読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
「子どもを、返してほしいんです」親子三人で穏やかに暮らす栗原家に、ある朝かかってきた一本の電話。電話口の女が口にした「片倉ひかり」は、だが、確かに息子の産みの母の名だった……。(帯より)
「家族って、なんだ」を問いかける作品でした。
不妊治療をした後、養子を迎えることにした栗原夫妻。一方子どもの母親である片倉ひかりは未成年にして身ごもった少女。子どもを作ることを当たり前だと考えられて苦しむ夫婦と、親が望む子どもでなくなった少女が、「家族ってなに」を考えている。何がその子どもの(その人の)人生を分けるんだろうと考えてしまいました。ひかりだって最初は可愛い娘だったはずなのに、親が望むものではなくなった瞬間に拠り所を失って、そのまま二十歳になってしまったところが苦しくてぐうっとなりました。家族という拠り所から弾かれてしまった瞬間、人は何者でもなくなるんだろうか……と不安にも駆られて。家族という共同体に守られていなければ何者にもなれないなら、血の繋がりは、家族とはって考えてしまうんですが……最後にひかりがつなぎとめられたようでほっとしました。
「朝が来る」けれどまだまだこれからなんですよね。佐都子たちもひかりの両親のようになってしまうかもしれないんだから。
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大陸を統治する代償として、竜王は人間の花嫁を得る——それがこの世界の盟約。村人たちから虐げられ、辛い日々を送る少女フィリス。ある日彼女は、花嫁候補の少女オリヴィアを迎えに来た青年ジルと知り合い、オリヴィアの侍女として登城することになる。だがそれが、フィリスの苛烈な運命と恋の幕開けだった! 竜王が花嫁を選ばなければ世界が終わる。盟約からはじまる少女の物語を描いた大人気WEB小説、待望の書籍化!!(裏表紙より)
異種族恋愛譚。虐げられて育った孤児の少女が、竜王に見出される物語の1巻目です。
フィリスの境遇がもう本当にかわいそうで、ジルに会えてよかった。マーサも優しいし、これでやっと幸せになれる、かと思いきや何か起こる予感という引き。しかしオリヴィアがテンプレ通りの意地悪な女の子で、この子やっつけたいなあ、なんて思ってしまった。
不思議な縁でつながる、三つの時代を生き抜いた女性たち。聡明さとしなやかさを兼ね備え、自然体で激動の時代を生き抜く彼女らをドラマチックに描き出した、壮大な大河ロマン!(帯より)
加賀藩大聖寺藩主前田利之の次男と結婚した勇。加賀藩の分家小松藩の子孫である万里子。瀟洒な洋館で生まれ育った花音子。江戸時代末期、明治半ば、そして昭和。三つの時代に生きた三人の女性たちの物語が一人称で語られる。
形は違うけれど三代の女の物語として先ごろ桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』を読んだところだったので、語り口などの違いがまた面白かったです。
タイトルは『政略結婚』だけれども、『結婚』にまつわる家の話でもあり、最初の「てんさいの君」は顔も知らないまま嫁ぎ、義母や養母がいて、大人も子どもも簡単に死んでしまう時代に養子縁組も普通に行われている、という、女性が家である時代の話。続く「プリンセス・クタニ」は家というものから飛び出し、新しい世界で新しい自分の形を作る時代の話。そして「華族女優」は血縁というもの家族というものが一つ終わりを迎え、女性が一人の人間として歩き始める時代の話。このお話の中で脈々と受け継がれる一族の血なのですが、「てんさいの絵が描かれた九谷焼の皿」もまた時代を経て登場する。これが最後焼け落ちた家の中から見つけ出されるっていうのが象徴的。
時代や状況によって女性のあり方っていうのは本当に違っていて、自分にふさわしい生き方を見つけたなら、誰がなんと言おうとそれを貫けばいい、と教えてくれたような作品だったと思います。それを押し付けてはいけないというのも含まれている。家を守る女もいれば、仕事に生きる女もいて、新しい世界へ自由に羽ばたく者もあれば、これまで連綿と続いた血よりも自分を選んで生きる者もある。
とても面白かったです。
