読んだ本とか、漫画とか、映画とか、色々
「何だって俺たちを巻き込んだ?」
「悪いな」全然悪いと思っていない口調でケリーは言った。
「おまえたちの専門分野で一働きしてほしいのさ」
外で聞き耳をたてている人間には意味不明の言葉だろうが、二人にはそれで充分だった。
ケリーの眼には見たこともない冷たい光がある。
「対象は?」
「全員だ。ここにいる全員、一人残らず」
レティシアもヴァンツァーも最後は諦めたように肩をすくめた。
「あんたが俺たちの親分なら『承った』と言うところだが……」
「この場合は『了解』だろうな」
標的は『過去』
元巨大財閥総帥にして元賞金首に仕掛けられた罠。姿無き敵の狙いとは?(裏表紙より)
今回はケリー+レティシア、ヴァンツァーの共闘。おいおいそれでいいのかという感じですが、敵は報いを受けるべきことをしたので、まあそれは、まあ。夫婦が仲良さそうでなによりです。「大陸間弾道ミサイル」の言葉に噴いた。
このシリーズ、チートが一人でなくて「みんなチート(それぞれ別方向に)」という感じなので、なんというか普通の小説にはあんまりない変な安定感と面白さがあるなあ。その安定感が疲れるときもあれば楽しい時もあります。そろそろもうちょっと長編で読みたくなってきた。
PR
現金3千万円と紫色のちっちゃな下着をトランクに詰めて、高校時代の親友・鞠子が部屋に転がり込んできた。「人を殺したの」と言って……。その日から、普通のOL千種の悪夢が始まる、と思いきや?! 腐れ縁の元カレ・都丸も巻き込んで、3人の過去に一体何があったのか。幼くも一途な恋、将来への期待と不安、そして奇妙な友情。17歳の過去と24歳の現在を交錯させながら描く、異色の青春ストーリー! 解説・吉田伸子(裏表紙より)
17歳と24歳の物語が交互に語られる。17歳パートがすごく好きです。くすぶってる感とか閉塞感とか非日常に憧れる気持ち。
都丸がすごいだめんずなんだけれどいい男で悔しい。最低なのに憎めない感じがいらっとしながらいとおしい。鞠子のだめさ加減はリアルすぎてイタタタタ。それを喜んでしまう瞬間がある千種を自分と重ね合わせて胸がぎしぎしする。
本まわりの謎、調べました!
「読書好きはモテるのか?」「処分された本の末路はどうなるのか?」「官能小説のタイトルは、誰がどのようにつけているのか?」ほか、本についてわからないこと、誰しもが(!?)気になることを、北尾トロがカラダを張ってねほりはほり調べました! 雑誌『ダ・ヴィンチ』で創刊当初から続く人気連載、通算170本超から厳選して14本を収録。解説マンガは『暴れん坊本屋さん』の久世番子。(裏表紙より)
紹介文に上がっている官能小説のタイトルの話が面白かったです。全然分からないジャンルながらも、登場するタイトルが面白い。
出版業界について踏み込むのかなーと思ったら読者寄りの話でした。阪神大震災から一年くらい経った頃のものとかもあったりして、時間の流れを感じる。東日本大震災の被害に遭われた人たちもこんな風に感じているのかな。想像しかできないけれど……。
『精霊王の巫女』に選ばれたアイシャと、国王代理を務めるカファス王子の活躍により、かつての平和を取り戻したカダル王国。結婚まであと少しというふたりに、邪悪な陰謀が忍び寄る。突然現れた、魔眼を操る男に幽閉されたカファス。記憶を失い、身も心も囚われてしまったアイシャ。ふたりは偽りの楽園から目を覚まし、奪われた愛の記憶を取り戻すことができるのか——砂漠と精霊の王国を舞台におくる、ドラマチックファンタジー!(裏表紙より)
シャイターンの花嫁の第二巻。一巻から続き、平和になったカダル王国でのアイシャとカファスのその後。あ、あ、あ、あまーーーーーい! アイシャもカファスも相手を好きすぎるだろー!
記憶を失って他人に囚われてしまったアイシャの、心の底にまだ住んでいる人がいるシチュエーションがときめきすぎて動悸がしました。忘れてもまだ好き、というのはほんとおいしいな! それに対するカファスの態度が、もうカファスでしかなくて、多分一人の時すごくもどかしい思いをしているだろうに何にも覚えてないアイシャの前ではちっともそんなそぶりを見せないところが! この! ってなりました。相変わらず人たらしだし。
ナーギもアイシャ好きすぎで、198ページで涙ぐんでしまった。なんだろうなあ、この、カファスではどうしようもできない繋がりみたいなものが二人にはあって、そのつながりが悲しい気もするし嬉しい気もするし、切ないし、けれど優しい。ナーギの株が噛ませ犬以上に上がったんですけれどナーギほんといいやつ……!(ぶわっ)
面白かったです!
