読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

まだ古き世の名残が尾を引く開明の時代、明治45年。横濱。女学生の紅の父親が持つ長屋には、いつの頃からか、ひょろりと痩せた京訛りの青年絵師が住みついていた。紅が幼い頃から長屋に暮らす時川草介というその青年は、幼い頃に神隠しにあったことがあり、そのせいか怪異を見ることができるという。あるとき、紅の許嫁だった好青年・一谷誠一郎が行方不明となり、草介に助力を求めたが……?(Amazonより)
明治の末、庭師の父を持つ女学生の紅は、長屋に住む売れない絵師の草介に助けを求めた。消えてしまった許嫁はどうやら椿にかどわかされたらしく、怪異を見ることができる草介ならと思ったのだった。
まっすぐで世間知らず、心優しい女学生が、のらくらと生きる風変わりな訳あり絵師とともに身近な謎を解く。謎は、怪異のせいのように描かれているものの実際はもっと恐ろしいものによる仕業。紅の言動と振り回される草介のやりとりが楽しい分、真相や、隠された草介の過去なんかの影が黒々と深くなっていて、とても明治モダンらしさが詰まっている。
時川という名前から、過去作の『モノノケ踊りて、絵師が狩る。』に繋がる人物なんだなあと想像するのも楽しい。時川の人だから、なんとも形容しがたい、固く結びついて離れがたい関係を形成するのは当然のことなんだなあと思ったりなどして、今後の二人をもっと見ていたいなと思いました。
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30代のころの私は、次から次へと執筆・翻訳の依頼が舞い込み、1年365日フル稼働が当たり前だった。その結果、30代の10年間で50冊ほどの単行本を出すに至った。
が、そんな私もふと気がついてみれば、最後に本を出してから8年以上も経っていた。
――なぜか?
私が出版業界から足を洗うまでの全軌跡をご紹介しよう。(カバー折り返しより)
翻訳家の宮崎さんが自らに起こったトラブルと出版界の闇を語る。
読んでいて、確かにものすごく正当な怒りなんだけれども、ちょこちょこ欲望のせいでこういう事態を招いてしまったんじゃないかと思われるエピソードがあって、そういう人に悪い人が寄っていったんだろうなあと思ったところがいくつかあった。けれども、後の人が搾取されないように、というのは物凄くありがたい話だ。

ひっそり平凡に暮らしたい!…のに『最恐』竜王様の溺愛花嫁になることに!?
獣人のなかでも『最恐』とウワサの竜王・カインに嫁ぐことになってしまったレイナ。クールな彼のお飾りの妻として毎日ビクビク過ごす…はずだったのに、過保護に守られ、たくましい胸に抱きしめられ、彼の溺愛が次第にダダ漏れになっていき!? こんなに愛されまくる なんて聞いてません!! 本当は獣の本能のままに独り占めしたい、カタブツ竜王様の不器用な求愛ラブ!(裏表紙より)
家族から虐げられる不遇な王女レイナ。意地悪な姉が嫌がった獣人の王との結婚を代わりに受けるように命令されて嫁いだ先で、彼女は少しずつ本来の自分を取り戻す。王道の恋愛ファンタジーです。
冒頭、養家で楽しそうに暮らしていたはずが、血の繋がりのある父王の元に引き取られるとあっという間にびくびく、姉王女や兄王子に遠慮するようになってしまったレイナ。このときの言動が印象的すぎたのか、中盤以降の活動的な様子に「いったいどうした!?」と戸惑ってしまいました。突然変貌したように思えて……。
カインのこじらせは、王ならもうちょっとなんとかできたんじゃないかなあと思ったんですけれども、能力の割に可愛らしい性格で微笑ましかったです。

卑猥な宝石に恋する少女趣味ファッション店員、美少年の生徒に慕われる幼児体型の養護教諭、アイドルの夫の帰りを待つ幼妻、可愛い恋人がありながら不倫するSM女子、優しく賢く美しい叔父様に引き取られた少女、「眠り姫」と綽名される女子大生……薄い胸、華奢な四肢、可憐な顔立ちで周囲の欲望を絡めとる少女たち。その刹那のきらめきを閉じ込めた異端にして背徳の恋愛短篇集。R-18文学賞受賞作家が描く愛の毒6篇(裏表紙より)
黒い方の宮木さん。エロティックなお話ばかりで、読んでいて胸がひりひりする、ちょっと病んでいる雰囲気を持つ短編の数々。
ロリータファッション店員が恋する希少真珠の指輪を絡めた物語「コンクパール」。
養護教諭と男子生徒の短い逢瀬と、終焉を描く「春眠」。
アイドルの夫を持つ少女の夢物語「光あふれる」。
バイセクシャルの女性が同性の恋人を持ちながら男性とSMプレイをするが……「ピンクのうさぎ」。
家族から逃れ、優しい叔父様と暮らす少女の官能の日々の終わり「雪の水面」。
かつて愛した人を失った少女は病み窶れ、彼に会いたいと願っている「モンタージュ」。
一冊の本が終わりに向かうにつれて、だいぶと読んでいる側のメンタルがきつくなってきたんですが「モンタージュ」はかなりやられました。登場人物が「春眠」の関係者だとはわかるんですが、言っていることが全然わからなくて、え、え? と思っていたら。心が死ぬとこんな風に忘れてしまうのか……という衝撃と、それでも見捨てようとしない人たちの存在の安らぎと。でも「春眠」の彼女のことを思うと、やるせない。けれどこの時点で、彼女自身はすでに少女ではなく、大人の「女性」になっているんだよなあ。とても理解し合えるとは思えない。悲しい。