成金貴族となって浮かれるノガレ男爵家の中で、長男のテオだけは、貴族の身分に不満を抱いていた。ある夜、家を抜け出して遊びに行ったテオは、世間を騒がす盗賊団・ボワザン一味の若者に出会う。追われる身の彼を救ったテオは、その帰り道、近道のためにしのびこんだ女子修道院で、自分と同じ年ごろの少女・フェリシアに見つかってしまう。彼女は訳あって一生を修道院で過ごす身だった。(カバー折り返しより)
ブローデル国物語の三冊目。シャロンとラウールが出会うよりも前、ノガレ家が男爵になったすぐ後くらいの話。ちょっとだけマルセルも登場。
シャロンとラウールがお互いを知らずに出会っていたってときめきだー! この後結婚するんだからにやにやします。シャロンはまったく淑女の教養が身についていないようでしたが、この後完璧な猫かぶりになるんだよなーと思うとそれもにやにやでした。
お話はシャロンのしたたかな弟、テオと、女子修道院に入っている侯爵の娘フェリシアのお話。十三歳と十歳の恋がいじらしくって切ない話でした。
王弟アルフォンスの謀反に加担し、ブローデル王国を逃れたデュヴァリエ侯マルセルとニノンは、エルシリアに滞在していた。エルシリアは、マルセルを覇権争いに利用しようとするが、マルセルはただ様々な夫人と浮名を流す日々を送っていた。恋人のバルデス夫人の前で恥をかかされたモリーナ伯は、マルセルを執拗につけ狙う。一方、アルフォンスの寵愛を受けていたグルーズ夫人が現れ……。(カバー折り返しより)
『翠緑の森の騎士』に続く二巻目。敵として登場していた訳あり主従、マルセルとニノンのお話。いやー、ニノンがむくわれてよかった! ラストまでほとんど二人が接触しなかったのでちゃんと結ばれるのかなあと思いましたが、思いを吐露し合うとあっという間だった。舞踏会で「私の婚約者です」をやるのはロマンです。
ブレイエの粗野だけれど優しいところがいいなあ。恋に関しては完全に当て馬だったので可哀想でしたが、主人と同僚に恵まれたみたいでよかった。
マンダレーで開かれた豪華な仮装舞踏会の翌日、海底から発見されたレベッカのヨット。キャビンには、一年以上前に葬られたはずの彼女の死体があった——。混乱するわたしにマキシムが告げた、恐ろしい真実。変わらぬ愛を確信し、彼を守る決意を固めるわたし。だが、検死審問ののちに、マキシムすら知らなかったレベッカの秘密が明らかになっていく。魅惑のサスペンス、衝撃の結末。(裏表紙より)
上巻の後半から格段に面白くなってきたなあと思ったら、下巻はめちゃくちゃ面白かったです。レベッカがどういう人間かは想像がついていたんですが、その決着がどうなるのかっていうのははらはらして読み進めていました。恩田陸さんの解説がずばりそのものって感じで、語り手のわたしの気持ちになって捜査のシーンは読んだなあ。
先妻レベッカに勝てるか、っていう問いには、勝てるけれど負けた、というのが回答でしょうか。わたしはマキシムが求めたわたしではなくなっているし、その後の二人もそれまでの二人ではなく、すべての象徴であったマンダレーも……という。最後の一文が効いていて本当に素晴らしかった。
ゆうべ、またマンダレーに行った夢を見た――この文学史に残る神秘的な一文で始まる、ゴシックロマンの金字塔、待望の新訳。海難事故で妻を亡くした貴族のマキシムに出会い、後妻に迎えられたわたし。だが彼の優雅な邸宅マンダレーには、美貌の先妻レベッカの存在感が色濃く遺されていた。彼女を慕う家政婦頭には敵意の視線を向けられ、わたしは不安と嫉妬に苛まれるようになり……。(裏表紙より)
天涯孤独の身の上で、女性の付き人をやって生活費を稼いでいた21歳のわたし。妻を亡くした貴族のマキシムの後妻に迎え入れられ、人々が讃えるマンダレーの邸宅での生活を始めるが、屋敷には先妻レベッカの気配が色濃く残り、その気配を残そうとする家政婦頭ダンヴァーズ夫人の敵意の目にさらされていく。
若いから、というのが理由になるのかどうかはわかりませんが、悪い想像をしがちで、恐怖に心を支配されて突発的な行動を取り、という主人公。それがなんだか不安感を煽って読んでいてひやひやする。何かを知っていそうな発達障害の若者のベンは、レベッカの何を知っているんだろう。
ごく普通の腐女子・早乙女朱葉のスペースに同人誌を買いに来たのは、ごく普通の腐男子・桐生和人。ただひとつ、ごく普通と違ったのは、二人は高校の教え子と教師だったのです――。
イケメン生物教師の真の姿がもっさり残念メガネ男子かつ同じ沼の狢……だと……!?
