読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
故郷の富山から上京し、東京で初めて借りた部屋の家賃は二万五千円。あの頃の私は、とてもお人好しで、全く人を疑うことを知らなかった……。引き受けたバイトは表札売り、うぐいす嬢、ホステス、そして謎の「お運びさん」!? 大都市・東京の片隅で、おずおずと、けれど生き生きと花開いた、大学生ムロイの愚かしくも愛しい日々。(裏表紙より)
友人に「おすすめのエッセイってある?」と聞いたら、室井滋さんが面白いよーと言ってもらえたので、やっと読んでみた。
お、おもしろー! 東京に上京した室井さんの、学生生活……とはあんまり関係のない生活の記録。すごいむちゃくちゃなんだけど、あーあるある……みたいに思ってしまうのは、自分にも起こりうることだからだ。日常の方がやっぱりミラクル。面白い人の周りには、面白い人が集まっている。
PR
大好評のブログ日記『今朝子の晩ごはん』の文庫化第二弾!
のんびり過ごすつもりで、ガラパゴス旅行から帰ってきたら『吉原手引草』で直木賞を受賞! 嵐のような取材と怒涛の出来事が続く、2007年下半期の日々の出来事と「晩ごはん」の記録。 解説/松岡和子
最近物語を読んでいたので、そろそろ人の日記を読みたいと思い。
いろんな人と会い、見たり、感じたりする内容なので、ふむふむと読む。乗馬楽しそうだなーと最近習い事をしてみたい自分は思うのだった。
これを読みながら思い出したのは、確か大学四年生の時に一冊目を読んだことで、卒業論文を何にするかと考えながら読んでいたら、ちょうど悩んでいたうち片方であった方のことがでてきたので、「呼ばれてる!」と思ってそちらを選んだのだった。
ライラの住む村に衝撃がはしった。獣の領主様と呼ばれている領主から、村の娘を館へ奉公に上がらせろと要求がきたからだ。きっと食い殺されてしまうに違いないと村人達は震えあがる。そこで役立たずの牧師の娘ライラに白羽の矢が立ち、差し出されることになってしまう。恐る恐る館にいったライラが出会ったのは獣の仮面をかぶった、美しい領主で……。新「美女と野獣」濃厚ロマンス。(裏表紙より)
美女と野獣を踏襲して、恐ろしい領主と、彼に囚われて村にも帰ることの許されなくなった少女のロマンス。切なさよりかは、TLらしいロマンスがメインでしょうか。BLだとお姉さんに振り回される主人公ですが、TLだと美しい姉妹に虐げられる主人公がお約束なのかな。ヒロインのライラは、いいようにこき使われているのに気づかず献身的に家の仕事をする少女。だからこそ、その家族の身勝手っぷりに腹が立ってきます。いくらなんでも、それはちょっと、ひどいよなあ。姉はともかく、お父さんもひどいって辛いです。
どうせだったら、村のみんなで領主様の館を襲撃して二人とも離ればなれになろうぜ! と思いましたが、これはそういうレーベルではなかった。TL作品を読むといっつもそんなことを思っている気がする……。
88年5月刊。地元の新聞「千里タイムズ」に連載された、絵本の紹介コラム。十年続いた連載の七年目から九年目をまとめた一冊。公民館や文庫といった社会教育についてもちらり。自分が絵本をほとんど通らずに活字に行ってしまったので、絵本についてよく知ってみようと読みました。
有名どころや勉強したもの以外は、ほとんど分からない自分にがっくり……。四百冊以上紹介したと書かれていましたが、まだまだあるって、すごいなあ、奥が深いな絵本。
なので、絵本のことよりも、子どもたちが文庫での活動でどんな風に生き生きと過ごしているか、を読むのが楽しかったです。感じることはそれぞれなのだな、と思うエピソードがあり、著者の正置さんがはっとすることがあったり……。子どもは読んでもらうのも好きだし、読むのも好き、というのは面白いなあ。楽しい本はやっぱり声に出して読んでも楽しいですよね。
有紗がメイドとして仕える大企業CEO、優しくて美形で密かに恋心を抱いてる誠人。二人きりになった夜、甘く口づけられ、あやまちを……。初めてを捧げて幸せに浸る有紗。けれど言い放たれる「これはただの遊びなんだ」やっぱり身体だけの関係? 恋を砕かれショックを受ける有紗。でも彼には本気の恋が出来ない心の傷があると知る。癒してあげられるのは「有紗だけ」いうことも!!(裏表紙より)
亡くなった父親から「恩返しをしてくれ」と言われて、お屋敷に押し掛けた有紗。奥様(誠人の祖母)に気に入られ、お屋敷のメイドとして働くことに。それも、何故かミニスカートのメイド服で。童顔でお化粧をしてやっと年相応に見える有紗を、誠人は恋の相手とは見ず。しかしとある出来事で意識するように。
ヒーローが冷たいというか心の傷のせいで少々わがままであり、ヒロインはヒロインでどじっこ体質の多少ほわほわ系なので、じれったいというか、すれ違いではなくずれているところがちょっとイーッとなりました。ヒロインはもうちょっと強く出てもいいのよ!
