読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
ペンネームは覆面作家——本名・新妻千秋。天国的美貌でミステリー界にデビューした新人作家の正体は、大富豪の御令嬢。しかも彼女は現実に起こる事件の謎までも鮮やかに解き明かす、もう一つの顔を持っていた! 春のお菓子、梅雨入り時のスナップ写真、そして新年のシェークスピア……。三つの季節の、三つの事件に挑む、お嬢様探偵の名推理。人気絶頂の北村薫ワールド、〈覆面作家〉シリーズ、第二弾登場!(裏表紙より)
シリーズ第二弾。面白かったー! 北村作品はしんみりする作品もあれば、鋭くて怖い作品もあって、すごく楽しいなあ! 愛情から来る事件もあれば、歪な人物の姿もあり、しんみりしたりどきっとしたり。何よりも文体から思慮深さとユーモアが感じられて、自分に喋りかけられてるわけでもないのに、読んでいて笑ってしまう。
登場人物もすっごく素敵。左近先輩が異動してしまったので、今回からライバル雑誌の編集者、静が登場。元気がよく歌って躍れるというハイなところまで、活き活きしていてすごく楽しい。彼女と某方との関係がもしかしてと思うところもあり、次の巻を読むのが楽しみ。
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『江戸』が『明治』に改まり、世はめまぐるしい勢いで移り変わった。ご維新で禄を失った士族の若様たちは、その新しい世で生きている。西洋菓子屋で立身を目指す皆川真次郎。悪友で警官の長瀬たち。小泉商会のひとり娘沙羅。『お人好しで寂しがりや』の真次郎は、いつもいつも騒ぎに巻き込まれ。
とても好きです。好きです。「序」の書き出しでノックアウトされてしまいました。
維新後の東京が舞台。洋菓子屋を経営する真次郎、というところにいきなりきゅんとします。西洋菓子という、この時代ではめずらしいものを作る職人の名前が、厳つい皆川真次郎という名前なので。
他に出てくる登場人物は、長瀬は飄々とした食えない警官で巻き込み役。切れやすい美貌の武芸の達人、園山。おきゃんでしっかり者の女学生、沙羅。その父親で狸の小泉社主。みんなみんな魅力的。東京狭しと走り回っているのが浮かんで、にこにこしながら読んでしまった。しかし様々な事件が明るく解決する裏では、人々の立身の思惑や戦争や感染症など現実社会の闇がひたひたと迫ってきているのが分かって、その絶妙なバランスに胸が切なくなったりしました。
畠中さんの作品はみんな好きだけど、これは色々きゅんとするなあ。語り口がなんだか好きだー。表紙も可愛くて好き。
「どこの誰とも分からない娘」という継母・エマの言葉に傷つき、王子との恋をあきらめたランプリング貿易商の娘、美春。
その矢先、航海に出ていた父・ジェイクが行方不明になり、エマはショックで寝込んでしまう。「わたしたちでランプリング商会を守るのよ!」と、美春たちは立ち上がるが…。ガラスの靴を叩き割ったシンデレラ、美春とオーラル王子の恋の行方はどうなるの…!?(カバー折り返しより)
『屋根裏の姫君』の続きです。前回がかなり悲しい終わり方だったので、この巻も前半は、父親が行方不明になったり、エマの精神が衰弱して美春に厳しく当たったりと、相当厳しいのですが、それだけに自分たちの意志で運命を切り開いていくランプリング三人姉妹の眩さは素敵!
