読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
郊外のダンチで暮らす京橋家のモットーは「何ごともつつみかくさず」。でも、本当はみんなが秘密を持っており、それぞれが違う方向へ。異質でありながら家族であるしかない、普通の家族に見える一家の光と影……ひとりひとりが閉ざす透明なドアから見える風景を描いた連作家族小説。第3回婦人公論文芸賞受賞。解説・石田衣良(裏表紙より)
エグかったです……。血がどろぐちゃーじゃなくて、精神的な意味合いで。
包み隠さずというモットーの元にいるのに、本当はみんな秘密を抱えている。それはいい。けれど、これはちょっとと思うような無茶苦茶な家族であることが、視点を変え、読み進めていく度に、ものすごく、気持ちの悪いものになっている。歪なんかじゃなくて、腐敗に似ているような。
親子の視点、絵里子と母親の視点は特にしんどかった。絵里子の行動は計算されたものだったこと、頭を回しすぎてうるさいくらいの母親の口調、それぞれが相手をそれぞれの目線で見てそれが実際と食い違っていること。
でも、確かに家族は本音をとことん話し合うっていうのはないなあと。みんなそれぞれ生活しているわけだし、男女だし、年齢も違うし、まったく違うコミュティに属しているのに、家っていう建物では家族っていう宿命づけられたコミュティに押し込められる。本当は、みんなそれぞれの立場があって全然別のものなんだ、というのをこの小説で思い知らされた感じがしました。
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31歳の若さで夭折した著者の残した作品は、昭和文学史上の奇蹟として、その声価はいよいよ高い。果実の異常な美しさに魅惑され、買い求めた一顆のレモンを洋書店の書棚に残して立ち去る『檸檬』、人間の苦悩を見つめて凄絶な『冬の日』、生きものの不思議を象徴化する『愛撫』ほか『城のある町にて』『闇の絵巻』など、特異な感覚と内面凝視で青春の不安、焦燥を浄化する作品20編を収録。(裏表紙より)
記録から洩れていたので今更ながら感想を。
「Kの昇天」「桜の樹の下には」「冬の蝿」が特にお気に入り。一番を決めるとしたら「冬の蝿」かなあ。
冬の、白々した光が汚れで曇った窓硝子越しに射している、という状況がなんだかありありと浮かんだ気がした。
桜の樹の下には、はこれかあと思う。同じ桜を使った作品で安吾の「桜の森の満開の下」があってあれがとても好きなのだけれど、「桜の樹の下には」のウスバカゲロウの屍体がすごく、つやっぽいというか、色っぽいというか、なんだか底知れぬ恐ろしいもののようでちょっとびくっとわくっと二つ来た。
カタブツ青年団長ハルさん率いる〈黎明の使者団〉一行は、法皇からの会見の要望を受け、都を身座して旅立った。途中、ひょんなことから団員のシンドーさんは、信仰されている神・キザヤが、かつては数多いる神の一人にすぎなかったことを知る。そして、闇の勢力も動き出していた。彼らは巫女であるシーカを生贄とし、キザヤ神を倒そうとしているのだ。シリーズ、ついにクライマックスに突入!(裏表紙より)
今気付いたけど、クライマックスなんだ!
アスティルがスパルタ特訓を受けにいったりとか、法皇に会いに行こう! という話。短編が収録されているので、本編の進みはそれほど大きなものではなかった感じ。
「のぞき」にもときめいて笑ったけれど、最後の「夜這い」も噴きました。色気もへったくれもないが私のこの高揚感はなんだ! とか思った。ハルさんが喧嘩腰の口調になってしまうのは、本当にいらっとしているからか、それとも自分でも感情を持て余してつい喧嘩を売ってしまうのか。それでもめずらしくシーカの視点だったので切ないなと思いました。
短編は雑誌に掲載されたものです。実は雑誌で読んでいたのですが、収録されるとは思いませんでした。RPGだなあと思っていたら、オチがオチでとても好きです。
新聞などに掲載された書評を集めた一冊。
書評なんですが、なんだか読みにくかった気がします。本の内容がよく分からないということがあったんですが、それでも非常に文章が綺麗で、面白かったです。本当に全く違うタイプの読書傾向でした。うん、小説を書くように書評を書かれるなあ、言葉並びが綺麗で、丁寧に自分の心情を本の良さに絡めて解説している感じ。
本を読む時のTPOの話がちらりと出てましたが、私も時々考えます。「気分がいいからこの本」とか、「今日は○○があるからこの本」とか。
メモ
斎藤美奈子「紅一点論」ビレッジセンター出版局
筒井康隆「わたしのグランパ」文藝春秋 「銀齢の果て」新潮社
柴田元幸 訳「むずかしい愛」朝日新聞社
ジュンパ ラヒリ「停電の夜に」新潮社
久世光彦「女神」新潮社 「謎の母」新潮文庫 「蕭々館日録」中公文庫
スティーブン・キング「小説作法」
伊井直行「お母さんの恋人」講談社
酒井順子「枕草子REMIX」新潮文庫
吉田修一「パレード」幻冬舎文庫
誘拐された姫総長・シーカをとり戻した〈黎明の使者団〉一行。ミトラーダ修練会も落ち着いて、早々と旅立った使者団が向かったのは、一見平和で鄙びた町だった。ハルセイデスは、その町のミトラーダ支部にいる、ある人物に会いに来たのだが、その人物は法皇に所縁のある男だった。その頃、町では不穏な動きが…!? カタブツ青年団長・ハルセイデスの苦難と世直しの旅、第2章開幕!(裏表紙より)
終わったんじゃなくて良かった……! という声があちこちから聞こえてくるサブタイトルでした。本当に新たなる旅立ちで安心。
ハルさんがすっかりシーカを守る覚悟を決めた感じ。団員たちに対する厳しさも、これから起こるであろう戦いのためなんだろうなと切ない。ノリはいつも通りだが、ときどき挟まる誘拐時のシーカとハルの様子がどきんとする。髪を拭くシーンはときめいたけど笑った。さすがゴーレム。グランドマスター! の素敵ポイントは、ゴーレムと天然総長の意地の張り合いや駆け引きにあると思うの!
