読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

——僕は佐藤さんが苦手だ。地味で、とろくて、気が利かなくて、おまけに大して美人でもない佐藤さんと隣の席になった、ひねくれもの男子の山口くん。何気ない高校生活の日常の中で、認めたくないながらも山口くんは隣の席の佐藤さんに惹かれていく。ある時、熱を出して倒れた佐藤さんの言葉をきっかけに二人の関係は急速に変わっていく………。甘酸っぱくてキュンとくる、山口くんと隣の席の佐藤さんの日常を描いた青春ストーリー!(裏表紙より)
小さなお話が連続する構成の、甘酸っぱい恋物語。日常系の四コマ漫画とかショート漫画みたいなお話だなあという印象。
人の本質や、見た目に表れていないかもしれないけれど純粋で優しい気持ち、そうしたものに惹かれてしまう、という感じの山口くんも愛おしい。佐藤さん、いい子だよねえ。佐藤さん視点なら普通の恋愛小説なんだろうけれど、あえて山口くんの視点で、最初はさほどいい印象を持っていなかったのが変わって、というのがとてもいい。ぴゅあぴゅあで浄化される。可愛らしいお話でした。
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地域、国、宗教から「食べてはいけない」「食べない」とされるものがある。では何故食べないのか? 何故他の地域で食べられていないものが食べられているのか? を考える。
わかりやすい文章で、考えてみようと提起する本。十代から向けなのかな? 文体がブログみたいで不思議な読み心地だ。なので著者の私見が入っているところがたくさんあって、うーんとなるところもあり。
インド人が牛を食べないのはどうして? アメリカなどでは鯨を食べないけれどどういうこと? 日本でもカイコやハチノコを食べるところと食べないところがあるけれどどうして? そういう不思議を、宗教性や地域性、いうなれば国民性などに絡めて推測しています。
価値観の共有を表したものが食であるという考えは面白いなあ。

宦官とは、去勢された男子で宮廷に仕える者をいう。その歴史は古く、日本以外の世界各国に広がったが、特に中国史上での活動は有名である。その驚くべき実像を克明に描いた点で、いまも比肩するものがない名著。(カバー折り返しより)
2003年3月改版のもの。宦官とはどういうものなのか、歴史的にどう関わってきたのか、皇帝や皇后との関わりも含めてまとめたもの。
以外と中国系の資料って読んでいなかったので、とても興味深かった。こういうのをたくさん読んで中華ものや歴史ものを読むとまた違うんだろうなあ。宦官というと悪者か、とてつもなく有能な側近というイメージだったんですが、時代によってその役割もあり方も変わっているんだな。

内気な中学二年生・千鶴は、母親の言いつけで四谷のカルチャーセンターの講座を受けることに。彼女はその料理教室で、同い年だが性格も学校も違う桃・真紀・公子と出会う。ところが、教室内で盗難が発生。顛末に納得がいかなかった四人は、真相を推理することに。多感な少女たちが、カルチャーセンターで遭遇する様々な事件の謎に挑む! 気鋭の著者が贈る校外活動青春ミステリ。(裏表紙より)
性格も立場もまったく違う女子中学生たちが四人集まって、カルチャースクールで起こる謎を解く日常ミステリ。
キャラクター性が強い日常の謎ものは大好きなのでもっと読みたかったです。お嬢様で引っ込み思案な千鶴、先は読めるけれど子どもっぽい桃、ちゃっかりものの真紀、頭脳明晰な公子という四人なので、もっとがつがつ謎解きしていいのよ。
四人がそれぞれにコンプレックスを持っていて、それを仲間たちに見て羨ましく思ったり嫉妬したりっていうのがよかったなあ。お話も登場人物の気持ちもぐるっと回って一周する短編集っていいな。

十年前は教師と生徒。
いまはただの飲み友達?
合コンに行ってみたら出会った人が高校のときの先生だった衝撃。十年前に想いを寄せていた教師、青砥英輔(35歳彼女ナシ)に再会したことで上山悠香(28歳彼氏ナシ)の恋は再び動き始める。自分が教え子だからこそ向けられるその優しさに、いちいちときめいてしまう悠香。しかしどうしても、あの頃の自分を越えて、英輔に近づく勇気が出ない。どんどん好きになるこの気持ち、どうすればいいの!? 甘くて苦い、大人気ムズキュンラブストーリーついに書籍化!!(裏表紙より)
十年前教師と生徒だった二人が、合コンで再会したのをきっかけに飲んだり食べたりちょっと出かけたりして、じれじれと距離を縮めていくお話。
お互いが好きじゃないとできないだろうという言動、元教師と生徒という関係性でごまかされていて「気づけー! 早く気づけー!」ともだもだします。
意外だったのが二人の共通項が「二次元」ということ。先生の副業が成人向け小説家だということです。オタクというほどオタクではありませんが、漫画やアニメを嗜んでいるのを隠しているので次の巻で明らかになるのかなあ?