親友の自殺を目撃したことがあるという転校生の告白を、ある種の自慢のように感じた由紀は、自分なら死体ではなく、人が死ぬ瞬間を見てみたいと思った。自殺を考えたことのある敦子は、死体を見たら死を悟ることができ、強い自分になれるのではないかと考える。ふたりとも相手には告げずに、それぞれ老人ホームと小児科病棟へボランティアに行く──死の瞬間に立ち合うために。高校2年の少女たちの衝撃的な夏休みを描く長編ミステリー。(裏表紙より)
田舎町の女子高生が「死」を知っているという優越感を目の当たりにしたことから、それぞれ老人ホームと小児科病棟へボランティアへ行く。死を見る、知る、そのための行動がやがて様々な人々を巻き込んで連鎖していく。
いいねいいね! こういう、誰と誰が関係者で、この人が実はこうでっていう楽しさがありました。しかしやっぱりイヤミスなので、最後までうわー……という感じで。あからさまに名字が出ないので仕掛けて来るとは思いましたが、面白かった。少女同士の友情なのかなんなのかよくわからない繋がりもロマンだった。

対吸血鬼戦闘用絡繰騎士《白檀式》
――ヘルヴァイツ公国が誇る天才技師・白檀博士の“五姉弟”は、欧州を吸血鬼軍の侵略から救う英雄となる……はずだった。
十年ぶりに目覚めた“失敗作”、第陸号・水無月は想定外の戦後を前に愕然とする。
起こるはずのない暴走事故により、“虐殺オートマタ”として歴史に名を刻んだ五体の姉兄たち。
さらに大公と吸血鬼王による突然の和平を経て、公国は人間と吸血鬼が平等に暮らす世界で唯一の共和国へと変貌を遂げていた。
亡き博士の娘・カノン、吸血鬼王女・リタとの出会いを通じ、新たな“日常”を受け入れていく水無月だったが――。
オートマタの少年と二人の姫が織りなす、正義と反抗のバトル・ファンタジー起動!!(Amazonより)
「失敗作」として戦時中に強制停止された水無月。彼が目覚めたのは十年後、戦争が終わり、人間と吸血鬼が共存して暮らす希少国となったヘルヴァイツだった。しかも母である白檀博士は亡くなっており、彼女の娘で本来なら大公女であるはずが一般人として密かに暮らすカノンによって目覚めさせられていた。人間の営みを知らない水無月は、未だ吸血鬼を敵とみなし、戦えないことに苛立ちを募らせていたが……。
どこまでも鈍感で人の機微がわからないけれど、少しずつ学んで、大切なものを得て、自らの真実を知るオートマタの水無月と、一生懸命だけれどどこかずれている、でも決して境遇に負けることのない芯の強さを秘めたカノンを主軸に、敵対する勢力と戦うファンタジー。
謎は散りばめられているけれどこの一冊でも水無月の成長ぶりも見られるし、姉との戦闘や、学園生活なども垣間見れて、楽しかった。
いやしかし、タイトルめちゃくちゃかっこいいですね。特にサブタイトル、すごく世界観にあっているし、まさに「再起動」というお話だった。タイトルがいい本はいいものだ。

封石師として初仕事をこなしたフィーネは、半妖魔のアレスと正式に契約を交わした。主従としても恋人としても”最強バカップル”な2人は、愛のための世界征服へまっしぐら! そこへ「雪に閉ざされた町の原因究明」という仕事の依頼が。アレスがいれば怖いモノなし!のフィーネだったが、因縁の「聖シュアル騎士団」が絡んでいて!? 腹黒美少女×恋人バカな半妖魔のラブファンタジー完結!!(Amazonより)
第二巻。主従契約を結んだフィーネとアレス。今回も師匠トリスタンとともに仕事を引き受けるも、またもや反組織絡みらしく。
アレスとの関係のいびつさを感じながら、それでもいい、と強気なフィーネが切なくもかっこいい。もしフィーネが野望を叶えたら、彼との関係も変わるのかな。アレスどころか、フィーネもちょっと考えがずれているみたいだからなあ。師匠といえど異性の家に同居って、もうちょっと自覚持って!笑

天人の“師匠”は、敵対する人間の王・ルタに殺された。彼女の最期の願いは、愛してしまったルタの幸せ。しかし千年後、人間・アセビに転生した“師匠”が見たのは、神話として語られ孤独に生きるルタだった。互いに恋しても、種族が、世界が、誤解が、邪魔をして“相手を幸せにできない”と空回る想い。共に在ることが叶わないなら——変えるべきは世界か。
第15回ビーンズ小説大賞優秀賞受賞、魂に刻まれた恋物語。(裏表紙より)
『神様は少々私に手厳しい』を読んだだけなのですが、守野さんの一人称の勢い、好きだなあ。ぶわー!! っと感情が溢れるところ、読んでいてめちゃくちゃ面白い。ぐっときます。かつコメディ部分も楽しくて、各々のツッコミに笑った笑った。
前世の自分を殺した元弟子は、千年後、誰とも交流を持たずたった一人孤独に生きていた。殺される間際、唯一願った彼の幸せのために、少女アセビに生まれた変わった彼女は全力で彼の元へ駆けていく。……駆けて行くんだけど、びっみょーにずれてるところが楽しい。
なので後半、がらっと色が変わり、物語が駆け足気味になって読者を置いてけぼりにした感があるのがとても残念……。好きなんです、そういう展開大好きなんです! でもこの一冊でやるの無理があったと思うんだ!
それでも、一つの時代の終わり、神々の世の終焉に、やっと一緒に生きられるようになった二人の姿は、とてもとてもよいものでした。

