読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

医者を夢見る少年・臨は、数百年後の廃墟と化した病院で目が覚めた。
ファンタジーの世界に迷い込んでしまったかのような未来に戸惑いながらも、優しい看護師ロボットたちと共に生活をはじめる。しかし人との触れあいを求め、病院を飛び出した臨は、地図にない街に手紙を届ける野性的な少年・ソウタと、どこか懐かしさを感じさせる黒い翼のはえた猫のアルファと出会い……!?(カバー折り返しより)
あらすじから、さっさと冒険に出るものだと思っていたのに、意外と進みが遅かった。この話は隠れ風早街シリーズらしい。(風早街シリーズは、村山さんの作品に登場する街とそれに関係する人々のお話)
出来る子と出来ない子のどちらが本当に強いか、の話はとても良かった。優がとても良い子。彼の大人になった後のメッセージはじんわりした。
近未来ファンタジーということで、たくさんSF要素とファンタジー要素が出てきて、登場人物も謎を抱えた人が出てくるけれど、解決していないし、続きが想定されたお話だと思うので、進みが遅いのが耐えられない人には向かないと思う。はるそらより文章量も多いと思うしページ数も多いと思うのに、終わっていないのが切なかったです……続きが気になります。
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「漫画の王国」に生れた小説家の乙女な日常生活。バンドを追っかけ上方へ、愉快な仲間と朝まで語り、わきあがる妄想の楽園に遊ぶ……色恋だけじゃ、ものたりない! なぜだかおかしな日常はドラマチックに展開——日本の政局も、家族の事件も、人気のTVドラマも、考え始めたらいつのまにかヒートアップ! 「読んで楽しく希望がモテる」、笑い出したら止まらない、抱腹微苦笑ミラクルエッセイ。(裏表紙より)
冒頭のスーツを買いに行く話からくすくすしてしまったが、オタクネタにうっかり反応してしまった。「陰のない帝国」で触れられる某週刊少年漫画雑誌の話。ある海賊漫画の某船長とその部下に目をやるしをんさん。やっぱりそこに目がいくのかー! と思った。
「人生劇場 あんちゃんと俺」の妄想話が好きです。というか読み返したら、最近「西洋骨董洋菓子店」を読んだのでよしながさんの絵でがーっと通り過ぎていくんですが……。
「暴れ唐獅子の咆哮を聞け」も面白かった。人の妄想を覗くのってどうしてこう楽しいんだろう。しかもしっかり物語が作れてるのがすっごく面白い。日々も考えていることをひとつひとつ取り上げていくと面白いなあと思う。

そなたの答えがノーでも、彼女の答えはイエスだ。わたしは〈人質の墳墓〉から花嫁を連れていく。フィンダファーの寝袋もろともさらいあげると、妖精王は塚山から去った。
タラの丘の〈人質の墳墓〉でキャンプした夜、別の世界にあこがれるいとこ、フィンダファーが妖精王にさらわれる。翌朝からグウェンのいとこを連れもどす旅がはじまる。妖精たちとの絶妙な出会いに助けられながら。だがケルトのフェアリーランドは、グウェンにとっても魅力ある世界だった。
カナダの青少年がその年、一番おもしかった本を選ぶルース・シュワッツ章の1994年受賞作。(カバー折り返しより)
黒い服のよく似合うフィンダファーが、美しい青年に出会うところから物語は始まる。フィンダファーのあれこれがあるのかなあと思ったら、そのいとこグウェニヴァーの冒険譚だった。寝物語に語るお話という感じであっさり読めた。フィンダファーを取り返すというのが物語なのかなと思ったら、いきなりRPGな世界に入っていくのでびっくりした。最後の戦い辺りは聖書関係なのかな。
ひとつひとつの表現がフェアリーテイル的でいいなあ! バンシーめいた声でむせびなく、とか。短い草の草原とか石舞台とかなんだろうなあと勝手に想像するのが楽しかった。
冒頭のある言葉に感動したので、ラストの締め方はものすごく背筋がぞくっとして感動した。


「殺し屋が来て、兄さんを殺してしまったんです」—江戸、深川の鉄瓶長屋で八百屋の太助が殺された。その後、評判の良かった差配人が姿を消し、三つの家族も次々と失踪してしまった。いったい、この長屋には何が起きているのか。ぼんくらな同心・平四郎が動き始めた。著者渾身の長編時代ミステリー。(上巻・裏表紙)
短編集かと思ったら、実は短中長編でひとつの物語。
ぼんくらの同心、とあるけれど、そんなぼんくらに感じなかったのは、もっとへたれでニートな「僕僕先生」(仁木英之)の王弁を知っているせいかなあ。
上巻は長屋の面々の事件と楽しさみたいなものなんだけど、「長い影」という話に近付くと暗雲が立ちこめてきた。しかしこの話の清涼剤は、美少年で測量という特技を持つ弓之助の存在だなあ! この子、かわいいぞ……! 疲れた親父と合わさると最強じゃ! 平四郎&弓之助コンビ超良い……! 疲れた親父と賢い美少年いいなあ。この美少年には弱みがあって、そこが子どもらしくてかわいくていい!
しかし話は段々と人間関係の複雑怪奇なところへ落ちていく。なんか色々やるせないなあと思う幕切れ。でも上巻一話の話から見ると、この終わりはこの小説の決められていた形だったんだろうなあと思ったり。人情とか、人間とか、そういうもの。
とても面白かった!

