読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々

“艶女"——それは、想い人と性交し本当の女の悦びを知ることで、背中や腰に花や蝶や鳥などの絵が浮かんだまま、入れ墨のように定着する特異体質。これは妖艶な旅回りのサーカス一座「フィリア・ドゥ・フェティソ」を舞台に繰り広げられる、彼女たちの恋と愛に満ちた六篇の物語。スターと恋に落ち艶女になる飴籤の売り子。演出家との恋で自身も強く成長していく新米の艶女——“恋"に泣き“愛"に濡れ、女たちは艶めく花になる。(裏表紙より)
お、おもしろかった……。ちょっと女性向け官能レーベル侮ってましたすみませんでした。また新レーベル旗揚げかーと眺めていたんですが、ちょっと変わってそうなのが目に入って手に取ってみたらすごーく面白かった。
物語は、特殊な入れ墨のようなものが浮かぶ特異体質の女性たちが入団資格を得るという、昼間真っ当な公演、夜は十八歳未満入場禁止の公演を行っているサーカスを舞台にしている六編の短編集。
艶女と呼ばれる女性たちは大きく二種類。鳥の艶絵が浮かぶ性に奔放な人と、花が浮かぶ男を待つ人と。巡り会いを待つヒロインもいれば、奔放に遊びながら手探りで愛を探している人もいたりなどして、その違いが面白かったです! でもみんな、することしながら黒々としていたり、過去に囚われていたりする仄暗さがいい。
サーカスという舞台がまた面白かったので、もっと演者としてぎりぎりする感じも欲しかったかなと我がままを言ってみたい。姫王子やら見初められた女の子やらも可愛くていいんですが、私はこういうのが読みたいんだ官能小説で!! と思いました。TL系読まない人に、ちょっと読んでもらって感想を聞いてみたい作品でした。
PR

長崎県、五島列島の中学にある合唱部は、顧問の松山先生が産休に入るにあたって、臨時講師を迎えることになった。東京からやってきた柏木先生は、黒い髪の美人。新学期、合唱部は新しい部員を迎えることになったけれど、先生目当ての男子部員たちが入部して……。仲違いをしたり、声を合わせたりしながら、合唱部は、NHK全国学校音楽コンクールの地区大会を目指していく。
中学生と合唱。もちろん、中田さんが得意(であろう)「ぼっち」な男子も登場します。特に目立たないナズナ、そしてサトルの二人の視点から、Nコンを目指す約一年が描かれる。中学生という生き物はどこであっても変わりなくて、女子の「ちょっと男子ィ」な感じとか、男子の馬鹿っぽさとか、そういうものがリアルだわーと思って読みました。それぞれにドラマがあって、何もかもが解決するわけじゃないけれど、ひとつひとつ大人になっていく感触が心地いいです。この作品でのNコンの課題曲は「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」。中学生の話を書くには完璧なテーマだなあと思う。
ただの中学生ものかと思いきや、終盤にははっとする秘密が明らかになったり、やっぱり人の力を感じる青春ものだったりと、面白かったです。ちょっと泣きました。生きていることは辛くて、時々、すごく奇跡だ。

「護衛を探しているんだ。雇われないか」
騎士団を馘首になったばかりの不良騎士グレールを、酒場でスカウトしたのは時空漂着者のサクラ。異界から来たという彼は、その“再活性”能力ゆえ各王宮に知れ渡った存在だった。
快楽の契約を交わし人間の血を啜るヴィアローたち。その美しき種族の王ツバキを追って、サクラはここへ来たというが——。
「……なぁサクラ。再活性者って、なんだ?」(裏表紙より)
異界を行き来する存在があり、ヴィアローと呼ばれる吸血種族が、ミアリーと呼ぶ人間と契約を交わし血をすする、そんな生き物たちがいる物語。あとがきを読んで納得しましたが、原稿依頼が「十五巻くらい出ている話の、間の一巻完結」の話ということで、設定も話も投げっぱなしの、アクションありファンタジー、でした。へ、変な原稿依頼!
ちょっとお耽美なところもあり、でも女性の登場人物がほぼ皆無だったり、刀だったり銃だったり、オーバーザレインボーだったり、ごた混ぜの感じがなんとなく映画っぽくて、不思議な活劇でした。