そう、これは――教え子を神(絵師)と讃えるイケメン腐男子先生と、とある腐女子の物語。
桐生:「今週の雑誌にマジ神コマがあるので審議したい」
朱葉:「それな」
こんな先生に教えられたい!? 共感しすぎるオタクラブコメ登場!!!!!(裏表紙より)
小説家になろうで話題になっていたのを存じ上げていたのですが、この度初めて読みました。
わかる! それな!!! の嵐で、たいへん面白く読みました。しかしこれオタクの素養がない人も普通に読めるのかな? 言い回しとかわかる? 大丈夫? 結婚する?
でもわかった方が数段面白い! アニメ映画の応援上映、声優たちが出ているアニメや円盤の話、実写化映画のについて、ソシャゲについてなどなど、あーあれがモデルね! って考えるの楽しいです。
生徒と先生、描き手と閲覧者という二重の縛りがあるじれじれ感がいい。オタクすることも推しも大事だし切っても切れないけれど、好きだなって思っちゃうともうね〜〜〜だめだよね〜〜〜〜〜どっち取るかって話になるかもしれないけれど、どっちも大事にしてほしいよね。
笑いとときめきでたっぷり潤いました。楽しかったです。
栗坂まもりは、イケメンでベランダ菜園オタクの亜潟葉二とお隣住まいの恋人どうし。
付き合ってはじめての12月。クリスマスに年越しにとイベント盛りだくさんのシーズンがやってきた! ベランダ野菜を使った葉二のおいしいご飯で関係も急接近……なんて期待をしていたら、招かれざるお客さんが次々現れて、全然二人きりじゃないですよね!?
年末には過保護な母まで来襲! お手伝いもしなかったずぼら娘・まもりの大掃除を心配したらしい。不意打ちの訪問から、母に葉二とのお付き合いがバレて――?(裏表紙より)
三巻目。クリスマスとお正月のお話です。
喧嘩して気まずくなったかと思ったら弟来襲。なんとかやり過ごしたかと思ったら母襲来。挙げ句の果てに亜潟さんが女性じゃないことがばれてしまった! 実家へご挨拶!
おおーめっちゃ恋愛小説だーおおーーー。にやにやして楽しみました。亜潟さんはちゃんとまもりのこと好きなんだなーと感じて嬉しかったです。30歳の大人が、年下の恋人のためにちゃんと大人の皮を被って礼儀正しく応対するって、当たり前のことなんだけどちゃんとしててかっこいいなあ。
双子公子のどちらか選んで結婚する事になったリーゼロッテ。腹黒だけど紳士的なコンラート? 無愛想だけどワイルドなヴァルター? 二人を知るうち両公子と恋が芽生えて……。本気で好き。片方なんて選べない! 彼女の悩みを知った双子は「三人で恋人になろう」と提案!? 口づけ、胸、そして……。次々と二か所同時に責められて感じる目眩く快感……。刺激的なErotic宮廷ロマンス!(裏表紙より)
あらすじから想像されるエロさから6割くらい引いて、ラブコメっぽさを3割くらい足し、図太くたくましいヒロインの清々しさを3割足す、みたいな話です。あらすじちょっと詐欺だぞ!笑
双子の公子は並いる公妃候補を追い返しまくる性悪と評判。しかしどちらかが公妃を選んで結婚しなければ次の大公として即位できない。次々と候補者に逃げられて打つ手がなくなった大公は、信頼する部下(下級貴族)の娘リーゼロッテになんとか二人のうちのどちらかと結婚して次期大公を決めてもらいたい……というとんでもな結婚話を押し付けられたところからスタート。
主人公のリーゼロッテは、結婚しなければならないという教育を受けてこなかったせいで、結婚うんぬんに関する興味が乏しく、どちらかというと亡くなった母の代わりに実家のいろいろを回したり帳簿をつけることが好き。なので追い返されてきた姫君たちとはまったく違うタイプである、ということから、双子公子の興味を惹いてしまう。
このリーゼロッテの、啖呵やら、どっちかしか選べないなら逃げてしまえ! っていう行動的なところが非常に楽しい。それに協力してくれる使用人のエーリクもいい感じに有能で、TLものというよりかはラブコメとして面白かったです。
双子もそれぞれ優しく、深く突っ込むとやばいのですが最終的に三人で幸せになりましょうというエンド。楽しく読みました。