読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
幻獣《巨狼》の守護を受けるヴォルフヘルト王国。十三歳より前の記憶を持たない伯爵家令嬢・シャルラハロートは、雪に閉ざされた館で婚約者である王太子の訪れを待つ日々を送っていた。結婚を間近に控えたある日、彼女は道に迷った謎めいた異国の青年を救う。炎を纏う剣をあやつる彼との出会いが、シャルラハロートの運命を大きく変えていく—―。記憶を失った姫君と彼女を愛し熱望する王太子、異国の青年が織りなす幻獣ファンタジー!(裏表紙より)
もふもふ! もふもふ! 獣要素がてんこもりでした。雪狼はきっとふっさふさもっふもふなんだろうなあうっとり。
北欧神話を彷彿とさせるヴォルフヘイト王国の、記憶をなくした姫君の物語。異常なほど自身で考えることを封じられたシャルラハロート。病的に彼女に執着する王太子グラナート。余談ですが、この時点で「これ、○○で、○された○○○は○○○○なんじゃないかなー」とネタを割ってしまった自分はただの病的なファンです本当にありがとうございました。
とにかく、静かで平穏な、けれどどこか狂的な雰囲気で暮らしているシャルラ。頭のいい人なので、どこかおかしいと感じながら窮屈そうに過ごしているのが伝わってくる冒頭。よくある『囚われの姫君』のキャラクターは、迷い込んだ青年アルと関わったことで変化していく。途中までやっぱりお姫様な子なのかなと思っていたんですが、記憶を取り戻した瞬間からすごかった。完全に一人で立ってしまった。王子様なんて必要ないくらいに。その劇的な変化におおっと思いました。アルと一緒にいる時も、しっかり者というか、お茶目なところがあったりして、思わず駆け寄って引っ付きたくなるような少女でした。
シャルラハロートの選択は、前述を踏まえるととても正しいものだったと思います。恋愛的にはもうちょっと! らぶを! と思ったんですが、もし二人がもう一度会うなら、きっとシャルラが王子様なんだぜーと想像してにやにやしました。
あと、若干『白竜の花嫁』を彷彿とさせる設定があるんですが、もしこの世界があの世界と関係するのだとしたら、この台詞は何か意味のあるものなのかな。もしそうだったらとても嬉しい。
「理想は、互いに愛し合う男女が天地にかけて夫婦になる——というものでしょうね」
「救国の天使」と呼ばれるエローラは王室直属の防衛隊で最強の女子。なぜか彼女の元に配属された新入隊員は王子様。年齢差&身分差の凸凹コンビは気づけば、互いに惹かれてしまって……。けれどエローラに想いを寄せる生意気な同僚の美少年や、ナルシストな元カレにも狙われ、三角関係どころか四角関係に! 美形で変人ばかりの部隊で繰り広げられる、年下王子との恋の行方は!?(裏表紙より)
初ティアラかも? ちょーシリーズでおなじみ野梨原さんのTL作品。楽しかった! 内容紹介ほど四角関係していません。エローラが対デービット防衛で他のことが眼中にないのと、ヴァーツラフ王子がめっちゃ強烈な矢印を出しているせいです。
デービットと呼ばれる謎のゲル状生物によって危機に瀕した国で、唯一の対抗手段であるエローラ。しかし、同じ能力を持っているらしいヴァーツラフが配属されてきた。会話の内容とかセクハラシモネタの連続で楽しい裏で、実はすごく深刻な真相の、ギャップが。いやでもエロさんもヴァルもかわいい。
8月10日が何なのかというのはすぐに分かりますが、救国の天使が毎日普通に、食事して、どろどろの状態で風呂に入って、死ぬほど仕事して、ちょっとこいつかっこいいなって思ったりする、その普通さがぐっときた。
でも中でも一番いい男なのはやっぱりエルンスト先輩です。先輩まじ。先輩……。最後までいい男!
