読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
パンドラの箱を開け、神に罰を与えられた暗黒の戦士たちの物語。
全米で話題沸騰〈オリンポスの咎人〉シリーズ、ついに幕開け!
アシュリンはその場所で過去に交わされた声が聞こえるという制御できない力に悩まされ、幼い頃から喧騒の中で孤独に生きてきた。そんなあるとき、訪れたブダペストで不思議な噂を耳にする——森の奥深くに人知を超えた力を持つ男たちが住んでいる、と。忌まわしい力から逃れるため、藁にもすがる思いで夜の森に入ると、紫色の瞳の屈強な男が目の前に現れ、今すぐ立ち去れと脅してきた。だが無慈悲なまなざしのその男といると、声なき声が静まり返っている。アシュリンは喜びに我を忘れ、謎の男に懇願して自ら囚われの身となった。(裏表紙より)
ネサフしてるとよく広告を目にする、ハーレクイン系の「オリンポスの咎人」をこの度読んでみました。こういうのもパラノーマル・ロマンスというのかー。
神から箱を与えられ守護せよと命じられた女戦士パンドラ。一人だけ選ばれた彼女に嫉妬を抱いた戦士たちは、パンドラを殺し、箱を開け放ってしまった。箱からは悪魔が飛び出し、多くのものを殺した。怒った神は戦士たちに悪魔を封じ込め、それぞれに呪い苦しむよう罰を与えた。戦士たちは不老不死の身であるため、永劫その苦しみから解き放たれない。
さて、その戦士のひとり、パンドラを六度刺し殺した苦しみを毎夜味わい続け、暴力衝動に取り憑かれる〈暴力〉の番人マドックスは解き放たれるのか、という巻です。
読み進めながら突っ込みまくったのが、お前たち発情し過ぎじゃね? 何事にも欲情。ちょっと即物的すぎるよ! その表現が出てくる度に笑ってしまってすみませんでした。
不老不死の戦士たちですが、ブタペストの丘の古城に暮らして街の人々から天使と呼ばれています。というのは、一人、トレーダーがいて、彼が生活費をがっぽがっぽ稼いでおり、その一部(多額)を街に寄付をしているから。
男ばっかり暮らしており、怒らせると一番怖い死の番人、ワイルドな戦闘家、自傷しなければならない呪いを受けた男、淫欲に支配されて毎日誰かと関係を持たないといけない絶世の美形、触れるだけで死に至る病を蔓延させる(しかもかつて愛した女に触れて殺している)男、という、これでもか! と盛りだくさんなヒーローたちです。そうですこれひとりひとりロマンスやるシリーズなんだぜ……。
そんな風にして男ばっかり濃いので、この「マドックス」の巻でヒロインであるはずのアシュリンは、どうも受け身。ヒロインヒロインした言動がちょっとあれで。うーん、側にいたいのと言ったり、最終的な選択が定番の展開だったりと、読者を投影しやすいヒロインではあると思うんですが、ちょっと未熟。ヒロインそのものにも魅力が欲しいと思ってしまいました。
しかし戦士たちの中で、お気に入りが一人いるとそれを追ってしまいたくなるシリーズであります。私は! リーダーの! ルシアンが好きだー!! 死の番人ルシアン、いつもマドックスを冥界に連れて行かなければならない彼の苦悩が読みたい。一番怒らせると怖い彼の可愛いところを知りたい。
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砂漠を行くキャラバンを襲った連続殺人、スペインの風車の丘で繰り広げられる推理合戦、ロシアの修道院で勃発した列聖を巡る悲劇……ひとりの青年が世界各国で遭遇する、数々の異様な謎。選考委員を驚嘆させた第五回ミステリーズ!新人賞受賞作「砂漠を走る船の道」を巻頭に据え、美しいラストまで一瀉千里に突き進む驚異の連作推理誕生。大型新人の鮮烈なデビュー作!(カバー折り返しより)
読んだのはソフトカバー版。
面白かった!