「残された人生でやっておきたいこと」七十四歳のイコさんの場合それは、バイク・ツーリングだった。目的地は、五歳で死別した母の生家。東京から岡山まで、往復1200キロ。着いたのは、寂れた一軒の船宿だった。無人のはずなのに、そこには不思議な少女が住んでいた……。『魔女の宅急便』の著者が贈る、書き下ろし自伝的小説!(カバー折り返しより)
児童書の『魔女の宅急便』の角野さんの作品。七十四歳のイコさんの一人称で進む、イコさんと不思議な女の子ふーちゃんの旅のお話。久しぶりに一人称でがっつり読んだせいか、ちょっと読みにくかった。
母親の生家にいくと、そこにはイコさんが持っている写真に映っている母、それも十二歳のままのふーちゃんが幽霊となって住み着いていた。バイクに乗って旅を始める二人。この旅が、今まで紡げなかった時間を、また別の形で楽しく紡いでいるようで微笑ましいです。でも時々覗く寂しいところもあったりなどして。心残り、というのがキーになるのですが、誰かとの記憶というものの重みや大切さが実感できて、特にケイさんのエピソードは切なかったな……。
自伝的小説と銘打ってあるんですが、この本一冊だけでは、どのへんが角野さんの自伝的なところか全然分からなくて(あとがきもないし)、ちょっと不思議な印象の物語でした。
感染から数週間で確実に死に至る、その驚異的なウイルスの感染ルートはただひとつ、唇を合わせること。
昔は愛情を示すとされたその行為は禁じられ、封印されたはずだった。
外界から隔絶され、純血を尊ぶ全寮制の学園、リセ・アルビュス。
一人の女生徒の死をきっかけに、不穏な噂がささやかれはじめる。
彼女の死は、あの病によるものらしい、と。
学園は静かな衝撃に包まれた。
不安と疑いが増殖する中、風変わりな犯人探しが始まった……。(カバー折り返しより)
全寮制女子校で百合な話だと思っていたら、百合は百合でも共学だったのでちょっとしょんぼりしました。が、面白かったです。この疑心暗鬼とダークさが!
誰がウイルスのキャリアなのかというのは読み始めた時点で大体分かるのですが、物語のきっかけになった女生徒の死の原因は? 犯人は? を探していくのにどきどきしました。ヤングアダルト向けにしてあるせいか、それほどミステリーものとして濃いわけではなく、一つずつあっさりと謎が解明されていく。
何よりも、『キス』という行為の描写の背徳感やエロスが滲み出ていて、ついぞくぞくっとしてしまう。
雰囲気はにおってましたが、オチがそうくるかー! 男女の睦み合いを汚らわしく感じたこともある彼女が、『キス』を武器にするかー……。とてもダークでいいと思いました。
私が読んだのは旧版なんですが、新装版が出ていて、しかもサイドストーリーが収録されているなんて! 読みたいなー。
信じていた親友に裏切られて、ショックで教室を飛び出した天野蓮、14歳。瀕死の小鳥を助けたことをきっかけに、運命が大きく変わる。愛犬ハチローに異世界の神パンの魂が乗り移ったり、無理やり中華風な異世界に連れて行かれたり!! しかも、悪い神様を倒さないと、元の世界に帰れないなんて!?