綏国公主・珠枝は、かつては、先王の寵子として幸せに暮らしていた。しかし、父王亡きいま、美しく愛らしい異母妹・仙華の陰で心細い日々を送る。
そんななか、大陸では巴飛鷹率いる閃国が勢力を広げ、綏との間で緊張を高めていた。そして、和睦のため、珠枝が閃の王妃として差し出されることに!
必ず迎えに行く——幼い日から慕い続ける異母兄の言葉を神事、見知らぬ国へ嫁ぐ珠枝を待つ運命は!?(裏表紙より)
すごくいい少女小説。政略結婚、年の差、戦争、戦場に赴く少女と傑物の王。すごくすごく美味しかった。
飛鷹がとても包容力があって素敵な人物。珠枝を大切にしているのがよく分かって悶えることしばしば。珠枝が髪を切る意味が面白くて新たな発見だった。表紙の飛鷹は珠枝の短い髪に指を絡めてるんだよなあああ(ごろごろ) 泣くという意味も表紙にも本編にも使われていて、とてもいいときめきでした。
仙華が、とてもかわいくて鬱陶しい人物で、空気読めない発言をする度に「あああ……」となった。燿桂が最後に母と決別したのは良かったけれど遅かったんだなあと思うとこちらも「あああ……」だった。
とてもとてもときめきでした。ごちそうさまでした! これ一冊完結のシリーズなんだよな。よし、揃えよう!

ある失敗で研究室の空気が険悪になっていた頃、担当教授から奈良の高校に非常勤講師として送り出されることとなったおれ。慣れぬ教師生活が始まったところ、喋る鹿に話しかけられる。”使い番”から”運び番”へ受け渡される神宝とは。これは神経衰弱と言い続けられるおれが作り出した幻覚なのか?
日常の中の非日常が楽しい話だった。ぽかーんと突き抜けるようなすっとぼけ具合がいい。かなり重大な事件が起こっているのに、一歩一歩生きているというか、すごくマイペースな印象がした。「先生」の奮闘話なのか青春なのか判別できないけれど、生きにくい人がもう一度熱血するという感じなのだろうか。人を渾名で呼んだり、ラストの、マドンナへエールを送る辺りは青春だなーと思った。
人物の性格が生き生きしていて気持ちいいなあと思う。人間はもちろん、鹿や鼠も。うっかり鹿、鼠、狐の長い時が経っても抱き続けている思いにときめいた。

ひとはいつまで乙女を自称しても許されるものなのか。そんな疑問を胸に抱きつつも、「なげやり」にふさわしいのは、やっぱり乙女。熱愛する漫画の世界に耽溺し、ツボをはずさぬ映画を観ては、気の合う友と妄想世界を語り合う。気の合わない母との確執も弟とのバトルも、日常の愉楽。どんな悩みも爽快に忘れられる「人生相談」も収録して、威勢よく脱力できる、痛快ヘタレ日常エッセイ。(裏表紙より)
エッセイものをこれまで読んでこなかったけれど、三浦さんのエッセイを読んでから色々手を出してみるようになった。で、これは2004年7月のものを文庫化したもの。
登場人物が本当に面白い。こんな面白い人々が本当にいるのだろうかと思ってしまうくらい。人の日常の面白さを三浦しをんエッセイで知りました。
「俺の胃、粗悪品」のお父さんが面白い。
「ドアガ アイテイ マス」
「ちょっと待てと言ってるだろう! 融通のきかない女は俺は嫌いだ!」
なんかうちの父と微妙にかぶる。ネットでちょっと検索がうまく出ないと「だから世界って優しくないのよね」と芝居がかった口調で言った、我が父に。

文楽観劇のド素人三浦しをんが、いかにして文楽という芸能にのめり込んでいったかの記録
文楽見てみたいわぁと思う一冊だった(見事に釣られている)
しをんさんの、人形さんや三味線さんや太夫さんの観察がまた面白くて。UFOキャッチャーをする三味線さん、大リーグボール三号@巨人の星に例える三味線さんとか、それに対するしをんさんのツッコミがまた面白い(例:魂こめてキャッチしたい)
演目について書かれているのも、初めて文楽を見ようと思った時の参考になりそうです。「仮名手本忠臣蔵」や「女殺油地獄」がいいなあと思った。
「仮名手本〜」はそのまま忠臣蔵がモチーフになった話で、「女殺〜」は近松門左衛門の作。油屋の人妻が、別の油屋の放蕩息子に金を奪われて殺されるという話なのだけれど、この本で書かれる筋がとっても面白い! 放蕩息子は人妻に甘えている節があって、それが何故金を奪って殺すことになったのか、と考えさせられる話。放蕩息子の心理描写が意図的に省かれているらしくて、しをんさんの解説を読んでもとても面白い。
三浦しをんさんは「仏果を得ず」という文楽の世界を書いた小説も書いているので、また読みたいところ。