と思ったのですが、これだけじゃヒロインは弱いよなあと思ったところでその事情だったので、おーっと思いました。でもやっぱり、もうちょっと強く出てもいいのよ!
「僕のすべてが、君のものだ」
わたしはアヤンナ。醜い娘。
「おまえのような娘を妻にする男はいないよ。市場で夫を買ってこなきゃなるまいね」
亡き祖母はわたしに向かってよくこういったものだ。
だからいまでもわたしは市場が大嫌い。家畜を買うように夫を買わなければ、だれも愛してくれないほど醜いといわれたことを思い出すから。
けれど、魔女のわたしが見つけた美しいひとは、奴隷市場で出会った“彼”だった——。
醜い魔女の娘と美しい奴隷の王子。瓦解する帝国の辺境で二人は数多の物語を紡ぐ。(裏表紙より)
インカ帝国を下敷きにした民族系ファンタジー、というのか。雷神の存在があり、魔女がいて、奴隷が売り買いされるワカの国。アイユと呼ばれる血族の共同体に、お荷物として一人暮らす少女、アヤンナ。顔の半分にやけどの跡を負い、祖母からは「市場で夫を買ってこなきゃ」と罵られるみにくい娘。そんなアヤンナが出会うことになった青年リリエンは、金髪碧眼、白い肌の、美しい異人の青年。辺境で潰されてしまうはずだったアヤンナの人生に、光が与えられる。そういう物語。
かたくなに、一人、誰にも手を伸べられず生きていかなければならない運命だったアヤンナと、一人で生きることを知らなかったリリエンの不和、理解、寄り添い合いがとても丁寧で、苦しくて優しくて、すごくいい物語でした。
上辺だけで優しい言葉をかけられるヒーロー、は確かにとても甘くて素敵なんですけれども、リリエンのように傷ついてみにくいものを抱えているがゆえに、ひたむきに言葉を、アヤンナの言うようにそんなことありえないというような言葉を用いて伝えようとする、リリエンのまっすぐさに感動する。傷ついている二人が一緒にいるところが、すごく素敵だ。
結末に向けてはちょっと急展開でしたが、ラストがとても満足でした。そう、この物語は、まだ神様の存在を語れる時代の話だった。
表紙も素敵だし、帯もすごく素敵で、書店で一目惚れしていつか絶対読もうと思っていたので、読めて本当によかった。私の嗅覚も鈍ってないな! と自賛する。
廓遊びを知り尽くしたお大尽を相手に一歩も引かず、本気にさせた若き花魁葛城。十年に一度、五丁町一を謳われ全盛を誇ったそのとき、葛城の姿が忽然と消えた。一体何が起こったのか? 失踪事件の謎を追いながら、吉原そのものを鮮やかに描き出した時代ミステリーの傑作。選考委員絶賛の第一三七回直木賞受賞作、待望の文庫化。(裏表紙より)
面白かった! 謎が一気に明らかになろうとするところで、頭の中でじゃんじゃか三味線と鳴り物の音が聞こえてきて、うおおおおと叫んだ! すごかった!
吉原の花魁葛城が忽然と姿を消した。素晴らしい花魁だったと誰もが口する葛城が、決して抜け出ることができない吉原から消えたという前代未聞の事件から、しばらく経った頃。ある人物が、葛城に関わる者たちに聞き取りを始めた。本文は、その聞き取りを行っているので、誰かが聞かれるままに喋っている調子で書かれています。
全員に話を聞いてからが本番。がーっとラストまでの展開が始まるのでページをめくる手が止まらなくなった。
吉原が舞台だと普段読んでいるもののせいで、ちょっとファンタジーなイメージを抱いてしまったままだったのですが、ラストでぴしっと「時代小説!」と締めてくれたのが気持ちよかったです。
音楽の”竜“は、“王者”に挑む!