少女小説界珠玉の作家、喜多みどりが贈る、昨日まで普通だった女子中学生、ある日! 突然! の異世界トリップ物語!!(カバー折り返しより)
女子中学生が中華風異世界に飛ばされてしまい、予言の娘として終末に向かう世界を救うお話。読み終わった後、よくまとまったなあ! と思いました。オチがとてもかわいい(?)というか、こういう些細なことが少しずつ人をすれ違わせるものだなと感じさせるもので、ちょっと拍子抜けもしましたけれど、ともかく女の子の友情!!(握りこぶし) 優等生で行動力もあって正義感の強い蓮が、最後に「でも本当は……」と思うところにいきなりきゅーん! としました。
中華風異世界といっても、皇帝がー後宮がーという話ではなく、天仙や地仙がいて天の意志が存在する世界の救世の物語なので、恋愛方面は淡い感じですがそこが蓮らしくてとてもいい。今のままではいられない予感を抱きながら、きっと蓮はいい女の子になっていくだろうと思いました。
この二人には遭難しているという自覚がまったくないらしい。
シェラは残念そうに首を振っている。
「塩を持ってくるんでしたね」
リィも頷いた。
「だな。どうせならうまいほうがいい」
ハンスが大真面目に言った。
「いや、この際、贅沢は言えないよ」
全員がほぼ腹を満たすと、リィは荷物を持って立ち上がった。
途端にフランクが異議を唱えた。
「俺たちは遭難してるんだぞ。動かないで救助を待つのが常識だろう」
ハンスも頷いた。
リィは二人を見つめてはっきり言った。
「救助は来ない」
体験学習でリィとシェラは仲間たちとともに、総勢12人で惑星ヴェロニカに降り立った。
事件は、そこから始まった——。(裏表紙より)
今回は天使たちの話。
体験学習の安全なキャンプをするため惑星ヴェロニカに降り立ったが、そこは本当の目的地ではなかった。12人の子どもたちのサバイバルが始まる! ……とは言っても、自然生活レベル100以上のリィとシェラがいるので、ただのサバイバルものではないのでした。相変わらず最強過ぎる金銀黒天使。
今回はシェラが怖かった。笑顔でさらっと切り捨てられるものだから、これが正しいとは分かりつつも怖かった。でも鍋を見つけて喜ぶシーンはちょっと噴きました。かわいいなおい。
第二次大戦終結直後、従軍看護婦だったクレアは夫とともにスコットランドのハイランド地方で休暇を過ごしていた。ある日、地元の人間に教えられてストーン・サークルを訪れた彼女は、突如異様な感覚に襲われ、意識が混濁する。気がつくと、古めかしい衣裳の戦士たちが眼前で戦いを繰り広げていた。逃げかけた彼女を捕らえた男の顔を見ると、夫にうりふたつ。こともあろうに、その男は夫の先祖だった。クレアは18世紀にタイムスリップしていたのだ!
世界中で人気沸騰のロマンティック・アドベンチャー巨編、いよいよ開幕!(裏表紙より)
1945年頃の従軍看護婦だったヒロインが、18世紀にタイムスリップしてしまうというトリップ・ロマンスの第1巻。18世紀の西洋の文化にあんまり詳しくないのですが、細かいところがすごい書き込まれているように感じられてすごく面白かった。クレアは20世紀の看護婦なのでもちろん医療知識があるわけですが、18世紀の民間療法との違いはもちろん、その地方の服装をはじめとした習慣や食事事情、城という場所の風景など、現代とは違うという書き方に本格的なタイムスリップものを実感しました。
1巻はじわじわと進んで、最後に特大の爆弾(ロマンスの)が落とされるわけですが、ここからクレアがいったいどうなるのか全然見当もつかなくて! クレアはとてもたくましくて賢い女性なので、ここからどうなるんだろうとわくわくしています。
オススメされた作品でした。ありがとうございました!
ヴァンツァーはレティシアに机の上の写真を見るよう、身振りで示した。
大の男が眼を背けるほど凄惨な写真を前にしてもレティシアは顔色一つ変えなかった。
「こりゃまた派手にやったもんだ」
写真の内容に衝撃は受けないにせよ、それ以上の関心もないらしい。
「おまえがやったと思っているらしい」
「俺が!?」
ヴァンツァーは無言で頷いた。
こちらは何やら笑いを噛み殺しているような妙な顔つきだった。
レティシアは逆に茫然と立ちつくしている。
「……嘘だろう?」
連続惨殺事件が起きていた。犯人か?と疑われたレティシアは意外な行動に出て……。各界のプロフェッショナルの活躍を描く中・短篇3本を収録。(裏表紙より)
連続惨殺事件とレティシアの話である「ファロットの美意識」、ジンジャーが巻き起こした一騒動の話「ジンジャーの復讐」、そして暁の天使たちでちょろっと話が出たマース軍の演習の約束が果たされる「深紅の魔女」。
ファロットの話も面白かったですが(女のふりは得意なんだ、という台詞がおなかいたかった)、ジャスミン周りの話はやっぱり面白いというか、ちょっとしか出てこなかったケリーがやっぱりかっこよくて唸りました。財閥総帥をしていたケリーが結構好きだったんだなあ……と自覚した。この「ジンジャーの復讐」に登場する、容姿が独特な映画監督ってあの有名な指環の映画の……と考えつつ、今回も面白かったです。