読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

戦時中のグラース国に転移した須山一樹は、年下の少年、ルーナ・ホーネルトと恋に落ちた。しかし、長かった戦争が終わった夜、気がつくと日本に帰っていた。それから十か月後、何の因果か、カズキは再び異世界にいた。だがそこは、敵対関係にあったブルドゥス国の王都。しかも、自分が消えた夜から十年が経過していた。行き場のないカズキは、偶然出会った少女リリィが経営する娼館で下働きとして過ごすことになる。二度目の異世界生活に慣れてきたある日、カズキはこの十年で名が知れ渡った「黒曜」という存在を知る。それは、終戦の夜に消えた異世界人の自分が、終戦の女神だと担ぎ上げられたものだった―。(Amazonより)
二度目の異世界召喚。言語が通じないため、珍妙な言葉遣いと奇声をあげるヒロイン。このカズキの一人称が、もうめちゃくちゃおかしい。何度も笑わされてしまった。
そんな明るさに隠されているんだけれども、せっかく思いを通じ併せた人と突然引き離され、戻ってこられたと思ったら十年後の世界。どれだけ不安で押しつぶされそうだっただろう。そしてルーナもどんなに苦しかっただろう。その苦しさはカズキの無茶苦茶な言動とそれに振り回される人々のツッコミで台無しなんですが笑
二度目というわりにカズキにあんまりこの世界の知識がないので、どういう状況なのかほとんどわからない……。がんばれルーナ。がんばれアリス。周りの人たち!
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皇居の月々の水道、電気代は? 家計をやりくりするのは誰? きらびやかな宮中晩餐会の費用はどのくらい? 皇室費、宮内庁費などを含めた、いわゆる皇室関連予算の総額は二七三億円。私的なお小遣いである「御手元金」から、「御物」「御由緒物」と呼ばれる皇室財産まで。菊のカーテンの向こう側、知られざる「皇室の家計簿」の詳細を、情報公開法を駆使して大検証する。(カバー折り返しより)
ものすごく面倒な構成になっていることがわかりました。慣例に習うとこうだけれど現代の感覚的にそぐわず、みたいなところを少しずつ変えている最中なのかな。神事に国費を当てられないので内廷費を使う、みたいなところをほうほうと興味深く読みました。
最後の方のお礼金等に関してはなんだか週刊誌で取り上げられるような話題だなあと思いつつも、国家予算の使途の透明性という点ではみんながちゃんと知っておいた方がいい話なのかなあ……。しかし窮屈だな、という思いが否めなかったです。

近衛騎士・フェリクスが新設された部隊の隊長に大抜擢!! 賑やかな旅路となった新婚旅行の余韻も残る中、突然告げられた辞令に戸惑いを隠せないアウローラ。その一方で、彼女にも隊員たちの衣装に施す刺繍の依頼が! フェリクスたちのために奮闘するアウローラだけど、無理を重ねたことで、フェリクスから刺繍禁止令を出されてしまって……!? 大人気シリーズ、完全書き下ろしの第7弾!!(裏表紙より)
フェリクスが近衛騎士隊の隊長に抜擢された。その意図は、魔術より古い起源を持つ『魔法』を用いる者たちの事件に対処すること。彼らを守るための刺繍を施すことになったアウローラは、少しでも強い刺繍を施すためにその手がかりがあるらしいフェリクスの実家があるアルゲンタムへやってきた。
終わり方を見るに前後編という感じですかね。アウローラは今回は刺繍するばかりでなく、刺繍する目的やその力の意図を自覚的に使おうとする。若夫婦の周りは大変賑やかなんですが事件も不穏さを増しており。この後どうなるんだろう。早く続きが読みたいよー!

ミアの愛(!)で、魔王覚醒から救われたフィン。ひとまず一行は王都に向かう。そこで出逢ったのは、勇者の旦那様=筋肉質なケーキ屋さん&一癖ある店員コンビ!! 初対面の男子とも仲良くなるミアに、フィンはソワソワ……。そんななか、魔王を騙る人物が連日現われて事件を起こし――!? 「ミアのことが一番好きだよ」 元・魔王は平和を取り戻すことはできるのか!? 英雄譚は、終わらない!(Amazonより)
前作から続くお話を、フィン視点で。今度こそフィンが本当に報われてよかった。これでエヒトの審判が終わればいいんだけれど、次の百年は魔王が聖女を求める展開になりそうだな、などとちょっと思いました。
来世の話はともかく、今世の仲間たちもそれぞれに好きなことができそうで何よりです。思ったよりレーツェルがコメディ要員になっているのに笑いました。
今回のフェチはメイド服かな?笑 あとそれぞれに悩みを抱えた人たちを勇者一行がなんとなく救っているのが楽しかった。そのゆるさ、ちょっと好き。