幻獣《巨狼》の守護を受けるヴォルフヘルト王国。十三歳より前の記憶を持たない伯爵家令嬢・シャルラハロートは、雪に閉ざされた館で婚約者である王太子の訪れを待つ日々を送っていた。結婚を間近に控えたある日、彼女は道に迷った謎めいた異国の青年を救う。炎を纏う剣をあやつる彼との出会いが、シャルラハロートの運命を大きく変えていく—―。記憶を失った姫君と彼女を愛し熱望する王太子、異国の青年が織りなす幻獣ファンタジー!(裏表紙より)
もふもふ! もふもふ! 獣要素がてんこもりでした。雪狼はきっとふっさふさもっふもふなんだろうなあうっとり。
北欧神話を彷彿とさせるヴォルフヘイト王国の、記憶をなくした姫君の物語。異常なほど自身で考えることを封じられたシャルラハロート。病的に彼女に執着する王太子グラナート。余談ですが、この時点で「これ、○○で、○された○○○は○○○○なんじゃないかなー」とネタを割ってしまった自分はただの病的なファンです本当にありがとうございました。
とにかく、静かで平穏な、けれどどこか狂的な雰囲気で暮らしているシャルラ。頭のいい人なので、どこかおかしいと感じながら窮屈そうに過ごしているのが伝わってくる冒頭。よくある『囚われの姫君』のキャラクターは、迷い込んだ青年アルと関わったことで変化していく。途中までやっぱりお姫様な子なのかなと思っていたんですが、記憶を取り戻した瞬間からすごかった。完全に一人で立ってしまった。王子様なんて必要ないくらいに。その劇的な変化におおっと思いました。アルと一緒にいる時も、しっかり者というか、お茶目なところがあったりして、思わず駆け寄って引っ付きたくなるような少女でした。
シャルラハロートの選択は、前述を踏まえるととても正しいものだったと思います。恋愛的にはもうちょっと! らぶを! と思ったんですが、もし二人がもう一度会うなら、きっとシャルラが王子様なんだぜーと想像してにやにやしました。
あと、若干『白竜の花嫁』を彷彿とさせる設定があるんですが、もしこの世界があの世界と関係するのだとしたら、この台詞は何か意味のあるものなのかな。もしそうだったらとても嬉しい。
「理想は、互いに愛し合う男女が天地にかけて夫婦になる——というものでしょうね」

「救国の天使」と呼ばれるエローラは王室直属の防衛隊で最強の女子。なぜか彼女の元に配属された新入隊員は王子様。年齢差&身分差の凸凹コンビは気づけば、互いに惹かれてしまって……。けれどエローラに想いを寄せる生意気な同僚の美少年や、ナルシストな元カレにも狙われ、三角関係どころか四角関係に! 美形で変人ばかりの部隊で繰り広げられる、年下王子との恋の行方は!?(裏表紙より)
初ティアラかも? ちょーシリーズでおなじみ野梨原さんのTL作品。楽しかった! 内容紹介ほど四角関係していません。エローラが対デービット防衛で他のことが眼中にないのと、ヴァーツラフ王子がめっちゃ強烈な矢印を出しているせいです。
デービットと呼ばれる謎のゲル状生物によって危機に瀕した国で、唯一の対抗手段であるエローラ。しかし、同じ能力を持っているらしいヴァーツラフが配属されてきた。会話の内容とかセクハラシモネタの連続で楽しい裏で、実はすごく深刻な真相の、ギャップが。いやでもエロさんもヴァルもかわいい。
8月10日が何なのかというのはすぐに分かりますが、救国の天使が毎日普通に、食事して、どろどろの状態で風呂に入って、死ぬほど仕事して、ちょっとこいつかっこいいなって思ったりする、その普通さがぐっときた。
でも中でも一番いい男なのはやっぱりエルンスト先輩です。先輩まじ。先輩……。最後までいい男!

「―—私が、欲しいのだろう?」
竜の“花嫁”となった小国の姫、澄白とその夫である白竜のシュトラール。ゴルト族の竜、ザフィアの情報から古王国に赴いた澄白たちを待ち受けていたのは、始種の骨を略奪した黒竜、サルグ・アーセファだった! 彼の真意が掴めないまま、澄白たちは古王国に滞在することになるが…。かつて竜に愛された人の王の国で、澄白はシュトラールへの想いと向き合うことになって—―。人気作第四弾!(裏表紙より)
竜と《永久》の別れを目撃した第3巻からの続き。始種の骨の在処とサルグ・アーセファに辿り着いた一行が滞在するのは、幼き女王が治める国オルキス。かつてゴルトの竜が舞い降りた土地。
冒頭から夫婦の時間が! やばい! 前巻の悲しみを引きずっているのにこんなことを言ってはいけないと思うんですが、寄り添い合う二人に、にやにやが止まらなかったです。澄白も段々と大胆になってきているなあ。
新キャラのザフィアさんが、私好みの美女でやばいです。この人絶対体術もすごいと思うの! がたいのいい美女はやっぱり戦っても男前ですよね!? 個人的に最大に萌えたのは、悲しむだろう、と案じている時にまず挙げているのがシュトラールではなく、女性の方(澄白)だというところが、ねえさん……まじ優しくてかっこええっす……とおもいました、まる。
(だめだ、それだけは……)
あの娘はきっと悲しむだろう。泣くだろう。苦しむだろう。そしてシュトラールにも同じ苦しみが訪れるだろう。
ヴェルミリオンも動きだし、不穏な気配を漂わせる中、悲しい予感しかしない引きで「あがあー!」と叫びながら、竜と人と、《永久》の存在という関係が二人を次第に縛り始めたところで、次が待ち遠しいです。