料理好きの女子高生・茉莉がうたた寝から覚めると、そこは西洋風異世界で、隣には見知らぬ男が熟睡していた。大絶叫したとたん、不審者としてあわや処刑されかかる茉莉。なんと寝ていたのは本物の「王子様」! 側近たちから疑われまくる茉莉だが、重度の不眠症に悩んでいたというレーガン(王子)様は、「——帰るまでの間、俺と寝ろ」と“抱き枕”扱いしてきて!? ネット掲載時に話題を呼んだ異世界トリップの傑作、登場!(裏表紙より)
ばりばりの続きものだった。うわーこの巻だけだと茉莉の扱いがひどすぎてもやもやするー!
妹のお願いを聞いて大量のマドレーヌを焼いた次の日、学校でつい居眠りをした直後、目覚めたら見知らぬ場所にいた茉莉。不眠症の王子様レーガンに衣食住を保証するので添い寝しろと言われ、自分の身を守るために承知することに。しかし言葉の通じない国で、王子を狙う刺客だと疑われて。
食事に関してのコンさんとトイのやり口は、地味なんですが精神的にくる意地悪だなあと思いました。文化がわからなくてアウェー感を強く感じると、心がずたぼろになるよね……。

日本有数のセレブ一族の家に生まれた葵は、お気に入りの女友達3人を誘って、避暑地に遊びに来ていた。モデルの結衣、小説家の莉子、スプリンターのひまり…容姿、ステータス、才能、どれをとっても宝石のような輝きを放つ美少女たち。避暑地の夜の帳が下り、完全な闇に包まれた4人は、「誰にも打ち明けていない秘密の話」を順番に打ち明けることとなったのだが!?
恐るべき美少女たちによるサイコ・ホラー!(裏表紙より)
皮一枚めくると黒々とした本性を秘めた美少女たちが、避暑地で過ごす夜に「秘密の話をしよう」と階段めいた話を順繰りに始める、という物語。ファンタジー要素のある種明かしでしたが、四者四様の罪を罪とも思っていない告白にはぞくぞくしました。これ黒い話としてすごく好きかもしれない。
四人が語り終わった後の展開が痺れました。悪意と身勝手がぐっちゃぐちゃになっててひいいって言いながら読んでしまった。それだけに真相があっさり目で少し物足りなかったのですが、いやしかしいい黒いものを摂取しました。

妄想に囚われ、妻の浮気を責め続ける夫マサヨシ。単純な嫉妬と見える振る舞いには、本人も気づかぬ深層心理が絡んでいた――。地道な調査とカウンセリングを武器に、家庭裁判所調査官は家族問題の現場へ踏み込む。誰にも起こる感情転移、知的エリート女性の挫折と暴力、「家族」代わりの薬物使用、「家族神話」のダークサイド……。18の家庭に巣食った「しがらみ」の正体を明かし、個人の回復法を示す実例集。(裏表紙より)
2016年刊行の本。実例を取り上げながら、どちらかというと当事者の心理を解くという印象の話が多かったかな。心理学っぽい内容だったように思います。
家庭裁判所に持ち込まれたり、カウンセラーのところにやってくる問題は、家庭、家族を構成するもの全体に事件の原因や理由があるのだなとわかる。子どもだけの話じゃないし、親だけの話でもない。人がどのように生きてきて何に傷ついたのかっていうのが、事件の根本にあるんだなあ。

その学校に入学するのは、異世界へ行った、不思議の国のアリスのような子どもばかり。つまり“向こう”に帰りたいと切望する彼らに、現実と折り合うすべを教える学校なのだ。新しい生徒のナンシーもそんなひとり。ところが死者の世界に行った彼女に触発されたかのように、不気味な事件が……。ヒューゴー賞など3賞受賞、アリスたちの“その後”を描いたファンタジー3部作開幕。(裏表紙より)
異世界より帰還した子どもたちが集められた学校がある。子どもたちはみんな、「ナンセンス」「ロジック」などに大別される異世界で、この世と異なる時間を過ごし、戻ってきた。そうしてこの学校はみんな「その"故郷"へ帰りたい」と願っている。
異世界から帰還した子どもたちは果たして現実に適合できるのかという問題に取り組んだ作品で、事件も起こりますが子どもたちの性質がすごく独特で面白いなあと思いました。ナンセンスの世界に行って適応してしまった子は、この世では独特の言い回しを使う「変わった子」になってしまうし、邪悪な性質を含む世界に行った子は見えないところに凄まじい悪性を持っている様子だったりと、「生きて帰りし」のその後が覗ける。
三部作とのことなのでこれから続きが出るのかな。第二部は前日譚らしいので機会があったら読んでみよう。

心惹かれたあの声もやっぱり森川智之だった。多彩な声を演じ分け唯一無二の存在感を放つ人気声優でありながら、自ら声優事務所の社長も務める稀有な存在。アニメから洋画の吹替え、ナレーション、ドラマCDまであらゆるジャンルで活躍し、「帝王」とも称されるプロフェッショナルが語る、声優という職人芸の秘密。(カバー折り返しより)
声優の森川智之さんが、自分の経歴や仕事、演技についてなどを語る一冊。岩波新書、いつの間にこんなものを出していたんだ(2018年4月刊でした)。
森川さんがどのようにして声優になったのか。養成所の話。先輩、同期、後輩の話。演技についての話。自らの転機となった役や吹き替えの話など、声優さんについては知らないことが多いのでなるほどなるほどと楽しく読みました。
巻末にはお仕事されたタイトルが収録されているんですが、すべて網羅しているわけではないようで。はーすごいなあ。さすが日本中の女子をお世話している人だ。