読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
リランが新しい巫女姫に決まってから三日が過ぎた。依然として行方不明のサヒャンを気遣うカイエンだが、そんな時、水の神殿の副司祭カーウィが国王のヨゥンに謁見を求めてきた。彼が運んできた木箱から姿を現したのはヨゥンと対峙する存在——リランだった。七年前見殺しにしてしまった乙女の面影をリランに見て、恋に落ちるヨゥン。国王を虜にして、リランの復讐が始まろうとしていた。(カバー折り返しより)
復讐者リランはついに国王ヨゥンの心を捕らえた。復讐と恋のどろどろを期待したんですが、思いがけず真犯人が登場してしまったのが残念です。もっとぐっちゃぐちゃになってよかったと思うよ! 個人的なフェチだけど!
当事者たちがほとんど退場する結末が、仕方ないよなと思う反面、生きていてほしかったと思ったりもして。リランが生まれたなら、ヨゥンもどこかにいるといいなと思いました。いつか巡り会うこともあるんだろうか。そうだといいな。
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ヨルサ大陸を流れるナリ川の下流には、砂漠の真珠と呼ばれる水の都ファロンがあった。ファロンの象徴である水の神殿で巫女のソルマが殺され、それから水の都に雨が降らなくなった。異常事態を回避するため、新たな巫女姫を選ぶことが決まり、サヒャンとリランら42人の舞姫が水の大祭で舞いを舞うことになる。巫女姫に執念を燃やすリランに不安を覚えながら、サヒャンは大祭にのぞむが…。(カバー折り返しより)
砂漠の国、水を尊ぶ都ファロンで、優れたる舞い姫であり女神の憑座でもある巫女姫を選ぶ。だが絶対に殺されない場所で先代が殺されたことは、過去に処刑されたとある女性と関わりがあった。
少女小説らしからぬ不穏さですが、ヒロイン二人、サヒャンとリランがなかなかの百合。子どもっぽくも無垢で天性の舞い手であるサヒャンと、賢くも毒と秘密を持つリラン。この二人のやりとりがなんだかとっても仄暗くて、なのに読んでいて悲しい。
処刑された国王の元恋人の存在が絡む復讐が、どのように行き着くのか。気になる。
この優しい物語をすべての働く人たちに
ブラック企業にこき使われて心身共に衰弱した隆は、無意識に線路に飛び込もうしたところを「ヤマモト」と名乗る男に助けられた。同級生を自称する彼に心を開き、何かと助けてもらう隆だが、本物の同級生は海外滞在中ということがわかる。なぜ赤の他人をここまで? 気になった隆は、彼の名前で個人情報をネット検索するが、出てきたのは、三年前に激務で自殺した男のニュースだった——。スカっとできて最後は泣ける、第21回電撃小説大賞〈メディアワークス文庫賞〉受賞作。(裏表紙より)
ブラック企業で働く会社員が、線路に飛び込もうとしたところで助けられた自称元同級生の男と過ごすことで、仕事を辞めようと一歩踏み出すまでのお話。
隆の状況や与えられている仕打ちはきついんですが、全体的にさらっとしていて読みやすかった。隆は素直だし、ヤマモトはいいやつだし、これからの二人が楽しく生きてくれることを祈る。
ワケあり王太子殿下とようやく結婚した、貧乏伯爵令嬢リネット。アイザックの素敵な旦那様ぶりにうっとりしつつ、自分も王太子妃として相応しくなろうとがんばっているけれど……。
王太子妃づきの侍女選びは難航するし、初めて主催したお茶会も不測の事態で中止することになってしまって!?
これって私が新米の王太子妃だからですか! それなら、なめられないように、男装してでも切り抜けてみせます!!
ワケあり王太子殿下と貧乏令嬢の王宮ラブコメディ第6弾!(裏表紙より)
新婚な二人の次なるお話。にわか令嬢の好きなところって、王宮もので王太子殿下との恋とか婚約とか恋愛ファンタジーのお話でがっつりアクションしたりド派手な展開になったりするところなんですけれど、6巻すごかった。
それからアイザックの凄まじさと、リネットとの関係が夫婦になっても変わらないところがいいなあと思いました。お互いを「素敵な人」だと思っているところが実に新婚。微笑ましい。今回は新しい味方を得たようなので一安心かな?
