読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

「偽善はやめだ。君を……私だけのものにするよ」両親を失い、愛する兄と二人で暮らしていくお金を稼ぐため、自分の美貌を最大限に生かし、援助交際をする決心をした爽二。オヤジどものいやらしい視線に晒されながら街角に立っていると、目の前に驚くほど美形の男が現れる。「この人になら抱かれてもいい」と思った爽二は、衝動的に声をかけてしまうのだが…その男が、爽二の通う超名門高校の若き教頭・花房だとわかって…!?
体から始まる———シンデレラ・ラブロマンス♥(裏表紙より)
『ロマンティックな恋愛契約』との関連作だそうです。これは、ツンな高校生と、大人な教頭のお話。主人公の、兄への執着がこわいよー。最初はそんな風にちょっと病んでる風だったのが、兄の方に決着がつくと、ちょっと落ち着き始めたのでほっとする。しかし初っぱな「あなたになら抱かれてもいい!」と言い放つのは色んな意味で怖いです。
この学園は同性愛者ばっかりなのか!? と冷静に考えるとかなり面白いツッコミどころがありつつも、これがつまりBLファンタジーなんだろうなあと思う。
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小説の執筆に追われていても、日々の晩ごはんは欠かさない! TVの料理番組の優良モニターと化しながら、亀と親しみ、劇場に出かけ、乗馬を楽しむ。直木賞作家の日常をあますところなく綴った、公式ホームページの日記が文庫オリジナルで初登場。ガラパゴス旅行記も収録。
解説マンガ/萩尾望都(裏表紙より)
エッセイ本。人様の日記を読むのが好きなので、面白かった。お腹空いた。
毎日その日の晩ごはんがタイトルになっていて、舞台の話をしたり、政治の話をしたりと時事ネタが多くてまさに日記。その月の中表紙にその時話題のニュースがちょっと書かれてあって、ああこれはこの頃だったのか、と思うなどする。これを読んでいたら、日本の行方は暗澹たる方向にいっている気がして落ち込んだ。

●「ブス」通りすがりの男に言われて許せる?
●マッチョかつ知性派、理想の男は今いずこ!
●みんなご飯は「ヘツって」食べるでしょう?
●レジもトイレも基本は一列並びの早い者順!
●キスするときって、おめめパッチリなわけ?
——普通に生活していても、感じることは無限大。ぜんぶ言葉にしてみたら、こんな感じになりました。注目の新人作家、エッセイ第1弾!(裏表紙より)
1998年11月15日から2000年6月4日までに連載されたエッセイ。PHSを使っていることに時代を感じる……。他のエッセイの本に比べると、開けっぴろげというか口が悪いというか、な印象です。しかもこれを書いていたのは大学在学中から卒業してしばらくなのかあ。すごいなあ。
オーストリア人のマーチン君のキスの話や、「大きな森の小さな家」テレビドラマ版のチャールズ父さん役の俳優さんの話に絡めて理想の男の話をしているのが面白かった。あの俳優さんはかなりかっこいいよ! コバルト文庫の『姫君と婚約者』を少しだけ論じてあるのも面白かった。そうかーエレクトラコンプレックスの変形版っぽいのかあ。

駅からキャンパスまでの通学途上にあるミステリの始祖に関係した名前の喫茶店で、毎週土曜二時から例会——謎かけ風のポスターに導かれて浪速大学ミステリ研究会の一員となった吉野桜子。三者三様の個性を誇る先輩たちとの出会い、新刊の品定めや読書会をする例会、合宿、関ミス連、遺言捜し……多事多端なキャンパスライフを謳歌する桜子が語り手を務める、文庫オリジナル作品集。(裏表紙より)
語り手は浪速大学一回生、吉野桜子。彼女が語りかけるような文体での、「なんだいミステリ研」と日常の謎を解く物語。生物研究部の女子学生の消えた指環を探す話、作家を招いた講演会での話、九年前のハガキが届いた話に、桜子の大叔父の話が挟まる。
この大叔父の話、「遠い約束」がとてもいいのだ。死んでしまった大叔父の遺言を巡る謎。大叔父の遊び心がいい。それを解こうとする、ミステリ研の三人の先輩方もかっこいい。謎を解く話のわりに、魅力的な男性たちが出てくるのがめずらしくて、面白く読んだ。日常の謎系には、ちょっといい話があるので好きだな!

文芸編集部の新人・小田雪哉は、そのやる気とは裏腹、可憐な容姿を揶揄われ「身体で原稿をとる」と噂を立てられ悩んでいた。理想と現実のギャップにため息ばかりのある日、スランプ中の作家・大城貴彦を担当することに。足繁く通ううち、格好よくてイジワルな大城を小田は作家として以上に意識してしまい、大城にも秘めた想いがあるようで……?(裏表紙より)
出版業界もので、顔のかわいい新人編集者が受け。スランプ作家が攻めです。二人の恋路というより、ちょっとだけ描かれる出版業界での雪哉のサクセスストーリーの方が面白くてもっと読みたいなと思いました。
しかし雪哉が乙女だな……! こんなにかわいい男の子でBL小説……奥が深いなー。

