読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

おじの借金のカタに、王貨五枚で身売りされてしまった少年・フィン。身売り先のマスターである男が言うには「世間では私のことを死神と呼ぶ」。——人が死神になるのは、どうやら不可能ではないらしい……。かくして男に弟子入りしたフィンだが、いつも人形を抱いていて、自分の代わりに人形に喋らせているマスター本人をはじめ、周囲は摩訶不思議なことだらけ。おまけに、相性最悪な少女まで死神の弟子を志望してきて…!?(裏表紙より)
少年が主人公の死神ファンタジー。やっぱりどこかほろりとする、人々の茶目っ気たっぷりで、愛おしい優しさが描かれていて、ああ、やっぱり樹川作品はすごく好きだな、と思う。
フィンは、子どもらしい子どもだな、と思いました。自分がうまく世を渡っていけると思っている。それが、素直じゃないマーリと一緒になると本当に年相応で、すごくいいな、と思いました。本人たちはすごく迷惑そうですけれど。
結末の付け方は若干不思議なのですが、やっぱりそうだったかあと思わずにはいられず。大人になったマーリがどんななのか、すごく見たかった。
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ミステリアス学園ミステリ研究会、略して「ミスミス研」。ミステリは松本清張の『砂の器』しか読んだことがない、新入部員・湾田乱人が巻き込まれる怪事件の数々。なぜか人が死んでいく。「密室」「アリバイ」「嵐の山荘」……。仲間からのミステリ講義で知識を得て、湾田が辿り着く前代未聞の結末とは!?
この一冊で本格ミステリがよくわかる——鯨流超絶ミステリ!(裏表紙より)
おすすめということで借りた本。
そんな結末ありですかー! というのが読み終わった第一声。
入れ子構造ものはすごく好きで、話の順々にどれが本当だろう、誰が「存在している」んだろう、と考えるのがすごく楽しかった。ミステリ講義は、勉強してきます! と思いつつ、会話が不自然でちょっと笑ってしまいました。構造上仕方なくて、それもまたすごく味だと思いました。
犯人はすごくすごくすごーく意外なのですが、いやでも、そんな犯人の存在って、すごくロマンだよなー!
面白かった!

法皇との謁見中、突如巻き起こった竜巻の中、姫総長シーカの身には異変が起き、〈黎明の使者団〉は離散した。団員たちは、団長不在のまま、それぞれの道を歩き始めていた。ハルセイデスの残した「生きのこる道だけを考えろ」という言葉を胸に。しかし、シーカを狙う闇の勢力の遠謀は、着々とその輪を狭めていた。そして、ハルセイデスと共に市井に潜むシーカに決定的な変化が現れ…!?(裏表紙より)
クライマックス目前のグラマス。前巻はシラスの存在に話が持っていかれた印象でしたが、今回は闇の勢力の存在がはっきりと浮き彫りになっている感じでした。
シーカの変調が明らかになったことにもびっくりで、同時に、シーカの望みを口にした際のハルさんの思いも書かれており、序盤から切なさがきゅんきゅんでした。
団員たちの行方が心配ですが、アスティルの位置がどうも危なげで特に心配です。でも、きっと最後にはみんなが集ってくれると信じている。
神については、神は光と闇、善と悪のように表裏一体だから、そういう解釈になるのかなあと思いつつ、どういう結末か想像が全然つかないので、続きも楽しみにしています。

祖母の死によって八百万の神々が見えるようになった大学生の澄香。一人暮らしの部屋は静かだったはずなのに、トイレの神が引き止めてきたり、かまどの神に怒られたり、鏡の神に文句をつけられたり、マイペースな家神などなど、騒がしい毎日。
とても面白かった! 毎日すごく騒がしくて楽しい日常だーと思いながらにこにこ読んだ。
神様が見えるようになって起こる騒ぎは、ツッコミが冴えていたり、ちょっと怖かったり、でもやっぱり笑えたり、泣けたり。どの登場人物も、みんなすごく好きだ!
それぞれによって神様のかたちは違う、ということに一番はっとする。だからノロ君とのエピソードはすごく、考えさせられた。誰もが同じものを信じているわけではないし、だから同じように見えているわけでもないのだろうな。でも、澄香のように世界が見えていたら、きっとすごく、明るくていい世界なんだろうなあ。
はるさんとのエピソードは、もう「家神ぃいいいいいい」ってなる。純情!