百年前の聖戦〈エヒトの審判〉で世界を救った聖女の生まれ変わり・ミア。なんの因果かミアの幼馴染・フィンの前世は魔王! 狼の魔物を身に宿した孤独な彼を、「良い子良い子♪」と天然にタラし込んでいたことで世界の平和は保たれていた……が。再び訪れる審判の時! かつての仲間である勇者一行と再会するも「ウチの子は魔王になんかなりません!」と言い張り!? 涙と笑いの新英雄譚!!(Amazonより)
百年ごとに繰り返される勇者と魔王の戦い。前世で聖女だったミアは、いまは劇作家見習い。幼馴染のフィンを可愛がっていたけれど実は彼は魔王。それを弟のようなわんこのような感じでたらしこんでいるミアだったけれど、ついに聖杯が現れてしまう。
会話とキャラの関係性を楽しみラブコメディ。めちゃめちゃ腕の立つ大きな青年を、元気で明るい少女がぎゅーっとしてよしよしするという、すごくフェチズムを感じるシーンがいっぱい笑
派手な展開はないんだけれど、ミアとフィンがとても可愛い。フィンが報われたのでよかったよかった。

最近よく見かける「LGBT」という言葉。メディアなどでも取り上げられ、この言葉からレズビアン、ゲイの当事者を思い浮かべる人も増えている。しかし、それはセクシュアルマイノリティのほんの一握りの姿に過ぎない。バイセクシュアルやトランスジェンダーについてはほとんど言及されず、それらの言葉ではくくることができない性のかたちがあることも見逃されている。「LGBT」を手掛かりとして、多様な性のありかたを知る方法を学ぶための一冊。(Amazonより)
LGBT、クィア・スタディーズのための基礎的知識を解説する本。読み解くための準備というか、きちんと理解してから論じるために、歴史的な面や諸国での動きの概略を説明してくれていて、知らないところもあり、なるほどなあと思いました。
すごくわかりやすいと思ったしどきっとしたのが、「偏見がない」「差別しない」といって乱暴な善意を示す人間は理解する気を失っているという指摘。どうすれば相手を傷つけずに済むだろう? と考えることが重要。確かにその通りで、相手のことを考えて無知でない自分でいたいな……と思ったのでした。

福岡のお屋敷に奉公に出た千恵子。そこで出会った美しい令嬢の和江は、愛に飢えた寂しい日々を送っていた。孤独の中、友情とも恋とも違う感情で惹かれ合うが、第二次大戦下、戦況は刻々と悪化。女たちの運命はたやすく戦火に揺り動かされ……。人生を選ぶことも叶わず、時代と男に翻弄されてもなお咲き続ける昭和の女性たちの、誇り高き愛の物語。(裏表紙より)
やくざ者の情婦である和代と雛代、姉妹の愛憎と別れを描く「天人菊」。
父親の借金のかたに妾として売られた泉美。彼女のもとに旦那様の息子が現れる「凌霄花」。
博多の知事の家に奉公に上がった千恵子は、お嬢様の和江と惹かれ合う「乙女椿」。
過去といまを行き来するとある老女の追走「雪割草」。
何気なく読み始めて「ああ中短編集か」と思ったら! 嬉しい裏切りでした。お話が連なっていることに凄まじい意味が込められていて、おっもしろ……とつい声が出てしまう。
宮木あや子作品でも官能を含む艶めいたお話が集まっているんですが、この中短編の第二次世界大戦前後という舞台と合わさって、すごく濃密に香る。生と死に食らいついている感。「乙女椿」を読んでいて、どうして女性たちがこういう風に接してくれるんだろうと思ったら、三浦しをんさんの解説を読んで納得しました。そうか、女性たちはこうやって互いに力を合わせて命を繋ごうとしているんだな。そのひたむきさ、懸命さにぐっとくる。
最後の「雪割草」での恋が時代の移り変わりを表しているようで、最後ちょっと息がつけたのもすごくよかった。

“――彼は、あの日の姿のままで現れた”
アラサーOL・香実の会社にやってきた新人は、幼いときに初恋をした不思議な青年の、当時のままの姿をしていた。十三年ぶりに訪れた奇跡の再会に、香実は思い出にある通りの、優しい彼に惹かれていく……でも……。
一体、あなたは何者――?
心のどこかで、繰り返される疑問。果たして青年“樹々”の抱える秘密とは。
彼の謎が明かされるとき、あなたもきっと、“永遠の恋”に巡り会える……。(Amazonより)
ブラック体制で働き続けていた香実は、とある出来事を経て心が折れ、情熱を失って漫然と働いている。そんなある日、幼い頃から変わらない姿を持つ初恋の彼、樹々が現れる。だが彼は香実のことを初めて会うと突っぱねた。
前半の、疲れ切った香実のいびつな日常。樹々のような青年が現れたことですうっと世界が色づいたところ。そして中盤からの穏やかな日々と、これからのことを考えようとするしなやかな視線が、とても心地よかった。ファンタジー要素がある? ない? と最後まで悩まされたところにどきどきしましたが、どういう内容だったかは最後まで読んだ人間のお楽しみでしょうか。
それを踏まえて、できることならもう少しその先のことも読んでみたいと思いました。変化と不変を愛おしむ香実に救われた気がします。