再び季節はめぐり、次の竜ヶ坂祭りに向けて練習を続ける『ドラフィル』のメンバーたち。しかしそのさなか、響介のもとにある奇妙な依頼が舞い込んだ。依頼者の名は、七緒の育ての親であり、彼女を見捨てたはずだった女性——一ノ瀬真澄。その内容は真澄の姉であり、世界的ヴァイオリニストの羽田野仁美が所有するヴァイオリンの鑑定であった。所持した者に不幸を呼ぶという呪いのヴァイオリン《チェリーニ》に酷似した、その楽器の正体とは? そしてドラフィルの演奏会の行方は——。(裏表紙より)
ドラフィル三巻で完結巻。音楽と家族の物語。ドラフィルにまつわる、一ノ瀬家と羽田野仁美の因縁もようやく解き放たれる三巻です。そのせいか、中盤から暗い雰囲気がつきまとう。簡単に解消されないとはいえ、一ノ瀬姉妹の自責は重いなあ……。
「音楽家は音楽で語れ」というのを最後まで貫き通した三巻で、音楽を奏でなければ分かり合えないことが悲しいのやら、凄まじいのやらという親子です。絶対に譲れない一線を持つ、七緒と羽田野仁美は、理解しながら決別の道を辿る……という、最後まで研ぎすまされた関係の二人だったと思いました。
音楽に取り憑かれた愚か者たちの、不器用に迷いながら勇ましく戦う物語でした。濃かったー。
黒猫工房では、あなたの大切な本を修復いたします。魔法のような手わざ、傷んだ過去の思い出も、静かに包み込んで——(帯より)
風早街関連作品。風早の街に、祖母と叔母の初盆を迎えるためにやってきた瑠璃。一緒に行くはずだった家族は色々忙しいので瑠璃だけ前乗りだ。そこで、魔法のように本を修復するルリユールの外国人女性が住んでいるらしいと聞く。
自分の居場所を見失いかけ、後悔を胸に抱えている少女・瑠璃が、不思議なものを認める心の広さを得ていくための物語だったと思いました。これだけでは瑠璃の展望が開けたわけではないけれど、様々な可能性の種が眠っている年頃なので、ここから新しいものを見つけていくんだろう。
本の修復師ルリユールの女性、クラウディアの存在が、赤毛で魔女めいていて自信たっぷりでとっても可愛い、というのが村山さんの書くとっておきの女の人、という感じだなあ! 素敵だ。最新鋭の端末は、これ村山さんがツイッターで言ってたやつだーと思った。お好きなんだなあ。
特別、本の物語、というわけではなく、本を受け取る人たちの物語なので、本の物語を期待するとちょっと惜しい感じもするかもしれません。現実の中に、魔法の要素が完全に流れ込んできているので、そういう不思議さが面白かった本だと思いました。
“鐘”が響くとき、“竜”は再び現れる。
『お前にこれ以上、ヴァイオリンを続ける価値はない』
相も変わらず、竜ケ坂商店街フィルハーモニー、通称『ドラフィル』でコンマスを続けていた響介。しかし急にかかってきた父・統からの電話と唐突なその物言いに、響介のヴァイオリンの音色は大きくかき乱される。
そんな彼に発破をかける七緒だったが、彼女の元に送られてきた『ある物』により事態はより混迷を極め——!?
商店街の個性的なメンバーで贈る「音楽とそれを愛する人々の物語」待望のシリーズ第2弾が登場!(裏表紙より)
ドラフィルシリーズの二巻目。今回もたっぷりどっぷり音楽と人のお話でした。この物語の重みはなんなんだろうなあ。音楽というものが、才能の重さがとても大きいからだろうか。最後の話に向けて、悩みが深くなり、ゆっくりともがきながら進んでいき、最後の瞬間に理解がやってくる感覚が、この話がすごく面白いところだと思っています。
一巻目は母と娘の物語だったのが、今回は響介と父親の物語。今考えると、そこに至るまでの話(連作中編の形になっているので)がちゃんと全部伏線になってるのがすごい! それぞれの家族の形があるけれど、根底にあるものはみんな似ているのかも。
最後の定演のシーンはやっぱり震える。面白かった。