読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
小林多喜二の母、セキが語る、彼女の一生。
人に読みなさいと勧められた本。
独白の形式で、セキの生まれから、結婚、出産、引越し、そして次男多喜二の事件などが語られる。この、方言で書かれた文体が非常に心地よくて、すごく味わい深いし、情にあふれている。
貧農に生まれ、学校にも行けず、字も読めないまま、若くして嫁に行って。もちろん、多喜二のしていることもよくわからないけれど、この子がすることだからと全幅の信頼を置いているところが、母という生き物なんだなあ……と思う。息子を失った悲しみも、一人の母親としての悲しみと怒りとしてある。
教訓めいたことは最後の方にしかないように感じたんだけれど、でも全編通して、情に溢れた、質量のある一冊でした。
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月の精霊宮に住むフィラーンは『月の乙女たち』のひとり。月の司である精霊の女王の末娘。銀の髪、菫色の瞳の美しい少女だ。
月が消える新月の夜、この聖なる宮殿に賊が忍ひこんだ。男は草原の民ジルク族のオランザ。彼は神宝の『月光珠』を盗んだばかりか、フィラーンの唇まで奪って逃げたのだ!
人間界におりてスルフェと名を変えた少女は、盗まれた宝珠を捜す旅に出た……。(カバー折り返しより)
中編という印象の短めの話。穢されたために聖なる力を奪われ、元の立場に戻るべく、男を殺さなければならない、という人魚姫のようなストーリー。草原で、遊牧民で、という状況なのに、もうちょっとスルフェがいじめられるとかちやほやされるとかいう展開が見たかったよ! しかし、終始悲愴で切ない空気があって、好みでした。
結婚から半年、今まで以上に仲睦まじいコルドン伯爵夫妻。そんな伯爵家に「怪人」と呼ばれる幽霊に命を狙われた二人の客人が現れる。しばらく屋敷に滞在することになった二人だが、それにより熱愛夫婦の間に思わぬ亀裂が……。なんと、客人の一人である美しい少女リゼットとジェイクが一夜を共に!? 最愛の夫の不貞疑惑に、最強花嫁のとった行動は? 家人も幽霊も巻き込んで、予測不能な夫婦喧嘩が勃発! 二人の愛が試される!?(裏表紙より)
今度はジェイクがやきもきするの巻。夫婦喧嘩もやっぱりどこかずれてるんですが、自分の気持ちがいまいちよくわかっていないながらも「触りたい」と言ってしまうジェイクが、もうきゅんきゅんしました。拒否されて訳がわからないと思ってしまうところも、お酒に酔って押し入ってしまうところも、ああ、ジェイクって本当はすごく可愛い人なんだな……と。
屋敷の新メンバーになった、フィナとヴォルグがなかなかいい味を出してます。サアラ、アシェリーゼ、フィナと女子会が形成されているところで、そろそろ男子会も作ってほしいなーと思いました。
ある日、マッケニア伯爵家から届いた夜会の招待状。何故かサアラは、大好きなジェイクと離れることを承知で出かけて行く。その理由とは……? 一方、ある少女の幽霊を追ってマッケニア伯爵家に来たジェイクは、そこで驚くべき状況に遭遇して!? 華やかな夜会に隠された秘密と、少女の幽霊を縛る未練とは? 赤い糸ならぬ手錠で繋がれた夫婦の恋は、過激に進展中! 型破りな最強ヒロインは、恋も友情も予想外!!(裏表紙より)
サアラの性格が悪いことはわかっていましたが(それが可愛いのは知っている)、こんなにぶっ飛んだ思考回路の子だったかな? と思いながら久しぶりに続きを読みました。いかれたヒロインだぜ……(可愛い)
そして登場するゲストキャラもなかなかいかれた人たちばっかりで、みんなどこか変なところが非常に楽しいと思う自分がいてやばい。とりあえず、アックスはフルボッコにしたい。
サアラとジェイクは恋愛度が上がっているはずなのに、殺伐度もどんどん上がっているのですごく楽しい。もっとやって!
一般人には存在を知られず、政財界からは「神」と崇められている、永代院。地図に載らない広大な屋敷に、当主の由継を中心に、複数の妻と愛人、何十人もの子供たちが住まい、跡目をめぐって争っていた。そんな中、由継の息子・駒也は、父の女・鞠絵に激しく惹かれてゆく。許されぬ愛は、やがて運命の歯車を回す。破滅の方向へ——。「神」と呼ばれた一族の秘密と愛憎を描く、美しく、幻想的な物語。(裏表紙より)
『雨の塔』に関連する物語。少女たちの箱庭だった『雨の塔』とは正反対の位置にある、永代院という広大だけれど閉じらせた外の世界を描く。『雨の塔』ラストでの崩壊はいったいどのようにして訪れたのか、という話です。
地図になく俗世から切り離され、崇め奉られる家、永代院。当主は代々「由継」を襲名し、有力者たちから差し出される娘を妻に迎えて子どもを産ませ、とある啓示を受けた子を後継にしてきた。妾腹の駒也の短編を皮切りに、歪んだ家と人と、世界の側面が現れてくる。
『雨の塔』は境界の曖昧な箱庭の話だったのが、『太陽の庭』は庭という場所のせいか部外者からの侵入を受けて崩壊する。この二冊、世界の壊れ方を比べるとすごく面白い! 少女小説なんだけど、こっちはよりファンタジーなのに、最後はサスペンスで鋭い。そして女の話で締めるのか! と唸りました。
面白かった。でも、二冊合わせるとちょっと蛇足感はあるかも。私は『雨の塔』が好きだ。
その岬には資産家の娘だけが入れる全寮制の女子大があった。衣服と食べ物は好きなだけ手に入るが、情報と自由は与えられない。そんな陸の孤島で暮らす4人の少女——高校で同性と心中未遂を起こした矢咲、母親に捨てられた小津、妾腹の子である三島、母親のいない都岡。孤独な魂は互いに惹かれあい、嫉妬と執着がそれぞれの運命を狂わせてゆく。胸苦しいほど切なく繊細な、少女たちの物語。(裏表紙より)
この紹介文で読まずいられようかと。なぜもっと早く読まなかったのかと。好みドンピシャすぎて、読みながらいちいち胸をときめかせていました。
世間から隔絶された全寮制の学校、その場所の異質さ、少女たちばかりの世界。少女たち特有の結びつき。そこに! 資産家の娘、ハイソサエティならではの上下関係がちらついたり、優遇されているのに不幸だということが描かれるのが!! もう!! 好きすぎて!!!