しかも解決となる出来事がいくつもいくつも重なって、第十章からはほろり、やら、にやにや、やら、きゅん、やら、心臓が忙しかった。
「太陽の昇る国」の種明かしはえ!? となってしまった。そ、そうか、別に良いんだけど、しかし、びっくりしたなあ。
みんながみんな夢の国を求めていると書いたけれど、だからすれ違って、傷付け合ってしまうのは切なく、この『裸足の花嫁』でハッピーエンドを迎える結末は、もう本当に嬉しかったです。
貿易商ランプリングの娘=美春は継母のエマにひどくいじめられ、みすぼらしい格好で屋根裏に住んでいる。そんな健気な美春が、舞踏会でガラスの靴をはいたら……。
アッと驚く展開。運命の恋のその後……。
女のコなら誰でも知ってる、憧れるシンデレラ・ストーリー。でも「香山版」はひと味もふた味も違う、青春サクセス物語なのだ。思わず涙のクライマックスが待っている!!(カバー折り返しより)
中学生くらいの時にこれを読んで、ここで終わりなのかと思っていたら、実は続きがあることを知って隣の市の図書館まで行って読んだ思い出がある。実はその頃からずっと欲しかった本なのだ。
ちなみにこの巻だけでは完結しません。
物語はシンデレラをなぞっているのだけれど、気になるのは継母エマと継姉の長女アネット。似通った思いを抱えた、よく似た母子。次女のキャロルはキャロルで、多分そんな家族を持ったのを眺めているからこういう性格になったんじゃないかなーと、続きを覚えていないので考えてみる。
みんながみんな、『遠い国』や夢の場所を望んでいるのが切ないなと思った。思うがゆえにその場所に囚われているというのか、変わることができない。そのもどかしさを読みながら感じた。
どこか同じ世界の遠い国に思えて、しかしどこか違う世界の話って、なんだかいいなあ。
小学生のぼくは、ねこの首輪に挟んだ手紙で「タカキ」と文通をする。ある日、ねこが車に轢かれて死に、タカキとの交流は途絶えたが……。表題作の「モノレールねこ」ほか、ザリガニの俺が、家族を見守る「バルタン最期の日」など、夫婦、親子、職場の同僚など、日常にさりげなく現われる、大切な人との絆を描いた 8編。解説・吉田伸子(裏表紙より)
いつもの空気を考えていたら、しんみりと大人の女性向けの話が多かったです。もうちょっとじっくり読みたいな! と思うくらい入り込んでました。
「マイ・フーリッシュ・アンクル」の少女と叔父の話は、ときめきでもありました。
「セイムタイム・ネクストイヤー」は、ほろりとしました。やっぱり、どうしてこう、ホテルマンさんとバーテンダーさんはいい味を出すんだろう! 素敵! 惚れる!
「バルタン最期の日」は、ザリガニ視点の話ということで、びっくりした。しかもなんかいい話だよ!? ちょっとハードボイルドなザリガニの話を読むとは思わなかっただけに、傍観者でありながら、バルタンの物語はしんみりしました。
面白かった!
北澤大学新入生のぼく=二本松翔は、サークル《あかずの扉》研究会に入会した。自称名探偵、特技は解錠などクセ者ぞろいのメンバー六人が、尖塔の屹立する奇怪な洋館”流氷館”を訪れた時、恐るべき惨劇の幕が開く。閉鎖状態での連続殺人と驚愕の大トリック! 本格推理魂あふれる第十二回メフィスト賞受賞作。
濃かった……。名探偵役が二人(三人?)もいるからか、推理が重なって重なって重なって、読み終えて疲れたーという気分。あまりにすごいトリックな上に、更に狂信的な犯人になると、とても胃もたれする。どっしり来ました。
かなり分厚い。623ページあります。主要メンバーはとてもライトノベル的なのに、全然そんなことのない、たくさん人死にが出る話。事件は現場で起こっているのですが、視点はそちらにはなく、外側から見ている小説です。恐らくは、この小説の事件のトリックと、作中作『そして誰もいなくなるか』との構造化なんだろうなあと。