そして巻末のレナルドお兄様のSSが、切なくもほろりとしました。まあそうだよね、そう思っちゃうよね……不憫なような、切なくて愛おしいような。いい人が見つかってほしい。
社交界で浮名を流し、風雅と博物学を愛する有閑貴族エリオットには、もう一つの通り名があった。それは幽霊男爵――。沈黙の交霊会、ミイラの呪い、天井桟敷の天使……。オカルト事件に目がないエリオットの元に舞い込む不可解な事件。だが「謎」から闇を拭うと隠された想いと切ない事情が見えてくる。幽霊男爵が美貌の助手コニーを従え、インチキ霊能者に挑む!
怪奇に沸く19世紀ロンドンを、幽霊男爵が駆け回る!(裏表紙より)
幽霊が見える男爵と人形を自称する助手の少年、議員で警察にコネを持つ親友の貴族青年が、イギリスに溢れかえる幽霊事件に首をつっこむ話。
いやー危うい。みんなぐらぐらしている。その状況でお互いを支え合うことでなんとか均衡を保っている感じがはらはらします。けれどそれがきっと当時の英国という国の雰囲気であり、これから起こる歴史上の出来事に繋がるんじゃないか、と思うと、ああー……ああー!! と叫んでしまう。
それにこの時代に男尊女卑について描いているのはすごい。エリオットは本当に何を見たいんだと怖くなるくらい、冷静に社会的な空気やジェンダー観を観察している。死を見続けているから平等なのか。生者の社会は不平等で歪んでいるのか。それは、きついな……。
ところでこの本でめちゃくちゃロマンだなと思ったのは、幽霊に人間味があることでした。生きる延長に死があるところがいい、と思いました。はい私のフェチズムの話です。
19世紀、大英帝国の首都——ロンドン。偉大な探検家である当主が亡くなり、長男が爵位を継ぐことになったアッシュフォード子爵家。長女セシルはといえば、子爵家の未来のため、顔も知らない相手と結婚することが決まっている。だが、好奇心旺盛な彼女は結婚までの一年間、新聞記者になるという前代未聞の行動に出た! 「子爵令嬢」という正体を隠し、少年姿で働くセシルの前に現れたのは……!?(裏表紙より)
英国を舞台に、男装の子爵令嬢と、彼女の婚約者であることを隠しながら仕事のパートナーとして接近する次期侯爵の、謎解きラブロマンス。まっすぐでちょっと脆いところのあるセシルとちょっと意地悪で飄々としたジュリアンはとてもいい雰囲気で、これは正体がばれるときがめちゃくちゃ楽しみだなあ笑 でもジュリアンはなんだか悪い男のような気もするぞ……?
三度の飯より風呂を愛する平凡OLの泉。今日もバスタイムを楽しんでいたら、浴室の窓がなぜか異世界に繋がってしまった!? 窓の外に現れたのは、荒野で遭難中という男。乞われるままに水を一杯あげると、男はお礼にと耳飾りを渡し、行ってしまった。今のは何?? と混乱する泉をよそに、その後もたびたび窓の外には摩訶不思議な人々が現れる。頼まれるまま物々交換を繰り返すうち、泉は彼らと深く関わることになり——? ちょっと不思議な湯けむりファンタジー。文庫だけの書き下ろし番外編も収録!(裏表紙より)
OLの泉が風呂に入っていると、窓が異世界に繋がるようになってしまった。しかし外に出て、窓が閉まると、その接続は途切れるらしい。そんなわけで、泉は異世界に関わりはするものの風呂場から出ることはない、という独特の異世界召喚ファンタジー。面白かったです!