12分の1のドールハウスで行われた小さな殺人。そこに秘められたメッセージの意味とは!? 天国的美貌を持つミステリー界の人気作家「覆面作家」こと新妻千秋さんが、若手編集者、岡部良介とともに、残された言葉の謎に挑む表題作をはじめ、名コンビが難事件を解き明かす全3篇を収録。作家に探偵、おまけに大富豪のご令嬢と、様々な魅力を持つお嬢様探偵、千秋さんの名推理が冴え渡る〈覆面作家〉シリーズ第3弾!
解説・有栖川有栖(裏表紙より)
しょっぱなから糖分上昇である。上昇にも関わらず、大人っぽく、しっとりとユーモアある台詞などで書かれているから、思わずときめいてしまった。「こら、千秋」はやばい!
結局お兄さんとか、お父様とのあれやこれやがもっとたくさんあっても楽しかったかもと思ったのだけれど、これだけでも十分楽しかった。この巻はとってもしっとり甘かった。最後の「覆面作家の夢の家」のラストシーンは、良介自身の口調も変わってて、やばいやばい! と思いました。二つ目の「覆面作家、目白を呼ぶ」がやり切れない思いでいっぱいだっただけに。
ちょっとしたことで謎を呈示されて、えっとなった次の展開を読んで、明らかになる答え。そのテンポがとても好きです。引きがとてもぐっとくるというか。
これで終わりなんて残念。楽しかった!

ペンネームは覆面作家——本名・新妻千秋。天国的美貌でミステリー界にデビューした新人作家の正体は、大富豪の御令嬢。しかも彼女は現実に起こる事件の謎までも鮮やかに解き明かす、もう一つの顔を持っていた! 春のお菓子、梅雨入り時のスナップ写真、そして新年のシェークスピア……。三つの季節の、三つの事件に挑む、お嬢様探偵の名推理。人気絶頂の北村薫ワールド、〈覆面作家〉シリーズ、第二弾登場!(裏表紙より)
シリーズ第二弾。面白かったー! 北村作品はしんみりする作品もあれば、鋭くて怖い作品もあって、すごく楽しいなあ! 愛情から来る事件もあれば、歪な人物の姿もあり、しんみりしたりどきっとしたり。何よりも文体から思慮深さとユーモアが感じられて、自分に喋りかけられてるわけでもないのに、読んでいて笑ってしまう。
登場人物もすっごく素敵。左近先輩が異動してしまったので、今回からライバル雑誌の編集者、静が登場。元気がよく歌って躍れるというハイなところまで、活き活きしていてすごく楽しい。彼女と某方との関係がもしかしてと思うところもあり、次の巻を読むのが楽しみ。

『江戸』が『明治』に改まり、世はめまぐるしい勢いで移り変わった。ご維新で禄を失った士族の若様たちは、その新しい世で生きている。西洋菓子屋で立身を目指す皆川真次郎。悪友で警官の長瀬たち。小泉商会のひとり娘沙羅。『お人好しで寂しがりや』の真次郎は、いつもいつも騒ぎに巻き込まれ。
とても好きです。好きです。「序」の書き出しでノックアウトされてしまいました。
維新後の東京が舞台。洋菓子屋を経営する真次郎、というところにいきなりきゅんとします。西洋菓子という、この時代ではめずらしいものを作る職人の名前が、厳つい皆川真次郎という名前なので。
他に出てくる登場人物は、長瀬は飄々とした食えない警官で巻き込み役。切れやすい美貌の武芸の達人、園山。おきゃんでしっかり者の女学生、沙羅。その父親で狸の小泉社主。みんなみんな魅力的。東京狭しと走り回っているのが浮かんで、にこにこしながら読んでしまった。しかし様々な事件が明るく解決する裏では、人々の立身の思惑や戦争や感染症など現実社会の闇がひたひたと迫ってきているのが分かって、その絶妙なバランスに胸が切なくなったりしました。
畠中さんの作品はみんな好きだけど、これは色々きゅんとするなあ。語り口がなんだか好きだー。表紙も可愛くて好き。