この巻ではどこにいるんだろうと思っていた黒衣青年シラスの過去の伏線が。この話の結末がどこにいくのか分からないので、楽しみにしています。
旧友の招きでスタイルズ荘を訪れたヘイスティングズは、到着早々事件に巻き込まれた。屋敷の女主人が毒殺されたのだ。難事件調査に乗り出したのは、ヘイスティングズの親友で、ベルギーから亡命して間もない、エルキュール・ポアロだった。不朽の名探偵の出発点となった著者の記念すべきデビュー作が新訳で登場!(裏表紙より)
綺麗な印象のミステリー。なんだかとてもシュッとしているのに、じっくり読まされた。
視点は名探偵ポアロではなく、親友のヘイスティングズ。彼の私感が入るのが面白いなあと思った。犯人指摘はとてもびっくりした。色々疑いつつ読んでいたのに、ええそうなの!? という。
ラストはとても素敵だなーという感じだった。誰かと誰かがくっつくのってとてもチャーミングでかわいいなあと思った。
涙も凍る冬の山脈に雪蟷螂の女が起つ。この婚礼に永遠の祝福を——。
長きにわたって氷血戦争を続けていたフェルビエ族とミルデ族。その戦に終止符を打つため、ひとつの約束がなされた。それは、想い人を喰らう”雪蟷螂”とも言われるフェルビエ族の女族長アルテシアと、永遠生を信仰する敵族ミルデ族長オウガとの政略結婚だった。しかし、その約束の儀は、世代を超えて交錯する人々の想いにより阻まれる。
果たして、山脈の地に平和は訪れるのか。そして、極寒の地に舞う恋の行方は……。
『ミミズクと夜の王』『MAMA』に続く”人喰い物語”最終譚。(カバー折り返しより)
人喰い物語三部作の最終譚。主人公は、愛した者を喰らうと例えられる情熱を秘める強い女たちのいるフェルビエ族族長アルテシア。冒頭から凄まじい寒さと吹雪が感じられて、同時にとても熱かった。世代を超えて交錯する想い、というのがとても素晴らしく冷たく熱く描かれていたように思う。見開きの挿絵はぞくぞくした。
恋というと抱きしめあったり隣り合ったり、背中を合わせたりするイメージがあるけれど、誰の姿も見えないような吹雪の中で隣にあることを信じている恋、みたいだったこの話。
これ一気に読んで正解だった。風みたいに駆け抜けるように読まなきゃならない気がした。
人形は夢を見る。恋もする。初めての恋に落ちたら、胸の魔抱石に性別を与えられ、人間になる——。イファは、数ヶ月前に生まれた”魂持ち”の人形。いつか運命の恋をして立派な男になるまで、人形師のヘィディや弟子のアーセルと楽しく暮らすはずだった。突然の別れも、その先に待ち受けていた”水葬王”フォルトナートとの最高で最悪な出会いも、そしてまさか自分が”女の体”になってしまうなんて、全くの予想外で……!? 恋をするすべての人へ贈る、栗原ちひろの新境地ラブファンタジー!!(裏表紙より)
表紙がかなりきらきらしいのが、20歳になってから手に取るのがとても恥ずかしくなった……。思わず最後の挿絵見て友人と「ひょー!」と叫んでしまったことだよ。
主人公イファの魔抱石の出自が呪われていて、その出自に関係して相手役フォルトナートがイファに対して憎しみを抱いている、というゴシックファンタジーなのだけれど、文体と台詞の明るさからか暗い気持ちにはならなかった。私はオペラシリーズみたいな文章が好きだったんだけれど、でもこの底の方できらきらしている明るさは好きだ。イファが見出したフォルトナートの魂みたいなものなのかな。
フォルトナートがバラッドの塔へ踏み入るあの辺りがとても好きだ。「砕けて、なくなっちゃったね」の台詞がなんだか好きだった。
イファの性格が本当に良くて、主人公だな、救い手だな、という感じで栗原さんのことだからきっと素敵な終わり方をするんだろうなと思っていたら、ラストは素晴らしかった。これ映像にしたら綺麗だ……。しかし一方でフォルトナートの所行の悲しみと暗さがある気がするんだけれど、でも、本当に綺麗な光景が浮かんだ。
カタブツ青年団長ハルさん率いる〈黎明の使者団〉は、諸国漫遊の旅からの帰途についていた。その道中、団員たちはどうも変態姫総長シーカの様子がおかしいと心配していた。そして久し振りに帰り着いた本部近くの街で、シーカが書き置きを残して忽然と姿を消してしまった! どうやら秘密はシーカの”力”にあるようで…!? 痛快コメディ・ファンタジー、怒濤の急展開!(裏表紙より)
急展開だった。前巻から出ていたシーカの秘密についての話が本格的に表に出てきた。この先が本格的に世界の救済がどうのになったら美味しすぎてどうしよう。
登場人物がそれぞれ個性があって面白い。尋問のシーン爆笑した。よく書き分け出来るなあ……。
シラスが結構お気に入りなんだが、彼が何故使者団に入ることになったのか気になる。前の巻に書いてあったっけ。なんとなくドゥルガとウマがあってたり、ハルさんに結構信頼を置いていたりしてるっぽいところが、なんかいい。
ハルさんがはっきりシーカを守ると決意したっぽいので、この先のときめきが楽しみ。