読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

男子高校生の有栖川千早には人に言えない秘密がある。なんと訳ありで少女服のモデルをしているのだ。謎の美人モデルのセレーネにキスされて揺れる乙女心ならぬ男心。そんなさなか全寮制男子校の月夜の宮学園に転入した千早は同じクラスにモデル仲間の白鳥麗音の姿を見つけてどっきり。おまけに気になる意地悪な美形生徒会長の月城輝夜との間に新たなる秘密が……。(裏表紙より)
イラストがかわいい。中高生が好きそうな絵だわあ。そして作中の男子たち、みんなフェアリーだよ! 妖精さんすぎるよ! かわいらしいなあ。
全体的にもうちょっと学園ものをー! という気持ちでした。女装男子のバレる?バレない?の学園生活が見たかったよー。上記の紹介文だけで全編の説明がされてしまっているので、ちょっと残念。本編もシーンや話を細切れにしてしまっていて、小説というよりはショートショートを繋ぎ合わせただけの話みたいだったなあ。でもフェアリー。妖精すぎるのでそれはそれでありかもしれない!
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少女マンガ雑誌の当時の掲載作品を振り返りつつ、作品を論じたり、作家を論じたり。どちらかというと、風俗的なこと、読者層や掲載誌についての話が印象的でした。章ごとに作品の印象的な台詞を用いて、「男なら女の成長をさまたげるような愛し方はするな!」[宗方仁 『エースをねらえ!』]、読者たる少女がどういう風に読んでいたかというのに触れています。それから時代をどんどん経て……と現代になっていくにしたがってちょっと内容が薄くなっていっている気がするんですが、池田理代子とか山本鈴美香から24年組、吉田秋生の章は面白かったです。
コミケが報道で取り上げられる今、どんな風にマンガが受け止められているか知りたいなあと思うので、また探してみよう。

浄化の力を持つ《水の一族》の娘・シェルタ。存在を秘匿され行動を制限される彼女を、弟セレーノと妹ルチヨラが訪れる。十一歳のルチヨラとメガロス皇国の第三皇子の結婚が決まったという。妹の懇願と長兄の命令で、身代わりとしてメガロス皇国に入るシェルタは、そこで再会と出会いを果たす。
シリーズ二巻。前回はカルフ巻でしたが、今回はソティラス巻でした。金髪! 金髪!
愛を持って言うんですが、金髪が痛い目を見るのおいしいです! がつんとやるのがシェルタのまっすぐの言葉だからいいなあ。ソティラスは腹黒いですが、それでもシェルタの無垢さに打たれるところが嬉しいな。目覚めていくという感じがする。
カルフは保護者みたいな、でもまた違う気持ちでシェルタを見ているように感じられて、この二人の関係もどう変わるのかなと思います。
しかし、カルフとソティラスが仲良くしてるシーンいいな! こういう大人の付き合いってときめく。とことん本音は言わないけれど、心の奥底でお互いを理解しているというか、付き合い方を誰よりも知っているというか。それが一方でライバルでもあるので、面白いな!

アダルトチルドレンと少女漫画。現実とフィクションに見る二つの関係。陸奥A子や西原理恵子、萩尾望都、三原順の『はみだしっ子』がよく登場する。
とことん男性社会に対する女性というものについて論じていました。意識していないけれど男性社会だよなあ、とこれを呼んで気付く。そもそも最初の造り(身体的に)からしてそうならざるを得ないのかあ、とか。
母親というものの描き方の変化というのも面白い。アダルトチルドレンという存在について述べるには両親という存在は不可欠なんだろうけれど、ここにも男性と女性(父親と母親)という話が出てくる。やっぱり男性側を批判している。そうしないといけない状況があるわけだけれど、私自身、特に男性に対して不快な経験をしたことがないから、「ああ、そういえばそうだ」という感覚で読んでしまう。多分社会に出るようになったら、もっと色々感じられるんだろうなあ。
少女漫画の「親友」関係というものも興味深いな。親密性競争という言葉は初めて聞いた。女子にはありがちだと思うので、これについて論じた本を読んでみたい。
『スラムダンク』についても述べてあるところがあって、実は未読なんですが、こういうところがあるから女性にも支持されるのかな、と面白く思いました。

「君は綺麗だ。その紅い瞳も、肌も……」
婚礼を控え幸福の中にいた小国の姫、澄白は、国を護るため、竜に捧げられる“花嫁(いけにえ)”に選ばれてしまう。異なる形で国を護ろうとする兄の計略に従い、竜を殺すための呪をその身に刻み、嫁いだ澄白。しかし夫となった竜、シュトラールの優しさに触れ、次第に決心が揺らいでいく。竜を殺し許婚のもとに戻るか、竜を救うか——。美しい竜の青年に出会い、澄白が選んだ運命とは?
や、山城の国! 山城の国ー!! とあらすじを読んで拳を握る。これはファンにはうれしい国の名前! つながりがあるかもしれないと思うだけでとてもおいしいです。
周囲から忌まれる姫君が、世界を支える存在である竜に嫁がされるお話。式使いシリーズは設定上全体的にちょっと息苦しい印象でしたが、このお話はのびのびして、清らかで切なくてとても好きだ。竜(人間との意思疎通を得意としないもの、人間と同種ではないもの)と人間の交流というものを、優しくじれったく時々切なく描いているところがたまらなかったです。
シュトラールが男前すぎてしぬかと思った……。澄白に対してのアクションが種族のせいか何のてらいもなくて自然で、澄白の反応ににやにやしてしまう。
澄白が、姫君らしいのに一生懸命なところ、自分の本心を認めるところ、自分にできることをするところ、など永野さんの描かれるヒロインたちの中で、一番清廉な印象でした。自己犠牲ほど陶酔したところはなかった気がするし、澄白の場合、本当に自分にできることをやりつくそうとした上での選択、という感じだったので、私は彼女が物語のヒロインとしてとても好きだ。
異形のモノたちのバトルシーンがあって個人的にとてもたぎりました。
シュトラールがこれからどんな風に澄白と向き合っていくかという続きをぜひ読んでみたいです。澄白はシュトラールの《永久》になるのかなど、別の誰かのお話で描くのでもいいので、永野さんの描く竜シリーズをもっと読んでみたいと思いました。

