読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

寂れた町に、音楽の『竜』が舞い降りる
音大を出たけれど音楽で食べる当てのないヴァイオリニストの青年・響介。叔父の伝手で行き着いた先は竜が破壊の限りを尽くした——と思える程に何もない町、竜ヶ坂の商店街の有志で構成されたアマチュアオーケストラだった。激烈個性的な面子で構成されたそのアマオケを仕切るボスは、車椅子に乗った男勝りの若い女性、七緒。彼女はオケが抱えている無理難題を、半ば強引に響介へ押し付けてきて——!? 竜ヶ坂商店街フィルハーモニー、通称『ドラフィル』を舞台に贈る、音楽とそれを愛する人々の物語。(裏表紙より)
おっもしろかったあああああ!! 特大ホームランでした。これはいい音楽もの! ライトノベルなキャラクターに硬派な文体とエンタメな物語で、更に感動があるというすごい話でした。面白かったー……。
一流の音楽教育を受けることができる環境に生まれ育ちながら、天才と凡才で分けるなら確実に凡才の方、という主人公・響介が、町おこし的なアマチュアオーケストラのコンサートマスターに迎え入れられて……というお話。メンバーが商店街の有志なので、商店街の人々のちょっとした問題を解決してみたりとちょっといい話があり、最後にこの物語の始まりとなった響介自身の真実が明かされていく、その最後に至るまでに繰り返される七緒の言葉、「その音楽に、永遠はあるか?」「音楽家なら音で語れ」がもう強烈に響いてきて、本当に本当に面白かった。
職人というか音でも何でも芸術家と呼ばれる人たちの始まりは、きっとこんな風で、そしてこの物語のように大切なものを精一杯抱えて、ひたすらに表現していこうとする人たちなのだ、という実感が染み渡りました。面白かったです。
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父の仕事の都合で田舎のボロ屋敷に引っ越してきたミツコ。だがそこには、何に未練を持って幽霊になったのかも忘れてしまったダメ幽霊が住み着いていた! 「拙者は社会の塵でござる。働きもせず、地縛霊などに甘んじて朝から晩までテレビテレビ…」ニートな侍幽霊に何と恋をしてしまったミツコは…!? 声優との夢のコラボ小説賞「81ルルルドラマチック小説賞」から、審査会で満場一致の大賞受賞作が登場!(裏表紙より)
引っ越し先の家には、どう考えてもニートでしかない幽霊が住み着いていた。幽霊を幽霊社会復帰させるためにミツコは飴と鞭を使い分けて指導していく。
ニートなのでほぼ家から出ません。出ても家の周りだけです。ミツコは今時の子っぽいけれど普通で、けれど周りのキャラが濃すぎる。テンション上げないと消える幽霊ってどんな幽霊だ! スピリチュアルポエムってー!!笑 正体もオチも最初から読めましたが、それでも最後までテンション高めの楽しい物語でした。

江戸の遊郭——吉原。外道菩薩と呼ばれる美貌の青年・弥太郎には、”死んだ人間が見える”という噂があった。ある日、奇妙な来客を受けた弥太郎は、一人の元遊女の不審な死について調べ始める。その矢先、彼が廓内で唯一気にかける少女に異変が起きて!? 胸に秘めた恋心、愛憎入り混じる肉親への情。吉原に生きる者達が抱える、心の闇に「鬼」が憑く――。死者を映す瞳が暴く、鬼の正体とは? 美しき吉原幻想鬼譚!(裏表紙より)
何故かしばらく前から遊郭ものが大量に積んであって、ようやく読んだ一冊。
世界は変わらないし誰かが救われるわけではないけれど、吉原という場所で生きる人々が繋がり合っているという気がした話でした。恋をするわけじゃないし、むしろその思いが相手を縛って呪ってしまうような世界で、それでも誰かを大切に思うことが誰かを救うかもしれない。
少女小説らしからぬ(?)艶美な雰囲気で、登場する女性たちの美しくかっこいいこと! 密かに夜菊ねえさんが好きです。弱さを自覚しながら無邪気であれるねえさんが大好きです。握り飯のエピソードにきゅんとした……。

