読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

男は二度、女を撃った。女は一度、男の命を救い、一度、その命を奪おうとした。ふたりは同じ理想を追いながらも敵同士だったから……。悠久なる大河のほとり、野賊との内戦が続く国。理想に燃える若き軍人が伝説の野賊と出会った時、波乱に満ちた運命が幕を開ける。「平和をもたらす」。その正義を貫くためなら誓いを偽り、愛する人も傷つける男は、国を変えられるのか? 日本が生んだ歴史大河ファンタジーの傑作!! 解説・北上次郎
大貴族の甥で軍人のアマヨク、王位継承権を持ちながらも忘れられた王子メイダン、そして国に生きる多数の人々、軍人、野賊、貴族……そうした人々が内乱の続く国で一つの時代の変革に居合わせる物語。凄まじく大河でした。読み応えあった。
主人公はアマヨク。着任したての初々しさがどんどん薄れて、軍人として、強く、卑劣で無情になっていくのも面白かったですし、彼の中でどうしても譲れないオルタディシャルへの思い、カーミラやシュナンへの思いに揺れるところも、すごくずっしりきた。無力な民衆の姿がカーミラ(やその他大勢の人)を通して見えることも辛かった。
でもそんな中でもシュナンがなんだかアマヨクに似ていること、アマヨクが少しずつオルタディシャルに似たような感じがするところなど垣間みえて、最後のあたりは胸がいっぱいになっていました。
何よりも、メイダン殿下。息苦しい中で挟まる殿下の状況が、この先どんな風に関わってくるのか、とわくわくしていたら、やってくれました。わあああって思った。運命や天命って言葉を考えてしまった。
この物語の続きをもっと知りたいし、すごく色々なことがあったこともわかってその気持ちは高まるんですけれども、アマヨク・テミズという人のお話を濃密に味わうことができて、本当に面白かったです。
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この旅に目的地はない。
旅の空で死ぬための道行きなのだ。
長年仕えた領主の家に引退を願い出、騎士・バルドは旅に出た。この世を去る日も遠くないと悟り、珍しい風景と食べ物を味わうために。相棒は長年連れ添った馬一匹の気ままな旅。
彼は知らない。
それが新たな冒険の幕開けとなることを。(帯より)
老騎士が、目的地をさだめず旅に出て、各地のうまいものを食しながら、世界の不思議やあちこちで起こっている事件や陰謀に関わっていく物語。騎士物語というのか、とても不思議な読み心地で、何よりご飯が本当に美味しそう!
食材や料理はこの世界独自のものなのですが、描写から、きっとこんな味、こんな食感、こんな香りが……と想像するのがすごく楽しい。
それから、歳をとって様々な経験をしたからこそ、相手を見極めることができたり、戦うことができたりっていうところがすごく説得力があって面白かった。かあっこいい……って思いました。
この世界の不思議がまだまだたくさんあるようなので、家同士、国同士の争いごとも気になりますが、バルドが伝説になるような出来事も読みたいなあと思いました。続き気になる。

友だちになった小鬼から、過去世を見せられた少女は、心に〈鬼の芽〉を生じさせてしまった。小鬼は彼女を宿業から解き放つため、様々な時代に現れる〈鬼の芽〉——酒浸りで寝たきりの父のために奉公先で耐える少年、好きな人を殺した男を側仕えにして苛めぬく姫君、行商をしながら長屋で一人暮らす老婆、凶作が続く村で愛娘を捨てろと言われ憤る農夫、田舎から出て姉とともに色街で暮らす少女——を集める千年の旅を始めた。
精緻な筆致で紡がれる人と鬼の物語。(裏表紙より)
連作短編。鬼になってしまった少女を転生させたがために、千年にわたって〈鬼の芽〉を摘み取ることになった小鬼の物語。〈鬼の芽〉を生じさせる人たちは、みんな悲しい過去を持っている。小鬼は、〈過去見〉の力で彼らが望む過去を見せ、その原因を断つ。
人が死んでいたり、生き返ることは決してないということもあって、やるせない感じもあるのだけれど、不思議と読み心地がやわらかい。寂寥感も心地いいというか。

外国へ行くというママとパパから離れて、東京で一人暮らすことになった耳比古。新幹線で出会った、鴨を連れた占い師に告げられ、月の裏駅にある家に暮らし、高校に通うことになった。同時に、耳比古の好きな「エクソシストの少女」という物語も動き出し……。
現実と空想世界の出来事が交互に語られ、次第にシンクロし始めるお話。実はこういう話、うまく入り込めなくて苦手なのですが……収束する瞬間がとても面白かったです。その後のラストはちょっとどうかなとも思ったけれども!
耳比古は、暮らし始めた家についているという双子の幽霊の少女と関わることになるのですが、この子たちがちょっと薄気味悪くていい感じ。読んでると得体の知れなさにぞわぞわしました。
想定が素晴らしく美しくて、世界観にぴったりだと思いました。小口に青い印刷。表紙は青い髪に銀インク使用。本文は青インク。ところどころに小さなイラストカットが入っている。などなど。

