面白いんですよ! キャラクターの関係性はもちろん、ストーリーのテーマも。
今回は元軍人の麗人ジゼットが主人公。優秀すぎる彼女を取り巻くのは、彼女の戦友に、どうしても同じ道を行くことができず捻くれてしまった友人。そして彼女の故国との和平会談を行う小国の人々。
戦争が絡むので難しい話になるのですが、魅力的な登場人物たちが「自分で未来を決める」ことを貫いてくれる、とても気持ちのいい物語でした。
特別な目を持つ少女×病を抱えた旦那様の明治シンデレラロマンス
幼い頃に火事で全てを失い、劣悪な環境で働く蒼。天性の観察眼と記憶力で苦境を生き抜く彼女の心の支えは、顔も知らない支援者“栞の君”だけ――しかしある日、ついに対面できた彼・城ヶ崎宗一は、原因不明の病魔に冒されていた。宗一専属の看護係として城ヶ崎家に嫁ぐことになった蒼は、一変した生活に戸惑いながらも、夫を支えるために医学の道を志すが――?
文明華やかな帝都・東京。「サトリの目」で様々な謎を解明しながら、愛されること、恋することを知る少女の物語。(裏表紙より)
家事により天涯孤独となり、記憶すらも失った蒼。虐げられることに慣れ、生かされていることに感謝する彼女を、強かな人々は利用し、踏み付けにする。悪辣な資産家に嫁がされそうになった蒼を助けたのは、ずっと蒼を支援し続けていた城ヶ崎宗一。看護しろと言われたのに、彼はそれを翻して蒼に妻になりなさいという。
冒頭の、めちゃめちゃに虐待されている描写、いつになく読んでいてきつかったのはやはり蒼の思考停止感とこれはだめだという葛藤がものすごく真に迫ってくるからなんだろうなあ。さすが栗原さんです。
だから宗一が助けてくれてほっとしたし、その後もちらちら見え隠れする残酷性も、危ない男感があってすごくよかった。
「サトリの目」なる、ホームズを思わせる凄まじい観察眼と、医学と知識を絡めた謎解きも面白かった。もっといちゃいちゃしているところが見たいので続巻お願いします!
戦前に沈んだ謎多き難破船の回収品調査のため、豪華客船に乗り込んだ鷹栖晶と相棒の音井、そして森木。調査開始早々悪魔の気配を感じ、回収品がかつて日本に存在した悪魔研究機関・ファウスト機関が密かに日本に持ちこもうとしていたものだったことを知る。
奇しくもバチカン、WMUA、そして秘密結社が船上に集結、ファウスト機関の遺品を巡り、三つ巴の抗争が勃発した。そして明らかにされていく回収品の秘密。「晶。僕はまだ君のことが好きだ」音井を尻目に、悪魔交渉人・晶の最後の事件が幕を開ける。(裏表紙より)
人らしさを忘れた青年と、親友の姿をした悪魔のバディもの。第四巻で完結巻。最後まで彼ららしく、悩んで間違ってぐるぐる考えて、答えを見つけたと思ったら掴み損ねて、大事なものが何かを考えて守ろうと足掻いて……どこまでも人間らしいなあと思った巻でした。人間くさすぎる欲望を持った人間ややくざ者として一般的な社会から背を向けた人々よりも、強く。
音井を呼んで「違うよ?」って言われて「知ってる」って答えたところがものすごくよかった。音井じゃないって言い聞かせていたいままでがあって、ここに辿り着けたんだなあ。とても面白かった。
横浜の外れに佇む寂れた美術館に勤める怠惰な学芸員・鷹栖晶には、もうひとつの顔がある。それは悪魔を視認できる唯一の人間として、彼らと交渉し悪魔にまつわる事件を調停すること。
悪魔交渉人として、ある幽霊マンションの調査を託された晶は、相棒である人間の肉体を着た悪魔・音井、晶の健康管理を担当する森木と3人で現地へ向かう。そこは、悪魔の罠が張り巡らされた違法建築マンションだった。内部で出会った哀れな配達員や五得会の霊能者と共に、悪魔が仕掛ける「脱出ゲーム」に挑む晶だが——。(裏表紙より)
歪な迷宮と悪魔と脱出ゲーム。怖くないはずがない! 普通に死んでる!
