読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
「そっか、ママってバツイチなんだー」
「えっ、あのおじさんが、パパだったの」
「妹だけはパパと血がつながってるなんて、ずるいと思う」
「ママ、化粧濃いけど最近、男でもできた?」
「俺、父さんの歴代の彼女、みんな知ってんだよね」
子どもたちの素直な本音に泣き笑い! 6つの家族の実話。(カバー折り返しより)
「cakes」のウェブサイトに連載されたものと書き下ろしを加えたもの。離婚家庭の子どもと保護者から聞き取ったものを再構成したもので、まるで短編小説を読んでいるかのようで読みやすく、面白く、ちょっといい話になっている。
実際は当事者ってすごく複雑で苦しかったんだろうけれど、大人びた子どもたちの眼差しが愛おしいなあ。大人にならざるを得なかった部分もあるけれど、なんというか、しなやかな感じがあってすごくいい。
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瑞燕国で最下層とされる尹族の少女・玉瑛は、皇帝の「尹族国外追放」の勅命により、下女として働いていた貴族の屋敷を追われた。山中を彷徨う玉瑛は追いついた騎兵に斬られ、尹族差別の元凶となった皇帝の側室・柳雪媛への恨みを胸に意識を失ってしまう。意識を取り戻したとき目に入ったのは、見知らぬ女。高価な調度品。そして女が玉瑛に呼びかけた。「雪媛様」と。(Amazonより)
奴婢である玉瑛は、主人に虐げられ、搾取される少女。ある日殺されそうになったところを逃げ出したが、騎兵に斬り捨てられる。そうして死を覚悟したはずだったが、玉瑛の心は過去へ飛び、尹族差別の元凶となった柳昭儀に入り込んでいた。
素性の知れぬ、だがさぞ名のあったことだろう老師に教えを受けていた玉瑛=雪媛は、その知識を「予言」として用いて未来を変えようとする。そうして自らを切り捨てた男、いずれ将軍となる青嘉を手元に置くが、不信感を募らせる彼は雪媛の素顔を知るようになり、惹かれあって……。
転生ものめいた、時空跳躍のような設定を用いた中華風ファンタジー。時間ものは大好きなんですが、後半の流れがたいへんに熱く、青嘉が未来にたどり着いたところから展開がもう「うおおおおおお」という感じで、とてもよかった。もう終わりなの!? っていうここから始まる予感のあるラストも大変よかった。きっと雪媛はやり遂げたんだろうな……。だから不幸な転生も跳躍もこの世界線では起こらなかったんだと思います。そう信じたい。
未婚のプロ、ジェーン・スーの真骨頂!
理屈より気分を優先する女子メンタリティは、社会的弱者に宿るからこそ輝くもの。社会経験とコズルイ知恵と小金を備えた女たちが「女子! 私たちはずっと女子」と騒ぎ出したら、暴動みたいなものです。(カバーより)
ものすごく頭のいい人が書いた女性向けエッセイだ(小並感)みたいな感想を抱いてしまった。
四十代である著者は、二十代三十代、社会に出て働いていたことや、家族間の関係などを綴るエッセイ。解放されたいという感情にあふれていて、もしかしてまだ解放されていないのだろうかと思いながら読みました。自分を取り巻く状況、自分自身を振り回す感情や、どうしようもない社会を本当に変わらないなと諦めている素振りさえ感じる。すごくわかるんですけど、読み終わった後ちょっともやもやしました。思うように生きればいいんだけど、じゃあ私はどうしようかって考えてしまった。
オープンリー・ゲイである歌人の鈴掛真が、LGBT、特にゲイについての素朴な疑問に答える。初恋はいつ? ゲイだと自覚したのはいつ頃? もし友達にゲイだと打ち明けられたら? などLGBTを考える入門書。
非常にわかりやすくて面白かった。文章が柔らかくて優しい。心地いい文を書く人だなあ。
「いつゲイだと自覚した?」とか「初恋は?」など定番の質問にも答えつつも、「それは男女間だったらこういう理由なので失礼」など言い換えてくれるのがわかりやすい。セクシャリティの問題って同性間でもやっぱり不用意に踏み込むべきではないから、ちゃんときっちり言ってくれるのがすごくよかった。
LGBTの人に特権を与えるのではなく、マイナスのものをゼロに戻そうしているだけだという言葉には深く頷いた。差別とか平等化ってそういうものだと思う。でもそれを特権だと考える人が多いんだよな……。
後宮で生きながら帝のお渡りがなく、また、けして帝にひざまずくことのない特別な妃・烏妃。当代の烏妃として生きる寿雪は、先代の言いつけに背き、侍女を傍に置いたことに深く戸惑っていた。ある夜、後宮で起きた凄惨な事件は、寿雪が知る由もなかった驚愕の真実をもたらす、が——。烏妃をしばる烏漣娘娘とは何か? 烏漣娘娘がおそれる「梟」とは一体誰なのか?