文化、文明、民族。世界各国の様々な考え方を持つ人々ならではの謎と推理だったなあ! こういう考え方は日本では絶対に出来ない、というものの話で、そのせいでちょっとファンタジーっぽく感じられてすごく素敵だった。「砂漠を走る船の道」はやっぱり一番すごかった。ラストまでぞくぞくしたわ……。後半になるにつれて、人の話になっていくところもあり、解き明かせないものもある雰囲気が好きです。
王室づき魔法使いが病気で不在のあいだ、留守番をすることになった本好きの少女チャーメインは、魔法の本のまじないを試してみたせいで、危険な山の魔物と遭遇してしまう。危なく難を逃れたけれど、魔法使いの家でも次々困ったことが起きる。魔法使いの弟子を名乗る少年がころがりこんできたり、かわいい小犬が巨大化したり、怒った青い小人の群れが押しかけてきたり……。魔法の家のドアは、王宮や小人の洞窟、謎の馬屋やプール、果ては過去にまでつながっているらしい。やがて、王宮の図書室で王様の手伝いをはじめたチャーメインは、王国の危機を救うために呼ばれた遠国インガリーの魔女ソフィーと、火の悪魔カルシファーに出会う。意外な姿に変身した魔法使いハウルもあらわれて……?
物語の名手ジョーンズが贈る、読み出したらやめられない奇想天外なファンタジー。「ハウルの動く城」シリーズ待望の完結編!(カバー折り返しより)
ハウルの動く城の三巻にして完結巻。著者のジョーンズさんが亡くなられて、すっごくへこんだことを思い出します。とにかく、亡くなられてからも翻訳された本が発行されて、嬉しいけれど、寂しい。
今回はハイノーランドという高地の国。両親から家事など生活に必要な力を一切身につけさせられずに育った、怒りっぽい少女チャーメインが、転がり込んできた魔法使いの弟子志望の少年(どんな魔法も最終的に失敗する才能の持ち主)とともに生活し、王国の、行方不明になっているお金の流れと、〈エルフの宝〉という財宝を探す物語。相変わらず、家のごちゃごちゃーっとした感じや、魔法の描き方が素敵! 魔法がある世界の魔法って、こういう風に動くんだなと思う。
ハウル、ソフィー、カルシファー、モーガンの家族もどたばたと騒がしくて楽しく、ハウルが出てきた時、はじめの言葉にあったように「イラッ」とさせられたのが悔しい。その後、しっかりちゃんとしたハウルがかっこいいのもくやしい!
ロマンスが薄かったのが残念ではあったけれど、それにもまして女の子の小さくて大きな冒険の物語という感じで、ハッピーエンドなのも楽しかった。
東京湾に新設された超巨大フロート建造物〈プリン〉のメインテナント〈サロン・ド・ノーベル〉には、美容に関するすべてが収められていた。理想の化粧品や美容法を求めて彷徨う“コスメ・ジプシー”たる岡村天音は、大学の先輩が生まれ変わったような肌をしていることに驚く。彼女は“美容+医療”を謳う革新的な企業コスメディック・ビッキーの〈素肌改善プログラム〉を受けたというのだが……。やがて〈ビッキー〉は、アンチエイジング、身体変工などの新商品を次々に発表し、人々の美意識、そして生の在り方までを変えていく——『永遠の森博物館惑星』に続く、著者5年ぶりの最新連作集。(裏表紙より)
まだ文字がないような古代の頃と、近未来的な世界、二つを繋ぐ化粧と美容の物語。めちゃくちゃSF! という感じでないと思ったら、急速に進化していく美容技術にあっという間に世界が飲み込まれていくのが恐い。化粧していたかと思ったら、年齢が不詳になるアンチエイジング技術とか……恐すぎる……。
