読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

無法地帯シークレット・ガーデンで仲間たちと暮らす少年ユキノジョウは、街で不思議な少女を見かける。カラーコーンを被り、包帯で上半身をぐるぐる巻きにして、執事を従えた魔女ルックの少女だ。
非日常が日常の街で育ったユキノジョウは見なかったことにするのだが、ある日、仲間で同居人でもあるハイドが自称魔女の彼女を拾ってきて!!
シークレット・ガーデンに魔女、現れる!?(裏表紙より)
『アリス イン サスペンス』に続くシークレット・ガーデンの二作目。これがホワイトハートから出たっていうことがすごいよなあ(2011年の本です)。
日常から離れた場所、普通とは違う少年少女たち。世界に弾かれながらも自分の力で生きていくみんなのたくましさと、そこにちらりと顔をみせる寂しさがなんとも言えないなあ。
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王獣騎士団の騎士として副官の義兄ジークに追いつきたい。そして、団長のラルフ王子から寄せられる想いに応えたい——。そう願いつつ、入団したばかりの辺境伯公女エリカには、どちらもまだまだ遠く、もどかしい日々を過ごしていた。そんなある日、突然ジークからラルフとの恋愛を反対されてしまって!? 兄様に邪魔されても、この想いは止められないわ! 恋も一人前の騎士になることも諦めたりなんかしない!! 男だらけの騎士団で未来を拓く地味系乙女のラブファンタジー第2弾!(裏表紙より)
第二巻。見習いとして順調に経験を積むエリカだけれど、恋する相手は王位継承の可能性がある第三王子、義兄とは関係を修復したけれど恋を反対される状況。私がなりたい私って何? と思い悩む。
ここで登場する大人たち(エリカより年上の登場人物)はみんなエリカに、すごく大事なことを少しずつ教えて、より良い未来を選べるように導いてくれるんだなあ。魔獣と戦って、いろいろややこしい事情がある殺伐とした環境の中で、そんな風にエリカを育てようとしてくれる人たちの眼差しや言葉がくすぐったい。
できればエリカには、恋も騎士も諦めないでほしいです。

地味顔だし、特別何かが優れているわけじゃない。王都へ行った義兄のジークは自分のせいで帰ってこないし——。と悩みをつのらせていた辺境伯公女エリカはある日、領地に出現した魔物のせいで窮地に陥ってしまった! そのとき、颯爽と現れた王獣騎士団が救ってくれたのだけれど……。団長のラルフ王子がなんでわたしなんかに絡んでくるの!? でも、兄様が副官になったせいで帰れないのなら、苦手な王子のそばだろうと、騎士団に入って取り戻してみせるわ! 男だらけの騎士団で未来を拓く、地味系乙女のラブファンタジー。(裏表紙より)
何かを成したくて、何かになりたくて、けれどそのきっかけがつかめずに周りが見えなくなりつつあるエリカが、勇気ある一歩を踏み出すまでのお話。
何かになりたいと思っているとき、何をしていいのかわからなくなるときがくるんだよねえ。大事なものを失いそうになっているときはなおさら。
器用貧乏で突出した特技がない、けれど能力は高いエリカが、自由奔放で鋭いラルフにどう感化されていくのか。きっといい形になるんだろうなあと微笑ましい。
家族仲がいいのもにこにこして読んでました。お母様がいいキャラだ。

雪のクリスマスイブ。母親が失踪し家を追い出された茜音は、天使のような少女の導きによって古い洋館アパート「かなりや荘」に招き入れられる。そこには心の片隅にさびしい廃園を抱えた人々と、道半ばにして亡くなった天才漫画家の幽霊・玲司がひっそりと暮らしていて…。古アパートを舞台に、歌を忘れたかなりや達が繰り広げる、優しく力強い回復と救済の物語。
傷ついたかなりや達の止まり木に、ようこそ。(裏表紙より)
タイトルのファンタジックさと、内容紹介から想像されるお話とは90度くらい方向が違う気がする……絵を描く人である主人公の茜音が、いかにしてものを作っていくか。傷ついた敏腕編集者と、天才漫画家の幽霊の少年とともに歩んでいくお話、という認識でいいのかな。シリーズもの前提とあとがきにありました。
表現活動において傷ついた人たちが集まるのがかなりや荘。女優さんもいれば写真家さんもいて、同居ものに見せかけてほとんど人物紹介で終わった気がするので、この人たちのお話も今後絡んでくるのかな?

