読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

生まれて初めての合コンで『新選組!』を語る、クリスマスイブに実家でイモの天ぷらを食す、非常にモテる男友だちの失恋話に相槌を打つ——思わず自分でツッコミを入れてしまう微妙さに懊悩しつつ、それでもなぜか追求してしまう残念な感じ。異様にキャラ立ちした家族や友人に囲まれ、若き作家は今日もいろいろ常軌を逸脱中。爆笑と共感がこみ上げる、大人気エッセイシリーズ!(裏表紙より)
クウガとオダギリと漫画とバクチク、がこの本の構成要素と言えるかと(それ以外もちゃんとあるけれど)笑った笑った。エッセイが読みたいなーと思うときは、大体この方の本を読みたくなるんだ。裏表紙の紹介の「キャラ立ちした家族や友人」というのが絶妙すぎて、これを書くために打ちながら噴いてしまった。
面白い日常もいいけれど、本の紹介が素敵で読みたくなる。

夢をかなえるために入学した高校で、希望に燃えていたみかげだが、気の合うともだちもみつからず浮かない日々。京都の高校に進んだ瞬と心を通わす手段は、メールでのやりとりだけ。人間関係も、恋愛も、うまくいかないもどかしい気持ちを携え、みかげは夏休みの間を京都で過ごすため旅だった——。
少女の成長と淡い恋の行方を瑞々しく描いた、ピュアな青春ストーリー!!〈解説・藤田香織〉(裏表紙より)
前作は家族ものでしたが、今作は少女たちと女性たちの物語の印象が強かったです。
主人公のみかげと、元クラスメートのエリサ。少女のような継母の洋子。京都のサワと涼。彼女たちの人生が、ゆるやかに絡み合いながら、サワ、涼、洋子が、みかげとエリサ二人の少女を大人へと導いていく、というお話であったように思います。
一人称で書かれているものの、作者の暖かなまなざしが感じられて、光丘さん自身が涼さんたちと一緒になってみかげたちを導いている気がするなあと思います。ふわふわと温かなお話でした。
そんな感じなので、恋の行方というほど瞬が関わってくるわけではなくて。それでも、心穏やかになれました。

中3のみかげは、亡くなったママのことを忘れられない。父親の再婚で兄妹になった同い年の瞬とはソリが合わない。でも、「ぶっきらぼうなやつ」としか思っていなかった瞬の存在が、だんだんと心の中で大きくなり始めて——。
少女の揺れ動く感情を縦糸に、じれったい「初恋」と家族の再生を横糸に織りなされた、純粋すぎるほどの青春模様。文庫書き下ろし。〈解説・小手鞠るい〉(裏表紙より)
思ったほど血のつながらない兄妹ものではなく、思った以上に家族の再生が描かれた話でした。
みかげの視点から語られる物語。みかげは、中学二年生にしてはちょっとだけ大人びていて、けれどママに執着する様は幼くて。その奇妙なギャップというのか、すんなりと納得して、周囲に対応したかと思えば、思いもがけないところで反発したりむっとしたり声を荒げたり。不思議な感じでした。
元々児童文学として書かれたものを下敷きにしているとあとがきにあったので、この純粋さはそうなのだろうなあと思いました。

新書を買うのは実は初めてである。森博嗣さんということが一番のネックで、小説を書くことについて書かれている本だったので、思わず衝動買い。……すっごく面白かった!
森さんが、すごく特異(?)な経歴と戦略で小説家になられた方なので、森さんの小説論がすごく興味深くて面白かった。小説を書くのに「小説を読むべきではない」というのもおおっと思ったけれど、出版業界、マーケティングについても述べられていて、やっぱりこの方すごい方なんだ! と思うことばかりでした。
出版業界って、実はすごく頭が固い業界なのですね。古来の日本人らしい、へんな暗黙の了解がまかりとおっているようだ……。不振の出版業界と、これからの作家と出版についても、すごく面白かった。

祓いの楽人(バルド)は天分の才。楽を奏でる者であっても「選ばれる」もの。世界の理を正す者。物言わぬ祓いの楽人オシアンと、彼と共に旅するブランは、この世に留められる、あるいは留まる頑な魂を解放し、理を正す者である。ケルト民話・伝説を下敷きにした異世界ファンタジー。
私が読んだのはハードカバー。文庫でも出ているようです。
とても綺麗なお話でした。一話完結、話の語り方は違えど、祓いの楽人オシアンと相棒ブランが、この世に留まった魂を解放する物語です。妖精、悪霊など、幻想の生き物たちがごくごく自然に人間に関わっている土地でのお話。ヨーロッパの妖精物語系でしょうか。
森の緑や湖の青なんかが活き活きと綺麗だなあと思いました。荒野の様子や、家々の様子なんかも、とても温かみのある、自然のままの世界で、こういう場所なら「万物の始まりは楽の音」と言われても全然不思議じゃない。
ハードカバーの、水彩の絵がとっても綺麗なのですよねー。気になってた本だったのですが、2009年冬号の活字倶楽部だったかで紹介されていたので、読んでみようと。とてもいいファンタジーでした! オシアンの謎も、ブランの物語も、まだ語られていないので、もし続きが出るなら読みたいです。

