読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

パラドックス学園パラレル研究会、通称パラパラ研。ミステリ研究会志望のワンダは何故か、このパラパラ研に入部することに。部員はドイル、ルブラン、カー、クリスティーと名だたるミステリ作家の名前を持つものばかりだが、誰もミステリを読んだことがないという……。やがて起きる”密室殺人”と予想もできない究極の大トリック! 鯨ミステリのまさに極北!(裏表紙より)
前作『ミステリアス学園』があまりもあまりにもすごい真犯人だっただけに、今回はどんな趣向が凝らされているのだろうとわくわくして読みました。やっぱりすごかった。ミステリなのに、すごくエンターテインメントだなー! と思いました。
パラパラ研に入部することになったワンダ。この名前にぴんと来た瞬間から、すでにこの小説のトリックに巻き込まれてる(そういう点では、『ミステリアス学園』を読んでいないと説明不十分かもしれない)。ミステリの基本、法則性を逆手に取れるのは、これがこういう小説であるのと、登場人物に名ミステリ作家の名前を冠した人たちがいるからだなとお思います。いや、本当にすごかった!
『本当におもしろい本ほど壁に叩きつけたくなります』。笑ってしまった。
解説の方の文章も合わせて、すごくよかった!
PR

西の都の王立大学で植物について学ぶカナン。ある日、異国の青年・善が持っていた奇跡の実に触れたカナンは、不思議なツタにとりつかれてしまう。ツタごと東方の帝国につれてこられた彼女を待っていたのは、呪われた体を持つ五人の皇子たちだった。奇跡の実の力で呪いが解けるまで、カナンは個性的な皇子たち&ツタと王宮で暮らすことになって……!?
植物を育てる能力を持つ西洋乙女と皇子たちが繰り広げる、中華風王宮恋愛ファンタジー!(裏表紙より)
面白かった! カナンの一生懸命さ、かっこよかったです。いつまでも悩むのではなくて、ぱっとすぐに求めているものを見出す力があるのが、とても爽やかで素敵でした。
それから、個性的な五人の皇子がそれぞれとてもいい。なんだかんだで全員変人な皇子たち……笑。電車にいて思わず噴き出しかけたのが郷の台詞。ぐっ、とも、もご、ともつかぬ奇声を発しました。危なかった。でも終始にやにやしていました。
ぐっと迫ったのが、カナンが泣いたあと、みんなで食事をするシーン。カナンの台詞がそのまま自分の心情でした。
郷が一番お気に入りなんですが、でもやっぱりパフュームさんかな! この人が本気を出したらめろめろになってしまう。
楽しかったー!

イングランド王家にはトップシークレットが存在する。
それは、海賊ドレークの養い子ジュエルが、実は処女女王エリザベス一世の隠し子である、ということ。けれどジュエルは、自分が王国の正統な後継者だとは知らずに、政敵フェリペ二世を暗殺すべく、単身スペインへ乗り込んでしまった!
女王陛下に忠誠を誓うか、それとも王位を継承して玉座を得るのか。襲い来る無敵艦隊を前に、海の宝石が選んだ運命とは!?(裏表紙より)
歴史を下敷きにした海賊ファンタジー。海賊ドレークとエリザベス一世とスペイン無敵艦隊の時代です。かと言って薄暗くて重たいわけでもなく、実にライトノベルとして明るく走っていくような物語でした。お話としては歴史を追わないといけないので、みるみる過ぎさってしまって、もっとじっくり! と思ったりしたのですが、恋愛成分が微量でも、主人公ジュエルの元気よさと、エリザベス一世のキャラがとても素敵で、楽しかったです。
本当に、エリザベス一世のキャラが素敵なんです。喋り方といい、感情の表し方といい。素敵な女王陛下です。他にも歴史上の登場人物がたくさん出てくるのも、すごく楽しかった。




桐原真巳は悩んでいた
都と猛がほっそりとしたシャム猫なら
自分は黒くてごついシェパードだ
これで三つ子だなんて本当か!?
真巳が16年間抱えてきた疑惑の渦は
突如として予想をはるかに越え
怒濤のごとき展開を迎えることに
あらわになった真実とは?
とてつもなくパワフル、超マイペースな
家族コメディが新装登場!(1巻裏表紙より)
再読。一度目はルビー文庫版で読みました。全四巻を一気に書いてみる。
あとがきでも仰っているように、恋愛じゃなくてホームコメディです。桐原家の人々の安定した嘘つきぶりというか、我が道を往くっぷりがかっこいい! キャラ濃ゆいなあ。都の人物の作りが、ちょっとデル戦のリィを彷彿とさせて、デル戦も読みたいなあと思っています。
二巻は父親登場の巻。広い学校での学生生活より断然狭い家庭内の方が面白い。どたばたの勢いを超えて、暴れ回っている感じ。
気になったのが、デザインの話。茅田さんはデザインにお詳しいんだろうか。なんだか好きそうな感触が伝わってきた。
三巻、零と麻亜子落ち着くの巻。この巻の話が一番好き。むかつく人たちをぎゃふんと言わせるのが、気持ちよくてたまらない。一方で、破天荒なはずなのに、泣きたくなるくらいみんなが優しい。結婚式が決まってからのどたばた感はいいなあ。いい方向に転がっていくのが分かるからかも。
四巻は桐原家過去編。零が引き取られ、三つ子の時代までに至る物語。すごいテンポで物事が過ぎ去っていくので、ちょっと物足りなくも、しんみりとシリアスでした。
零の考え方が好きです。付き合うってとか、記念日がどうとか。桐原家の人々も、まさに「たくましい」という表現がぴったりくる。気持ちよく、考え方が突き抜けていて、読んでいて気持ちよくありました。