「―—私が、欲しいのだろう?」
竜の“花嫁”となった小国の姫、澄白とその夫である白竜のシュトラール。ゴルト族の竜、ザフィアの情報から古王国に赴いた澄白たちを待ち受けていたのは、始種の骨を略奪した黒竜、サルグ・アーセファだった! 彼の真意が掴めないまま、澄白たちは古王国に滞在することになるが…。かつて竜に愛された人の王の国で、澄白はシュトラールへの想いと向き合うことになって—―。人気作第四弾!(裏表紙より)
竜と《永久》の別れを目撃した第3巻からの続き。始種の骨の在処とサルグ・アーセファに辿り着いた一行が滞在するのは、幼き女王が治める国オルキス。かつてゴルトの竜が舞い降りた土地。
冒頭から夫婦の時間が! やばい! 前巻の悲しみを引きずっているのにこんなことを言ってはいけないと思うんですが、寄り添い合う二人に、にやにやが止まらなかったです。澄白も段々と大胆になってきているなあ。
新キャラのザフィアさんが、私好みの美女でやばいです。この人絶対体術もすごいと思うの! がたいのいい美女はやっぱり戦っても男前ですよね!? 個人的に最大に萌えたのは、悲しむだろう、と案じている時にまず挙げているのがシュトラールではなく、女性の方(澄白)だというところが、ねえさん……まじ優しくてかっこええっす……とおもいました、まる。
(だめだ、それだけは……)
あの娘はきっと悲しむだろう。泣くだろう。苦しむだろう。そしてシュトラールにも同じ苦しみが訪れるだろう。
ヴェルミリオンも動きだし、不穏な気配を漂わせる中、悲しい予感しかしない引きで「あがあー!」と叫びながら、竜と人と、《永久》の存在という関係が二人を次第に縛り始めたところで、次が待ち遠しいです。
「君は——私に触れられるのがいやか?」
竜の“花嫁”として捧げられた山城国の姫、澄白とその夫となった白竜のシュトラール。奪われた始種の骨を取り返すため、黒竜の領地に向かった澄白たちは、略奪者たちが既に離反していたことを知る。その帰路、突如現われた隻眼の黒竜に澄白は攫われてしまい…。
孤高の竜と彼を伴侶に選んだ女性との出会いが、澄白に竜を愛すること、その《永久》となることを意識させて——。人気作第三弾!(裏表紙より)
澄白とシュトラールのいちゃらぶあり、竜同士の戦闘もりもり、異種婚ゆえの愛と別離の切なさありと、盛りだくさんな感でした。前半のにやにやにや具合からの、竜戦闘の熱さから、更に涙滂沱する展開への落差がやばかったです。
前半は、壁ドンごちそうさまでした。まごうことなき壁ドンでしたね! ゴルトの地での澄白とシュトラールの優しく穏やかな生活でにやにやしました。竜と戯れる美少女いいですねうふふ。竜たちがまたかわいいんだー。ヘルツの「いい息子」具合もよかった。いい子だなー。
大型異形バトルがたいへん盛りだくさんでとても嬉しかったです。そうだよ、怪獣のバトルってこうだよ! みたいな感じで鼻息が荒くなりました。飛行生物がくるくる戦っているシーンはロマンである。
もう一組の異種婚夫婦、沙久羅とアクダルの出会いは、澄白とシュトラールの関係に大きな影響を及ぼしたようで。沙久羅とアクダルは、本当に、やさしくかなしい二人だった……。竜と人を結びつける思いは、狂おしいほどの愛なのか、と思うと、ラストがもう胸に迫って。そこでめくった著者近影やめてー!! 涙が。
澄白の出身が分かりそうになったり、黒竜離反組がまだまだ謎が多そうだったり、続きを楽しみに待ちます。
今回特に旦那様の言動がたいへんときめきフル回転させてくれたんですが、中でも最大にもえたところがシュトラールのここ。
『私は止めない。アクダルが正しい』
「ですが……っ」
『私がアクダルの立場でも同じことをする』
冷徹っていいよね……と思った。
能町みね子、2×歳。都内の某会社でOLとして働き始めて3年、実はまだ「チン子」がついています。会社の人は誰もそのことを知りません……。オトコ時代について、恋愛のお話、ドキドキOL生活など、大人気脱力系イラストエッセイ本『オカマだけどOLやってます。』シリーズを再構成し、一冊にまとめた完全版。解説・宮沢章夫(裏表紙より)
『くすぶれ! モテない系』の能町さんのエッセイ。こっちの方が『くすぶれ!〜』より先の話。まだ能町さんが「リフォーム」していない頃の話。
こうして男→女になった人のエッセイを読んでみると、自分がいかに無意識にしている生活に女性があるかっていうのを思うなあ、と思ったのが「はじめてのOL生活」の章。苦悩も書かれているし、実際の悩みはすごかったのだと思うのですが、能町さんの文体はあはは……と地味に笑っている印象があるなあ。読んでいて静かに笑ってしまう。落ち着く……。