お化粧だから女性の怨念めいたものがあるのかと思ったら、男性も描いたり、その中間もあったりと、変わっていく世界の話なのが面白いし、やっぱり恐い。自分をデザインする、という時代が本当に訪れるなら、きっと受け入れられるときがくるんだと思うけれど、抵抗を感じてしまうのは、指標となる人がいないからか。この物語ではそれは山田リルという人であり、その存在が、古代パートで語られる「姫巫女」たちによって強調されているので、現実感があってぞくぞくしました。
お姫様は内緒で戦士募集中。
早川牧生はK中学の2年生。ある日牧生は、幼なじみである唯と琴美に「運命の相手」を見つけるという占いをさせられる。その占いで細工をした牧生は、いるはずのない「運命の相手」を探しに学校の裏庭へ向かうことに。そこにいたのは、校内でも有名な美少女だが暮らすに馴染まない不思議な少女・中山りあだった。切なくも優しいファンタジックストーリー。(裏表紙より)
MF文庫Jから出たものの新装版。清水さんはだいぶ前に『ネペンテス』しか読んだことがなかったので、久しぶりに読んだら爽やかさと痛い感じと薄暗い感じがほどよい感じに混ざってて、もぞもぞする感じがよかったです。
悪魔的な言動の美少女りあに振り回される、牧生。悪魔的な女の子ってこういうことを言うのね、という絶妙なところで同い年の子たちの辛いところを抉るりあが、かっこいいと感じるくらいすごい。異分子として幼馴染み四人組の中にやってきたりあは、関係性の変化のきっかけだったんだな。
若干不思議要素もありつつ、大人になるべく一つ階段を登る少年少女の物語でした。嘘三部作、機会があったら読んでみたい。
「お父さんって子どもの頃どうだったの?」娘・セイコの素朴な疑問に、生きてきた時代を確かめる旅に出た父・カズアキ。「未来」と「幸せ」について考える物語。(裏表紙より)
セイコの祖父母は戦争を体験した世代、曾祖母は第一次世界大戦を知っている。だったらお父さんはどうだったの? おじいちゃんおばあちゃんに比べると、昔話、弱い。
弱い、という言葉がなかなかぐっさり来て、でもなるほどなあ、そういう捉え方も出来るか……と不思議に納得しました。そうして、カズアキさんは昭和という時代を振り返ることになる。
私にとって、昭和という時代は、やっぱり終戦を境にしている。終戦後の日本っていうのははち切れそうだったよなあ、という印象。どんどん経済成長していって、みんなぴかぴかに輝いた顔をしているテレビの映像を思い浮かべる。特に、万博の映像。お金である程度の幸せが買えるような時代だったのかというのを改めて思う。やっぱり、はち切れそうな時代だったんだろう。その裏側に、たくさんの問題を抱えていた。「速さ」というのは善し悪しだ。
自分たちは幸せだったのか。今の私たちは幸せなのか。はっきり言うことはできないけれど、未来を信じるからこそ家族はできるのかな、と思うと、じわっとした。
さらわれた最愛の息子アフレイムを救おうと、カリエはすべてを捨ててザカールへと向かった。だが、彼女を待ち受けていたのは、現長老であるリウジールの悪しき野望だった。彼女を守るはずのラクリゼも死んだと告げられ、屈辱的な仕打ちの数々に絶望の極限へと追い込まれるカリエ。一方、エドとサルベーンはカリエを追いかけてザカールへ乗り込むため、海賊トルハーンの協力をとりつけるが……(カバー折り返しより)
ザカールに囚われ、リウジールから責め苦を受けるカリエ。闇の中で繰り返される暴力に、カリエの心はどんどん死んでいく。やがて、カリエの前に死んでしまった実母、養母、サジェ、イウナが現れ、責める言葉を投げつけていく。
前編、中編に比べて、行間が狭く文字がぎっしり。そしてちょっとだけ本が厚い。
もうどんどん追い込まれて、ずたぼろになって、ここまでヒロインにひどいことばっかり降り掛かるのか! というかなり苦しい巻でした。しかもここで妊娠してしまうのに頭を抱えました。カリエ自身が、あまり実感がないらしいのと、ちゃんと産むと言ったことでちょっと緩和されているけれど、ひどすぎる……。