何事にも無気力、無関心な毎日を過ごす高校生、三並英太。楽そうだからという理由だけで図書委員になった彼は、ともに委員を務める東雲侑子の熱のない静けさに、自分の空虚さに似たものを感じていた。しかし偶然彼女の秘密を知ってしまったことから、自分との違いを思い知らされる英太。だが、その秘密のために、彼女と距離を縮めることとなり、失ったはずの感情に胸を締めつけられていく……。
早熟な少年少女に贈る、もどかしく苦いラブストーリー。(裏表紙より)
少年少女のじれじれ現代恋愛もの。甘酸っぱい! なのに爽やか! 恋愛小説なのに不思議な読了感でした。中二というほど中二をしているわけでもなく、ちょっとずつ大人になっていく子たちのお話の気がするな、と思いました。
読み始めは「よくある現代恋愛もののライトノベルなのかな」と思ったら、ヒロインの東雲侑子が非常に静かで、恥ずかしがりやのちょっとコミュニケーションを苦手とする普通の女の子で、主人公の英太もテンションが高いわけではなく、静かに読み進めていくと二人の心の距離がちょっとずつ縮まっていく、その切なさとすれ違いの甘酸っぱさが! とてもいい恋愛小説でした! 面白かった。

祝福の鐘が鳴り響く——。ここは教会。なぜか、ウェディングドレスを着たオレ。新郎は姉の会社の社長・西園孝也。オレが大っ嫌いな奴だった。唯一の肉親で、わがままだけど憎めない姉・真由奈の結婚を祝福するつもりでいた。なのに、姉の結婚式ドタキャンで、男のオレが花嫁の「身代わり」に!!? 交代するはずの空港にも姉は姿を見せず、新婚旅行まで連れていかれて…。姉ちゃん、どうにか「初夜」には間に合ってくれ…!!
不本意ながら、男と男で南国ハネムーン♥(裏表紙より)
設定が無理矢理でありえねー! と思いながらも、無人島で二人きりというはなかなかえろかった!笑 敬語の攻めはとてもセクシーでした。
しかし二人きりだというのに襲われた次の日なのに日中普通に過ごしているとか、姉の明らかにおかしい言動に疑問を抱きながらも従ってしまう尚吾は、なんだかやっぱりちょっと変な子だったな。それにこういう本ってお姉さんの性格がいいというのはあんまりないのかなあ。天然で純粋すぎて馬鹿っぽかったり、あくどいところがあるのに憎めないと弟に思われている姉だったり……。要研究だな!

「なにか楽しいことはないのかな」それがおれたちの口癖だった。親を知らず、無法地帯シークレット・ガーデンで生まれ育った十四歳のヒツジコには、仲間がいた。見た目美少女のユキノジョウ、家出少年ジャック、シルバーの血を持つハイド。そして、アリス。
孤独を抱え、ときに街に飲み込まれそうになりながら、それでも強く生きる少年たちの物語がここに!
ホワイトハート新人賞受賞作登場!!(裏表紙より)
少年の一人称で語られる、とある凄惨な事件。そして、少年たちの帰らない日々の物語。
語り口が面白くて、この言葉の乱れっぷりにうわあとなりながらも嫌いじゃない。世界を斜めに見ている感じ。諦めと、燻り。この本の中のものが、通り過ぎて二度と戻ってこないあの眩しい日の出来事である、という最初から悲劇的な結末を予感させても、なんでもない日々が宝物だったんだという思いが伝わってくるようで、痛いような泣きたいような気持ちになりました。
面白かったです。

ピアニストの由起子は、病気療養のために訪れた沖縄の離島で漁師の龍二に出会い、恋に落ち、やがて女の子を身篭もる。
しかし、娘・涼子を産んだ後、由起子は他界。やがて涼子は美しく成長し、島の幼馴染の漁師・一也と愛し合うようになる。だが、一也は結婚に反対する龍二に反発。漁師のプライドを賭けて深く海に潜り、帰らぬ人に。ショックで心を病んだ涼子は、心を閉ざしてしまう……。
『花宵道中』で鮮烈なデビューを果たし、“新官能派”の旗手として活躍中の著者が等身大の若者の愛と苦悩、親子の愛情を描ききった意欲作。(裏表紙より)
宮木さんイコールえろいみたいな刷り込みがあって、初めて読む宮木作品である。余所者の娘め、余所者が産んだ娘め、この売女! みたいな展開があるのかしらと思っていたら、全然違う話でした。
遥か南、南風原島。有名ピアニストだった由起子と、彼女が産んだ娘・涼子を中心にした、女の物語でした。海に囲まれた島は異界、海の底もまた。そういう世界で、十歳の涼子が、世界には海と南風原島しかないと信じたがっているところに、ぎゅんとする。そうです、私は十歳の涼子の話、三原色の章がとても好きです。
この、閉塞感ともつかない、でも内地の人間とはまったく違う世界の話という、不思議な場所の話。こう、めっちゃ好きだー! という感じではなく、ふとした瞬間に「あのシーン好きだったなあ」と思うような話でした。