烏妃とは、なにも望まず、ひとを遠ざけ、ただひとり……(裏表紙より)
シリーズ2巻。孤高の妃が不思議な力を持って謎解きをし、皇帝や周囲とのふれあいで少しずつ心を温めていくお話、だったのですが、この巻はすごく「ひとりぼっち」の感覚が強くて、だからこそかすかなふれあいや誰かを思うことがより強く感じられるものだったように思います。
烏妃誕生のきっかけになった香薔や烏漣娘娘の話は次回かなあ。高峻の周りも徐々にきな臭くなってきているようだし、悲しい結末にならないといいけれど、と思いながらも二人が凛と立つ姿をこの先最後まで見守りたいと思う。
開国帝都。あたらしき女を自称する、ハイカラ娘こと環蒔お嬢さんは今日も元気だ。「溝口さん! 百鬼夜行が出たのですって!」と、僕を連れて、噂の現場・銀座へ。
はぁ。「僕は恩ある男爵さまのため、勉学を優先したいのですが」という主張は、もちろん聞いて頂けないんですね?
“百鬼夜行”なんてただの噂話……と言いたいけれど、お嬢さやその友人、人ならざる者まで巻き込んで事件が発展し——。
男爵令嬢のハイカラさんに連れられて、秘密を抱えた書生が挑む開国帝都のあやかし奇譚、開幕!(裏表紙より)
ハイカラさんと書生さんとあやかしもの。おおーうまいことミックスされてるなあ! と感じた作品でした。とてもバランスがよくて読みやすかった。
百鬼夜行を主として起こる事件に、なんでもかんでも首をつっこむ環蒔お嬢さん。それに振り回される僕こと溝口。あやかしに遭遇してあわやというところで、実は溝口にはとある秘密が。
環蒔お嬢さんの無鉄砲な性格は「頼むからじっとしていてくれ!」と思うのですが、彼女の主義主張がとても爽やかでいて好ましく、応援したくなります。この若さは多分いつか折れてしまうときがくるんだろうけれど、折れないでいてほしいなあと思う。
それまでの名声を捨てて、ついに山村こと楊建明の元へ向かったフミ。馬賊となった彼女は建明のかつての女と比べられながらも、彼女らしい強さを持って仲間と認められていった。しかし曠野は多数の思惑と罠と野望が行き交う戦場と化して……。
読んだのは単行本。芙蓉ことフミの千里を駆ける物語。
実に大河だなあというお話で、女性が凄まじい勢いで歴史の中を駆け抜けていく感じ、実に須賀しのぶさんらしい作品だと思いました。炎林との関係とか、大河小説ならではだよなあ! とわくわくして読み終わりました。
歴史が大きく動いている時期のお話なので、話の大半が戦況の説明だったり、フミに対する仕打ちというか彼女に襲いかかってくる展開が、酷い……きつい……辛い……(でも面白い)というのが楽しかったです。歴史って男性のもののように感じられるときがあるんですが、フミはそうした裏側を駆け抜けた人だったなと思う。
あの人の手を離しここで生きると決めた、そのはずだった。哈爾濱は様変わりし『酔芙蓉』が閉められ、タエは結婚して伯林へ行ってしまった。それでもフミは芸妓「芙蓉」として生きていたが、いつしか以前のように舞えなくなってしまう。そしてフミは再び自らの道を見つめ直し……。
読んだのは単行本版。
男を追う女でしかいられなかったフミが、今度は追われる女になったかあ……! という感慨深いラストでした。いいよいいよーこういう少女小説素敵だよー。
「芙蓉」としての高みへ行こうとする第二巻でしたが、それ以外のところでメッタメタにされるフミにさすがに言葉をなくしてしまった。何も汚されることなく無事でいられる状況ではないんだけれど、辛い……。
山村さんのどうしようもなく運命を狂わせる感じもいいんですが、この巻は最後の最後で黒谷さんがよかった。最後どうなるんだろうなあ。