イギリスのある古風な家の床下に小人の一家が住んでいました。生活に必要なものはすべて、ひそかに人間から借りて暮らしているのです。ところがある日、小人の少女がその家の男の子に見られてしまいます……。カーネギー賞を受賞した、ファンタジーの傑作。(カバー折り返しより)
再読です。ジブリ作品「借りぐらしのアリエッティ」の原作。手に入るものを貼っておく。
借り暮らしの小人たちの生活がいい。ちょっとしたものを持ってきて生活に使っている描写が、ドールハウスを見ているようで楽しい。あくまでアリエッティの話なのですが、少年の生活がどういうものなのか(やかまし屋で意地悪な女中おばさんとか)というのが結構想像できるのがいい。段々うまくいってきたのに、あっという間に崩れ去るというところは激しく悲しかったですが、新しい世界に出て行くというところが希望を持たせて好きだ。誰も見ていないけれど、本当かも分からないけれど、確かに存在したお話。

睡眠薬、シャブ、アヘン、幻覚サボテン、咳止めシロップ、毒キノコ、有機溶剤、ハシシュ、大麻やLSDもあれば、アルコールもある。ドラッグのオンパレードである。著者自らが体験したリーガルなものもあるし、話に聞いただけのイリーガル・ドラッグもある。古今の作家の生活や名著などもひきながら、話は「人はなぜ快楽を求めるのだろうか」へと進む。煙の向こうにひとの本質が見え隠れするような傑作ドラッグ・エッセイ。(裏表紙より)
ものすごい話ばかりだと思いました……。というか怖いな。
動物実験して滔々と書くより自身で体験してみないと分からないものの一つがドラッグであるのだなと思う。確かに、どう感じるのか、見えるのかを知る方が大事な気もする。興味を引いて、間違いを犯してしまうのはいけないけれども。
ドラッグを体験して見えるものの描写や、人から聞いた話が、不気味で幻想的な話のように思えてちょっと後ろめたくなる……のは、ドラッグに対する私自身の恐怖感からかな。
改めて表紙(文庫本の)を見てみると、これが全部ドラッグの絵なんだと知ってちょっとぎょっとした。

夏目漱石の『草枕』を愛読書とする、風変わりな医者と評判の栗原一止。内科医として本庄病院に勤務して五年目。結婚して一年。圧倒的に医者の数が足りない地域の病院に勤務する一止の受け持つ患者は、救急外来からインフルエンザ患者、余命幾ばくもない人も。この治療で正しいのか……最先端の治療技術を学ぶべきか……命と向き合う一止の目線で書かれる、人々の物語。
作者の夏川さんはお医者さんなんですね。一止の語りで進むお話で、この文体が心地いいなあと思う。病院の話が、自分に覚えがあって込み上げてくるものがありました。最期の治療というのは、家族はもちろん、お医者さんにも難しいものなのだなあと感じます。この一止は、読者として読んでいてとてもいいお医者さんだなと思う。
御嶽荘の話もいいなあと思う。風変わりな人たちがいるというところですでにわくわくする。文人の服薬自殺未遂は、この話にとても合っている……。学士さんを送り出すところがすごく好きだ。

仕立屋で働くアニスは、天使のような愛らしさをした店の看板娘……だけど、服装のセンスは最悪、性格はがさつで、言葉づかいもひどいありさま。そんな彼女の夢は、憧れの王子様の衣装を作ること♥ ところがある日、謎の美少年と、そのお付きの青年によって、アニスは動物園の国・バスティアスへと連れ去られてしまった! そこで彼女を待ち受けていたのは、厳しいマナーレッスンと求婚者、そして命を狙われる日々で……?(裏表紙より)
『A戦場のプリンセス』と同世界の別物語。この巻でタイトルの意味が分かったー! AはアミューズメントパークのAだったのか。今回Zは動物園のZ。ちょっとだけ紹介文に微妙な偽りがある気がする……(マナーレッスンは連れ去られる前)
Aよりも読みやすくて、テンションが高くて面白かったです。アニスの性格が元気よくてかわいい。もうちょっと事件があっても面白かったかなあと思いながら、衣装がーとか王位がなんだと言っているのは楽しかった。

デフレ不況もなんのその。イケメンのホストにハートを鷲掴みにされてしまった女王様。なんと1年間で1500万円もの大金をつぎ込んでホストクラブで放蕩三昧。その上、若さと美貌という幻想の果実を追い求め、プチ整形の虜となってしまう。ホスト、整形……、女王様が欲しいモノは、ホントに金で買えるのか!? 解説・石井政之(裏表紙より)
ホストとプチ整形につぎ込む巻。お金の話があんまり出てこなくなってきているけれど、かなりの金額を使っているんだろうなあ。副題の「ショッピングの女王」のショッピングというのは、多額のお金で何かを得ようとする中村さんの象徴的な言葉になっているのだなあと思う。
欲というのをつくづく思い知らされるようになってきた。悪あがき。自分でない何かになりたいということ。
この巻でマツコ・デラックスの話がちらっとあっておおーと思う。このエッセイ(文庫版)の刊行は2004年12月の話である。マツコ・デラックスがよくテレビで見かけるようになったということは、中村さんの言っていた「異形の福神」というのが受け入れ始められたということなのかな。