「私が軍服を着ているのは、戦うためだ」伝説のオルディアス艦長に憧れ海軍を目指すロディアは、男より強く女にもてるクールな麗人。海軍学校も首席で卒業にもかかわらず、転属願いを却下され続けていた。しかし金銀妖眼(オッド・アイ)を持つレーン号の艦長・ランセに強さを見込まれ、憧れの海軍に配属される。実力主義で曲者揃いのレーン号は、マディス王国の切り札で——!?
紺碧の海に気高く赤い薔薇が咲き乱れる、海軍出世物語!!(裏表紙より)
あらすじの名前が間違っている……正しくはオルディアレス。
男装の麗人と海軍もの+ファンタジーです。すごーく面白かった! メインの登場人物である士官たちはくせ者ばっかりで、その中でヒロインとしてどう認められていくのか、が焦点かなと思っていたんですが、……めっちゃめちゃ好みのファンタジー要素が介入してきて、嬉しさのあまりにやにやしてしまいました。
主人公ロディアのたらしっぷりもさることながら、それの更に上を行くランセの口説き文句と見まごうストレートな言動の数々。楽しませていただきました。更に剣での戦いあり、船同士の戦いあり、ファンタジーな戦闘もありで、こちらもとても楽しみました。

宝石を愛する王様の娘であるアリーテ姫は、本を読み、絵を描き、縫い物をし、乗馬もダンスも大好きな女の子。そんな「かしこい」娘では結婚できないと、王様は結婚相手を探し始めるが、宝石に目がくらみ、悪い魔法使いボックスに姫を売り渡してしまった。
ずいぶん昔から好きで読んでいた児童書を、少し前に自分で手にしたので、懐かしくなって読んでみた。短い物語です。
うまくいきすぎて乱暴だなあという展開は、今読むと目につくとしても、この話がとても好きです。主人公のアリーテ姫が、全然お姫様らしくなくて、かっこいいのです。女性の自立や、男性に対する目が厳しい話で、大きくなってから、この話からジェンダーを感じたりもしました。

十代の頃から、大切な時間を共有してきた女友達、千波、牧子、美々。人生の苛酷な試練のなかで、千波は思う。〈人が生きていく時、力になるのは自分が生きていることを切実に願う誰かが、いるかどうか〉なのだと。幼い頃、人の形に作った紙に願い事を書いて、母と共に川に流した……流れゆく人生の時間のなかで祈り願う想いが重なりあう——人と人の絆に深く心揺さぶられる長編小説。(裏表紙より)
ミステリじゃない北村作品を読むのは久しぶりだ。
不思議でもなんでもない日常と、女性たちに主軸を置いた絆の話です。『月の砂漠をさばさばと』関連だったのかー! とさばの味噌煮が出てきてようやく気付く。
不思議なんてどこにもなくて、人が生きていく、ただそれだけの話なのに、根底に流れているのは優しさと慈しみと思いやりの目だ、と感じました。物語としては普通に、ありふれた形で日常が進むのに、柔らかい。最後にいくにしたがって、包まれているような気持ちになる。
ただ、他の北村薫作品を読んでいると、素っ気ないなあと思うことも確かです。ミステリの方が私は好き。でもいつものようにきゅんとすることはなくても、読みながら、うんうんと頷いてしまう本だなと思いました。
「人が生きていく時、力になるのは何かっていうと、——《自分が生きてることを切実に願う誰かが、いるかどうか》だと思うんだ。(後略)」


東城大学医学部付属病院の”チーム・バチスタ”は心臓移植の代替手術であるバチスタ手術専門の天才外科チーム。ところが原因不明の連続術中死が発生。高階病院長は万年講師で不定愁訴外来の田口医師に内部調査を依頼する。医療過誤死か殺人か。田口の聞き取り調査が始まった。第4回『このミス』大賞受賞、一気にベストセラー入りした話題のメディカル・エンターテインメントが待望の文庫化。(上巻・裏表紙より)
あまりにあまりに有名すぎて全然手が出なかったところでようやく読みました。これ上下巻にせずに一冊にしてよかったのではないかなあ。
非常に面白かったです! 上巻はどうなるのかなあと期待が六割くらいだったんですが(流行ものをそう見てしまう偏見が私にはあるので……)、下巻になって白鳥が登場した途端に、一気に面白くなりました。
上巻は田口が何を掴んだのかも分からないまま進んで、事件が起こる。謎が謎のまま、下巻に続く! となるのはちょっとずるい。一気に読みたい。
じっくり観察していたこと(上巻)が、下巻で鮮やかに切り開かれていくのは爽快でした。ただ白鳥のやり方にはちょっと不満もありますが。
医療小説というと、どっしり重い社会派なイメージがあったのですが、とても気持ちのいい小説でした。周囲の評判は全然だけれど、田口医師が一番したたかな気がする。それだけに桐生が自信に満ちあふれて輝いて見えるんでしょうけれど。