わらしべ長者的に、というか、最初に水のお礼として受け取った耳飾りを、必要としている人に渡して、そのお礼を受け取って、次にそれを必要としているように渡して……という伝言役、メッセンジャーみたいな役割。接続先が持っているものを必要としている人という法則性があるので、物語の展開は都合がいいんですが、実はとある秘密が明らかになるラスト、なるほどなーと唸りました。
「結婚式をやらないか」と突然言い出したケリーに、ジャスミンとダイアナはパニック状態。ジンジャーのためという説明に一旦騒ぎは鎮静化するも、無駄に顔の広い大型怪獣夫婦の披露宴に集まる面々が、当然のごとく普通の客であるはずもなく……。
さらに後日。ケリーは連れ添ってもうすぐ金婚式になろうかという愛妻(!)に「結婚式の後は新婚旅行だよな」と言い出した。ケリーのらしからぬ爆弾発言という事件は、さらに本当の“事件”にまで二人を導く。怪獣夫婦プラス一隻の新たなる冒険とは——。(裏表紙より)
「女王と海賊の披露宴」「女王と海賊の新婚旅行」の二本立て。
披露宴の方には金銀黒天使に元暗殺者二人組も登場しますが、あくまで脇役。ケリーとジャスミンが昔なじみと交流を温める話ですが、やっぱり見所はドレスで巨大ライフルを撃つジャスミンだと思いました。
新婚旅行は最後の最後でいつもの怪獣夫婦。指輪を「殴りやすい」 基準で着けるジャスミンがかっこかわいい。素敵。
最後の最後で天使の話題を振っていったので、次に出るとしたら天使シリーズかなあ。
そうして、シンデレラは王子様と幸せになり、意地悪な義姉は罰を受けて死んでしまいました。めでたし、めでたし――。
ある日、魔法使いの青年フィンと出会った伯爵家の次女デイジーが知ったのは、物語の悪役のような一年後の未来だった。彼女の死はフィンの魔法のせいで、彼は悲惨な未来を回避しようと、同じ一年を繰り返しているというのだけれど……。原因が妹に無関心だったせいって、意味不明すぎる!? でも、妹と仲良くすることで未来が変わるなら、まずは妹の生態調査に行ってきます!
運命を覆すために奮闘する姉と魔法使いのラブファンタジー!(裏表紙より)
シンデレラに無関心だったがために、魔法の影響で死んでしまった二番目の姉デイジー。だがその魔法を使った魔法使いフィンの「逆行」の魔法により、フィンはデイジーが死なない未来のために同じ一年を繰り返していた。そして六回目、デイジーはわずかながら前回の記憶を持ち、フィンと協力して魔法から抜け出す術を模索する。
童話モチーフにループもの。ぎっしり詰まった活字にうっとりしながらも読みました。読み応えがあって面白かったです。デイジーのしっかりさと可愛らしさが突き抜けていました。その分エラと王子は若干だめな人たちでしたが……。
黒湖さんの作品、これが初読みなんですが私の感覚的な問題だろうけれど「」書きの後に()で心の声が続くの、ずっとなので読みづらかった……。
東京都心から少しはずれた街の一角に、時代に忘れ去られたかのような洋館がある。そこに間借りして探偵事務所を開く男の名は、猪目空我。彫りの深い顔立ちの美丈夫だ。開業して数ヶ月、なんの実績もなく依頼者は限りなく少ないが、猪目は『名探偵』という自らの運命的な職業にも、雰囲気ある屋敷に格安で住めている現在の生活にも、すこぶる満足していた。ただし彼の大家である幼いお嬢様が実は『死者』で、彼女に寄り添う美形執事の正体が『死神』だったりはするのだが……。
ハリボテ探偵と自称エリート死神の“やりなおし”ファンタジー、カーテンコール!(裏表紙より)
最後の最後がすごくロマンだった。うわーそういう感じでファンタジーぶっこむのかおもしろー!! とぞくぞくしました。
前回と比べて今回は、死者とカーテンコールが主軸となった謎解きめいた話が多かった気がする。不気味さはあんまりなくて、おどろおどろしさがコメディに昇華されたような。どちらにしても時限爆弾を求める少年にお葬式を見せたり、この世に起こった出来事を知りながら、最後の人類と関わる、というぞくっとする怖さはあって、やっぱりすごく面白かったです。