こういう状況でヒステリックな人間がいるのは騒がしくてどきどき感が増して良いですね。実際にいたら迷惑この上ないんですけれど。
迷宮の主と生贄が、実は他にも色々な形で関わっていて、謎も迷宮じみて入り組んでいて面白かったなあ。人の気持ちもまったく複雑怪奇で、なのに最後に晶の心の話が出てきて「嘘だろ!?」と爆笑してしまいました。ここにきてまっすぐ。この場でどストレート。音井も悪魔も意表をつかれて当然だわ。
しかし色々気付きがあった晶と音井の関係性。すでにお互いが結構大事にしか見えないけれど、この拗らせが続巻でどう落ち着くのか気になります。
未開の自然が多く残る惑星“バーミッシュ”。交通手段としては飛空船などが安全だ。女好きで傍若無人な自由人・イヴと、彼に仕える信心深い少年ヨシュアは、プロペラ機で商業自治都市・タナエルにやってきた。
タナエルでは、惨殺事件が続いていた。原野に棲む“魔人”の仕業らしい。だが、かつて軍の特殊部隊にいたイヴは、魔人らしからぬ手口に不審を抱き、手負いの魔人ハースを捕らえ——人間の強欲が元凶なのだと知る。
一方、市の新任の保安局長・メイは、自分のプライドと保安局の面子をかけて意気込むものの……。(カバー折り返しより)
樹川さんらしいエッセンスが感じられる、SF作品。口が悪いが真っ直ぐなイヴ。頼りないが信心深く主を深く敬愛するヨシュア。二人は魔人に手を貸すことになるんですが、ストーリーはもちろん、慈悲深い聖職者ながらがめつい神父であったり、戦士ながら非情に徹しきれずイヴやヨシュアにわずかに心を許す魔人ハースであったり、まったくの外野のせいで世界の本質を見ることのできない特権階級の女性保安局長メイであったり……キャラクター性がもう本当に、懐かしいくらいに樹川作品で読んだ人たちだという感覚があって。もう新しい物語は読めないんだよな……と寂しくなってしまった。
映画のような、映像を思わせるオープニングからエンディングまでがすごく楽しかった! 多分こういうカットなんだろうな、音楽がかかるんだろうなってたくさん想像しました。
常に美貌を磨くことに余念がなく、周囲からも美しいと褒め称えられているスフィーナ王女。ある日、そんな彼女に兄王子の勧めで専属護衛の青年ジェニアスがつくことに。戸惑いつつ、一目ぼれした彼がいつも近くにいることを喜んでいたけれど……。ジェニアスから、顔しか美しくないと言われてしまって!? これからは外見だけではなく、内面も磨き上げて、絶対に彼に「美しい」と言わせてみせるわ!! 美貌磨きに邁進する勤勉な姫君と専属護衛のラブファンタジー。(Amazonより)
大岩の子を崇める、王家の人間にはなんらかの「才能」が与えられる王国で「美貌」の才能を持つ王女スフィーナは、才能を重じて美容に余念がない。だがこの振る舞いは、事情をよくわかっていない護衛のジェニアスの誤解を生んでしまっている。
マイナスから始まるジェニアスの気持ちが、兄や義母に貶められている状況でも王女らしさや優しい心を失わないスフィーナへの恋心に変わるのは当たり前で。ごく一部の味方を除いて孤立無援かと思いきや、証拠を揃えれば国王陛下が助けてくれたので、もっと早くなんとかしてあげてー!! と叫ばずにはいられなかった……。よく頑張ったよねえ、スフィーナは。誤解から「美しくない」と言われて、しかしちゃんと内も外も美しく、それをさらに磨き上げて強くなったスフィーナに拍手。