「君は——私に触れられるのがいやか?」
竜の“花嫁”として捧げられた山城国の姫、澄白とその夫となった白竜のシュトラール。奪われた始種の骨を取り返すため、黒竜の領地に向かった澄白たちは、略奪者たちが既に離反していたことを知る。その帰路、突如現われた隻眼の黒竜に澄白は攫われてしまい…。
孤高の竜と彼を伴侶に選んだ女性との出会いが、澄白に竜を愛すること、その《永久》となることを意識させて——。人気作第三弾!(裏表紙より)
澄白とシュトラールのいちゃらぶあり、竜同士の戦闘もりもり、異種婚ゆえの愛と別離の切なさありと、盛りだくさんな感でした。前半のにやにやにや具合からの、竜戦闘の熱さから、更に涙滂沱する展開への落差がやばかったです。
前半は、壁ドンごちそうさまでした。まごうことなき壁ドンでしたね! ゴルトの地での澄白とシュトラールの優しく穏やかな生活でにやにやしました。竜と戯れる美少女いいですねうふふ。竜たちがまたかわいいんだー。ヘルツの「いい息子」具合もよかった。いい子だなー。
大型異形バトルがたいへん盛りだくさんでとても嬉しかったです。そうだよ、怪獣のバトルってこうだよ! みたいな感じで鼻息が荒くなりました。飛行生物がくるくる戦っているシーンはロマンである。
もう一組の異種婚夫婦、沙久羅とアクダルの出会いは、澄白とシュトラールの関係に大きな影響を及ぼしたようで。沙久羅とアクダルは、本当に、やさしくかなしい二人だった……。竜と人を結びつける思いは、狂おしいほどの愛なのか、と思うと、ラストがもう胸に迫って。そこでめくった著者近影やめてー!! 涙が。
澄白の出身が分かりそうになったり、黒竜離反組がまだまだ謎が多そうだったり、続きを楽しみに待ちます。
今回特に旦那様の言動がたいへんときめきフル回転させてくれたんですが、中でも最大にもえたところがシュトラールのここ。
『私は止めない。アクダルが正しい』
「ですが……っ」
『私がアクダルの立場でも同じことをする』
冷徹っていいよね……と思った。

能町みね子、2×歳。都内の某会社でOLとして働き始めて3年、実はまだ「チン子」がついています。会社の人は誰もそのことを知りません……。オトコ時代について、恋愛のお話、ドキドキOL生活など、大人気脱力系イラストエッセイ本『オカマだけどOLやってます。』シリーズを再構成し、一冊にまとめた完全版。解説・宮沢章夫(裏表紙より)
『くすぶれ! モテない系』の能町さんのエッセイ。こっちの方が『くすぶれ!〜』より先の話。まだ能町さんが「リフォーム」していない頃の話。
こうして男→女になった人のエッセイを読んでみると、自分がいかに無意識にしている生活に女性があるかっていうのを思うなあ、と思ったのが「はじめてのOL生活」の章。苦悩も書かれているし、実際の悩みはすごかったのだと思うのですが、能町さんの文体はあはは……と地味に笑っている印象があるなあ。読んでいて静かに笑ってしまう。落ち着く……。
どうでもいいんですがすごく地味にツボったっていうかときめいたのが、久しぶりに会った高校時代の友達に男言葉で喋っているイラストです……いや、初対面に人にはほぼ女性と思われるのに男言葉で喋っているっていうのが想像すると胸きゅんっていうかなんかもうよくわからないけどとにかくときめいてしまった。「オマエねー」が多分ツボ。

特別に容姿が悪いわけじゃない。恋愛経験だってゼロじゃない。時には、彼氏やダンナがいることもある。……でも、常にモテないオーラがにじみ出ている「モテない系」女子たちに同情し、憐れみつつも励ましはせず、いじくりまわしたイラストエッセイ。巻末に漫画家・久保ミツロウ氏との「モテキvsモテない系」対談を収録。(裏表紙より)
かなり昔にネットで連載を読んだ覚えがあって、本になっていたのか! と思って読みました。モテない系……私はモテない系と圏外ちゃんの中間くらいかな……orz
メールの顔文字絵文字とか、服装とか、マンガとか音楽とか、あるあるすぎて面白かった。メールアドレスのかわいさについて書いてあるところがあってそういえば! と噴き出しました。そうなんだよ、モテ子ちゃんはメールアドレスがかわいいんだよ……。
「そんなことないよー」と言われるより「そうそう……そうなんだよ……」とアンニュイに同意される方が嬉しい感じとか、あーあるある! みたいな。そうそう、そんな感じなんだよ! とかそういう共感を覚えるエッセイでした。面白かったです。