進学校として知られる天智高校。春休みのある日、人気者だった春日井奈々が校舎から転落死する。自殺と思われたが、転落前、彼女の背後に人影を見たという証言もあり……。奈々が所属していた部活は、部員の名前に偶然、春・夏・秋・冬の文字があることから「四季の会」と呼ばれ、憧れる生徒も多い。だが、奈々の死後、部員たちに異変が起きて…。危うく儚い青春ミステリー。
ねぇ、知ってる? 日本の女子高生って——。
少女たちが少女たちたる黒い側面、黒い水の中で目をらんらんと光らせているような彼女たちの、憎しみのお話。青春ミステリーっていうほど爽やかじゃないんですが、なるほどなあと思わせるお話だったと思いました。
だからこそタイトルが惜しいという気がするなあ。みんな見えないところで「号泣」しているのかもしれないけれど、真相に関わった人のことを思うと「慟哭」という気もするし、もっと鮮やかな「殺意」というものだった気もするし。
探偵役の周と冬姫の存在に救われたなあと思いました。

男嫌いの聖女・リズは、政略で敵国に人質として預けられることになってしまう。これも試練、と敵国に向かったけれどなぜか『罠王』と悪名高いディルク王子と結婚する契約になっていた上、リズの役目は正妻でなく愛人!? しかもディルクは、リズを男嫌いにした張本人で……。「聖女の面目躍如のため、私、正妻になってみせます!」いろいろたくさん“わけあり”聖女が、腹黒王子と紡ぐラブファンタジー(裏表紙より)
タイトルを読んだ印象そのままのヒロインでした。最近はこういうタイトルが多いですけど、こういう喋り方するヒロインってあんまりいないと思うんですよね……っていう偏見は置いておいて。
受難続きの挙句に中継ぎ的な聖女セシリーになってしまったリズ。信仰心の強いリズは罠に嵌められたものの、「これも試練」と右往左往しながらも立ち向かうことに。しかし歪められた『信仰』に気付いて……。
たくましいのかはわわ系なのかっていうリズに、ノーラが厳しいことをいうのが面白いなあと思いました。何かあるんだろうなとは思っていたんですが、最後はノーラとしてずっと一緒にいてツッコミ役をしてくれてもよかったのよ!

京都の寺町三条商店街にポツリとたたずむ、骨董品店『蔵』。女子高生の真城葵はひょんなことから、そこの店主の息子、家頭清貴と知り合い、アルバイトを始めることになる。清貴は、物腰は柔らかいが恐ろしく勘が鋭く、『寺町のホームズ』と呼ばれていた。葵は清貴とともに、客から持ち込まれる、骨董品にまつわる様々な依頼を受けるが——古都を舞台にした、傑作ライトミステリー!(裏表紙より)
舞台は京都。骨董品店のアルバイト、女子高生の葵と、店主の息子の清貴。京都の街を歩きながら、出会う人たちと小さな謎を解くお話。
とても葵が可愛らしいです。失恋から始まるって、もうここから恋が始まるだろーっていうのが楽しい。清貴のいけずなところが色っぽくてかっこよくて、どきどきします。
京都の有名どころをなんとなく歩いている感じなのも楽しかったです。