どうでもいいんですがすごく地味にツボったっていうかときめいたのが、久しぶりに会った高校時代の友達に男言葉で喋っているイラストです……いや、初対面に人にはほぼ女性と思われるのに男言葉で喋っているっていうのが想像すると胸きゅんっていうかなんかもうよくわからないけどとにかくときめいてしまった。「オマエねー」が多分ツボ。
特別に容姿が悪いわけじゃない。恋愛経験だってゼロじゃない。時には、彼氏やダンナがいることもある。……でも、常にモテないオーラがにじみ出ている「モテない系」女子たちに同情し、憐れみつつも励ましはせず、いじくりまわしたイラストエッセイ。巻末に漫画家・久保ミツロウ氏との「モテキvsモテない系」対談を収録。(裏表紙より)
かなり昔にネットで連載を読んだ覚えがあって、本になっていたのか! と思って読みました。モテない系……私はモテない系と圏外ちゃんの中間くらいかな……orz
メールの顔文字絵文字とか、服装とか、マンガとか音楽とか、あるあるすぎて面白かった。メールアドレスのかわいさについて書いてあるところがあってそういえば! と噴き出しました。そうなんだよ、モテ子ちゃんはメールアドレスがかわいいんだよ……。
「そんなことないよー」と言われるより「そうそう……そうなんだよ……」とアンニュイに同意される方が嬉しい感じとか、あーあるある! みたいな。そうそう、そんな感じなんだよ! とかそういう共感を覚えるエッセイでした。面白かったです。
様々な事情から、家庭では暮らせない子どもたちが生活する児童養護施設「七海学園」。ここでは「学園七不思議」と称される怪異が生徒たちの間で言い伝えられ、今でも学園で起きる新たな事件に不可思議な謎を投げかけていた。
孤独な少女の心を支える"死から蘇った先輩"。非常階段の行き止まりから、夏の幻のように消えた新入生。女の子が六人揃うと、いるはずのない"七人目"が囁く暗闇のトンネル……七人の少女をめぐるそれぞれの謎は、"真実"の糸によってつながり、美しい円環を描いて、希望の物語となる。
繊細な技巧が紡ぐ短編群が「大きな物語」を創り上げる、第十八回鮎川哲也賞受賞作。(カバー折り返しより)
あらすじからどシリアスで黒々とした話だと思い込んでいたので、からっと明るい話でちょっとびっくりしました。表紙絵の方が昔からすごく好きで、綺麗だなあとにこにこ眺めてしまう。
日常の謎をひとつひとつ解いていくと、大きな物語が浮かび上がる仕掛けになっていました。ひとつひとつは結構すぐに分かったんですが、最後はえー! とすごくびっくりしたなあ。でも一編一編が大体似たような流れで終わってしまうのがちょっと残念。
ほんのりとした少年少女の恋があったり、憧れがあったり、読んでいて微笑ましい気持ちになりました。面白かった。
「人間レベル2」の僕は、教室の中でまるで薄暗い電球のような存在だった。野良猫のような目つきの美少女・百瀬陽が、僕の彼女になるまでは——。しかしその裏には、僕にとって残酷すぎる仕掛けがあった。
「こんなに苦しい気持ちは、最初から知らなければよかった……!」
恋愛の持つ切なさすべてが込められた、みずみずしい恋愛小説集。(裏表紙より)
ちょーきゅんきゅんした。なんだろう、私はこの子たちを知っている感! どこかでこういう子がいるっていうことを知っている気持ちにさせられてしまった。コミュ能力が低くて、自分に自身が持てなくて、それでも息をひそめながら生きていた感じが、もう懐かしくって、恋が絡むとさらにきゅんきゅんしてしまいました。
特に表題作「百瀬、こっちを向いて。」の、「自分のような薄暗い電球がどうこうとそのころはまだ悩んでいて」という部分が、特にぎゅっときたのは、十代の彼らが持つ悩みや痛みは全部その時のほんの一時的なものだという希望が見えるからです。きっとそんなことに悩まないでいい日は来ると思う。
この文庫に収録された全作が好きです。「あの日の海」に取り残されたままの年上女性と年下男子、先生と女生徒、自分を不細工に偽る美少女と飾らない男子。特に先生と生徒もの「キャベツ畑に彼の声」はジブリの映画とかみたいだったなあ。身体を丸めて座っている女の子が見える気がした。「なみうちぎわ」の閉塞感と切なく純粋な恋は染みたし、「小梅が通る」は気持ちよかった。
すごく面白かったです。