孤島にとり残された三組のカップルと不思議な超能力をもつ四歳の女児との共同生活。生き抜くために幾多の試練を乗りこえて、真の友情と連帯を学びとった若者たちの青春賦。(帯より)
佐々木丸美作品は、男女のちがいとか人間同士のちょっとした感情の感覚や、神秘に関するうんちくが面白いのですが、話は相変わらず投げっぱなしなのがなんとも。もうちょっとすっきりはっきり終わってほしいなあ!
それぞれ先輩と付き合っている三人の女子。口が強い浩子。わがままな直満子。そして語り手である、少しひねた性格の賢い桐子。六人はとある孤島へキャンプしに行くものの、異変を感じて自主的に避難。異変を感じ取りながら避難せずに戻るという不思議な男性から、四歳の女児を預けられる。孤島を津波が襲った後、六人がラジオから拾ったのは、避難船が難破したという知らせ。かくして六人と少女の生活がはじまる。
サバイバルっぽさというより、人間の生活とは、みたいな部分が大きく感じられたように思います。星を読み、火を大切に扱い、家を建て。その中で、菫と名付けた少女の不思議な力は、多分、古代の巫女的なものの象徴なのだろうなどと思いました。
ちょっと調べてみたら、『風花の里』とつながりありなのか。ちょっと読み返さなければ。

「確保!」ごく普通の少年・蓬桃李は、十六歳の誕生日、ユランと名乗る謎の男に拉致された。「教育しがいのあるムコ殿ですね」と微笑まれ、王城に連れてこられたが、いきなり老人(しかも百十九歳!)の桃色遊戯を見せられて大混乱!! ちょっ、ムコ殿ってそういうこと? と思ったら「桃花婿君の名跡を継ぎ、伝説になれ!」と言われ!? ……俺、伝説になるんですか? 中華風ドタバタ主従コメディ開幕!(裏表紙より)
十六歳の誕生日を迎えた桃李。聞かされたのは、自分の出生の秘密と、百十九歳の「生き木乃伊」こと名誉帝、大拝老爺からの「桃花婿君」になれという命令で。
桃花婿君と九星真女が揃わなければ、大地にひずみが起こってしまう……というので、巻き込まれながらも桃李が婿を目指す話です。まだまだ序盤ーってところの一冊なんですが、付き人であるところ三人を選ぶところはぐっときました。

毎日のようにセレブやスピリチュアルな現場を取材し続け、どうやったら「次元上昇=アセンション」できるのかを考え続け、「小難しい本を読むより、猫を5分間撫でている方が真理に近付ける」と認識、善行というマイレージを貯めることこそが、個人の次元上昇を達成する方法だと気づく。そのおそるべき試行錯誤、抱腹絶倒の日常記録です。(裏表紙より)
うっさんくせー!! というセミナーやら話やらの連続で、だいじょうぶかな……と中盤になるとちょっと心配になってきました。スピリチュアルな方面は、信じないわけではないんですが、がっつり目の前に現れると引いてしまう……。しかし、セレブの人たちとこういう話をしているということは、富裕層の人々は信じて実行しているわけか……? 羨ましいような、お金があるところにそういう真偽不明なところが集まると実感するというか。

2003年の本だから、もう十年経っていますね。負け犬という言葉はちょっと廃れた感がありますが、未婚女性は増えているし晩婚化しているし少子化だし……という2016年現在。この本で言えば絶賛負け犬の私ですが、わりと人生楽しいです。
結婚して出産してという女性がえらい、という風潮は、政治家の発言を見ていればまあそうなんだろうなあと思うんですが、楽な生き方をすればいいんじゃないかなと思っています。恋をしたかったら恋をすればいいし、結婚したかったら頑張ってみればいいし。子どもは授かりものなのでどうともできないけれど、生き方を縛られる環境にはいないので、自分の好きな生き方をしようとか、そんな風に考えています。でもそれもまあ、数年限りのことかなあ、と読みながら思いました。
いやあ「モテ」という文化は面白いなあ! 異性に選ばれるものが優位である、ということをもっと掘り下げてみたいと思いました。

反発から深い理解へ
娘を過剰な期待で縛る母、彼氏や進路の選択に介入する母...娘は母を恨みつつ、なぜその呪縛から逃れられないのか?
本書では、臨床ケース・事件報道・少女漫画などを素材に、ひきこもり、摂食障害患者らの性差の分析を通して、女性特有の身体感覚や母性の脅迫を精神分析的に考察し、母という存在が娘の身体に深く浸透しているがゆえに「母殺し」が困難であることを検証する。
「自覚なき支配」への気づきと「自立」の重要性を説き、開かれた関係性に解決への希望を見出す、待望の母娘論!(カバー折り返しより)
2008年発行の本。まだ「毒親」が浸透していない頃でしょうか。母が重い、ということを考える本で、実際例よりもいろいろ引用してきて論じている感じがしました。専門書という感じ。
オタク・腐女子論は、この本から八年経ってるし、セクシャルマイノリティの考え方もまあまあ広まってきていることもあるからか、読んでいて「んー?」と思うところがいっぱいあったんですが、引用されていたよしながふみさんの対談部分がすごく興味深かった。
男の人の抑圧ポイントは「一人前になりなさい。女の人を養って家族を養っていけるちゃんと立派な」人間になることだけれども、女の人はひとりひとり辛い部分が違って抑圧ポイントが多様であり共感しあえない、ということが書いてある。女の人は「一人前になりなさい=いい母になりなさい」っていうだけじゃないのか、と改めて思ったというか。