矢咲と小津、三島と都岡がそれぞれルームメイトなんですが、この二つの世界が、交流という形で混ざり始めてから物語はどんどん暗い方向へと走っていく。嫉妬と執着で、それぞれがゆっくり壊れていって、最後はあっけなく幕切れとなる。この幕切れも「世界の崩壊」と呼ぶにふさわしい終わり方で、最後までしびれました。かと思うと、救いの光みたいなものが差し伸べられて、そこにもしびれた。ああ、少女!
解説もどんぴしゃりで、そこそこ! というところを解説してくれていてそこまで面白かった。
この話、めちゃめちゃ好きです。
茅野しおりの日課は、憧れのいとこ、美弥子さんが司書をしている雲峰市立図書館へ通うこと。そこでは、日々、本にまつわるちょっと変わった事件が起きている。六十年前に貸し出された本を返しにきた少年、次々と行方不明になる本に隠された秘密……本と図書館を愛するすべての人に贈る、とっておきの“日常の謎”。
知る人ぞ知るミステリーの名作が、書き下ろし短編を加えて待望の文庫化。(裏表紙より)
小学五年生のしおりは、いとこの美弥子さんが勤めている図書館で本を借りて読むのが好き。
両親が離婚しており、母親と暮らすしおりは、周りから見ればとても大人びた女の子。本を読むせいもあって、かしこい。すごくよく出来た子で、周りの子たちのことを思いながら友達付き合いしていくところが、なんだかいいなあと思います。
図書館あるあるな話が出てくるのですが、こうはうまくいかないよなあと遠い目をしてしまうところもあり。フィクションだからこそ優しいしほっこりするんですけれども、内実を知っていると、こんなことにならないよ! と机を叩いてしまう。
十六歳の王女ミーシャに結婚のときが迫っていた。女性が王位を継ぐロイデン王国では、神に選ばれた「聖夫」と結婚しなければ女王になれない。余命の短い母から、早く王位を継がねばならない——戸惑いながら、誰とも知れない「聖夫」を受け入れる覚悟をしていたミーシャは、婚儀の当日に見知らぬ少年と出会う。とっさに侍女だと名乗ったミーシャだったが……? 波乱の王朝ラブロマン!(カバー折り返しより)
インド風ファンタジー。女神と同性である女王を戴くロイデン王国。他国人の流入が始まって二百年ほど経ったこの国で、王女ミーシャは、即位の前段階として結婚することになった。相手は、生前の偉業をやがて国の統一神として奉じられたナジュカ女神の恋人エシュカの生まれ変わりという神託を受けた男だという。
さて、この生まれ変わりの徴を持っているのが、双子の青年だったという、とっても美味しい設定なのです。少し乱暴で軽薄な兄ザギと、穏やかで優しい弟ロダー。二人とも神託を受けたので、二人とも正式な候補なのですが、先にあてがわれたのは弟ロダーの方。けれど、ミーシャはザギの方が気になって……。
三角関係にはならず、最後の方まで明かされない色々があるので、はらはらしました。私は、ロダーが実は女性なのではないかと思ったんですが、その予測が違うところに飛んでいったのでびっくりしました。
この王女と双子以外に、母親である女王マーシェリー周辺の大人組も、様々に思惑があって気になるところです。どうやらマーシェリーの話もあるようなので、機会があったら読みたい。
中学生の双子の兄弟が住む家に落っこちてきたのは、なんとプロの泥棒だった。そして、一緒に暮らし始めた3人。まるで父子のような(!?)家庭生活がスタートする。次々と起こる7つの事件に、ユーモアあふれる3人の会話。宮部みゆきがお贈りする、C・ライス『スイートホーム殺人事件』にも匹敵する大傑作!(裏表紙より)
手元にあるのが1996年2刷の本なので、表紙が変わっています。多分紹介文も変わっていると思う。実は、宮部みゆきをほとんど読まずにきたのですが、それでもやっぱりすごい人なんだなあ、と作品の面白さ、読みやすさで感じました。
もっと一緒にがっつり生活するかと思ったら、都合のいい時に呼び出される、疑似父(ステップファザー)の話でした。この父も冴えてますが、双子もなかなか賢く、かつ小悪魔的で可愛い。その子どもたちに、どうしても冷たく当たれない父も、かわいい。
7話が収録されていて、もっと続きを読みたいなあと感じさせる疑似家族ものでした。面白かった!