薔薇屋敷あるいは月夜邸と呼ばれるその屋敷には、オオカミ男が出るという奇妙な噂があった。瀬在丸紅子たちが出席したパーティの最中、衣服も引き裂かれた凄惨な死体が、オーディオ・ルームで発見された。現場は内側から施錠された密室で、床一面に血が飛散していた。紅子が看破した事件の意外な真相とは!?(裏表紙より)
保呂草と紅子さんの関係がどうなるのか気になるVシリーズ。今回練ちゃんの活躍は薄め。しこさんは若干空気読めてないけど、それがいいのかもしれない。森川君がメンバーの中に入って、大学生組は楽しそうだ。
殺人事件のトリックは、多分そういうことなんだろうと、具体的とはいかなくてもどこに仕掛けがあるのかはなんとなく分かってた。お屋敷なんてものが登場したら、やっぱりそう考えるよね! と。
殺人事件から周囲の人間の心理が浮き彫りになるんじゃなくて、あくまで紅子たちの普段の生活から、くだらない話や、女同士の張り合い(?)や、怒りなんかが見えてくるのが楽しいなあと思う。

高校最後の夏、悟史が久しぶりに帰省したのは、今も因習が残る拝島だった。
十三年ぶりの大祭をひかえ高揚する空気の中、悟史は大人たちの噂を耳にする。言うのもはばかられる怪物『あれ』が出た、と。不思議な胸のざわめきを覚えながら、悟史は「持念兄弟」とよばれる幼なじみの光市とともに『あれ』の正体を探り始めるが——。
十八の夏休み、少年が知るのは本当の自由の意味か——。
文庫用書き下ろし掌篇、掲載。
(『白蛇島』改題作品)(裏表紙より)
同じ因習の残る場所の、大祭に関わる話でも、『神去なあなあ日常』とこの『白いへび眠る島』では受ける印象が全然違いました。ちょっとぞくぞく、恐かった。
十八歳の少年の夏休みの冒険、なのですが、こう、どろっとした感じというか。読んでいて印象に残った言葉が「とろける」という表現。闇や海や空気が、「とろけ」ている、という書き方をされていたと思うのですが、その肌にまとわりつく感じが、とても恐かった。
その中で清涼剤というか、なんかいいな、とにやっとしてしまうのが、荒太と犬丸なのです。これはオタク的な見方をするとBで始まるあれなんだろうなあとか考えてました。文庫書き下ろしの掌編はまさにその典型っぽい。彼らの存在がなんだか綺麗で、ちょっと救われた気分になりました。荒太と犬丸の掌編で描かれたそういうネタはおいしいです。ごちそうさまでした。
面白かった!

高校卒業後の進路を親に勝手に決められた勇気は、新幹線や電車を乗り継ぎ、辿り着いたのは山奥深い神去村。就職させられた職とは林業だった。「なあなあ」という独特の言葉を使う、おっとりした人々。神様の領域である山に触れていく日々が始まった。
面白かった! こういう人知を超えた「なにか」に好かれる話はものすごく好き! 愛されるとも表現するだろうけれども、愛されるよりも「好かれる」がぴったりくると思う。
林業の現場に放り込まれた勇気は、先輩となるヨキや五十歳くらいの巌さん、矍鑠たる老人三郎さん、山の持ち主である清一さんなど、山と木の職人たちに教えられて成長していく。この成長ぶりが、とてもいい。清々しい。最初逃げるところからもう(心が)捕まった! という感じ。
神去村での日々が、現実とあちらとの境目に近くて、神隠しがあったり、神様が霧として降りてきたり、ちらっと目に映ったりするんですが、それがとても自然に人間の生活に溶け込んでいて、読んでいて感じられる空気がとても綺麗。
かと思うと、祭りはすごかった。興奮した。
すごく楽しい本だった!

話題の爆笑エッセイが、文庫になって帰って来た!!
東に西におもしろいマンガを小説を探し続け、
心からホモ漫(ホモ漫画)を愛する。
ある時は愛するバンドを追っかけ、
またある時は、盆栽と戯れる。
日常の中、炸裂し暴走する妄想は、留まることを知らない!!
さすらうマンガハンター・三浦しをんが、
書を求めて、今日も街をさまよう!!(裏表紙より)
見つけて思わず手に取ったエッセイ集。笑った笑った。
「防人のうた」というタイトルの、バクチクのライブに行くために福岡へ飛んだしをんさんは、公園でコーチと厳しく走らされている教え子たちという光景を見る。
「軟弱者は県民として認められん土地柄なのやろか」
「九州男児でいるのもつらいわねえ」
「この人ら、敵襲に備えとるんかもしれん」
「ああ……防人なのか……」
噴いた。
あと中に駅伝妄想の話があって、まんま『風が強く吹いている』の内容で噴きました。本当に書いちゃったんですね。『風が強く吹いている』は男ばっかりですがほもじゃないはずなので、こちらもおすすめ。