「我が乙女になる気はあるか」
両親を失い、結婚させられそうになっていた田舎の町娘・オルナを助けてくれたのは、ユニコーンのクインティゲルン。契約し彼の乙女となったオルナは、恩返しのため立派な乙女になることを決心! 王都の館で新生活を開始するけれど、ユニコーンの彼と会えるのは夜だけで——?
結婚回避の手段は、聖獣との契約!? 癒しの力をもつ乙女とユニコーンの青年の凸凹契約ラブファンタジー!(裏表紙より)
ユニコーンと契約した乙女は、人々の病や怪我を引き受け、その傷をユニコーンに癒してもらうことを繰り返し、人々を救う聖なる存在。両親を亡くしたオルナは偶然ユニコーンと出会い、彼に助けられてユニコーンの乙女たちが暮らすレーアの館で奉仕活動を行うことになった。
物語の入り口という感じのお話で、オルナがいかにして乙女となり、聖乙女と呼ばれ始めるようになったかがわかる。できればオルナとクインティゲルンが一緒に頑張るところをもっと見たかった!
乙女になったオルナもいい感じだったんですが、冒頭の、両親を亡くしたオルナがクズ男とその父親にいいようにさせられそうになってクインティゲルンに助けられるまでがめちゃくちゃ面白かったです。なんでそこかと言われると、これがもう、婚約者(仮)のラドが笑えるくらいクズで! クインティゲルンにびびりまくった彼にざまあ! と思うのが大変楽しかったんです。

自らの罪で詩人を死に至らしめたことを悔い、「真実の恋」を諦めたまま、詩と音楽に慰められて大人になってゆくシェプシ。神の言葉が解明され、禁囲区域であった紫の砂漠は解放されて、世界は混沌をきわめてゆく。天変地異、政変、急激な変化の中で、優秀な書記としてのぞまれながらも、詩人になることを選んだシェプシの運命は……。名作『紫の砂漠』の待望の続篇、書き下ろしにて登場。(裏表紙より)
旅を終えたシェプシは、書記になるための教育を受けながらも詩人になることを諦めないでいた。周囲の反対をおして詩人になったシェプシだったが、砂漠の禁忌が解かれたことで世界は急速に変革していく。書記、巫祝、祈祷師という三つの派閥と、「神の箱」によって生まれた親を持たない三人の子どもたちを巡って、天変地異や政変に巻き込まれていくシェプシ。
異星でのSFファンタジー。シェプシのその後がわかります。
神々の手によって閉ざされていた世界が開く様が、恐ろしいようで悲しいようで。翻弄されるシェプシの悲痛な思いが胸に痛い。けれどその結末は「欲しいのは子どもじゃない。あなただ、シェプシ。なぜ、わからない?」という、運命の恋ではないかもしれないけれど、片割れを見つけたという幸福だった。
遠い世界の物語、堪能しました。

遙かかなたの地平線まで、鷹揚に風の紋を刻んでただただ広がる紫の砂漠。なにかが呼んでいる——砂漠の果てに生まれ、砂漠とともに過ごし、砂漠に強く心惹かれるシェプシは、神の領域であり、禁域とされている紫の砂漠へ思いを募らせる。四つの月を持ち、「真実の恋」によって男女の性差が決定するこの星で、シェプシの冒険がいまはじまる。芥川賞作家・松村栄子がおくるファンタジーノベル。(解説・高原英理)(裏表紙より)
ファンタジーっていってもきっとSFなんだろうなあと思ったら、しっかりSFでした。
立ち入ることの許されない紫の砂漠に憧れるシェプシは、周りの人々と違って「丸い耳」を持つ子。七歳になって同じ歳の子どもたちとともに「運命の旅」に出て新しい親元に行くはずが、旅先案内人である詩人と詩人の語る様々なものに好奇心を刺激され、ついに旅の途中で砂漠に向かうことを決意する。そして砂漠で出会ったのは、自分と同じ丸い耳を持つ、自分の知る世界とはまったく異なる道具を使う人たちだった。
詩人の名であり、砂漠で出会った子の名である「ジェセル」という名が運命として廻るのが面白いなあと思いました。最後は、ああやっぱり……という気もしたし、悠久の、果てしない時の巡りを感じてちょっと呆然としたりもして。いいSFでした。