メンバーは、自称名探偵・鳴海さんが好きなのですが、一方でどうもユイが好きになれなくって、ちょっと苦しかったです。
しかしとても濃かった。面白かった。
法皇に呼ばれ、聖都へとやってきた〈黎明の使者団〉一行。姫総長シーカに夜這いをした上に断られてしまった団長ハルは、少々落ちつかない。そしてついに謁見の日がやってきた。しかし、現れた法皇は偽物。それは、ミトラーダ勢力の増長を恐れた枢機卿の企みだった。改めて法皇から内密の会見の場を設けられた使者団だったが、その最中、法皇暗殺未遂事件が! 容疑は使者団に向けられてしまい!?(裏表紙より)
最後の戦いへの序章、みたいな感じ。
シーカの願いがようやく口にされて、安堵すると共に不安に思う。消えてしまいそうだーとか。
謎の襲撃でばらばらにされてしまった使者団。シラスの過去が明らかになりますが、彼の理由が明らかになってもなんか、みんなに文句を言われたり小突かれたり、でも笑い飛ばされそうな雰囲気が漂っていて、寂しいと共にちょっとだけ温かくなった。多分、いい終わり方をするんじゃないかなと。
収録されている短編は、やっぱり笑いました。そういえば樹川さんだっけ、B級映画が好きでキラートマトとかなんとかいう映画の話を、楽魔女かなにかのあとがきでしていたような? だからトマトなんだろうか。
ラストに数年後〜と書かれていますが、使者団がそれだけ長い旅をしているのか、それともすべてが終わった数年後なのか、気になるところです。
ベッキーさんシリーズ第3巻。昭和十年六月から翌年二月までの三つの短編を収録。子爵の神隠し事件を描く「不在の父」。小学生が深夜出歩いた理由の謎「獅子と地下鉄」。鷺の面で踊る能を見たあの日のこと、そして雪の降る日の記憶「鷺と雪」。
とてもしっとりとした素敵な文章でした。しんしんと降り積もるような。
英子の物事を確かに捉える視線がとても好き。周囲の移り変わりに、心動かされるのもとても少女らしい。優しいことばかりに満ちていないし、特に「鷺と雪」ではちょっとした悪意(それをいたずらという)が描かれているのだけれど、やっぱり心静かに読みたくなる本だなあと。
「鷺と雪」の奇蹟は、北村薫さんらしくてはっとした。
「いえ、別宮には何も出来ないのです——と」
「…………」
「(略)何事も——お出来になるのは、お嬢様なのです。明日の日を生きるお嬢様方なのです」
このシーンの前に、年齢を重ねた人の言葉を英子が否定して、ベッキーさんがやんわり諌めるというシーンがあるから、余計にぐっときた。
”ホテル・ウィリアムズチャイルドバード”、通称〈鳥籠荘〉には、普通の社会になじめない一風変わった人々が棲みついている。妄想癖の美女、ゴスロリ小学生、ネコの着ぐるみ、不気味な双子の老人、そして響き続ける正体不明の金切り声。そんな〈鳥籠荘〉の住人の一人・衛藤キズナが、5階に住むひきこもり美大生・浅井有生と知りあったのは16歳の冬。そして、誘われたバイトは、絵のヌードモデル。やってみることにしたキズナは、油絵具の匂いがこもる雑然としたアトリエで浅井と一緒に過ごすうち、その時間が自分にとって次第に大切な日常の一部になっていくのを感じて……。
〈鳥籠荘〉のちょっとおかしな住人たちの、ちょっとおかしな、けれどいろいろフツーの日常をつづる物語。(カバー折り返しより)
ずっと「ぼんやり明るい」印象の物語でした。
短編連作。キズナをメインに置いて、住人たちの日常を描いたお話。
きっと〈鳥籠荘〉はちょっと薄暗いところで、昼間はぼんやり明るくて、夜もぼんやり明かりが灯っていて、というのを想像していました。
ヌードモデルと画家、という設定も大変おいしい上に、一方でほとんど甘くなくてちょっとあったかくて、というのがとても心地よかった。関係は変わるのかなあとちょっとどきどきしていました。パパと華乃子の話がとても温かでしたが(ラストの脱ぎ捨てられたあれがとてもよかった……!)、キズナの話はどうなるのかなあと続きがとても読みたくなりました。