神に関わる部分がかなり多くなっている巻で、ザカリア女神、タイアス神、オル神が絡み合ってきたのと、人間がそれにかなり深く関わりつつある予感を残し、『喪の女王』へ続く。
ヨギナ総督をつとめながら、エティカヤ王バルアンの妃として、王子を出産したカリエ。アフレイムと名付けられた王子も元気に育ち、カリエはエティカヤの女性として、これ以上望むべくもない地位に到達していた。だが、久々にカリエと再会したミュカは、その表情に意外な陰りをみとめる。一方、カリエを守ると誓ったラクリゼは、弟の圧倒的な力の前に、かつてない不安を感じていた……。(カバー折り返しより)
まだまだ序の口、という具合の中巻。カリエが決意するまでと、その否応ない運命が大口を開けて彼女を飲み込んでいく。リウジールという最強のクナムが、恐ろしい言動でカリエとラクリゼを翻弄する。これ本当に少女小説かよ! という、えぐい展開にうひょーあひゃーと悲鳴をあげてしまいます。
バルアンが若干小物化しているのは気のせいかなーとか、エドの男っぷりがどうして上がっているんだろう? とか、ミュカとイーダルはどんな駒になって女神の手を示していくんだ? とか、色々あるので続きを読む。
カリエがバルアンの正妃となって一年が過ぎようとしていた。いまだ懐妊の気配はないところへ、バルアンの妾妃でもある親友のナイヤが身ごもったとの報せを聞く。ナイヤを祝福しながらも、複雑な想いにとらわれるカリエ。そんな時、彼女はバルアンから聖なる山オラエン・ヤムに一緒に登ろうと誘われる。頂上めざしてふたりで旅する中、バルアンは意外な思惑をカリエに告げるのであった…。(カバー折り返しより)
読書再開。前章のひいっと悲鳴を上げたラストから、作中時間は一年経過。一年はそれなりに平和だったのかなーと思うとちょっとほっとする。しかし、運命はカリエを離してはくれない。女性の結婚、妊娠、出産の巻で、それぞれ愛を手に入れたことによって変化していく様が、恐ろしい。ナイヤは味方だと言ってくれたけれど、ルトヴィア側の様子を見るとそうも言っていられなさそうで、どうなるかぶるぶるする。サラ変化が一番恐かったよー……。
しかし妊娠出産するヒロインって、コバルト文庫なのにすごいなー。
「出撃なんて、実力試験みたいなもんじゃない?」敵弾が体を貫いた瞬間、キリヤ・ケイジは出撃前日に戻っていた。トーキョーのはるか南方、コトイウシと呼ばれる島の激戦区。寄せ集め部隊は敗北必至の激戦を繰り返す。出撃。戦死。出撃。戦死——死すら日常になる毎日。ループが百五十八回を数えたとき、煙たなびく戦場でケイジはひとりの女性と再会する……。期待の新鋭が放つ、切なく不思議なSFアクション。はたして、絶望的な戦況を覆し、まだ見ぬ明日へ脱出することはできるのか!?(裏表紙より)
ミリタリとSF。ループもの。という前情報で読むことに。
人類の敵ギタイによる襲撃を受けているその世界。やつらは「溺死した蛙」の姿を持っている。最貧国や技術を持たない国々は制圧、後に砂漠化。日本は偶然、辛うじて助かっているに過ぎない。日本が落とされれば軍の技術が低下するため、防衛は必至。そして、主人公のキリヤ・ケイジは死ぬ。
一人称視点で進み、一人称が「ぼく」なので、ループを繰り返すごとに段々とすれてきて疲弊していく感じがとてもいい。ループの原因がそれだというのはまあまあ納得がいった瞬間、オチが見えてしまい嫌な予感を抱きつつ、ラスト。やっぱりそれか! もっと救いが欲しかった! と思いながらも、キリヤは本当のループに巻き込まれたのかもしれないと思いました。戦い続ける、終わらない、孤独な戦いの日々。