「チョコレートの代価は、君の初めての夜だ——」姉のお供で訪れた超有名ショコラティエ一宮雅人が経営するカフェで、夢のように美味しいチョコレートを口にした大学生の浅野葉平。「もう一度あのチョコレートが食べたい」と思う葉平だけど、女性が群がるその店に一人で訪れる勇気もナシ。そんな時バイト先で偶然、一宮と出会う。ところが「直接チョコレートを買わせて欲しい」と懇願する葉平に、一宮は「チョコレート一つにつきキス一回。勿論、唇以外にも」なんて条件を出してきて!? 貴方を恋の虜にする、スペシャル・ラブレシピ♡(裏表紙より)
甘党を隠している大学生の葉平と、ショコラティエの一宮のお話。視点が交互に行き来するけれど、文体が軽いのでそんなには気にならなかったです。キスばかりしていて行為の話がそんなにないので、ちょっとセクシーなお話という感じで、BL初心者の私にも読めました。
主人公がバリスタの才能を認められて、新しいお店で師匠に出会ってよくしてもらい、攻めからの愛情をたっぷり受ける中、やっぱりすれ違いがあって、という話は王道なのかな。


友衛遊馬、18歳。弓道、剣道、茶道を伝える武家茶道坂東巴流の嫡男でありながら、「これからは自分らしく生きることにしたんだ。黒々した髪七三に分けてあんこ喰っててもしょうがないだろ」と捨て台詞を残して出奔。向かった先は、大嫌いなはずの茶道の本場、京都だった——。
個性豊かな茶人たちにやりこめられつつ成長する主人公を描く、青春エンターテイメント前編。
〈解説・北上次郎〉
(上巻・裏表紙より)
マイナー茶道お家元の長男が、茶道が嫌いだと言って家出し、しかし何故か本場京都に行って、なんだかんだと茶道をやっているお話、というのが上巻。なんだか独特の文体というか語り口な印象でした。人が喋って説明することを、地の文で説明するというのが多かったり、過去の話を現実の時点でのことのように書いていたり。ちょっとめずらしかったので気になった。
家出したもののお金もない、何の夢も持たない遊馬が、それでも少しずつ頑張っていくところがいい。自然と出てしまう茶道の作法のシーンがちらほらあって、思わずにやっとしてしまいます。遊馬はだめな子だけど、ちゃんと持っているものがあるんだなあ。いいなあ。
解説があるのですが、解説が下巻の内容にちょっと触れているので注意が必要。
下巻はお話の収束で、何かを見出しつつある遊馬が眩しい。自分を受けいれたというか、落ち着きが出たので安心して読めました。お茶をしたり、剣を持ったり、弓を引いたり。志乃さんの遊馬評である「身体で覚えるタイプ」というのがしっくり来て、最後の最後でおおっと思いました。弟・行馬の出来過ぎっぷりにはなんだか可哀想な気もしましたが、遊馬はちゃんと何かを見出そうとする気持ちが出たみたいだし、大団円でとてもよかった!

「大人になっても遊んでほしい人は多い。特に会議のとき、それがわかる。」「天は二物を与えず、はそのとおり。三物以上与えるのが普通。」「最も期待値の大きいギャンブルは、勉強である。(その次は、仕事)」——人気作家・森博嗣が毎日つぶやいた切れ味鋭い箴言集。何度も読み返したくなる、無二の言葉たち。(裏表紙より)
後輩さんからお借りした本。サイトの日記の最初に掲げられていた毎日の一言から抜粋した箴言集。この言葉というのが、あとがきにあるように「いかに的を外すか」という「ぎりぎりかすっている」言葉にしてあるというのが、さすが森先生だなあ! と思う。言われてみれば確かにそうなのに、こうして目の前に示されないと気付いていないなあと、あとがきを読みながら感じる。
いっぱい抜粋したいところがあるけれど、ひとつだけ。
方角はどちらであれ、向いている方へ進めば、その人にとっては「前進」だ。

フィンランド・ヘルシンキにかもめ食堂という食堂ができた。働いているのは日本人のサチエ。最初は学生のトンミくんしかやってこなかったけれど、そこにやってきたミドリが働くようになり、次第に客足が増え始め、またマサコという新しい女性が加わる。
紹介を書くのが難しいな……。山はあるけれど、緩やかな山で、穏やかでのんびりした一冊でした。三十八歳のサチエのところに、四十代のミドリ、五十代のマサコが集まってくるところや、トンミくんに対して「日本語お上手ですね」と言う日本人らしさやありきたりなところがたまらなく嬉しい。地元のフィンランド人たちも、かもめ食堂に興味を持っているところがかわいいな。非日常っぽいのに、とても堅実に、淡々と生きているのがとてもいいと思いました。なんだか心地いい話でした。

魔術師サイベルは、エルド山の奥深く、四匹の幻獣のみを友として日夜魔術の修行に励んでいた。そんなある日、サイベルのもとに赤児を連れた騎士がやってきた。その赤児こそサイベルの甥であり、しかもエルドウォルド国の応じにほかならなかった。やがてサイベルは、否応なく王位継承争いに巻き込まれ、人の世の愛と憎しみを知りはじめる……。モダン・ファンタジイ界の俊英が流麗な筆致で描く、世界幻想文学大賞受賞作!(裏表紙より)
確か児童文学作品紹介集で読んで、読みたくなったので手に入れたのだったかな。硬派で古いよい香りのするファンタジーでした。冒頭の数ページで折れそうになったのですが、サイベルの話が始まった途端、ぐんぐん面白くなった気がします。
人と接することを知らなかった十六歳のサイベルが、騎士と彼の連れてきた赤子によって少しずつ愛と憎しみを知るようになる、のですが、その人間関係もよかったのですが、サイベルが心交わすことができる獣たちとの交流がときめきでした。見えない絆、誰かを思う心、自分を見つめることを描いているように思うのです。
サイベルはそれほど子どもではないはずなのに、その心の気高くて、清らかで誇り高いこと。心を操ることのできる美しい女性が主人公であるのと、幻獣スキーにはたまらないラストでもありました。面白かったです。