(——魔物のすべてを死滅へ導く罪も、彼を思えば甘受できる)ギブ神父のために命を捨てて、伝説の《聖櫃》を封印する覚悟を決めたツキシロ。だが彼女を失いたくないギブは、ある決断をくだす……。もどかしい主従関係の果てに二人が迎えるのは、幸福な結末か、それとも!?「もうすぐひとつに還れるよ。愛しいもう一人のボク……」自らの半身である悪魔に囁く、天使の真意とは——!? スカーレット・クロス、ついに堂々完結!!
最終巻。面白かったああ!
《聖櫃》を閉じる決意を固めたツキシロ、追うギブたち祓魔師一行。しかしそれぞれに思いは揺れ、秘められた《鍵》の真実が明らかになる。ひとつひとつ堅実に心の動きを追っていく話だったので、ツキシロの、個人のレベルだと思っていた、という発言に納得もしましたが、最終決戦はたぎったー! バトルたぎったー!! 恋愛を描いている上に、ライトノベルという感じの結末のつけ方でした。
この巻でギブとツキシロが「いい仲」になってしまったのにびっくりしました。だから双方ともに風呂の話があったのか……!(とても余計なところでその伏線に感動する)。これは乙女心なんだろうな……(何か間違ってる気がしないでもない)。くっついた後のふたりが可愛らしく、ツキシロはいい女になりました。よかったよかった。
面白かったです。いいお話でした!

《神の子》と謳われる若手最強の祓魔師・ギブ神父と、その下僕たるヴァンパイアの少女ツキシロ。二人が主従になったばかりの頃の物語『月色の免罪符』や、ギブの初々しい少年時代を描いた『月明かりの守護』、ギブの両親の破天荒な恋物語『月彩の約束』など、書き下ろしの表題作も含めた豪華な短編集!
「約束するよ。死が二人を分かつまで、共に生きよう」それは《聖なる主従》をとりまく、五つのスペシャル・ストーリー!(裏表紙より)
最終巻にいく前にちょっと一息。初々しい少年時代のギブとレオンの話などもありますが、やはり一番ときめいたのは! ギブの両親の話である「月彩の約束」だ!
ぼんやりと、ユリアさんは聖女と呼ばれる人だから清らかな人だったんだろうなあくらいの想像だったんですが、なかなかぶっとんだ人で大変面白かったです。あっという間に尻に敷かれてしまった、伝説のヴァンパイアであるミフネヤさんも非常にいい男でした。この二人の話もっと呼んでみたかったな! 挿絵が麗しくてときめいた。ミフネヤさんちょうイケメンだなおい! ギブのイケメンはここから来てるのか……。

敵との戦いの中、愛する主人・ギブを助けるため再び月狂病化してしまったツキシロ。そのため、より真性のヴァンパイアに近くなってしまった彼女は、激しい血の“渇き”に襲われることに。(わたしはもう人間の——ギブ神父のそばにはいられない!)自らの魔物の本能に抗い、ひとり苦しむツキシロ。そして舞台はいよいよ伝説の魔物の地・ゴモラへ……! もどかしすぎる主従関係の行方は!? ついにシリーズ、クライマックス!!(裏表紙より)
クライマックスって書いてあるけどあと二冊あるんだけどーと思ったら一冊は短編集だったか。つまり今回が最終巻のひとつ前の巻です。
ウォール村に帰ってきた一行は、大森林の奥にある伝説の村ゴモラに《聖櫃》の手がかりがあると考える。しかし真性のヴァンパイアに近付いてしまったツキシロは、ギブを守るためにハクティバとウォルターの元へ。
この巻の挿絵の、ツキシロの泣き顔が本当にかわいくてにやにやしました。クライマックスへ向けてちょっと一息ついたものの、一気に事態は転がっていく。ハクティバとイブリスの目的もまだはっきりとせず、これあと一冊で終わるのか! とどきどきしながら続きを読みます。
今回はパパがかっこよかったです。はあああおやこ! かわいいおやこ! 不器用なおやこ!