「どこの誰とも分からない娘」という継母・エマの言葉に傷つき、王子との恋をあきらめたランプリング貿易商の娘、美春。
その矢先、航海に出ていた父・ジェイクが行方不明になり、エマはショックで寝込んでしまう。「わたしたちでランプリング商会を守るのよ!」と、美春たちは立ち上がるが…。ガラスの靴を叩き割ったシンデレラ、美春とオーラル王子の恋の行方はどうなるの…!?(カバー折り返しより)
『屋根裏の姫君』の続きです。前回がかなり悲しい終わり方だったので、この巻も前半は、父親が行方不明になったり、エマの精神が衰弱して美春に厳しく当たったりと、相当厳しいのですが、それだけに自分たちの意志で運命を切り開いていくランプリング三人姉妹の眩さは素敵!
しかも解決となる出来事がいくつもいくつも重なって、第十章からはほろり、やら、にやにや、やら、きゅん、やら、心臓が忙しかった。
「太陽の昇る国」の種明かしはえ!? となってしまった。そ、そうか、別に良いんだけど、しかし、びっくりしたなあ。
みんながみんな夢の国を求めていると書いたけれど、だからすれ違って、傷付け合ってしまうのは切なく、この『裸足の花嫁』でハッピーエンドを迎える結末は、もう本当に嬉しかったです。

貿易商ランプリングの娘=美春は継母のエマにひどくいじめられ、みすぼらしい格好で屋根裏に住んでいる。そんな健気な美春が、舞踏会でガラスの靴をはいたら……。
アッと驚く展開。運命の恋のその後……。
女のコなら誰でも知ってる、憧れるシンデレラ・ストーリー。でも「香山版」はひと味もふた味も違う、青春サクセス物語なのだ。思わず涙のクライマックスが待っている!!(カバー折り返しより)
中学生くらいの時にこれを読んで、ここで終わりなのかと思っていたら、実は続きがあることを知って隣の市の図書館まで行って読んだ思い出がある。実はその頃からずっと欲しかった本なのだ。
ちなみにこの巻だけでは完結しません。
物語はシンデレラをなぞっているのだけれど、気になるのは継母エマと継姉の長女アネット。似通った思いを抱えた、よく似た母子。次女のキャロルはキャロルで、多分そんな家族を持ったのを眺めているからこういう性格になったんじゃないかなーと、続きを覚えていないので考えてみる。
みんながみんな、『遠い国』や夢の場所を望んでいるのが切ないなと思った。思うがゆえにその場所に囚われているというのか、変わることができない。そのもどかしさを読みながら感じた。
どこか同じ世界の遠い国に思えて、しかしどこか違う世界の話って、なんだかいいなあ。

小学生のぼくは、ねこの首輪に挟んだ手紙で「タカキ」と文通をする。ある日、ねこが車に轢かれて死に、タカキとの交流は途絶えたが……。表題作の「モノレールねこ」ほか、ザリガニの俺が、家族を見守る「バルタン最期の日」など、夫婦、親子、職場の同僚など、日常にさりげなく現われる、大切な人との絆を描いた 8編。解説・吉田伸子(裏表紙より)
いつもの空気を考えていたら、しんみりと大人の女性向けの話が多かったです。もうちょっとじっくり読みたいな! と思うくらい入り込んでました。
「マイ・フーリッシュ・アンクル」の少女と叔父の話は、ときめきでもありました。
「セイムタイム・ネクストイヤー」は、ほろりとしました。やっぱり、どうしてこう、ホテルマンさんとバーテンダーさんはいい味を出すんだろう! 素敵! 惚れる!
「バルタン最期の日」は、ザリガニ視点の話ということで、びっくりした。しかもなんかいい話だよ!? ちょっとハードボイルドなザリガニの話を読むとは思わなかっただけに、傍観者でありながら、バルタンの物語はしんみりしました。
面白かった!